楽園 ― 願わしい住みか
地上の楽園というと,どんな情景が頭に浮かびますか。それはどんなものだと思われますか。
きっと美しい公園,自然の美のあふれる静かな場所を心に描かれることでしょう。多種多様な樹木や花,楽しい遊び相手になる数多くの鳥や動物を想像されるかもしれません。そのような情景を思い浮かべるのももっともです。というのは,多くの言語で,“楽園<パラダイス>”という語は木立ちのある公園,あるいは公園のような庭を意味する古語から派生しているからです。
しかし,境界の定められた公園ではなく,全地が楽園となるとすればどうでしょうか。それは,あなたにとってどんなところとなるでしょうか。
まず,楽園となった地には,数え切れないほど様々な動植物が見られ,人間が,多くの生物を広範な地域にわたって絶やしてしまった今日の状態とは全く異なっているでしょう。
地勢も変化に富んだ楽しいものとなります。ごみや工業廃棄物で汚されていない磯浜や砂浜を訪れる喜びも味わえるでしょう。そこでは,波の音を聞きながら,優雅に舞うかもめや他の海の生物をながめて楽しむことができます。内陸部に入れば,変化に富んだ森林が見られます。それぞれの森には,特色のある動植物があふれ,荒廃をもたらす人間の開発の影響は全くありません。
もちろん,高くそびえ立つ,雪に覆われた山やなだらかな斜面を持つ山などもあり,ビールの空きかんなどのごみにつまづくことなくハイキングを楽しめるでしょう。そうした山々のかなたには,乾燥した平原があることでしょう。そこは,人間が作り出す,土砂あらしの吹きまくるところなどではなく,その地域特有の野生植物の生い茂る地,大小様々な野生動物や家畜のたくさんいるところとなるでしょう。その他の場所には,低木や薄い色のかん木の生える野原があるでしょう。
そうした全地球的な楽園を怠りなく手入れして耕すためには,ある程度働くことが求められます。しかし,厳しい上司にいらいらさせられたり,虐げられたりするのでなければ,あなたはそうした労働をいとわないはずです。共に協力することによって,あなたご自身とご家族そして人類全体に益となるような仕方で,努力を傾け,自らの能力を発揮できるでしょう。楽園を作ることに貢献するのは喜ばしいことであるに違いありません。
楽園では自らの分にあずかれるのですから,自分の仕事,および休息したり,旅行したり,この地球上に見られる驚異についてさらに学んだりする多くの機会から,永続する喜びを享受できるでしょう。
このすべては,非現実的な夢にすぎないと思われますか。全地が美しい場所となることなど不可能であるとお考えでしょうか。これまで見たり読んだりしてきた事柄から,地は正反対の方向,つまり汚染や荒廃や破滅の危険の増大する方向に向かって進んでいると信じておられますか。
率直に言って,地球の将来が陰気なものに思えるにもかかわらず,この惑星全体が楽園となることを期待し得る確かな根拠があるのです。