聖霊に満たされて大胆に神の言を語る
― 1964年度エホバの証者の年鑑から
インド
最高伝道者数: 2,000
人口: 443,000,000
比率: 221,500人に1人
北辺における中共軍の国境侵犯事件は,インド人にかなりの衝撃となりましたが,エホバの証者には人々に宣べ伝えるべき慰めのたよりがありました。伝道者数が6パーセント増加したことなど,昨奉仕年度中のインドの活動は良く進歩しましたが,とくに目ざましいのは家庭聖書研究活動です。まだまだ働くべき区域が沢山ありますが,インドの兄弟たちには新しい問題が持ちあがりました。活動に必要な文書が十分に得られない事です。インド政府は,贈与の形で送られる書籍類をも含めてほとんどすべての物資の輸入を制限し,輸入を抑える政策をとっています。インドの支部事務所は英語の文書を協会の本部から十分に受け取れるよう手をつくしていますが」土地の言葉の文書はすべてインド国内で作らねばなりません。もとより協会は,インドの兄弟たちを助け,良いたよりを宣明する貴重な仕事を推し進めるために,この問題の解決にできるだけの努力をしています。支部の僕からは興味ある経験が沢山送られてきましたが,そのうちいくつかをこゝに紹介しましょう。いずれも心暖まるものばかりです。
是非お知らせすべきことは毎年行なわれている未割当区域の活動です。昨年は,特別開拓者を派遣するのに適当な場所を選ぶ事を一つの目的としてこの活動が行なわれました。これまで,特別開拓者はただ大きな町を選んで派遣されていましたが,それほどの産出もないままに終る事がよくありました。それゆえ昨奉仕年度には,人々の関心の度合を知るために,未割当区域の活動をした会衆によりその土地の様子を知りました。一つの会衆は45キロほど離れた町について良い報告を送ってきました。それでまずはじめに,次の会衆に移るまで数週の間,巡回の僕とその妻を送ってその町を開拓させ,町の人々の関心を高めました。そののち二人の特別開拓者を派遣しました。この活動には良い結果がありました。2ヵ月後には土地の人3人が伝道者になりました。その3人はいずれも以前に熱心な教会の信者でした。そのうちの一人は集会のために自分の家を開放しています。
10代の子供の経験もいくつか報告されています。12歳の少年は御国のたよりに興味をもち,翌年バプテスマを受けました。両親はそれほど関心を示しませんでしたが,姉は勉強するようになりました。その後両親は娘の結婚を考え,真理にいない人との話をすすめました。ところが少年はこれに抗議し,その人と結婚させるなら自分は家を出てゆくと言いました。両親はこれに心を動かされ,縁談を取り止めにしました。この少年の証言によりいとこも聖書を勉強するようになり,そのうち二人はエホバ神に献身してバプテスマを受けました。今では両親も勉強しており,集会にも出席しています。
奉仕年度の終りを飾ったのは,私たちも参加した世界一周「永遠の福音」大会です。大会報告の詳細はいずれ他のかたちで発表される事と思いますから,ここでは,協会の旅行計画に従って海外から出席した583名,個人的に旅行を計画してきた人たち,また近くの国々から出席した32名のギレアデ卒業生などを迎えた事の喜びにだけふれておきましょう。インドの兄弟たちにとって,一時にこれほど多くの外国の兄弟に会い,そのすべてと共にゆたかにそなえられた霊の贈り物のゆえにエホバ神へ心からの賛美をささげたこの大会は,ながく記憶に残る経験となりました。南インドに住む兄弟の多くにとっては,開催地デリーまで往復6400キロの旅行をするほのど余裕がありませんでした。それゆえ協会の愛ある配慮によって,2週間後に「こだま」大会が南部地方で開かれ,デリー大会プログラムのほとんどすべてが再現されたとき,その地方の兄弟が喜んだのは言うまでもありません。
デリー大会後の出来事の中でもとくに興味あるのは,ボンベイの学童が中心になって計画した小規模な大会です。たまたまデリー大会の翌週に数日の学校の休みがあり,子供たちはその休み全部を使って自分たちの大会を計画しました。親たちの助けを得ずに,二日の大会のプログラムを作り,話を割り当て,各部門の僕を任命し,大会の僕や司会者もきめてありした。文書や炊事の部門も設けられ,寄付箱,手洗所,標識などの他に,どんな国語の雑誌がどこで発行されているかを示す世界地図も準備されていました。その世界地図はデリー大会で掲げられたのを小型にしたものですが,学校の地図を利用し,各国語の雑誌は手でかきこんでありました。
一番年上の子供は16歳,年下の子供はわずか6歳ですから,子供でも大会の運営の仕方や話の内容をよく理解してきたことがわかります。17人の子供がこの計画に参加し,公開講演は10歳の子供がしました。近くの子供も招かれ,公開集会には25人が集りました。
パキスタン
最高伝道者数: 162
人口: 93,000,000
比率: 574,074人に1人
昨奉仕年度中,パキスタンの兄弟たちは「他の羊」を集める仕事の進歩に喜びました。野外奉仕に総計4万4714時間がさゝげられ,最大の証言が行なわれた年となりました。家庭聖書研究の活動もよく進歩し,この面でも最高数が得られました。ラホールの事務所から送られたパキスタンとアフガニスタンの報告をこゝに紹介します。
パキスタンの兄弟たちは,デリーの大会に出席して,世界の各地から来たたくさんの兄弟に会えた事を非常に喜んでいます。パキスタンからは40人以上が出席しましたが,大会の思い出話が終るのはまだずっと先の事でしょう。
次の会衆の僕からの手紙にある経験は公開講演の価値を物語っています。「『家族内の幸福を得る』という題の話が奉仕中心地で行なわれました。主人はペンテコスタル派に,奥さんはカトリック教会に属する家族が,この講演会に招待されました。二人は出席し,熱心に話を聞きました。話のあと家庭聖書研究を毎週行う事がすすめられ,二人はすすんでそれに同意しました。最初の研究があって以来,二人は各自の教会の礼拝に出席しなくなりました。奥さんが喜んで話す事によりますと,さらに変ったのは以前はちょっとした事があってもすぐに奥さんを叩いた主人が公開講演を聞いて以来すっかり改めた事です。家庭内には愛と幸福の雰囲気が満ちているとの事です。この家族は真理に良く進歩しました。過去6ヵ月の間毎月伝道に参加しており,バプテスマを受ける事を考えて次の大会を心待ちにしています」。
善意者の方がエホバの証者をさがしに来る事があります。次は一宣教者の経験です。「家から家の伝道をしていたとき,近くに住む回教徒が近づいて来て,私の仕事について質問しました。雑誌を紹介するとすぐにそれを求め,二日後に彼の家を訪ねることになりました。約束どおり行ってみると彼は私を待っていて,早速『見よ!』の小冊子を使って勉強が始まりました。彼は実に早く進歩しました。はじめから集会に出席し,どんどん手をあげて積極的に討議にも参加しました。彼は以前に聖書を教えてくれる人を求めて,あちらこちらの『クリスチャン』をたずねたことがありましたが,わざわざ時間をかけて聖書を説明してあげようと言う人はありませんでした。彼の近所にも,『クリスチャン』と言う人はいましたが,私が勉強を始めるまではだれも申し出る人はいませんでした。ところが,以前には何もしなかった人たちが,たずねて来てエホバの証者からは真理を得られないから私が教えてあげようと言うようになりました。しかしそれは無駄でした。彼は勉強と集会の出席を続け,友人に証言し,職場の上の人にも新世界訳聖書を配布しました。家から家の伝道にもたずさわり,証言の仕事に参加できる事を喜んでいます」。
東パキスタンには5000万人の人々が住んでいますが,年配の姉妹が一人いるにすぎません。必要の多いところ,パキスタンに来て働く方はありませんか。
アフガニスタン
最高伝道者数: 9
人口: 12,000,000
比率: 1,333,333人に1人
アフガニスタンの兄弟はデリーで開かれた「世界一周永遠の福音」大会に出席できた事を心から喜んでいます。たしかにこの大会は奉仕年度中最大の出来事でした。この国の群れの世話をみる監督はこう書いています。「どの点からみても大会は素晴らしい機会になりました。御国宣教学校以来,これほど楽しい時をすごした事はありません」。
アフガニスタンの兄弟にとってもう一つの大きな出来事は巡回の僕が初めて訪問した仕事です。兄弟たちは霊的に強められ,訪問した僕と共に忙しい奉仕の1週間を過した事を喜んでいます。この孤立した小さな群にも巡回の僕が定期的に訪ねて来る事を一同は期待しています。
8月に,雑誌がたまっている事に気付いた群の兄弟たちは,大会で受けた教訓を思い出し,会う人ごとに雑誌をすすめました。月末に報告を集計してみると,伝道者一人平均41.7冊の雑誌を配布していました。
インドネシア
最高伝道者数: 801
人口: 100,000,000
比率: 124,844人に1人
インドネシアからはすぐれた報告が来ています。国全体にわたって良いたよりが広く宣明されました。開拓者も特別開拓者も拡大を押し進めており,新たな分野に仕事が進んでいます。支部の僕からの報告をここにのせましょう。
奉仕年度最大の出来事はバンドンで開かれた国際大会でした。この大会の準備には多くの困難がともないました。まず第一に開催都市をジャカルタからバンドンに移さねばならなくなった事,次に,開催3週間前になってバンドンの会場が破約になった事です。世界一周の旅行者をジャカルタからバンドンに移す手配をするのに大変な障害がありましたが,最大の障害は,インフレのために大会2ヵ月前に政府が一切の料金を4倍に値上げした事です。このため計画した大会出席を中断しなければならぬ兄弟もありました。しかし,国中のすべての会衆からいずれかの人が大会に出席しました。兄弟たちの寛大な寄付もあって,特別開拓者114人のうち111人が出席できました。最高出席者776名を集めたこのインドネシア最大の大会は,あまたの島々から集まったすべての兄弟たちにとって大きな励ましと勇気の源になりました。
それより先5月に,西ジャワの諸都市で反中国人暴動が発生しました。チェリボンの町では,暴動後の不穏な空気がまだ残り,暴動再発の恐れのある中で,中国人の兄弟たちや特別開拓者は伝道の仕事をずっと続けました。その快活で勇敢な態度を見た人々は強い印象を受け,以前には少しも関心を示さなかった人の多くが文書を求めました。兄弟たちが,試練に直面しても宣教の仕事を守り通した結果です。
バンドンにおいては,暴動の最中に僕たちが中国人の兄弟や善意者の家をたずね,訪問を受けた人々は非常に励まされました。この町の中国人の兄弟たちも少しもひるむことなく,暴動のあった月にバンドンの会衆は伝道者の最高数に達し,それは60パーセントの増加にあたりました。
セイロン
最高伝道者数: 264
人口: 10,644,809
比率: 40,321人に1人
セイロンのエホバの証者は,昨奉仕年度の間,活発な証言の機会に恵まれました。兄弟たちは,集会や研究の機会を十分に活用すると共に,御国の奉仕に参加するため,各自の生活を整理して必要な時間を生み出しているように思われます。インドのニューデリーで開かれた「永遠の福音」大会に,セイロンからは109人が出席できました。セイロンの支部から報告された経験を少し紹介します。
の興味を持つ人が移転する際に,すぐ連絡をとるなら,報いがあります。一人の兄弟は自分の経験を次のように報告しています。「エホバの証者と数年来勉強していた婦人が,私の家から15キロほど離れた村に移って来たとの手紙を受けました。早速たずねたところ,驚くほどの歓迎を受けました。聖書に対する婦人の熱意はさめておらず,それまでの研究を継続することになりました。ある日,いつも勉強する部屋に客が来ていました。研究を休むのではないかと思ったところ,嬉しいことに,婦人は本と聖書とを持って出て来ました。婦人は客に言いました。『私たちはこれから聖書の勉強をするのですが,よろしかったら一緒にいかがですか。さもなければしばらく静かにして頂きます』。客が辞退したので,私たちはいつもの研究を続けました。次の段階は婦人を奉仕に招く事です。彼女はそれに応じ,以来毎月欠かさず伝道しています。ニューデリーの『永遠の福音』大会について話したところ,婦人はすぐさま出席を望みました。婦人は夫に希望を告げ,夫はすすんで旅費を出しました。大会に立つまえにバプテスマについて説明したところ,彼女は是非大会でバプテスマを受けたいと言いました。婦人はそれまで何度も各地に移転していましたから,多数の兄弟たちが数年にわたって忍耐強く連絡をとり,研究を続けて来たことによって,献身した一人の姉妹が誕生した事になります。今では婦人の二人の子供も宣教奉仕に参加しています。