天使はわたしたちの間にいますか
それは,あっという間の出来事でした。物思いにふけり,周囲のことなど目に入らぬまま線路の上に迷い出たメリリンは,突如として耳をつんざくような轟音を聞きました。目を上げると,列車が自分の方に向かって突進して来るではありませんか。メリリンは恐ろしさのあまり体がすくんで動けません。列車はすぐそこまで来ていて,機関士の青い目と恐怖にかられた顔が見えます。メリリンは次に起きたことを決して忘れません。「まるで巨人が後ろから押してくれたような感じでした。線路から飛び立つようにして,向こう側の石炭の燃え殻の上に落ちたのです」と述懐しています。軽い打撲傷を負い,起き上がって,命の恩人にお礼を述べようとしたところ,だれの姿も見えません。メリリンはどう結論したでしょうか。「私の守護天使が命を救ってくれたのです。それ以外には考えられません」と語っています。
懐疑的な世界が突然,天使のとりこになったかの観を呈しています。ここ数年,天界の生き物のことがテレビ番組や映画の題材になり,ブロードウェーでも演劇の主題として取り上げられています。天使に関する本は宗教書のベストセラーリストの上位に入っており,天使クラブやセミナーがあり,会報も出されています。ある記事の言葉を借りれば,「あなたの『内なる天使』」を解き放つのを助けてくれる研究集会も設けられています。
こうした天使ブームをこれ幸いと利用しているのは便宜主義者の商人たちで,消費財を次から次へ際限なく売り込んでいます。米国で店を共同所有している一人の女性は,「天使のついた商品なら何でももうかる」と述べ,書籍が飛ぶように売れるほか,「天使の彫像,ブローチ,人形,Tシャツ,ポスター,グリーティングカード」も売れていると語っています。これらは皆,あるジャーナリストの言う,「この世のものとも思えない利益」を生んでいます。
しかしこれは単なる一時的な流行などではないと,天使のファンは主張し,その証拠として,「実際に」天使に遭遇した話を次々に持ち出します。人間の姿をした天使を見たという人もいれば,光が見えた,声が聞こえた,気配を感じた,天使から出たに違いない力を感じたと言う人もいます。メリリンのように,天使に命を救われたと言う人は少なくありません。
何が起きているのでしょうか。「霊性が復活しているのだと思う」と述べているのは,「超自然的な」出会いに関する本を2冊著わしたジョーン・ウェスター・アンダーソンです。別の本の著作に協力したアルマ・ダニエルはもう一歩踏み込んで,こう述べています。天使たちは「現在,もっと多くの人が天使たちと接触できるよう,自分の存在を知らせるように指示されている。天使に関して目にすることが非常に多いのは,天使たちがそれを望んでいるからだ。天使たちがそうしているのである」。
それは本当ですか。それとも,現在人々が天使に魅了されていることの背後には何か別の理由があるのでしょうか。その答えを得るには,神の言葉を調べなければなりません。聖書には天使に関する真理が収められています。それを調べてみましょう。
[2ページの図版のクレジット]
3,4ページ; Don Rice/Dover Publications, Inc. の The New Testament: A Pictorial Archive from Nineteenth-Century Sources.