神に対する考え方
1 明治の初期,アメリカ人宣教者及び日本の聖書学者による日本語聖書の翻訳事業が始められましたが,聖書のGodをどの日本語に訳出すべきかが問題になりました。日本にあった仏教,神道そして儒教には,創造主または造物主という観念がまったくないため,ふさわしい訳語がみつからず,やむを得ず,神道の「神」という言葉を採用しました。
2 日本語の神に関する考え方や知識はある百科事典その他の宗教書にのせられていますが,その「神」の項の一文を引用しますと次のとおりです。「神ということばは,明治時代に英語のGodを神と訳したためにキリスト教でいう人格をもった超越的な存在として想像されるようになった。しかし古く日本で神とよばれたのは,むしろ精霊とか精神といった素朴な超自然的な力のことをいっていた」。
3 従って八百万の神といわれるように,自然神(動・植物また山,川,海,雷,岩石など),人神(偉大な人がそのまま神となる),祖先神,職能神(商工,学問,技芸など特定の分野でひいでた能力をもつ人や神)そして人間の生活に結びついたありとあらゆる種類の神々について人々は意識しています。その理由で,家から家の証言の際こうした事実を念頭において話すことは肝要です。例えば,「あなたは神がおられることを信じていらっしゃいますか?」また「神は聖書の中で次のようなことを約束しておられます」と話すだけでは,家の人も伝道者も頭の中でまったく異なった神について考えていることもあり,いたずらに混乱をひきおこすかもしれません。
4 また家の人の中に「私は無神論です」と主張する方がいますが,ほとんどの場合その人の思いの中には造物主に関する知識はありません。それで,私たちは,神について話す場合,美しい草花,人体のふしぎ,人間の手に届かない無数の星や太陽にふれながら使徒 17:24,26を読み造物主に対する関心をよびおこして話すことができます。
5 それで9月に「進化」の本を紹介する時,こう言えるかもしれません。
「あなたが『神』ということばをお聞きになったとき,どんなことが思いに浮びますか。(答える時間を与える)聖書が神について述べていることを読むのは興味深いです。(使徒 17:24,26前半)この聖句は神を全能の,愛ある霊者として描いています。神は天と地と,美しい花や植物,動物そして最後に人間を創造なさいました。人体の驚くべき構造だけでも,知恵と愛のある創造者がわたしたちを設計なさったことを証明しています。(「進化」の本を取り出して4ページの絵を示す)それでもある人々は人間が下等な動物から進化したと言います。どちらが真実ですか。あなたはこの本の中に述べられている論議をお読みになって楽しまれるでしょう。これは100円のご寄付でお求めになれます」。
6 神道を国教にした日本が第二次大戦で負けてから,人々は神に対する信頼を捨て,宗教に対する関心を失うようになったと思われます。しかし,わたしたちの創造者である神は国家主義的な神ではありません。その神は,謙遜にご自分を求める全人類の神です。(使徒 17:27; 10:34,35)正直な心を持つ方々がその神を見いだすのを助けるために勤勉に励みましょう。