世界展望
アメリカ人の医師が鍼術を試用
◆ 最近の数か月間に,従来の麻酔の代わりとして鍼術を使う手術がアメリカ人の医師によって少なくとも9件行なわれた。そのうちの2件は,ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医科大学で行なわれた,患者のひとりは皮膚の移植手術を受けたが,麻酔に使われたのはからだにさし込まれた5本の針だけだった。手術後十分して患者はこう語った。「わたしはステーキを食べたくなりました。実際,ロースト・チキン,マッシュ・ポテト,えんどう豆を食べました」。また,彼は,しばらく前に従来の麻酔を使った手術を受けたが,鍼術ははるかにすぐれていると述べた。別の患者は,麻酔に鍼術だけを用いて扁桃腺から腫瘍を取らせた。彼は,以前に,従来の麻酔を局部的に使用して同様の手術を受けたところ「劇痛」を感じたが,鍼術には全然痛みがなかったと語った。
合同への努力を放棄
◆ 10年以上にわたって,アメリカの九つの大きなプロテスタント教会は合同を試みてきた。合同すれば約2,500万人の教会員が一つにまとめられたことだろう。しかし,発案した連合長老教会は,最近,合同への努力を放棄することに賛成投票した。他の宗派の指導者たちは,その行為は合同に対して「非常に深刻な打撃」であると語った。しかし,聖公会の一代表者は,「組織上の合同が現代の気運に合わないことはしばらく前から明らかであった」ことを認めた。
教会は妊娠中絶を支持
◆ 連合長老教会の代表者たちは,女性の『必要に応じた妊娠中絶』に賛成投票した。ある代表者は,それは「殺人を事実上容認する」立場に教会を置くことになると抗議した。しかし,その議案はともかく承認された。
アルコール中毒の司祭
◆ U・P・I通信社の宗教欄主筆ルイス・カッサレズによれば,アメリカの,アルコール中毒に関するカトリック全国聖職者会議は,カトリック信者が無視することを好むアルコール中毒の司祭の深刻な問題を明るみに出そうとしている。同会議の調査で,カトリックの司祭は10人につきひとりぐらいの割合でアルコール中毒者であることがわかった。かつてアルコール中毒者であったギャビン・グリフィン司祭は,カトリックの一般信徒の間ではアルコール中毒の司祭を「保護する」暗黙の謀議があると語った。また,全聖職団でさえ問題の大きさを知らないとも述べた。カッサレズによれば,プロテスタントの牧師のあいだにも同様の問題があるが,断固として問題を明るみに出すカトリックの会議に匹敵する組織がプロテスタントにはない。
タバコの害のほうが大きい
◆ 喫煙と汚染した空気とどちらが肺に悪いだろうか。アメリカの研究者のあるグループが,1,831の遺体の肺を調べた結果,『圧倒的に』,タバコが肺の疾患を引き起こす第一原因であると断定した。生前タバコを吸ったことのない人で,肺の疾患の兆候を示していたのは10%にすぎなかった。しかし,生前,一日にタバコを1本から19本吸っていた人のうち,87%は肺の疾患に冒されており,一日に20本以上吸っていた人の場合は99.7%が肺の疾患にかかっていた。女性の場合にも同様の結果が見られた。
万引きと麻薬
◆ アメリカの業界筋によると,同国の万引きは昨年,小売店から50億ドルを上回る盗みを働いた。今年は,その損失が60億ドルを越えるものと見られている。現在店に来る人で推定10人にひとりは万引きである。1950年当時,万引きのわずか5%が麻薬の常用者だった。ところが今ではそれが40%に上っている。多くの人はその金のかかる麻薬の常用という習慣を続けるために盗みを働いていることは明らかである。
『適法の』薬品に警告
◆ 新聞に大きく取り上げられるのはたいてい違法の薬品の使用に伴う問題である。しかし,カナダの西オンタリオ大学のアイバン・ボーダ博士が力説しているところによると,入院患者すべてのおよそ5%は,処方され専売されている薬品の悪影響をこうむっている。いくつかの調べでは,すでに入院している患者すべてのうち推定10ないし30%は,入院中に薬品による悪影響を一つかそれ以上受けている。
スコットランド教会の災い
◆ 英国のグラスゴー・ヘラルド紙の報道によると,スコットランド教会では教会員が減少していたが,今や,日曜学校とバイブルクラスに出席する若い人々の数も減少している。また,日曜学校の教師も前年とくらべて1,388人少なくなった。教会から出版されている3種類の児童雑誌は,関心の欠如のために廃刊となった。ヘラルド紙は,スコットランド教会の教会員の40%は昨年聖ざん式に出席しなかったことに注目している。
長距離旅行に向いていない
◆ 最近,アメリカ国立科学アカデミー,国立研究会議は,人間は長距離の宇宙旅行に向いていないとの結論を下した。アメリカ宇宙管理局の要請によって行なわれたこの研究で,「他のストレスとともに孤独と監禁状態に置かれ,感覚上の制約を受けた人間に対する,長期間の影響はほとんど理解されていない」ことが明らかにされた。深遠な宇宙での別の潜在的な危険,すなわち,「分裂,増殖しない,中枢神経組織の細胞に特に」悪影響を及ぼしうる,高エネルギーの強力な宇宙線の粒子についてもいっそうの研究が求められた。
芸術の状態
◆ 詩とか音楽,絵画を含む芸術はひどい状態にあり,なんらかの改善の見込みは暗い,と,有名な著述家ロバート・グレイブスは語っている。絵画,音楽,詩で芸術として通っているものを見て,ふつうの人の多くもそれに同意することだろう。音楽に関して,グレイブスはこう述べている。「過去1世紀の間に独創的な作曲家が今ほど少なかったことはない,ということは,わたしの知っている第一線の音楽家たちの間で認められているようである」。
香港の災害の日
◆ 去る6月中旬,83年間最悪の洪水が香港を襲った。6月16日金曜日,激しい雨が降りはじめ,日曜日の朝にそれがやんだときには山腹が約60センチ浸水した。午前11時に豪雨がふたたび降りはじめ,まもなく災害が襲った。コウルーンのサウ・マウ・ビング地域では山腹で何トンもの土砂崩れがあり,家屋や住人は10㍍ほどの泥の下に埋まった。香港の中流の住宅地では,ガレージと擁壁が12階建ての邸宅の地階にめり込んだ。その建物全体は振動し,住人もろとも急な山腹をくずれ落ち,平屋からなる別のブロックの裏にあったアパート5むねを破壊した。報告によれば,死者100名,行え不明150名で,家屋を失った人は3,000人を越え,物的被害は十数億円にも上った。