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目ざめよ! 1974
目74 1/8 4–12ページ

現在の道はどこに向かっているか

この世界がどこに向かっているかを知る方法がありますか。あります。その答えは,人間活動のあらゆる分野に見られる証拠からも得られます。

しかし,まず初めに,この世界そのものは,どこに向かっていると唱えているでしょうか。新聞を読み,ラジオを聴き,テレビを見てください。そうすれば,世界の指導者たちはより平和でより繁栄した状態に向かって進んでいると唱えていることが明らかになります。しかし,ほんとうにそうでしょうか。

自動車の旅行隊を組んで旅をしていると考えてください。指導者たちは,暖かくて肥沃な美しい土地に行くのだ,と言います。道路は初めのうちでこぼこだがやがてよくなり,初めは起伏が多いがやがてなだらかな土地になる,と言います。また,しばらくのあいだ物資の供給は不十分かもしれないが旅行を続けてゆくにつれだんだん豊富に得られるようになる,とも言います。しかし,もし道路が滑らかになるどころかでこぼこが激しくなり,起伏が平たん地にではなく山に変わってゆき,物資を手に入れることがだんだん難しくなるなら,そしてもし,美しさ,肥沃さ,温暖さが増し加わってゆくどころか,あたりがしだいに荒涼とした,不毛で寒冷な土地になってゆくとしたら,ほんとうに正しい方向に向かっているのだろうかと,あなたが疑問を感ずるようになるまでにどこまで進むことが必要なのでしょうか。

旅行隊の他の人々があくまでも前進を主張し,それと異なる意見をすべて“悲観論”として非難し,旅行隊の指導者たちをいよいよ信じて行動するようにという場合,あなたはそれに動かされますか。標識は,橋梁の破損,土砂くずれ,道路の陥ぼつなど,前途に大きな危険のあることを警告しています。それでもあなたは,大多数の人が前進に賛成しているというだけの理由で,自分の命を,そして自分とともにいる人々の命を危険にさらしますか。

わたしたちは今日,全地にわたって同様の情勢を見ていないでしょうか。

世界の食糧供給にはどんな傾向が見られるか

幸福な生活のために基本的に必要なものの一つは良い食物です。人類は幾千年ものあいだ食糧生産に携わってきました。農業のやり方は科学的に研究され,特にここ数十年の間に高度の発達を見ました。しかし,今日の世界の食糧供給にはどんな傾向が明確に見られるでしょうか。

もちろんあなたは,ある地域では十分な食物を得ていない人々のいることを知っています。そして,それは決して事新しい現象ではありません。いつの時代でも,いろいろな土地の人々が,十分な食物を得る面で問題を経験してきました。しかし,今世紀に至って,無気味な傾向が注目されるようになりました。第一次世界大戦中および大戦後,かつてなく大ぜいの人々が食糧不足の影響をこうむりました。そして,第二次世界大戦に至って問題はさらに拡大しました。

近年,そこここの幾つかの国が時おり食糧不足に見舞われたことはあります。しかし今日,事態は異なった様相を帯びています。今では世界全体が影響をこうむっているのです。

事実,世界の食糧供給に関して今日発展しつつある危機的な情勢は歴史に例を見ないものです。そして,現代科学技術のあらゆる進歩にもかかわらずそれが起きているということは,事態にいっそうの意味を付するものです。

1972年の暮れ,「USニューズ・アンド・ワールド・リポート」誌は,「世界の食糧生産は……突如として縮小し,全地球的な危機を招きかねない形勢である」と述べました。つづけて二年,貧しい国々つまり食物が最も要求される国において食糧の生産が減少しました。国際連合食糧農業機関のA・H・ボエルマ理事長は次のように語りました。

「ただ一年だけの凶作であれば例外的な年と考えることもできる。しかし,二年も凶作が続くと……一時的な不運として軽くかたずけてしまうことはできない」。

1972年,世界の食糧生産は4%低下しました。1972年から73年にかけての冬,事態はさらに危機的な段階に達しました。1973年の春,「プログレシブ・ファーマー」(進歩的農業人)誌は,「われわれは世界的な食糧危機を迎えているか」という見出しを掲げました。同誌はそれに肯定の答えをして,事態を「高度に爆発的な」ものと述べ,さらにこうつけ加えました。

「これこそ,アメリカと世界の小麦および飼料穀物の状態を表わすのに適切なことばである。……

「『餓死』とか『集団飢餓』とかいったことばが何年来はじめて用いられるようになった。……

「数々の要素が突然に合一したのは近年ではかつてないことである。その結果には恐慌に近いものがあった」。

現在全世界的な規模で発展している事がらは幾年も前に予言されていました。その例はいろいろありますが,その一つとして,ウィリアム・パドック,パウル・パドック共著の「飢きん ― 1975年」という本は,世界の人口増加が食糧生産を上回っていること,1970年代の半ばに危機的な状態が予想されることを警告しました。1973年5月,ニューヨーク・タイムズ紙の一論説記事は次のように述べました。「1975年に対するパドック兄弟の預言は早くも1974年に現実のものとなるのではないかと思われる」。しかし,その兆候は1974年にならないうちにすでに現われているのです。

不足の原因

なぜ食糧の不足が生じているのですか。ほんの数年前,米や小麦の“奇跡の種”が登場した時,前途に対する希望が高く掲げられました。しかし同時に,世界の人口も“爆発”を続け,食糧がすでに不足していた国々において特に著しい人口増加がありました。どれほど“奇跡的な”米であるにしても,単位面積当たりの収量で養える人の数には限度があります。そして,人口が食糧よりもはやい速度で増加すれば,飢きんの到来は避けられません。

ついで,最近二年の間,激しいかんばつ,洪水,冬の悪天候,それに管理の不手ぎわなどのために生産量の減退がありました。特に激しい打撃をこうむった国の中にソ連があります。ソ連政府の一役員によると,同国の1972年における農作物収量は「過去100年間の最低」でした。ソ連は2,800万トンの穀物の買い付けを余儀なくされ,その多くを米国から買いました。

この買い付けや他の国々による買い付けに,米国内での需要の増大や天候の不順などの要素も加わって,米国政府の穀物準備は底をつきました。そして,現在の状態が近年の他の場合と異なっているのはこの点です。ニューズ・ウイーク誌はこう述べました。「このたびの食糧危機は,かつての膨大な余剰農産物 ― 米国をはじめとして世界のあるところに存在した ― が減退する時期に起きている」。シカゴ商品相場の一役員は,「ただで放出できるような穀物はもはや存在しない」と語りました。

危機を迎えている地域

アフリカにおいて危機的な事態が発展しました。アフリカ大陸を横断する幅約3,000キロの広大な地域が1973年に激しい飢きんを経験しました。

「サハラ西部および南部のかんばつ地帯では,600万人以上の人が餓死に直面している」― ニューヨーク・ポスト紙。

「ニジェール,マリ,チャド,オートボルタ,スーダンでは家畜の40%近く,そしてモーリタニアの場合には家畜の80%が死んだ。『道路にそって200ヤード(約180㍍)ごとに動物の死がいが転がっているところもある』と一外交官は述べている」― ニューズ・ウイーク誌。

欧州共同市場の一消息通のことばによると,アフリカのその地域一帯は「いまだにその規模さえはかりえないほどの災害」に直面しました。ある時点における危機状態はきわめて深刻なものとなり,国際連合の一役員は,「問題が二か月以内に解決されないなら,六百万人近い人が死ぬことになろう」と語ったほどです。

かんばつが大きな要因であるとはいえ,管理上の責任も見逃せません。家畜の数が急激に増えて牧草が食い尽くされ,緑を失った大地は荒れ地となったのです。

インドにおける食糧生産も,かんばつその他の要因によってここ二年の間減少しました。しかもその同じ二年の間に,人口はおよそ2,500万人も増加したのです。ニューズ・ウイーク誌は,特に影響をこうむっている地域において「およそ2億人のインド人が悲惨な飢きんの脅威に直面している」と伝えました。

食糧生産を追い越す爆発的な人口増加によって問題をかかえている国はほかにも数多くあります。こうした世界規模の危機に注目したニューヨーク・タイムズ紙は次のように述べました。

「国際連合その他の専門家たちによると,三つの大陸[アフリカ,アジア,ラテン・アメリカ]にいる合計8億人の子どもたちのうち,その三分の二は栄養不良の状態にある。六年前,国際連合は,『たんぱく質危機が差し迫っている』ことを警告したが,今日,問題の専門家たちは,その危機がすでに到来していると言う」。

明確な傾向

今日の傾向はきわめて明確です ― 世界の食糧生産は人口の増加についてゆくことができません。もちろん,この傾向が一時的に逆になることがあるかもしれません。そして,それぞれの国がこの問題を当座のあいだなんとか切り抜けているように思えることもあるでしょう。

しかし,世界が自らの必要とする食物をだんだん供給しきれなくなっていること,これが第一次世界大戦以来の全体的な傾向であり,わたしたちはこの事実から逃れることはできません。したがって,現在の体制下にあっては,一時的な安らぎの時期があるとしても,他のいっそう大規模な危機がその後に続くことは必至です。

しかし,食糧生産のための土地をもっと増やしたらどうなのですか。また,魚をもっと利用できないのですか。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はこう答えます。

「食糧の需要が年ごとに増大してゆく一方で,新たな耕作の対象となる土地はしだいに減少している。それだけでなく,放棄される農地が年ごとに増えているのである。それは自然の侵食による場合もあるが,他は高速道路,工場,住宅などによって侵食されてゆくのである。……

「食用[魚]のあるものは,乱獲の結果としてその漁獲量が減少している。海洋生物学者の中には,全世界の食用魚の漁獲がすでに維持限界にほとんど接近していると見る人が多い」。

こうして,科学技術上のあらゆる進歩にもかかわらず,人間は世界の食糧問題に対する解決を見いだせないでいます。世界人口が史上最高の速さで増加しているその時代にあって,問題はいっそう悪化しています。現在,この地上では,毎年7,500万人ほどの人が現実に増えているのです。

あなたは,現在のところは食糧供給に支障のない国に住んでおられるかもしれません。しかし,世界的な需要が増大するにつれ,そうした食物もしだいに高くなってゆくはずです。

このすべてはあなたに何を意味しますか。この世界が発展させてきた現在の体制が,食糧の供給という人間の最も基本的な問題を解決できないのであれば,それは,この地上に大きな変化の必要なことを示していないでしょうか。

しかし,以上は,この世界の向かう方向を示す数々の“標識”のうちの一つにすぎません。

経済の面で世界はどこに向かっているか

『世界を動かすのは金』という言いならわしがありますが,現在の世界の諸体制はまさにこのことばに従って組み立てられています。それは今日のわたしたちにどんな結果をもたらしていますか。

現代の国際経済は交互に入り組んだ複雑なしくみを持っているため,どこかの強国の通貨価値に急な落ち込みがあるだけで全世界の貿易が実質的にまひしてしまいます。貨弊価値の低落もしくは天井知らずのインフレが起きると,多くの人が貧窮状態に陥ってしまいます。ホートン・ミフリンの「貨弊と経済活動」という本はこう書いています。「1923年末のドイツにおいては,それよりほんの二年前に35マルクで手に入れることのできた物を買うために,なんと1,200,400,000,000マルクもの紙弊が必要であった」。中国の場合,わずか三年間(1946-48)の内乱を通じて貨弊の価値が大きく崩れ,勤労者たちは自分の給料として大きな札束をかかえて帰り,台所の火をつけるにも小銭が要るほどになりました。

今日の諸国の通貨にそのような危険はない,と言えるでしょうか。

あなたのお金はどれほどのものを買えるようになるか

あなたのお金の価値はどんな方向に向かっているでしょうか。もちろん食物の値段は上がりつづけています。しかし,他の項目,たとえば衣服,住居,燃料,電気,交通,そして娯楽などの費用についてはどうですか。

あなたはすでにその答えを知っておられます。どこの土地に住んでいるにしても,生活費はすべて同じ方向へ,つまり上へ,上へと向かっています。こうした物価の上昇傾向に何か終止のきざしが見えるでしょうか。

カナダにおいては,食物の価格だけで一年に11%の上昇を見ました。経済の安定した島地と考えられるドイツとスイスの両国さえ,そのインフレ率は8%に上っています。他のおおかたの国において,状態はさらに深刻なものとなっています。

地上で最も富んだ国とされてきた米国の購売力の低下にも著しいものがあります。1900年には1ドルで買えたものが今では5ドル出さなければ買えません。

チューリッヒの一銀行家はこう語りました。「目下全ヨーロッパにわたって根深いインフレ心理が浸透している。こうしたインフレ傾向を食い止めるため,たとえ景気の後退や失業率の上昇を見ることがあるとしても,思い切った処置が必要である」。

現在,世界的な“ブーム”とか“繁栄”とか呼ばれるものがあるとしても,スイスの銀行家が「これは前途の暗いブームである」と述べたのはそのためです。そして,USニューズ・アンド・ワールドリポート誌は,「このブームが,あまり遠くない将来に“破たん”に終わるのではないかという食い入るような不安が存在する」と述べました。

こうしたインフレが起きているのはなぜか

なぜこうした持続的なインフレーションが存在するのですか。最大の理由は,人々も国家も自分の収入の範囲内で生活をしていない,という点にあります。人々も国家も,『今手に入れて支払いはあとに』しようとして躍起になっています。結果として,歴史に例を見ない借金状態が現出しています。

したがって,今日の“繁栄”は多くの点で現実に基を置かないものです。それは借り入れた資金によってまかなわれているからです。月に十万円の収入のある人がさらに毎月十万円ずつ借りているのに似ています。確かに,しばらくの間は良い生活を送れるでしょう。しかしいつか,清算がなされねばなりません。その人は自分の収入内で生活して負債を返してゆかねばなりません。さもなければ破産は避けられません。

しかし当今,所得の範囲内で生活しようとする政府はほとんどありまん。政治家は自分の人気を保つことを求めているので,インフレを食い止めるに必要な処置をなかなか取ろうとはしません。借金をしても“繁栄”を推進してゆくほうが政治的に得策であると考えるのです。『次期の担当者に心配させろ』といった傾向があるようです。

しかし,政府といえども負債を払いきれない個人の場合と異なりません。政府にも破産状態は起こりえます。米国で発行されている「経済教育ブルテン」誌はこう警告しました。

「インフレ政策によって人為的にかもし出されたブームは健全な繁栄ではない。わが国の歴史にもそうしたブームが幾たびかあったが,いずれもその後に根深い不景気が続いている。“操縦された不換通貨[金などの実質資産による裏打ちのない紙幣]”の操縦者が健全で永続的な繁栄をもたらしたことは一度もない」。

破産状態

事態をいっそう悪くしているものは,西欧経済体制の基盤とされる米国の経済状態です。これまで何年もの間,米国は自国が得る以上の資金を海外で使用してきました。どうしてですか。「経済教育ブルテン」誌はこう説明します。

「まず第一に,何年もの間,米国政府は,自国が外国から受ける以上の米国通貨を支出し,また限度を越えた信用取引きを行なってきた。その大規模で過度に寛大とも言える対外援助計画により,また外国における大々的な軍事支出によって,外国の政府,中央銀行,また個人などに対して多くの負債を持つことになった。……

「第二に,米国は,著しい,そして長引いたインフレ状態を続けてきた。……それはすでに30年以上にも及ぶ。……それはまた[米国生産物の]価格の著しい上昇という結果になり,米国の加工業者の多くは世界市場での競争力を失うようになった」。

西欧諸国が第二次世界大戦後に設けた取決めは,国際間の債務は金によって決済をつける,ということでした。しかし,米国の海外における支出超過の結果として,1971年までに,米国手持ちの金よりも,外国債権者の所有する米国ドルのほうが6倍も多くなりました。それは,6,000ドルの負債をかかえながら,それを返済するための手持ち資産が,1,000ドルしかないのに似ています。しかも,その負債はしだいに増大してゆくのです。

ついで1971年の8月がやって来ました。その時,米国は突如としてその“金の窓口”を閉鎖しました。外部者の保有するドル紙弊に対して金を支払うという約束をほごにしたのです。しかし,人が前言を翻して自分の負債を返済しないと言いだすとすれば,それはどういうことになりますか。前記の刊行物はその意味をこう説明しています。

「金窓口の閉鎖は,米国政府が……国際的に破産したことを認めるのと同じことである」。

米国は世界史上最大の負債をかかえた破産者となりました。そして,1971年以来,事態はさらに悪化しています。1973年現在で,米国の対外負債は,同国の所有する金の価格の八倍から九倍に達しました。

問題を増し加えるもの

この傾向が改まって逆になる見込みがありますか。論説記事担当記者ジョセフ・オルソップはこう述べました。

「われわれを脅かすもの,いや現に始まっているものは,定常的な通貨危機であり,それはまた定常的なインフレによる危機を意味しているとも言えよう。

「現在の計画のもとでは,われわれのドルは,三年たっても,たいして価値のない現在の姿と変わらないであろう」。

大方の観測者の意見はこの点で一致しています。しかし,彼らにそうした結論を得させるものはなんですか。世界の多くの場所に“エネルギー危機”が存在するという事実です。これが特に憂慮されるのは米国です。その発見や生産よりはるかに速い勢いで石油が使用されているのです。その予備量が減少して行く一方で,需要は年ごとに急上昇しています。結果として,いよいよたくさんの石油を海外から輸入しなければなりません。それは,いっそう多くのドルを他の国で使わなければならないという意味です。

論説家オルソップは,近い将来に対するこうした経済上の展望を「ぞっとするもの」と評しました。幾らかの数字を検討すれば,わたしたちはその理由を知ることができます。1970年,米国は石油輸入のため外国に対して20億ドルを支払いました。1973年中には70億ドル以上の石油を輸入したものと思われます。1975年中にこの数字は150億ドルに達し,1980年までには300億ドルと急上昇し,その後はさらに増大するものと推定されています。すでに長年赤字となっている国際収支の上にさらにこのすべてが加わるのです。オルソップはこうつけ加えました。

「もとよりこうした数字はエネルギー危機をも物語っている。……しかし,多くの人の不便や幾らかの人々の大きな損失ということは,ドルの価値が絶えず収縮してゆく国家的悲劇に比べれば全く取るに足りない問題である」。

こうした事実に基づいてあなたはどのように考えますか。現在の世界の経済体制はそのかかえる問題を解決しうるでしょうか。それを期待し,現在の世界の経済体制に希望を託するのは安全なことですか。

現在の経済上の体制に重大な欠陥があり,それが崩壊しつつあることは,道理をわきまえた人の目に明らかです。事実,その現在の歩みは瓦解に向かっています。部分的な改善や一時的な安らぎが見られるかもしれませんが,近い将来に大々的な変化が起きることは明らかです。

実際のところ,この世界の経済体制は虚構の上に成り立っています。諸国家の経済は大きな負債,“超過支出”によって運営されています。その市民も同じことを行ない,信用貸しで物を買う傾向を強めています。こうして信用関係を終始拡張して築き上げてゆくのは,「カルタで家を建てる」のと同じです。その構造にはなんの強さもなく,少しでも圧力が加わればすぐに崩壊してしまいます。

あなたの身の安全については何が起きているか

どんな人も心配のない安全な生活を願っています。賊に襲われたり,自分の家が盗難に遭ったりすることを望む人はいません。婦人であれば,強姦に遭ったりするような事態を恐れるでしょう。正直で慎しみ深い人々とともに生活したいという願いはたいていの人に共通のものです。そして,すべての人が,生活の質の向上を願っています。

しかし,都市,町,田園地方は住みやすい,より安全な場所となっていますか。生活の質は向上していますか。

おとなの人でしたら,10年,20年,あるいはそれ以上前のことを考えてみてください。人の生命や資産はそのころよりも今日のほうが安全だと感じられますか。あなたは今日,人々に対する信頼感をいっそう深くしていますか。夜に戸口のノックを聞くとき,今のほうが安心してそれに答えられますか。

大多数の人は,現状がその逆であることを認めます。人々は,身の安全を脅かすものが,記憶に残るどの時代よりはるかに多いと感じています。

増大する危険

取締り当局者の提出する証拠はおおむね一致しています。地上のほとんどすべての国は,近年,犯罪や暴力行為の驚くほどの増加を経験しています。不法の傾向ははなはだしく強まって,わたしたちの時代の最も深刻な問題の一つとなっています。

尊敬される英国の歴史家アーノルド・トインビーの見解がウエスト・オーストラリアン紙に紹介されましたが,それによると,彼は,「一般的な正直さが明らかに衰え,共通の目的意識が失われた」と結論しています。同紙はさらにこう述べました。「国家は家族単位の道徳上のきずなおよび国家の道徳上の志向のいかんによって盛衰すると,彼は考えており,また,その両者が西欧世界において衰退していることを認めている」。

最も“進歩”していると見られる国々において,安全が最も速く失われています。カナダ,オンタリオ州ハミルトン市の警察当局者は,同国における犯罪傾向の高まりを『社会の道徳崩壊』に帰し,カナダを「病める社会」と呼びました。同じカナダのトロント市において,万引きをして捕まる人の数はほんの数年前の二倍になっています。しかし,トロント・スター紙はこう述べました。「盗みを働く買い物客や商店従業員の総数に比べれば,これはそのうちのほんの一部であろう」。同市の40の商店に対する防犯管理者は,「われわれはあらゆる人,医師も,弁護士も,判事の妻も捕まえた」と述べました。

英国においては,悪どい襲撃事件の増加が熟練の取締官を仰天させています。ロンドン警視庁の一刑事は暴力犯罪の急増を指摘し,今日の犯罪者が「全く冷酷であり,なんら悔恨の情を示さない」という点を述べました。デーリー・メール紙によると,ロンドン市においては,襲撃したのちに物を強奪する事件がわずか四年の間になんと129%も増えました。そして,デーリー・テレグラフ紙はこう伝えています。

「大法官ハイルシャム卿は……告発の対象となる犯罪行為が現在の割合で増大してゆくなら今日の司法体制はまもなく崩壊するであろうと言明したが,これに反論を試みる者はまずいないであろう……

「貧困こそ犯罪の原因というのがかつての進歩的な人々の大方の意見であった。それでは,繁栄が進むにつれ犯罪が増加しているこの事実はどうなのだろうか」。

米国においては,この十年の間に非常な規模の犯罪上昇を見ました。国のたいていの地域で,重犯罪の発生件数が人口増加の10~15倍の速さで増えています。ニューメキシコ州アルバーカーキの一市民は五年間に四回も夜盗に遭いましたが,その人はこう語りました。「わたしは要塞の中のキット・カールソンのような気持ちでずっと家に座っています。とこかの……よた者がわたしの家財の間をはいまわるのではないかと不安で家をあけられないからです」。

米国のほかの場所で,ある“厳重防犯”アパートの所有者は,「わたしたちは家具や壁の絵でさえボルトで留めねばなりません」と語りました。そうしたものでさえ非常に多く盗まれているからです。盗難防止の自動装置の販売と取り付けを請け負う一業者でさえ,自分のトラックから高価な装備を盗まれました。

ロサンゼルス・タイムズ紙は,犯罪統計が「さながら戦況報告のように思えるが,この戦いには停戦の見込みが全く見えず,アメリカ全土の町や都市を荒廃させている」と述べました。特に著しい増加を見せているのは,殺人,襲撃,強姦などの暴力犯罪です。

小さな町においてさえ住民の安全はしだいに脅かされています。バージニア州のある小さな町の一商店主は犯罪についてこう語りました。「小さな町においてもそれの増加していることがわかります。ほんの数年前までこのあたりに強盗事件などは決してありませんでした。ところが今では,そうしたことが少しも珍しくないのです」。

公式の犯罪統計には寒けを感じさせるものがあります。しかし,ニューヨーク・タイムズ紙はさらに次の点を明らかにしました。「ある分野では,実際の犯罪件数は被害者が正式に届け出たものの五倍にも達するであろう」。

諸制度の崩壊

こうした大々的な犯罪増加とともに見られるのは,人々が普通助けをあおぐ既成の諸制度そのものの崩壊現象です。政府,世界の宗教,科学などのすべてが犯罪の上げ潮を食い止めることができませんでした。安定した信頼できるものが何もないように思われます。大切な家族のきずなでさえ速い勢いで崩れようとしています。

例えば,昨年,米国においては,これまでで最高の83万9,000件の離婚がありました。結婚の二倍以上の速さで離婚が増加しているのであり,今では三組のうち一組の結婚が離婚に終わっています。こうした傾向は他の国においても見られます。ソ連での事情について同国の雑誌スプートニクはこう伝えています。

「ソ連において離婚の割合は増大しており,国の出生率および国民の社会ならびに経済生活面に重大な影響を与えている。……

「1950年当時,100組の結婚に三件の離婚があったにすぎないが,1960年にこの数字は10%にまで上昇し,1967年には30%に達した。……

「離婚を考えていない夫婦の中にさえ,家族のきずなが不安定であると感じている人が多い」。

社会の全般的な崩壊傾向を食い止めることを政府の指導者に期待することができますか。年を経るにつれて問題が増大していること自体,そうした人々が衰退傾向を抑ええないことを示しています。その上,自分たちの政治上の指導者に対する信頼感を失ってゆく人々が増えています。

そのため,米国共和党全国委員会のジョージ・ブッシュ議長は,最近のあるインタビューのさい,「どの政党にかぎらず政治家は腐敗しているという感情が国じゅうに広まっている」ことを認めました。これは世界のどこにでも見られる感情を端的に表わしたものにすぎません。政府当局者に対する尊敬心の低下は,一般の民の間の不法と無秩序の傾向を推し進めるものとなります。

科学や産業界の指導者も人類にとって真の意味の祝福となっていません。科学技術上の著しい進歩発展があったとはいえ,それは人間生活を総合的に見てほんとうに向上させたでしょうか。汚染,混雑して危険な交通事情,単調な機械作業,年々多額の費用のかかる大量破壊の恐ろしい兵器などに対して責任があるのは現代の科学技術です。テキサス大学の物理学教授が,「科学はわれわれを救えるか」との問いに対して,はっきり「否!」と答えたのも不思議ではありません。

宇宙開発上の目ざましい業績も,その効果はきわめて皮相的なものとなっています。こうした冒険的な企てが地上の問題とはなんの関係もないと感じる人が多くなっています。そして,投じられた巨額の資金についても,それは大方浪費であったと見る人が多いのです。そうした人々は,宇宙開発の偉業によって数々の偉大な益が得られたという主張にこたえて,ニューヨーク・タイムズ紙に次のように書いた人と同じように感じています。

「わが国の宇宙に対する投資が『経済を支え,国民の生活を向上させ,国家的威信を高め,国民の安全に寄与した』とのことである。

「どの点で実際にそうなのかを聞かせて欲しいと思う。経済は絶望的な状態にあり,われわれの威信は見せかけであり,生活は低下し,国民の安全は“過剰殺りくの力”に頼っているにすぎない。……われわれ“地上の民”は叫び,ただ叫んでいるのである」。

“野蛮状態への退行”

事実を直視するとき,世界の指導者のさまざまな企てにもかかわらず,人々の生活の質や安全がしだいに低下していることを認めなければならないでしょう。歴史家トインビーはこの点に注目して,『明らかに今日の文明は[野蛮状態への]退行の歩を進めている』と語りました。

そうした不安定さをよく物語っているのはタイム誌にのった次のニュースです。「専門家の一団は……抑うつ状態を『精神障害の最も一般的な形』と呼んでいる。この病気のために医者にかかるアメリカ人は毎年400万から800万人に及んでいる」。そして,不安定さの別の表われは心臓病の悲劇的な増加です。世界保健機関は,心臓病が世界じゅうにわたりがく然とするほどの勢いで広がっていることを発表しています。まもなく社会の何かが“崩れる”ことは明らかです。

[9ページの囲み記事]

経済問題の根本原因

「すべての人が,できるだけ多く得てできるだけ少なく与えること,商品の不足を画策して生産を阻害すること,そして正直で勤勉な働きに対する安易な代用物を見つけることに夢中になっているようだ。若者の間にも,工場や農山村の勤労者の間にも,そして,最も無気味なこととして政治を動かす人々の間にさえ,いたるところに抗争と不安動揺のしるしがある」― ザ・タイムス・オブ・インディア,1973年8月16日付 ニューヨーク・タイムズ,第10ページに引用されたもの。

[12ページの囲み記事]

楽観論の衰退

「19世紀当時,科学その他の進歩によって個人的にも全体的にもいっさいの悪弊がやがて除き去られるといううぶな楽観論が存在したが,今ではその片りんさえ影をひそめた。従来の確信がことごとく崩れつつある。文化もしくは文明は崩壊の過程をたどりつつあり,人類全体が自らの存在さえきわめて不確かなものであることに気づくようになった」― フランスの心理学者イニャス・レップ著「ラ・モール・エ・セ・ミステール」(死とそのなぞ)の前書きから。

[5ページのグラフ]

(正式に組んだものについては出版物を参照)

世界の人口増加

世界の穀物生産

+2%

0

−4%

1971

1972

結果: 穀物の供給はひとり当たり平均6%の減少

[4ページの図版]

どれだけの証拠があれば,人は自分が誤った方向に進んでいることを知るのでしょうか

[6ページの図版]

1ドル19セントで買えたもの……

1964年

パンとバター,7 3/4セント

果物,7セント

サラダ,16 1/4セント

飲み物,5 1/4セント

えんどう豆,5 3/4セント

肉,58 3/4セント

じゃがいも,2 3/4セント

デザート,15 1/2セント

1973年

肉,1.02ドル

デザート,17セント

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