世界展望
インフレ率
◆ アメリカの家庭は,昨年中に消費者物価が全体で5.7%上昇したことに驚きを感じている。しかし,他の多くの国の消費者物価上昇率と比べてみると,この数字はそれほど大きくはない。経済協力開発機構のあげた数字によると,ユーゴスラビアのインフレ率は途方もなく高く19.7%であった。ギリシャは13.1%,フィンランドとスペインは12.1%,日本は11.9%,イタリアは11.8%,英国は9.4%,オーストラリアは8.2%,フランスは7.4%,またドイツは7.2%であった。
広がる格差
◆ 歳月を経るとともに,個人の富は平均化する方向に向かっているだろうか。最近のニューヨーク・ポスト紙の一記事は次のように答えている。「1949年には,国民総数の1%が全国民の総合個人資産の21%を所有していた。1969年には,国民総数の1%が所有する個人資産は全体の40%であった」。アメリカにおける「持てる者」と「持たざる者」とのこうした格差の拡大は,世界の「先進国」と「開発途上国」とにおける国民個人所得の相違の拡大に匹敵する。
増強される軍備
◆ 最近の和平会談にもかかわらず,各国は引き続き莫大な量の軍事兵器を生産している。独立研究機関である戦略研究所の調査によると,アメリカとソ連は,1972年に締結した両国間の軍備協定で定められている制限ぎりぎりの兵器工場を建てる意図を持っているようである。アラビア諸国およびイランは1972年度の大量兵器購入国であった。アラビア諸国は現在180機の新鋭戦闘機を発注中である。イランの防衛費は2倍以上になり,20億㌦(約5,200億円)に達した。同じ期間に,エジプトは17億㌦(約4,420億円),イスラエルは14億㌦(約3,640億円)を出費した。同報告書は,119か国の戦略問題の実情を取り上げている。
跡を絶たない流行病
◆ アジアのある地域では伝染病が依然として跡を絶たない。世界じゅうの天然痘患者の80%はインドで発生している。カルカッタでは,1週間に324人の天然痘患者が発生した。世界保健機構の一当局者は,「この地域に天然痘があるかぎり,全世界がその脅威にさらされている」と語っている。インドではマラリアもまんえんしている。スリランカでは,マラリア患者が(1972年)10月の1万人から1973年1月の2万1,000人へと2倍になった。毎年,インド全体で150万人以上がマラリアにかかる。コレラと小児麻痺も流行している。
軍人の飲酒
◆ アメリカ陸軍アルコール・麻薬対策隊の部長は,ある上院委員会の席上で,将校の36%および応募兵の70%は大酒飲みか問題の酒飲みかのどちらかであると報告した。同部長は,4日以上続けて,毎晩5回酒を飲む人を大酒飲みとみなしている。問題の酒飲みというのは,酒を飲んだために他人と問題を起こす人のことである。この数字は,1万人に近い陸軍将兵を対象に行なった1972年の調査に基づいている。
米中貿易
◆ 当初,アメリカは1973年度中に4億㌦(約1,040億円)相当の品物を中国に輸出するものと考えられていた。しかし,インダストリー・ウィーク誌は,実際の輸出高はその倍になるであろうと報じている。なぜだろうか。それは主に,中国が大量の農産物を買い付けたからである。アメリカは中国からわずか6,000万㌦(約156億円)相当の品物を輸入しているにすぎない。
増える犯罪
◆ 米連邦捜査局(FBI)によると,1973年上期におけるアメリカの暴力犯罪は前年度の同期より4%増えた。そうした『暴力犯罪』は,殺人,強姦,強盗,および加重暴行の4種類に分類される。殺人は農村部で優に17%,郊外で8%増加した。また,人口百万以上の都市では12%増えた。
銀行強盗
◆ ニューヨークでは1973年の最初の8か月間に,200件の銀行強盗があった。これは,銀行営業日1日当たりおよそ1件の割合である。山手と下町の中間地区のある銀行は1日に2度も強盗に入られた。ある刑事はこう語っている。『銀行は非常にしばしば押し入られるので,次の強盗がはいるまで[ビデオテープ]カメラのフィルムを取り代えないですむほどだ」。市中銀行を襲う強盗の32%は逮捕されている。
僧職者によって容認された性倒錯
◆ キリスト教世界の僧職者は,聖書の教えに反して,相変わらず同性愛を認めている。オーストラリアのビクトリア・パークにある,オランダ組合教会の牧師M・ショーンメーカーは,自分が同性愛者同士の『結婚式』を司式することを再度正当化しようとしてこう語っている。「もしわれわれが,たまたまわれわれとは違うからといって,人びとに性の表現を禁じるなら,われわれは彼らに神の愛を示させないようにしていることになる」。聖パウロ・メソジスト神学校の哲学的神学のある米人教授も同様に同性愛を認めている。ザ・カンザスシティー・スター紙は次のように報じている。「[ポール]ジョーンズ博士は,聖パウロおよび他のクリスチャンの聖書記述者たちは,同性愛に反対の立場を取ったが,今日の世界情勢のもとでは,社会倫理が聖書の禁止令に取って代わった,と語った」。
男が男性になる
◆ 『同性愛をやめることはできない』ということが時々言われる。しかし聖書は,やめられると述べている。(コリント第一 6:9-11)ミシシッピ大学の総合医療センターが扱った最近の事例は,聖書の正しさを強力に裏書きしている。17歳のある少年は,少女そっくりのしぐさで歩いたり,話したり,立ったり,座ったり,服を着たりして,いわゆる『性転換者』の特徴を示していた。性転換手術も考慮された。しかし同医療センターの医師団は,まずそうした性癖をひとつづつ直していくようにその少年を教えた。同医師団の話によると,1年後の現在,その少年は「あらゆる面において男としての真の肉体的役割を果たして」いる。
教会と犯罪
◆ 教会は犯罪の抑制に役立ってきただろうか。アメリカ,テキサス州ダラスのユニタリアン派の牧師ビル・ニコルスによると,そうではない。ザ・ダラス・タイムズ・ヘラルド紙の一記事に答えてこう書いている。「われわれは次の事実を直視する必要がある。つまり,教会が犯罪率になんらかの影響を与えている,という主張を支持する統計資料は現在のところ何もないのである。州および連邦刑務所に収監されている犯罪者の属す宗教の割合は,一般社会におけるそれと同じである」。
同性愛に関するあるラビ(ユダヤ教教師)の見解
◆ ユダヤ人も同性愛を大目に見ている。アメリカ,オハイオ州クリーブランドに住むラビ,フィリップ・ホロビッツは,「現代の同性愛者は,自分の行為が不道徳と考えられていることに憤慨するだろう」と語っている。前述のラビにインタビューしたプレイン・ディーラー誌の編集長はこう語っている。「同意した2人のおとなが結ぶプライベイトな関係で何が生じようと,それは他人の知ったことではない,というのが彼の意見である」。同ラビは,(レビ記 18章に記されているような)ヘブライ人の律法は,同性愛が聖書記述者によって異教の偶像崇拝と関連づけられているゆえにそれを禁じている,と主張する。しかし,その同じ律法は実の姉妹と性関係を持つことも禁じていた。それも,異教の偶像崇拝という理由のみによるのであろうか。
英国の刑務所
◆ ロンドンのデーリー・メール紙の報道によると,1972年に各地で広く見られた騒乱行為の結果,同年は英国の刑務所制度上最も多難な年であった。同紙は,刑務所職員協会のある代表者の語った次のことばを掲載している。「われわれは,刑務所機構が完全に崩壊するわずか数歩手前にいるにすぎない。……昨年(1972年)の問題は,これから訪れる事態のいわばリハーサルであった,とわれわれは考えている」。定員を超えた旧式の刑務所と,最近変更が加えられた受刑者のスケジュールが問題の主因であると言われている。彼は,刑務所の職員たちについて,「われわれの士気はこれまでになく低い」と語っている。
人間に必要な「いつも見なれた光景」
◆ スカイラブ2号の乗組員は59昼夜以上を宇宙空間で過ごした。しかし,専門家の中には,それよりはるかに長い期間に渡って人間が地球を離れて生活する能力を疑問視する人がいる。そうした見解は,潜水艦の乗組員に起きたでき事に基づいている。長期の任務で岸から離れていると,乗組員は海生動物の物音を聞こうとして,ソーナー[水中音波探知器]の近くの場所を奪い合う。彼らは強度の偏執病にかかり,漏口を探がしてうろつき回る者も少なくない。陸上にいる時よりはるかに多くの取り越し苦労をする。乗組員の半数以上は,倦怠感を避けるために1日に12時間から16時間も眠る。性欲不満も高まる。「意識的に,または無意識に,彼らは,樹木や動物や日の出など,いつも見慣れた光景が見られないのを淋しく感じている」と,タイム誌は指摘している。
増産の続くタバコ
◆ ここ10年間に,タバコに関する警告やタバコ排斥運物はますます多くなってきた。しかし,タバコの生産は減少しただろうか。減少してはいない! 国連食糧農業機構によると,タバコの生産高は過去10年間に12%も増えた。同じ時期に,世界のタバコ貿易額は50%増え,10億㌦(約2,600億円)から15億㌦(約3,900億円)になった。タバコ貿易高のこうした増加の大半は,「開発途上国」においてみられる。
産児制限に関する意見の不一致
◆ 昨年の7月29日は,産児制限を禁じる教皇の回勅が出されてからちょうど5年めであった。この決定ほどカトリック教徒の期待を裏切り,分裂を引き起こしたものはないであろう。ナザレノ・フェブレッティ司祭は現状をこう語った。「ある聴罪司祭は『良心の許すかぎり,ピル(経口避妊薬)を使用してもかまわない』と言い,別の司祭は『もしピルを服用するなら地獄に行く』と警告している」。
席の奪い合い
◆ 最近のある夕方のこと,ニューヨーク市,イースト・セコンド・ストリートのあるビルの前のごみ入れの上にひとりの男が座っていた。その男がほんの少しの間席を立ったすきに,別の男がそこに座った。激しいけんかが始まり,ひとりの男は刃渡り10㌢のたたみナイフを取り出した。他方の男はいったんその場を離れ,今度は肉切包丁を持ってきた。ふたりの男は取っ組み合いのけんかになり ― 取るに足りない小さなことを争い合った結果 ― 一方の男が刺し殺された。