アルゼンチン北西部で猛威を振るった洪水
アルゼンチンの「目ざめよ!」通信員
「サンチアゴ・デル・エステロは現在豪雨に見舞われており……これまでに4人が死亡し,1,000人を超す人々が避難した」。去る2月12日の,アルゼンチン,ツクマンの新聞ラ・ガセタはこう報じました。2月の末までに,アルゼンチンの23の州のうち12州までがこの暴風雨の影響を被りました。そしてそのあとには,170人近くの死亡者,数百人に上る行方不明者,約10万人を数える避難者が残されました。
被災地では,交通・通信機関が寸断されただけでなく,資産や作物にも被害が出ました。サンチアゴ・デル・エステロ州の知事カルロス・アルツーロ・ファーレス博士はこう語りました。「今回の暴風雨は,わが州においてこれまでに類例のないものであった」。サルタ州でも,今回の洪水は“過去50年間で最悪”のものと言われています。
緊急援助措置
洪水の罹災者を救済するために大規模な活動が組織されました。市当局や州および中央政府の各機関は,救援,救助,防疫活動に総力を結集して当たりました。
被災地に住むエホバの証人はとりわけ,他の地域のクリスチャン兄弟の機敏な行動に感謝しました。アルゼンチンにあるものみの塔協会の支部事務所からは,どんな種類の援助を必要としているかを問い合わせる手紙が送られてきました。罹災者に分配するための寄付金も,チリにある協会の支部事務所に寄せられ始めました。被災地のクリスチャン兄弟を助けるためにどんな事ができるかを問い合わせる電話が他の地域のエホバの証人から続々とかかってきました。
クリスチャン兄弟たちの必要に答えるエホバの証人の反応は,実に力強いものでした。そうした援助があまりに多かったので,近くのツクマンの仲間のクリスチャンが物資の援助を申し出た時,サンチアゴのエホバの証人は,不足しているものは今のところ何もないからと言って,その申し出を辞退したほどでした。無料であるというだけの理由で,援助を求め,何でも,またどんな援助でも受け入れようとする一般の人々の態度とは,なんと異なっていたのでしょう!
人々の宗教的な態度に対する影響
中には自然の災害を,自分たちの罪のゆえにもたらされた神からの懲罰と,すぐにみなす人がいます。たとえばツクマンでは,「“サンチアゴの人々”は悪いことをしていたので,神から罰を下されたのだ」ということばをよく耳にしました。それに答えて,一人の宣教者はこう言いました。「しかし,すべての州に,また地球上のあらゆる国に悪い人がいることに同意なさいませんか。サンチアゴの悪い人だけを神が罰するとお考えになりますか。そのうえ,今度の大災害で被害を被ったのは悪人だけではありませんでした」。その宣教者はさらに,創造者であるエホバ神が邪悪な人間の住む全地をまもなく清めることについて聖書から説明しました。―詩 37:10,11。啓示 11:18。
エホバの証人は,「人類にとって時は尽きようとしていますか」という題の特別の冊子を世界じゅうで配布しました。そしてサンチアゴでは,その冊子は,洪水に襲われる直前の2月初旬に配布されました。水がひくとすぐに,土地のエホバの証人はその地域の人々を再び訪問しました。そして,洪水によって人々が聖書の音信をいっそう受け入れやすくなっていることに気づきました。
暴風雨の余波
幾つかの面については今回の暴風雨による被害の程度を算定することができますが,作物や土壌が被った被害によって生じる経済面の影響を,現時点で正確に定めることは不可能です。また完全に復旧するまでに,どれほどの労働や時間が必要とされるかもまだわかりません。サンチアゴでは,綿花の総収穫の優に65%(5万5,000ヘクタール分)が失われました。トウモロコシやサツマイモも,これに匹敵する被害を受けたものと見られています。
皮肉なことに,今回の豪雨によって,ふだんは乾燥して砂ぼこりの上がっていた郊外の地域に美しい緑のじゅうたんが敷きつめられました。激しい衝撃から立ち直って平静を取り戻そうと人間が懸命に努力している一方,付近ではやぎの群れがのんびりと休日を楽しんでいます。