あなたの衣服をいつまでも新しく保つ
口がないのにあなたについて常に“語って”いるものは何ですか。それは衣服です。そうです,あなたの持っている衣装は,自分自身および家族,果ては仕事に対するあなたの態度をさえ反映します。お金をかけたからといって,必ずしもきちんとした服装ができるわけではありません。大切なのは衣類を手入れする方法を知ることです。
人にどう見られるか以外にも,自分の服装に気遣うべき理由があります。それは,衣類が増々高価になっているという点です。新たに購入できる衣服の数もおのずと制限されるので,手持ちの衣装を良い状態に保っておくことがますます重要になってきます。
だらしのない服装をした人がいると思えば清潔感を与える小ざっぱりした服装をしている人もいます。きちんとした服装をしている人は,自分の衣服をいつまでも新しく保つためにどんなことをしていますか。
毎日の手入れ
衣服をよく手入れするための秘訣は,毎日の注意,つまり自分の衣服を正しく取り扱う習慣を培うことです。常にハンガーにかけるのは,最も大切な事柄の一つと言えるでしょう。積み重ねた衣服は,しわになり,必要な空気にもさらされません。掛けかぎやくぎに衣服をかけておくと,大抵は型が伸びてしまいます。
それで,単にハンガーを使うだけでなく,もう少し時間を使って,その衣服がまっすぐに掛かっているかどうかを確かめ,それから一番上のボタンかスナップを留めてください。中の衣服がどれもまっすぐに掛からないほど,洋服だんすの棒にいっぱいかかっているなら,調整を加えてください。もう一本,棒を取り付けることができるかもしれません。
上着や外とうなど厚手の衣服なら,ハンガーにかけてから,洋服ブラシか衣服用の小ぼうきで,特にえりのあたりを手早く払うとよいでしょう。また時折り,そで口やポケットの中にもブラシをかけてください。ブラシをかければほこりが衣服にこびりつくことはありません。まめにブラシをかけるなら,大抵の衣装を長持ちさせることができます。
セーターや他のあるものは,むしろハンガーに掛ける習慣に従わないほうがよい,注意すべき例外です。そうした衣類は,掛けておくと伸びてしまう傾向があります。それで,セーターを脱いだら,裏返しにし,開け放した窓のそばに置いて数分間空気にさらすのが最善です。それからもう一度裏返して元に返し,きちんと折りたたんで引き出しにしまいます。
もちろん,きちんとしまっておいても,それを着用している際に生じる問題を避けられるわけではありません。スパゲティーのソースを“はねかけ”てしまったことがありますか。あるいは,新調の白いドレスにチョコレート・アイスクリームをこぼしてしまったというような経験をお持ちですか。
そうです,衣服をいつまでも新しく保っておくのに大きな妨げとなるのはしみです。しみ抜きは,衣服の毎日の手入れの中に含まれるべきことです。しみを抜くには,しみが付いてすぐ,できればしみが乾く前が一番良いからです。
しみを抜くためには,しみの付いた異なった種類の生地から,特定のしみを抜く方法を知らねばなりません。この記事の別表には,種々の布地から,一般的なしみを抜く方法が示してあります。他の何をつけるにしても,まず冷水を試してみてください。それはしみが定着するのを防ぎます。(水洗いのできない繊維でも,少量の水なら傷まないものが少なくありません。)しみを抜く際には,軽くたたくのが最善です。
何かの種の溶剤を使わねばならないのでしたら,できるだけ少なめに使ってください。溶剤の霧を吸い込まないように注意し,その容器を子供の手の届かない所に置くようにしましょう。また,色物の布地に付いたしみを抜くのに溶剤や化学剥離剤を使う場合には,その前に,衣服の色があせてしまわないかどうか,縫い代のところにその剥離剤を一塗りしてみてください。
週ごとおよび季節ごとの手入れ
衣服には,汚れやしわを取るために,定期的な管理計画が必要です。どれほどの期間を置いて洗たくが必要かは,その衣類をどれほど着るかによります。しかし,大抵の家族は,週に一度の洗たく日が必要なことを認めています。それぞれの衣服の扱い方を知るために,衣服に付いているラベルをよく読んでください。それから,汚れた衣服を,ドライ・クリーニングの必要なもの,水洗いとアイロンの必要なもの,洗たくするだけでよいもの(“永久プレス加工”のしてある衣類など)の三つに仕分けするのが便利でしょう。
ドライ・クリーニングに出す衣類をまとめる際,すり切れた部分,ボタンの取れた箇所,小さな破れなどがないかどうかを調べてください。その時に修繕してしまうか,でなければ後で直すことを忘れないようにメモをしておくようにしましょう。さらに,「衣服の手入れ」と題する本の中で,マーガレット・ハンソンはこう述べています。「しみがあれば,それぞれのしみの種類を紙に書き,その紙をしみの付いている箇所にピンで止めておいてください。そうすればクリーニング屋は,どんな方法でしみを抜いたらよいかが分かります」。
洗たく機を使うにしても,手でするにしても,自分で洗う衣服について言えば,まず,しみをすべて抜いておくことが必要です。それに加え,繊維の強さを損なわないように気を付ければ衣服が長持ちするという点を覚えておくとよいでしょう。そのための秘訣が二つあります。まず,手で洗う場合には,衣類を穏やかに扱い,余り強く絞ったり,ねじったりしないことです。第二には,石けんや洗剤を全く流し去るため,十分にゆすぐことです。
ドライ・クリーニングが必要だと考えていた衣服でも,注意深く扱うなら,実際には家庭で洗えるものもあります。例えば,洗たくしなければならないウールのセーターを取り,それをきれいな紙(新聞紙ではなく)の上に広げます。その紙の上に,手早くセーターの輪郭を描きます。それから,特別な冷水用の石けんの入った冷たい水か刺激性の少ないあわ立った石けん水を入れたぬるま湯につけて洗うことができます。同じ温度の水の中で二,三度ゆすいでから,そっと水分を絞り取り,さらに水分を取るために,そのセーターをタオルでくるんでください。それから,先程描いた輪郭に合わせて紙の上にセーターを置き,熱や太陽光線の当たらない場所で乾かします。
もちろん,いくら衣服が清潔であっても,しわが寄っていたのでは,よい身なりとはみなされません。洗たくの度にアイロンの必要な衣類も少なくありません。ところが,しばしばプレスしなければならない衣類もあります。クリーニング屋に出す代わりに自分でプレスをすれば,かなりの節約になります。プレスをするのとアイロンをかけることの違いは,プレスの場合,布地の上にアイロンを滑らせるのでなく,アイロンを持ち上げて布地に“押し付ける”と言う点にあります。これは大抵の場合,衣服の裏側になされますが,当て布を使えば表側にもプレスをすることができます。
衣類の季節ごとの手入れで主に問題となるのは,今度着たいと思う時にいつでも着られる状態にして,衣類をきちんとしまっておくことです。かぎとなるのは,(1)乾燥していて清潔な保管場所と(2)しまう前にすべての衣類を洗たくすることです。イガ(衣蛾)は,汚れた毛織物を好み,白カビ(微細な植物)は,高温多湿な場所を好みます。また,のり付けをした衣服には,そうでないものよりも早く白カビが生えるので,しまう前にのり付けをしないほうがよいようです。しまう予定の衣服をドライ・クリーニングに出せないなら,次善の策は,その衣服を十分空気にさらし,内側にも外側にもブラシをかけることです。そうすれば,イガの卵や幼虫をブラシで払い落せるからです。衣服をしまう際,できればいつも密閉した箱,袋,引き出しなどに入れてください。
しかし,次のように考える人もいることでしょう。『そうした注意事項すべてを実行したとしても,衣服はほころびたり,古くなってやがては着られなくなる』。確かにそのとおりですが,傷んだ衣類や古着をすぐに捨ててしまわないようにしてください。
修繕と仕立て直し
独身の男子も含め,だれでも衣服の簡単な修繕の仕方を学ぶことができます。小さな破れがそれ以上大きくならないようにするなら,高価な衣服をむだにしないで済むでしょう。継ぎの当て方や布地の織り直し方に関する本を置いている図書館も少なくありません。また,どんな仕事でもそれに適した道具が必要ですから,裁縫道具の箱やかごを備えておいてください。いつも余分のボタンをその箱の中に入れておきましょう。当然ボタンが付いているはずの箇所に安全ピンが付いているのは,確かに見た目によくないからです。
しかし,ひどい破れやどうしても取れない目立つしみなどはどうすればよいでしょうか。そんな時,あなたの創作力が試みられることになります。特に婦人服について言えば,それは比較的簡単に行なえます。例えば,三角形または他の形の一連の布地をドレスの前に縫い付けます。その際,その三角形のうちの一つが,破れやしみを覆うように縫い付けるのです。
同様に,大抵最初にすり切れたり汚れたりするのは,衣服のえりです。そのえりをはずしてしまい,その衣服に合った別のデザインのえりを作るか,共切れを使って新しいえりを付けるかしてはいかがですか。そうすれば問題を解決できるだけでなく,その装いに新たな趣を加えることになります。
ひとたび可能性を研究してみると,変形の種類は限りなくあります。長そでのシャツは半そでに直すことができます。古いドレスは,スカートやジャンパー・スカートに変えることができます。すその部分にしみの目立つドレスは,すそを切り取ってブラウスに作り変えられます。スカーフやベルトや装飾用のピンなどの新しいアクセサリーが,それほど新しくない衣装に与え得る効果を小さく見てはなりません。それをあなたの創作力に対する挑戦とみなし,思い切って試みてみるなら,元の服よりも“作り直した服”のほうが自分の好みに合っていると思われるかもしれません。
自分の持ち衣装を調べて,どの布地が一番長く新しいものと変わらない状態に保っているかに注意してください。それから,買い物に行った時には耐久性に重点を置いて衣類を買ってください。
さらに,何を着ようかと過度に思い煩うのは賢明でないとはいえ,大抵の場合,自分が口を開いて語る前に,自分の衣服がすでに“語っている”ことを忘れないようにしましょう。りっぱな服装をした人は,一般に他の人々から普通以上の尊敬と配慮を受けます。それは,自分の衣服に注意を払う,一層の理由となるでしょう。
[22ページの図表]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
一般的なしみ抜きの方法
種類 水洗いのできる布地 水洗いのできない布地
血液 水かぬるま湯に浸す。洗剤で洗い,ゆすぐ。 水を含ませたスポンジでふく。
必要ならば,血痕の上にアンモニアを数滴 血痕が残るなら,その所に
たらして,もう一度洗う。 洗剤を付けて,ゆすぐ。
チューイン・ガム
氷で冷やし,ガムを取り除く。 氷を油紙かビニールで包む
跡が残るなら,ドライ・クリーニング溶剤 以外は同じ方法。
(パークロルエチレン)をスポンジに
含ませてふく。
チョコレート 水かぬるま湯で処理する。しみが乾いて 同じ方法。
いれば,刺激の少ない洗剤とぬるま湯を
含ませたスポンジでそこをふく。
コーヒーや紅茶
水に浸してから,湯に浸し,洗剤で洗い, 水を含ませたスポンジでふき,
ゆすぐ。 洗剤をつけ,しみの付いた所を
ゆすぐ。コーヒーや紅茶に
クリームが入っていたなら,
ドライ・クリーニング溶剤を
使う。
インク(ボールペン)
油,口紅(大抵の化粧品)
ドライ・クリーニング溶剤をしみの上に ドライ・クリーニング溶剤を
つけてから,布切れを使って,できるだけ 浸み込ませたスポンジで,
しみを吸い取る。溶剤が蒸発するのを 注意深くふき,布切れを使って,
待ち,液体洗剤を含ませたスポンジで できるだけしみを吸い取る。
ふき,よくゆすぐ。
ペンキ(油性)
ワニス
しみが付いたばかりの時には,洗剤を テレビン油を含ませたスポンジ
すり込んで洗う。しみが乾いているなら, (布地が傷まないなら)か,
テレビン油かシンナーを含ませた ドライ・クリーニング溶剤を
スポンジでふき,しみがぬれているうちに 含ませたスポンジでふく。
洗剤をすりこみ,一晩熱い湯に浸す。
もう一度洗う。