ものみの塔 オンライン・ライブラリー
ものみの塔
オンライン・ライブラリー
日本語
  • 聖書
  • 出版物
  • 集会
  • 目76 5/22 13–17ページ
  • わたしたちの食べるパン

視聴できるビデオはありません。

申し訳ありません,ビデオをロード中にエラーが発生しました。

  • わたしたちの食べるパン
  • 目ざめよ! 1976
  • 副見出し
  • 関連する記事
  • グルテンと呼ばれる物質
  • 酵母菌から始まる
  • ご覧なさい,パンの生地が膨らみ始めました!
  • さらに観察し,こねる
  • 成功と満足の時
  • 「我らの日用のパン」
    目ざめよ! 1992
  • パン,I
    聖書に対する洞察,第2巻
  • 日ごとのパンをお与えください
    目ざめよ! 1973
  • 命のパンを味わったことがありますか
    エホバの王国を告げ知らせるものみの塔 2014
もっと見る
目ざめよ! 1976
目76 5/22 13–17ページ

わたしたちの食べるパン

アルゼンチンのブエノスアイレスのあるレストランでは,おなかをすかしたお客の見ている前で,イタリア系のブエノスアイレス人が,ピザを作るために円形の平らなねり粉を何度もほうり上げては受け止めます。レバノンの主婦は,同じような円形の平らなねり粉を両腕で交互にはじき,その度に回転させながら円い形を整えています。メキシコでは,若い婦人がトーチラス(とうもろこしパン)の円形のねり粉を手のひらでたたいて平たくします。遠く離れたインドでも,同じようなことが行なわれています。

さらに異なっているのは,エチオピアの料理人がインジェラスと呼ばれるパンを焼く際に用いる方法です。エチオピアの料理人は,焼き板の上にひしゃくから,どろどろした生地を円形に注ぎ,その輪の内側を左巻きでさらに注いで,だんだん小さな円を描いてゆきます。欧米の料理人は,ふっくらとした,ねり粉の塊を上から押さえ,それが再び“膨らむ”のを見守ります。中国の主婦は,それと似たような塊をこね,それを“寝かせ”ます。

人々が毎日食べる幾百種類ものパンを作る方法は多種多様です。

前述のパンの中には,出来上がりが平たいものであっても,発酵させる原料,つまり生地を膨らませる物質の入っているものもあります。しかし,とりわけ小麦粉の生地を膨らませるのに適しているのは酵母菌です。

グルテンと呼ばれる物質

小麦粉にそうした特徴があるのはなぜですか。それは小麦粉の中に含まれるグルテンの量によるのです。辞書を見ると,グルテンは次のように定義されます。「粘り気があり,腰が強く,弾力性に富むタンパク質物質で……パンの生地にガスを保持する能力と粘着力を与える」。この定義は,グルテンが何であり,どんな働きをするかを非常に簡潔かつ核心を突いて要約しているといえますが,神の定めたすばらしい化学作用は,グルテンの中で,そしてわたしたちの手にしているパンの生地の中で目に見えずに進行しているのです。

わたしは戦場のような所で,グルテンに初めて出合いました。わたしが新婚早々,初めてパンを作ろうとした際台所はまさに戦場のようでした。わたしは,パン種が入っているのに,かさが増えず,かえって減ってしまった傑作ともいうべき代物を手にしていたのです。こうして出来上がったのは,エジプトのファラオがライ麦でできたれんがを探していたならきっと大歓迎したであろうと思えるようなものでした。

その後何回か試みてみた結果はそれほどひどいものではありませんでしたが,高価な材料を使う際に求められる質の良さや確実性の点ではまだまだでした。わたしの失敗は,パンを焼くのは外国語を学ぶようなものであるということを悟るまで続きました。わたしが次のように言うと,パン焼き職人は当惑するかもしれません。言語を学ぶ際に,ある時点まで行くといちいち翻訳するのを止めて,新しい言語で考えるようにならねばならないのと同様,パンの場合も材料を量るのを止めて,勘を働かせねばなりません。材料は場所によって異なり,非常に大切なこととして,粉の湿り気や化学的組成がたいへん違う場合があるので,かさで量っているとひどい結果を招きかねません。

例えば,米国で手に入る材料を使って,本場のフランス・パンの作り方にそのまま従ってフランス・パンを焼くなら,セーヌ河畔の町で得られるようなおいしいパンとは似ても似つかないようなパンが焼き上がるかもしれません。有名なコック長ジュリア・チャイルド女史とその仲間サイモン・ベックは,米国の粉やパン種に適したフランス・パンの焼き方を説明するのに11ページを割いています。それに加えて6ページ,合計17ページがフランス・パンの焼き方を様々な角度から説明するのに費やされています。わずか四種類の材料を用いて作る製品の作り方を説明するのにそれほどのページ数が必要だったのです。しかもそのうちのひとつは水なのです。ところが,その化学作用は非常に微妙な釣合いを保っているので,そうした指示に従わないなら,ノルマンジーからプロバンスにまでその名をとどろかせる本場のフランス・パンの味やきめの細かさは出せません。

確かに,重さを注意深く量れば,非常に微妙なきめの細かさや味を出せるかもしれませんが,大半の人が必要としているのは,味がよくて,かなり日持ちし,確実に焼き上がる,栄養価の高い日常のパンの作り方です。注意を一言。このパンはかなり手早く作ることもできますが,ジュリア・チャイルドが酵母菌を使う製品に関して注意を促しているとおり,十分に発酵させないなら,せっかくのおいしさを出し損ないます。ですから,わたしは可能な限りいつでも,パンを焼く前の日からパン作りに取り掛かります。また,時間と材料が許す限り,低い温度で発酵させます。

今この時点で,わたしたちの前には,粉,酵母菌,砂糖,塩,牛乳一かん,そして少量の植物油や溶かしたバターがあります。わたしたちが作ろうとしているパンに必要な材料はこれで全部です。もし手元に砂糖がなかったり,油が手に入らなかったりすれば,それらはなくてもかまいません。いざという場合には塩がなくても作れます。味は落ちますが,栄養はあります。どうしても必要なものは,粉と酵母菌,そして一かんの牛乳もしくは他の液体 ― 水でもよい ― だけです。しかし,すべてのものがそろっていると考えて,今からパンを作ることにいたしましょう。

酵母菌から始まる

わたしは実際に分量を量りません。そしてこの作り方は,はかりを用いないように教えることを目的としています。しかし,あなたは実際にわたしの家の台所にいるわけではありませんし,小さじ一杯と1㍑ではかなり違いがあるので,“おおよそ”の見当がつくように,大体の量を示すことにします。一カップほどのぬるま湯に,小さじ約一杯の砂糖と,ドライ・イースト一袋か酵母菌一塊を入れて溶かします。

この作り方を示す際に,一つ一つのことを行なう理由を説明することにします。お気付きでないかもしれませんが,酵母菌を水に入れると同時に,あなたは菜園に種を植えたようなものです。そうです,小さじ一杯の砂糖はその菜園のための“肥料”です。こうして出来たベージュ色の“スープ”をご覧になるとき,実際には,目に見えない顕微鏡的な植物の繁殖を見ていることになるのです。次に,粉を十分に加えてそのスープをどろどろにします。こうして,糧となる実質のあるものが与えられ,その結果,酵母菌の数は著しく増加します。しかし,同時に,目に見えない別のドラマも始まったのです。

それは,グルテンと酵母菌の結合です。水が酵母菌を活発にさせ,繁殖を促したのと同様,水は粉からグルテンを遊離させ,遊離したグルテンは微細な糸を伸ばしてゆきます。その際に材料をかき混ぜれば,その作用を早めることができます。また,専門的な見地からではないにしても,例証的にはこの時から共生関係が始まります。共生関係とは何ですか。それは,二種の異なった生物が,相互に依存し合って生きて行くことです。

では,これを暑すぎず,寒すぎない所へ置いておきましょう。お望みなら,この小さな“菜園”を幾日でも続けることができます。もっとも,それには“養分と水”をやらねばなりません。それを酸っぱくさせたり,培養液にバターミルクを使ったりして,それをいつでもパン種として用いられるようにすることもできます。a

酵母菌を入手するのが難しいようなら,毎日パンを焼くためには,そうしたパン種を多目に“培養”しなければなりません。ですから,十分の量が得られるまで一定の期間,液体や粉を加える(つまり,「養分を与える」)とよいでしょう。後で使うためにパン種を少し残しておきたいなら,培養したものを少なくとも一カップは使わねばなりません。しかし,一回だけ焼くという前提のもとに話を続けてゆきましょう。最初の15分間にあわが見えることがありますが,それは酵母菌が生きていて,前述の事柄が進行している証拠です。数時間そのままにしておきたいなら,あるいは床に就きたいなら,1カップないし1カップ半の粉をその中に入れてかき混ぜます。“のり”よりも固くなるなら,水を少量加えます。温かくしすぎたり,塩を入れすぎて酵母菌を殺したりしないなら,ここまでの段階では失敗する可能性はほとんどありません。塩を入れるようにと言わなかったのはそのためです。

ご覧なさい,パンの生地が膨らみ始めました!

時間がたつにつれて,パンの生地が膨らむのに気付かれるでしょう。その成分が両方とも繁殖しているからです。グルテンは驚くべき細胞の網に成長し,生きた微生物が天然に作り出す副産物を捕えます。生きている人間の肺が出す副産物は炭酸ガスです。活性化した酵母菌の副産物もやはり炭酸ガスです。ですから,上にも横にもするすると伸びたグルテンの巻きひげは,生きた酵母菌の発散するガスを包み込むのです。

その塊がボールの中で元の大きさの二倍に膨れたら,上から押さえながらかきまぜ,扱いやすくするために十分の粉を加え,昔から世界中のパン焼き人が行なってきた作業を開始します。つまり,パンの生地をこねるのです。それは自然に身に着くものです。手のひらの付け根をよく動かし,前にあるパンの生地を指で手元に持ってきて,塊を回転させながら調子よく上から押し広げてゆきます。内部では何が起きているのでしょうか。塊をこね,グルテンの糸を伸ばすのを助けることによって,グルテンの働きを刺激しているのです。こうして,生地は粘り強くなります。それは,つづれ織を強めるために,縦糸にもっと多くの横糸を織り込むのに似ています。

中国のパン,つまり饅頭<マントー>を作る際,中国の主婦も酵母菌を使って,生地の中の膨れる力を活用する場合があります。しかし,別の種類の饅頭を作る方法として,中国人の母親は娘に生地を“寝かせる”よう教えたことでしょう。なぜですか。中国では天火を使わないからです。ですから,饅頭を含め中国のパンは蒸して作られます。蒸しパンも柔らかくしたいので,生地を“寝かせ”グルテンの巻きひげの成長をゆるめ,衰えさせ,遅らせます。こうして“竜”のようなグルテンは眠りに就きます。中国人の主婦は,発酵を休止したパンの生地を,手早く,そして手際よく花形のロールに整え,それを蒸し器の中へ入れます。数分すると,西洋で言えば,ふわふわしたゆでだんごとパンの合いの子のようなものが出来上がります。それはとてもおいしいものです。

グルテンを刺激したくないというこの同じ願いから,ベーキングパウダーで作る小型パンなどの作り方には,「そっと扱うこと」という注意書きが付されているのです。そうしたパンを焼く人は,材料を混ぜ合わせるのに必要なだけ,フォークか指でそっと生地を扱います。それは,ふわふわしていると同時にまた“さくさく”した,崩れてしまいそうなほど柔らかいものを焼き上げるためです。

さらに観察し,こねる

さて,酵母と粉と砂糖を混ぜ合わせたパンの生地にもう一度注意を向けましょう。生地を幾らかこねたなら,残りの材料を全部入れてはどうでしょうか。標準的な370cc入りのかん入りミルクを注ぎます。小さじ一杯の塩は,このミルクの中に入れても,これから生地に加える約4カップの粉の中に加えてもかまいません。粉の量は,3カップ半から5カップまで入れても大丈夫です。ここで,大さじ3杯の油または,溶かしてからさましたバターを入れるとよいでしょう。これは,焼き上がったパンを長持ちさせます。油の量は少し多くてもかまいませんし,全くなくても大丈夫です。しかし,ここで分量がはっきり決められているのはミルクだけであることに注目してください。丸い塊ができるまで,ゆっくりと粉を加えてゆき,さらに加え続けます。やがてパンの生地がくっつくようになりますから,ボールから出して,粉を敷いたパンこね台の上に出します。いよいよパンの生地に取り掛かり,それをこねます。そして,こねながら粉を加え,生地の中に包み込んでゆきます。その際,塊の中のグルテンに何が起きているかを絶えず考えてください。そうすれば,こねるのを早くあきらめないで済むでしょう。(エジプトのライ麦でできたれんがの話を覚えておられるでしょう。)

実際,どんな方法でパンを焼くにしても,判断力が必要とされます。そうした作り方を読んでみると,「なめらかで,弾力性が出るまで」というようなことが書かれていませんか。それがこつです。パンの生地をよく見てください。パンの生地の中に相当量の粉を入れても,まだ水分があってねばねばとしているように見えるでしょう。しかし,パンこね台にその塊を押さえ付けるあなたの手の動きだけで,ある時点までゆくと変化が生じます。表面はなめらかになり,弾力性が出てくるのを感じるでしょう。生地は,その内側を開いてみても,もはやのり状ではなく,外側と変わりありません。一つにまとまっていて,粘着力があるため,引っ張ってもなかなかちぎれません。生地のこの感触を知ったときから,その日からずっと,分量をいちいち量らずに……この種のパンを作れるようになるのです。パン作りのこつは,ある材料をどれほど入れるかを正確に知ることではなく,なめらかで,弾力性のある階段にいつ達したかを知ることです。そして,このことを知っていれば,時と場所によって材料の質が異なっていても,問題とはなりません。

ボールに油を少し注ぐか,塗るかし,パンの生地をボールの中に入れて転がします。こうすれば,パン生地の塊は,油で薄く覆われます。そして,ボールに布をそっとかぶせ,生地が二倍に膨れるまで待ちます。上から押さえ付けてから,少し生地をこね,それから,油を塗った二つの焼き型に入れます。生地が隅々に行き渡るようにしてください。そうすれば,それが膨らむ際に持ち上げる力となります。生地の上に油を塗り,二倍に膨れ上がるまで待ちます。

基本的で,信頼のおける“勘”をつかんだら,様々な種類のパンを焼いてみたいと思われるでしょう。しかし,どんな種類のパンを作るにしても,パンを作る際に,自分が“菜園”を作り,“織物”を織っているのだということを忘れないでください。ピザ職人が円形になったピザの生地をほうり上げるのは,見ている人を楽しませるという目的もありますが,その上に材料を並べて供するため,堅い生地にグルテンの糸を織り込むためなのです。最初に述べたレバノン人の婦人も,同様のことをしていたのです。

成功と満足の時

さて,いよいよ,台所で行なうパンの奇跡を,最初にご家族と分かち合う時が来ました。それは,パンを食卓に供するときのことではありません。それは,180度に熱した天火にパン生地を入れたときのことです。その香りはまず台所に広がります。それは,深い幸福感を味わわせる香りです。光沢のある外皮をお望みですか。では,上にバターを塗っておきます。分厚い外皮をパリパリにしたいと思われますか。そうであれば,パンと一緒に水を入れた平なべを天火の中に入れるとよいでしょう。平なべを天火の最下段に入れれば,その蒸気が保護膜となってパンを包むのです。40分か50分すれば,パンは焼き上がるはずです。パンを焼き型から出し,パンの底をたたいてみます。中がうつろになっているような音がすれば,出来上がりです。

パンには非常に多くの種類があり,水の中で発酵させるものや,ドーナツ型堅ロールパンのように,焼く前に二分間ゆでるものもあります。エチオピアのパンであるインジェラのように,材料の一部が調理されてから生地を作るのに用いられるものさえあります。天火から,または火から出したばかりの焼き立ての熱いパンを勧められたら,「いいえ,結構です」と言うことだけはとてもできません。ですから,お好みのパンが,ピザ,ピティ(シリア語かアラビア語で“小型パン”の意),チャパティ,トーチラス,インジェラ,あるいは饅頭のいずれであっても,あるいはベーキングパウダーで作る小型パンやノルウェーのフラットブレッドであっても,自家製のパンを作ってみてください!―寄稿

[脚注]

a 詳しくは,1968年12月8日号の「目ざめよ!」誌をご覧ください。

    日本語出版物(1954-2026)
    ログアウト
    ログイン
    • 日本語
    • シェアする
    • 設定
    • Copyright © 2025 Watch Tower Bible and Tract Society of Pennsylvania
    • 利用規約
    • プライバシーに関する方針
    • プライバシー設定
    • JW.ORG
    • ログイン
    シェアする