攻撃にさらされる教師たち
教師失格といわれても仕方のない人もいれば,身代り<スケープ・ゴート>にされる人もいます。いずれにしろ,みんな深刻な職業上の危険にさらされています。
「息子や娘が読み書き,算数ができないのは,教師たちができないからだ」。これは昨年ウォール・ストリート・ジャーナル紙が上げた大々的な非難の声です。同紙はそれを支持する幾つかの例を挙げています。ニューオーリンズでピケを張った教師たちの掲げた立て看板には,「人普みの賃金を求めてストライキ中」と書かれていました。バージニア州では,3年生用の印刷された学習の手引きに,「孝古学者はその彫刻からどんな事を知りましたか」という質問が見られました。アラバマ州の一教師は,一人の親に次のようなメモを送りました。「スコットは全く宿題に合確しません。詩を暗唱してくることになっていたのに,そうすることに失杯しました」。別の筋からの話は,一人の女の子が涙を浮かべて家へ帰って来たことについて述べています。書き取りのテストで正しく“花盛り”と書いたのに,教師はそれを直して,“花咲かり”としたのです。
すべての教師がそうだというわけではありませんが,教師の能力不足は全米的な規模に及んでいます。結果として,多くの州で,新任教師に様々な資格試験を受けさせようとする圧力が生じています。教職員組合の幹部の中には,教師たちはテストの得点の全米的な低下のために,その罪を負わされている,と抗議する人もいます。この抗議は妥当なものと言えます。公立学校の多くが成果を上げていないその背後には幾つかの要素があります。また,有能な専門家としての能力を備えた教師も少なくありません。しかし,そうではない人も大勢おり,そのような教師をふるい落とすためのテストは正当なものです。
もっとも,これらのテストは基礎的な教科に関してさえ,難しいものではありません。ニューヨーク・ポスト紙は,それを「子供のお遊びにすぎない」と決めつけ,「一研究調査によると,市立学校の教師志願者を対象にした国語の筆記試験は,至極容易にパスできるので,高校生でも,求職している大人たちとほぼ同じほどの成績を上げられるほどであった」と述べています。
職業上の危険
産業労働者で,20年か30年後に死をもたらす発ガン性の化学物質にさらされている人は少なくありません。教師の多くは,その場でけがをし,時には死ぬこともあるような危険にさらされています。米国の国立教育研究所の推定によると,毎月,中学や高校の教師5,200人が暴力をふるわれ,6,000人が強奪に遭っています。毎月,その生徒たちのうち約28万2,000人が暴行を受け,月々,11万2,000人が強盗に遭っています。暴行の多くは,生徒ではない侵入者によるものです。
US・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌の1979年5月21日号は,暴行の幾つかを特に取り上げ,次のように述べています。
「自分の担任する二年生のクラスの前で,カリフォルニア州の一女性教師は侵入者に銃をつきつけられて服を脱がされ,それから性的暴行を受けた。侵入者は出て行くときに,この女性の服とハンドバッグを奪って行った。子供たちは,自分たちのセーターや上着で先生を覆った。
「ニューオーリンズの一教師は,二人の少年が自分たちよりも幼い子供を二階のバルコニーから投げ落とすのを指をくわえて見ていた。この女性教師は,手出しをすると自分が少年たちに襲われるのではないかと考えて,中に割って入るのを恐れたのである。
「ロサンゼルスのある女子高校生たちは,自分たちの成績が悪かったことに腹を立て,火の付いたマッチを教師に向かってほうり,その女性教師の髪に火を付けた。その後,教師は感情的な虚脱状態に陥った。
「バージニア州アレキサンドリアで,破壊行為を働く生徒たちは,高校の駐車場に止めてあった警察の車のタイヤをめった切りにし,図書館の壁に麻薬の落書きをし,学校の正門をもぎ取り,窓ガラスを壊し,ノリでじゅうたんを台なしにし,喫煙所で爆発物に火を付け,学校の金網べいに大きな穴を開け,廊下にモーターオイルをまき散らし,パイプ・カッターで学校の旗ざおを切り倒し,その旗ざおを校長室の窓へ突っ込ませた。その後学校は,放火と見られる壊滅的な火事に見舞われ,閉鎖された。
「テキサス州オースティンで,前ホワイトハウス報道官ジョージ・クリスチャンの13歳になる息子が,30人の級友の前で半自動式ライフル銃を使って国語の教師を射殺した。その教師は,少年に落第点を与えていた」。
幾年もの間,教師たちは暴力行為を通報しないよう圧力をかけられてきました。それは学校の評判を落とし,結果として学校の管理者の評判を落とします。そのような犯罪を減らすためのニュージャージー州対策本部の一メンバーは,「管理者たちは,確かに,職員を脅迫して暴力事件を忘れさせている」と語っています。暴力が警察の出動を見るに至ることを生徒たちが知ると,暴力は著しく減少します。
戦線からの脱出
教師の多くは,戦線の兵士たちがかかるような,不安やノイローゼの伴う,戦闘疲労症にかかっています。中には,催涙弾や呼び子そして短銃までつくえの中にしまっておくようになった教師もいます。しかし,教師の大半は抵抗しようとしない,理想主義的な傾向のある人で,そのような戦いには不向きで,戦いに加わる気持ちがありません。そこで,戦場から全く手を引くことを選ぶのです。近年の辞職や早期退職が原因で,経験の深い,献身的な教師の数が急激に落ち込みました。これは子供にとっても,親にとっても,学校にとっても,社会にとっても損失です。もっとも,それは自業自得というものです。その各々がみな損失を招いた一因となっているのです。