高まる恐怖 婦女暴行
婦女暴行! この言葉を聞くだけでおびえてしまったり,胸が悪くなったりして,それに関する記事を読む気になれない読者もいることでしょう。もしそうであれば,そして読者が女性であれば,そのような人こそこの問題について特に考える必要があるのです。そのように言うのは,暴行魔がその餌食となる女性を選ぶ方法が関係しているからです。
「暴行を働こうとする者は,襲いやすい女性をねらう」というのは,デンバー総合病院の暴行対策研究センターの所長,ジェームズ・セルキンの弁です。精神医学の一教授,ジーン・G・エイブルは,そのような襲われやすい人をこう描写しています。「暴行魔のほとんどがねらっているのは,びっくりして,気を失う控え目な女性で,ちょっと抵抗しただけであきらめる人である」。
暴行魔に脅されたなら,そのようなタイプの女性になってしまいますか。あなたはどんな反応を示しますか。
被害者の大半が示す反応
暴行の危険に直面した女性がおびえるのは当然のことです。事実,ボストン大学の二人の教授は,暴行の被害に遭った人80名を面接した後,「ほとんどすべての女性の場合に,強姦に対する主な反応は恐怖であった」と述べています。そして問題となるのは,そうした恐怖のために身がすくんでしまいがちである,という点です。
犯された一人の女性は次のような例えを語っています。「夜,車を運転していて,ヘッドライトのまぶしい光に照らされてウサギが身動きできなくなっているのを見たことがありますか。もうだめだ,と言わんばかりにその場に立ちすくんでしまうのです。まさにそのようなことが起きるのです」。
大抵の場合,恐怖と共に,錯乱状態やためらいが生じます。例えば,ある19歳の女性はこう説明しています。「とにかく体力を使って相手を払いのけるということは全然ありませんでした。びっくりしたこともありましたが,世間知らずだったので女の子は言われた通りにするものだと思っていたのがいけなかったのです。……余りにも突然の出来事だったので,ただうろたえるだけで,どうしてよいか分かりませんでした」。
この女性は同じような状況下で他の多くの人が示したのと同じ反応を示しました。あきらめてしまったのです。抵抗する,それも力の限りに抵抗する心構えのあった人はほとんどいませんでした。エリザベス・R・ドーベルは,米国のセブンティーン誌の誌上で,驚くべき事実を明らかにしました。「1974年にニューヨーク市で通報された婦女暴行事件4,057件のうち,相手に抵抗した例はただの1件だけでした。……暴力をもって脅されて激しい恐怖感に襲われるために,大抵の女性は無力になってしまうのです」。
暴行魔の脅しに屈して,その言うなりになりますか。どのように抵抗したらよいか,知っておられますか。
抵抗するすべを知る必要
中には,特に相手が凶器を手にしている場合など,抵抗しないようにと告げる助言者もいるでしょう。そうした人々は,男の言うなりになって,それ以上の害を被らないようにするのが最善だ,と言うのです。しかし,それは賢明な助言でしょうか。
「[それは]はなはだしい誤りだと思います」と述べるのは,米国の高校で強姦に対する自衛法を担当する一教師,フランク・リーナです。「生徒の少女たちには,恐怖に負けて犯されるままになるなら,事が済んだ後に,顔を覚えられまいとして殺すかもしれない,と教えています」。他の専門家も同様の意見を述べ,抵抗するよう女性に勧めています。
しかし,どのように抵抗するかという問題は,極めて現実的なものです。一婦人はこう語っています。「自信がないのでこわいのです。……そんなことが自分の身に起きなければよいと思います。もしそうなったら,どうしてよいか分かりません」。
しかし,多くの土地の現状からすると,女性が抵抗する方法をわきまえているのは大切なことです。暴行魔に襲われかけたときには,他の状況下での自分の反応とは全く異なった仕方で反応する仕方を学ばなければなりません。
今日,現実の脅威となっているか
「でも,実際のところ,婦女暴行は比較的少ないのではありませんか。強姦される可能性はあまりないのではありませんか」と尋ねる向きもあるでしょう。
婦女暴行に関する統計のあるものを見ると,そのようにみなすこともできるでしょう。1933年には,米国で4,930件の婦女暴行の届け出があったにすぎません。1962年に,その数は1万6,310件に達しましたが,それほど多くの女性がその影響を受けているとは思われませんでした。
しかし,届け出のあった婦女暴行の件数はその後16年間に4倍に増加し,1978年に6万7,131件に達しました。また,昨年の最初の9か月間に,その件数はさらに9%増加しました。婦女暴行はアメリカで増加率の最も著しい犯罪です。しかし,届け出られた婦女暴行の件数は,今日の女性の直面する脅威がどの程度のものかを十分に示してはいません。
それは婦女暴行の大半が当局に届けられていないからです。届け出るのはきまりが悪いと思う被害者は少なくありません。暴行されたという自分の訴えが疑われたり,邪推されたりするのを恐れている場合や,単にプライバシーを侵害されたくないという場合もあるでしょう。家族の言ったりしたりすることを恐れる人もいます。暴行魔のうち有罪宣告を受けて投獄されるのは2%にすぎないので,わざわざ通報するまでもないと考える人もいます。
種々の調査は,婦女暴行が驚くほどの件数に上っていることを示しています。一般に,実際の数字は届け出のあった件数の3ないし5倍とされています。タイム誌は,「ある解説者によると,毎年,50万人が暴行魔に襲われている」と述べています。「犯罪から身を守る方法」という本によると,「婦女暴行全体の90%は届け出のないままになっていることを示す推定もある」とのことです。
ですから,米国だけでも,1日に1,000人以上が婦女暴行の被害を受けているのです。しかもこの数には,1年間に強制わいせつ行為の犠牲になる6万人の子供たちのほとんどは含まれていません。
しかし,婦女暴行は決して米国だけの問題ではありません。南米やアフリカ,ヨーロッパでも性的暴行の数は増加しています。
婦女暴行が今日それほど大きな問題になっているのはなぜでしょうか。人を暴行へと走らせるものは何ですか。