世界展望
憲法は「自殺規定」ではない
◆ 犯罪は「米国の諸都市に恐怖時代」をもたらした,と米国最高裁判所のウォーレン・バーガー長官は言明した。最近開かれた米国法曹協会の会議で講演した同氏は出席者に次のように問い掛けた。「我々は外国のテロリストに大きな義憤と警戒の念を示すのに対し,国内の同類の者たちにはこれほど消極的かつ寛容な態度を示すのはなぜだろうか。進んだ文明国と自らも称するこの国の国境の内側で,我々が人質にならなければいけないのか」。
米国における裁判は,「本来の目的を逸脱して,有罪無罪には関係なく,厳密な法解釈上の誤りを飽くことなく追求」してきたように思う,とバーガーは語った。そして,さらにこう問い掛けた。「被疑者に数々の保護の手だてを差し伸べておきながら,その一方で法を遵守する市民に基本的な保護を講じないなら,社会は救済されるだろうか」。バーガーは,法律関係者に,「そもそも憲法は自殺規定と解すべきものではなかった」という前最高裁判所陪席判事の言葉を思い起こさせた。
「心霊」兵器?
◆ 科学雑誌ディスカバーによると,米軍は今年,およそ600万㌦(約13億2,000万円)の経費を投じて,「心霊現象を軍事目的に利用するための調査」と,ソ連が開発中と思われる「“心霊”兵器への対応策の研究」を行なっている。ディスカバー誌は次のように伝えている。「国防総省の関係者は恐れを抱いたため研究・調査費を認めた。つまり,ソ連が心霊兵器を先に開発し,それを用いて世界支配を図るのではないかという恐れである」。一見ばかげたように思えるこうした考えに軍関係者が真剣に取り組んでいることを示すものとして,米軍の専門誌ミリタリー・レビューには「新たな精神戦の戦場」と題する特集記事が載った。同誌はこう伝えている。「人間の精神力に作用する兵器があり,それが人を死に至らせる力を備えていることはすでに実証済みである」。
なぜ自殺を図るのか
◆ 世界保健機関によると,デンマークは西欧諸国の中で自殺率が最も高い。スカンジナビア人の自殺の原因について研究しているニールス・ユエル-ニールセンは,社会福祉制度の充実に伴う個人の進取の精神の喪失,霊的な物事の価値の低下,物質主義,家族の崩壊といったものを高自殺率の主要な原因に挙げている。デンマーク人10万人につき26人が毎年自殺を遂げている。フィンランド人の自殺率は人口10万人につき25人,スウェーデン人は19人である。世界で最も自殺率が高いのはハンガリーで,人口10万人につき43人であった。アメリカ人の自殺率は10万人につき13人,英国人は8人である。
“放射能”指輪にご用心
◆ ペンシルバニア州のブラッドフォードに住むある外交員は,指輪をはめている左手の指がむくみ,しびれるため,医院に行って診てもらった。検査の結果,指にかいようが認められた。指輪を調べたところ,「ガイガー計数器の針が振り切れてしまった」。この指輪には,1930年代にガンの治療に用いられた放射性ラドンガスを入れておく小さな容器を再生して得た24金の含まれていることが判明した。これまでに,ニューヨーク州とペンシルバニア州で,放射能に汚染された金の指輪が9個出てきた。この問題を調査したニューヨークの放射線学者,ウィリアム・オブライエン博士は次のように考えている。「一獲千金をもくろんだ者が小型のラドン容器を手に入れ,[バッファロー付近の]宝石商にそれを売却した」。それらの宝石商はとうの昔に倒産したものと思われる。
墓地,それとも「ごみ処理場」?
◆ 英文毎日の伝えるところによると,日本の税務当局は,仏教の一僧侶が管理する動物の墓地を「ごみ処理場として分類すべきであり,[その収入は]課税対象になる」との判断を下した。3,600万円の納税通知書を受け取った僧侶は激怒してこう語った。「あの人たちは仏法を知らないのだ。人間は,犬,ネコ,馬などあらゆる動物を含む生命の輪の中心に位置している。前世,現世,来世において,我々は人間以外の形を取ってこの世に現われるかもしれない。ゴキブリや蚊と言えども魂があるのだから,死んだ動物の魂を決して粗末に扱ってはならない。……ごみ処理場だと,何とばかな。正気のさたではない。床であれ,畳であれ,テーブルであれ,そのそれぞれに命があるのだ。これが仏の教えなのだ」。
訂正
◆ アメリカ医師会ジャーナル誌は最近,米食品医薬品局に報告された事例を基に,「輸血による死者」と題する記事を掲載した。(「目ざめよ!」誌,1981年5月8日号30ページ参照。)しかし,その報告は不十分であったようである。カリフォルニアにあるパロマー記念病院のジェリー・コリンズ博士はアメリカ医師会ジャーナル誌に投稿し,次のように述べている。「食品医薬品局に寄せられたデーターによれば,溶血反応を引き起こし,患者の死を招くような輸血はほぼ100万件につき1件とされている。この死亡率は輸血に伴う致死的な反応の実際の発生率よりかなり低いものである。……メーヨー・クリニックにおける研究によれば,6,232単位の輸血につき1件の割合で溶血反応が起こり,3万3,500単位の輸血につき一人の死者が出ている。これらの死者には,輸血後の肝炎による死者は含まれていない。輸血は患者に大きな危険をもたらすものであり,こうした危険については輸血を行なう前に毎回注意深い考慮が払われるべきである」。
“上流”社会
◆ マリファナの使用がアメリカの上層階級においてさえ広く見られるようになっているため,エチケットに関するある新刊書は,人を正しく接待する際にこの問題をどう扱うべきかに関する幾つかの提案を述べている。エミリー・ポスト研究所発行の「接客術のすべて」という本は,マリファナのにおいらしきものが客の間から漂ってきたなら,接待している女主人は「お楽しみのところごめんなさい」と言って,みんなにたばこの火を消してもらい,他の楽しいゲームに客の注意を向けることができる,と提案している。
『バチカン封じ込め』?
◆ コラムニストのI・F・ストーンは,ロサンゼルス・タイムズ紙の中で,宗教組織の政治に対する介入を一部の政府当局者がどう見ているかを明らかにしている。米国政府は「エルサルバドルをめぐるイデオロギー上の闘いだけでなく,神学的要素を持つ闘いにも[直面している]……国務省はこれをいいかげんかつ無責任な宗教活動と見ているようである」と,ストーンは述べている。ストーンの主張によれば,カリブ海には二つの封鎖線が必要である。一つは武装勢力に対するものであるが,他の一つは「もっとやっかいで,破壊活動を勧めるバチカンからの道徳激励を断つためのものである。……新政権は,同教会がラテンアメリカで“実践主義的”役割を果たしているものと見ており,そのことに動揺している。政権の中枢で同教会を最も激しく批判している人々の中には,“再生した”神学校卒業者もいる」。
『ペテロから失敬……』
◆ リマの新聞エル・コメルシオによると,ペルーではカトリック教会に盗みに入る一連の事件が発生している。また,アレキパのカトリック教会関係者は,「それが今や世界的な規模の犯罪となっている」と嘆いた。多くの教会はスペインの植民地時代の絵画あるいは“聖人”や像にはめ込まれた宝石を所蔵しており,これが泥棒にねらわれているのである。ペルー中央部の町ハウンカベリカの教会に押し入った泥棒は,聖人の像の足を切り取った。エル・コメルシオ紙によれば,その聖人はすてきな「銀のくつ」をはいていたという。
アラブの大空港
◆ サウジアラビアでは最近,ニューヨークのマンハッタン島のほぼ2倍(105平方㌔)の広さを持つ新空港の開港式が,ハリド国王の手によって行なわれた。ジッダの新国際空港は1兆円近くの経費を投じて造られたと言われている。伝えられるところによると,10階建てのメーンターミナルだけでも2.6平方㌔の広さがある。この空港には,海水を淡水化する脱塩プラント,7万2,000本の樹木のためのかんがいシステム,病院,メッカに巡礼に行くイスラム教徒を宿泊させる210張りのグラスファイバー製のテントといった施設も備わっている。
認められた鍼
◆ 鍼の研究にはまだ未解明の点も多いが,アメリカ医師会ジャーナル誌は,「手にし得る証拠からすれば,中国古来のこの治療法は米国の基準にかなうように現代化され,しっかりした科学的根拠を有しているとみなすことができる」と伝えている。同誌は結論として,その特徴の一つを次のようにまとめている。「資格ある医師の手でなされるなら,鍼には不快感や副作用が伴わず,慢性的な痛みを軽減する効果がある。鍼について患者が尋ねるなら,『やってみる価値が十分あるでしょう』と答えても差し支えないであろう」― 1981年2月20日号,769ページ。
喜んでいるボーイフレンド
◆ 全アフリカ・プレスサービスは,「ナイジェリア,イモ州で花嫁を探している青年たちには笑顔の絶えないもっともな理由がある」と伝えている。娘を嫁に出す親が要求する伝統的な花嫁料が州政府の働きで大幅に引き下げられたようである。新聞記者モラ・オラニヤンは次のように書いている。「この花嫁料によって多くの貧しい男性が失意を味わってきた。[結婚したければ相手の女性の]親に多額のお金を払ってその権利を手に入れるという習慣に妨げられて,愛する娘と結婚できなかったのである」。高い花嫁料がもたらした一つの害は,「不道徳がはびこり,多くの独身女性が私生児を産むようになったこと」である。
中古ジェット機はいかが
◆ ビジネス・ウィーク誌によると,今年の初めに売りに出されていた旅客ジェット機は1年前の4倍に上り,少なくとも200機はあった。「その多くは砂漠の駐機場にただ並べられているだけである」と同誌は伝えている。なぜ中古機がこれほど余っているのだろうか。燃料価格が高騰したため,旧型のジェット機を飛ばすと費用がかさみ過ぎるのである。また,政府の定めた新たな騒音規制によって,耐用年数がきていなくても使用されなくなる飛行機が出ている。アリゾナで中古機の駐機場を管理しているある人はこう語った。「鉄はたまる一方だ。これがなくなる前に,新たな在庫が多数加わることだろう」。
かぎたばこなら安全?
◆ 昨年の7月,英国と米国の一部の医師がたばこに代わるより健康的な嗜好品として「かぎたばこの使用」を勧めた。しかし,ニューイングランド医学ジャーナル誌に載った米連邦政府のある研究によると,かぎたばこを使用する人は使用しない人より口腔のガンにかかる割合が平均で4倍も高い。長期にわたってかぎたばこを使用する人の場合は,その危険が50倍にもなる。かぎたばこの使用には,細かく刻んだたばこを唇の内側に入れたり,ほほと歯茎の間に入れたりすることが含まれる。これは特に米国南部の農村部の婦人の間で流行している。かぎたばこの生産は1971年から1980年の間に3倍に増えた。