世界展望
黄色い血液問題に対する判決
◆ 米国ルイジアナ州最高裁判所は最近,輸血に起因する肝炎の起こす害に対して病院には責任があるとする判決を下した。同法廷は次のように述べた。「肝炎ウイルスに汚染されている血液は欠陥品,すなわち通常の使用に供するにはあまりに危険な品である。こうした条件下で輸血を受けることに伴う危険は,分別のある使用者が予期しているよりも明らかに大きい」。ニューオーリンズのある病院長は,血液が肝炎に汚染されていないことを確かめる「供血者に対する検査法はまだない」と嘆いている。そのため,判決に不服なある人物は,法廷の決定は次のことを意味している,と述べた。すなわち,「輸血による肝炎を完全に防ぐ唯一の方法は輸血をしないことになってしまう」。
“王室にふさわしい”贈物
◆ 英国のチャールズ皇太子がダイアナ・スペンサー嬢と結婚した後,結婚祝いの贈物がロンドンのセント・ジェームズ宮殿で公開展示された。「これは選び出された一部に過ぎず,それも贈り主ではなく贈物そのものによって選んだものである。ここに展示されているのは全体の5分の1ほどである」とスポークスマンは語った。幾千人もの人が650円余りの入場料を払い,幾時間も列に並んで贈物の展示を見た。UPI通信は,「王子,大統領,王,女王」からの贈物に言及した後,次のように報じた。「しかし,もっと心を引き付けるのはパッチワークのティーポット用保温カバー,グリーンとふじ色の縞模様の手編みのラクダの人形……『幸福 ― それを見いだす方法』と題する,展示番号257番の本である」。世界中の大勢の人が,ものみの塔聖書冊子協会発行のこの本に収められている聖書に基づく情報からすでに益を得ている。
テレビによる福音伝道は下り坂
◆ 「不明瞭な点や憶測を特徴とする場合の多い問題に社会科学的手法を導入して一層明確な理解を与えているある新刊書によると,テレビ説教師は一部で成功を収めているものの,全般的にその魅力は下り坂にある」とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。その本は,1970年から1975年の間に米国のテレビ説教師の番組の視聴者の数が1,000万人から約2,100万人に増加したことを示している。ところが,過去3年間にその合計数は減少して2,000万人を下回っているとのことである。
「不明瞭な点や憶測」のよい例は説教師の一人ジェリー・フォールウェルの主張である。この伝道師は自分の番組を1,700万人から2,500万人が見ていると考えているが,テレビ調査機関アービトロンのデータによれば,フォールウェルの番組を見ている人はわずか160万人に過ぎない。
親子の結び付きは生まれた時から
◆ 英文毎日紙の伝えるところでは,東京大学の一研究班は,「幼児が出産直後から母親の呼び掛けに反応する」ことをコンピューターの助けを借りて突き止めた。生後二日から四日の赤子を保育器に入れ,母親の声をはじめとする人間の声や他の物音を聞かせてみた。16人の赤子のうち5人が人間の声に反応を示したが,その反応は母親の呼び掛けに対するものが最も鋭かった。どの赤子も機械的な音には少しも反応しなかった。研究者たちは日本小児科学会への報告書の中でこの研究は血縁関係の重要性を明らかにしており,幼児と母親の間には「生まれながら」結び付きの備わっていることを示している,と述べている。
失読症患者に希望?
◆ 読み書きの能力が損なわれ,他の点では正常人と少しも変わらない複雑な脳機能障害,失読症は比較的簡単な治療で治すことができるかもしれない。スウェーデンの心理学者ポール・パルレンビによると,失読症の患者は印刷物を逆に見ているようである。これは恐らく,通常は脳の左半分が読書能力をつかさどっているのに,ほとんどの失読症患者の場合に右半分でなされているためであると思われる。パルレンビ博士の理論に基づけば,読み物を逆様にし,文字の書き順を逆にすることが問題の解決に役立つとされている。
英国で何年も普通の治療を受けた後,パルレンビの方法を試みてみたある英国人は次のように語った。「奇跡としか言いようがありません。特別クラスで9年かけて学んだ事柄よりも多くのことを3か月間で学びました。今ではほとんど何でも読むことができます。それがどんなにすばらしいことかは,みなさんには想像もできないでしょう」。
耳の発する音
◆ 音を聞くだけでなく,音を発する耳を持つ人々がいる。米国ミズーリ州セントルイスにある聴力障害中央研究所の一科学者は,32名の志願者の耳道にマイクロフォンを取り付けて調査を行ない,被験者の半数の,少なくとも片耳から高ピッチの信号が発されていることを突き止めた。しかし,そのうちのだれも自分の耳がそうした信号を発していることを知らなかった。ある若い女性の右の耳から出る音は事実かなり大きかったので,妹と並んでピアノを弾くと妹がその音に邪魔されるほどであった。もっとも,彼女自身はそのことに気付いていなかった。その音は内耳の蝸牛殻から発されているようである。ここでは普通,振動が神経刺激興奮に変えられる。この機能は逆にも働き,この器官そのものが振動して,音波信号が発されるものと思われる。
偵察の場となる宇宙空間
◆ ストックホルム国際平和研究所は新たな研究を行ない,その結果を次のように報告している。「宇宙時代が始まって以来打ち上げられた人工衛星の75%は軍事目的のものであった。……1957年以降,1,801個の軍事衛星が打ち上げられている」。また1980年には,「103個の軍事衛星が打ち上げられた。その内訳は,米国14個,ソ連89個であった」。
矛盾
◆ 「医学界ニューズ」誌の編集長であるレジナルド・レイン2世はこう論評している。「喫煙は,心臓病,ガン,肺気腫などを生じさせて毎年32万人のアメリカ人の命を奪っている,明白な当面の証明ずみの危険行為である」。しかしこの編集長の説明によると,米国連邦政府も米国医師会も声を大にして喫煙の危険性を宣言しながら,同時に「たばこの製造を無言のうちに支持している」。シカゴにおける米国医師会の年次総会において,その代表団は「たばこ生産者に対する連邦政府の助成金に反対」していたにもかかわらず,「その舌の根も乾かぬうちに,たばこ製造会社の株として蓄えられている同医師会の年金基金140万㌦(約3億円)を譲渡するよう評議委員会に命ずることを拒否した」とレインは述べている。それから同編集長は,「こうなっては,この医師会の言う事を,あるいは個々の医師たちの言う事を真剣に考えようとする人がいるだろうか」と問い掛けている。
人工衛星による航海
◆ 幾世紀もの間,船員たちにとって航海に伴う問題が挑戦になってきた。今,軌道を回る人工衛星から航海に関する情報をキャッチするコンピューターを用いた船舶が次第に増えている。ある船長は「航海士の夢が実現した。六分儀は必要なくなった」と述べている。コンテナ船の一運航責任者は「信じられないほど進歩した」と語った。航海を誤り,不必要な進路変更をして海上を蛇行する必要がなくなったので,船舶は高価な燃料を節約できる。どのあたりへ行けば再び大漁を期待できるかを漁船は正確に知ることができる。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はこう述べている。「一番安価な装置でも,常に最新の緯度と経度が分かり,その誤差は200ヤード(約180㍍)以内である。伝統的な六分儀を用い,太陽や星の“高度を測る”ことによって位置を決定していた船員たちにとって,2マイル(約3.2㌔)の誤差は一般に許容されていた」。しかも,太陽も星も見えない曇天の日に用いた“推測航法”ではそれ以上のはるかに大きな誤差の生ずることが多かった。10年前には約7万㌦だった人工衛星受信装置も,今では5,000㌦(約110万円)以下になっており,信頼性は著しく向上している。
ソ連の「秘密兵器」
◆ 心理学者のハロルド・ヘルツの話によると,米国の軍隊内において薬物が次第に使用されつつある事実は「ソ連の秘密兵器」と呼ばれてきた。この心理学者はこう述べた。「麻薬を吸ってきた戦車隊員,コカインをかいだばかりの砲兵隊員,ヘロインが体内に残っている海兵隊の特別奇襲隊員は,奇襲に対して十分に応ずる態勢にない」。米国メリーランドのパート会友の独自の研究が示すところによると,軍曹(あるいはそれに相当する階級)以下の兵士のうち,海兵隊の61%,海軍の59%,陸軍の53%,空軍の33%までが,定期的に麻薬を使用している。薬物ならびにアルコール乱用防止対策担当の国防次官ウィリアム・ルイゼル将軍は,議会の委員会に対し,麻薬使用者として知られる人々を全員軍務から外すのは実際的なことではないと述べた。「そうなれば,戦力の多くが損なわれる」からである。
廃熱でトマト作り
◆ 英国ヨークシャー州の広さ20エーカー(約8ヘクタール)の温室から,石炭を使った近隣の火力発電所から出る廃熱を利用し,毎年2,000㌧以上のトマトが生産されている。英国においてこのエネルギー源を本格的に商業目的に用いたのはこれが最初である。この計画によって,毎年1エーカーあたり約20万4,000㍑の石油が節約される。この発電所のタービンの変圧器を冷却するために用いられる水で巨大な温室が温められる。熱くなった水は太い管で一群の温室へと送られ,それから熱交換器を通り,ファンが温かい空気を温室に押し出す。
アマゾンを脅かすもの
◆ ブラジルのアマゾン川流域の広大な地域の樹木が,木材を得るため,また農地などを得るために伐採されている。このような方法でこの土地を裸にすると,やがてその地は不毛の荒れ地となってしまうのではないかと懸念されている。この土地の大部分は,一般の使用に耐える土地ではないからである。米国デトロイトのフリー・プレス紙はブラジルのトゥクルイからの報告をこう伝えている。「幾世紀にもわたって人間をかたくなに拒んできたジャングルが,今や急速な勢いで開けてゆくので,20年以内に事実上12億エーカー(約4.9億ヘクタール)の雨林が消失するのではないかと予告する向きもある。ジャングルのほとんどは,外国商社を含め,数々の会社によって切り開かれている」。パラ州では,「この州の東と南の境界から数百マイルもジャングルが刈り取られ,その大きさは[米国の]南北両ダコタ州とネブラスカ州を合わせたほどになる。この地域の大部分はジャングルから草原地帯へと変ぼうした」。
胎児に手術
◆ 米国カリフォルニア大学の医師団は胎児に手術を施し,成功を見た。こうした成功例は今まで知られていない。その胎児は双子の一方の男の子で,泌尿器の閉そくのため命の危うい状態にあった。医師たちはプラスチック製の管を母親の子宮の中に入れ,さらに胎児のぼうこうに差し込んで,膨れ上がった泌尿器系の水分を抜き取った。その手術は出産を数週間後に控えた時期に行なわれたが,陣痛を早めることはなかった。双子の一方の女の子はその手術から影響を受けることなく,二人共無事に誕生した。