世界展望
根拠のない信仰
● 「アメリカ人は聖書をあがめるが,聖書を読まない」と,プリンストン宗教研究センターの所長ジョージ・ギャラップ2世は述べている。同センターが実施した1981年の調査の結果によると,毎日聖書のどこかを読んでいる人は12%に過ぎず,十代の若者4人のうち一人は聖書を一度も読んだことがない。また成人のうち,十戒の条項を四つ以上知っていたのは半数以下だった。調査の対象になった人々の86%は,宗教は生活上重要なものだと述べているが,そのうち,一定の週末に何らかの礼拝に出席する人は40%しかいなかった。その調査により,大抵の人々は今なお祈っているものの,その祈りは嘆願で終わる場合の多いことが判明した。「神を,『神聖なサンタクロース』とみなす向きがある」。このように,宗教心は依然としてアメリカ人の中に広く見られはするものの,彼らが「その信仰の根拠を真剣に考慮していることを示す証拠はほとんどない」とギャラップは述べている。
“未亡人と孤児の国”
● 男性同士の残虐行為によって生じる荒廃の様子が,ウガンダの例に如実に示されている。1979年まで8年間続いた政権下で殺害がはなはだしい規模に及んだため,1,250万人の人口のうち8人に一人は孤児,女性の19人に一人は未亡人となっている。ところが,同国の復旧省の挙げるこれらの数字は全ぼうを伝えてはいないという意見が強い。なぜだろうか。ウガンダの伝統では,孤児は親類が面倒を見,未亡人は夫の家の者と再婚することになっているからである。それでも,男性の数が不足しているため,多くの年若い未亡人は夫を見付けることができない。かつてウガンダはアフリカの“宝石”と呼ばれたが,今は“未亡人と孤児の国”と評されている。
壁に書く
● 国際連合の討議に失望したニューヨーク市のコッホ市長は,いわゆるイザヤ書の壁書きに「偽善,不道徳,臆病」のような言葉を書き加えたいと考えた。この壁は,道路を隔てて国連ビルの向かいにあり,そこには「剣を鋤の刃に」というイザヤ書からの有名な引用文が書き込まれている。候補に挙がった聖句は,「わざわいなるかな,彼らは悪を呼んで善といい,善を呼んで悪といい,暗きを光とし,光を暗しとし」というイザヤ書 5章20節と,「わざわいなるかな,不義の判決を下す者,暴虐の宣告を書きしるす者」と述べるイザヤ書 10章1節だった。(口語訳)しかしこの市長はその後に考えを変えた。「沈黙の方が,叫びより効果のあることがある」と市長は述べている。
ばく大な負債
● US・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌は,「米国における未払いの負債の合計はこの10年で約3倍に増加した。今年,それは5兆㌦(約1,150兆円)を超えるであろう」と述べている。これは5の後に0が12つくばく大な数字である。仮にこの負債をアメリカ人の成人全体に振り分けるとすると,一人当たり3万㌦(約690万円)になる。現在の負債の約39%,つまり1兆9,300億㌦(約443兆9,000億円)は,何かを抵当に入れたり掛け買いをしたりして個人から借りたお金である。実業界に対する負債は全体の37%,つまり1兆8,500億㌦(約425兆円)で,残りの1兆1,700億㌦(約269兆1,000億円)は,連邦政府当局,州当局,ならびに地方当局に対するものである。負債の合計は,同国の純財産の約半分を占め,国の全歳入の約1割はただこの負債の支払いのために費やされる。
コンピューター化された,医師の助手
● 英国のテムズ川南西地域保健機関は,医師の指図した試薬と,患者の受ける薬物治療との相互作用が生じる場合に警告を発するコンピューターを開発している。そのような相互作用があると,試薬が誤った結果を生み,誤診につながりかねない。今日病院で用いられているすべての薬物に関する必要なデータが,無数の医学誌や科学論文集の中に散逸しているため,医師にはあらゆる可能性を検討するだけの時間が全くない。「我々は,ある種の薬物が実験室での研究によって得られた理解と抵触する点について,いまだに最低2万4,000以上の医学参考文献を調べなければならない」と,政府の支援するこの計画を推し進める責任者ジャック・サルウェー博士は述べている。この計画が完成するためには,少なくともあと4年の研究が必要とされる。
危機にひんする宗教的郵便物
● 予算の削減により,米国議会は非営利刊行物のための郵便助成金を割愛する決定を下した。最初この助成金は,1987年までの16年間にわたって徐々に廃止されることになっていたが,同議会の決定によって,幾種類かの宗教出版物の郵送料は一気に200%上がることになる。「キリストの教会連合」の一代表者は,「数多くの宗教刊行物はただ無駄になるだけで,抹殺されている」と述べている。カトリック出版協会の局長は,この法案が確かに「宗教出版の声」を弱めさせ,「場合によっては[それを]沈黙させる」と考えている。米国には現在1,000以上の宗教刊行物がある。
忘れ去られる親
● 日本では親を敬うことが長い間の習慣となってきたが,最近の調査によると,回答者の38%は子供には老齢の親の面倒をみる義務はないと考えている。20年前,そう考えていたのは20%に過ぎなかった。このような回答を出した人の大部分は30代の人々である。これらの人々はテレビ世代に属し,彼らはテレビと共に成長したので,その価値観はテレビによって形造られた,という説明が加えられていた。この調査を行なった朝日新聞はこう述べている。「この世代は転換点となるように思える。生活の数多くの分野で,人々の意識が微妙に変化している」。
愛煙家用のガム
● 英国では,ある種のチューインガムが禁煙を助けるために用いられている。このガムは医師の処方によってのみ入手することができ,それを使うと,肺ガン,気管支炎,心臓病などの原因となるタールと一酸化炭素が除去されると言われる。ところが,ニコチンの量は変わることがないため,愛煙家は後でニコチンとの縁を切らなければならない。ロンドンのモーズレー病院で行なわれた実験では45%という成功率が報告されているが,他の方法すべてを併用した場合の成功率は20%に過ぎなかった。ガムを使った4か月コースの費用は92㌦(約2万1,000円)で,昨年は10万人がこれを採用している。現在英国では,10人に一人が冠状動脈の疾患で死亡しており,その犠牲者の70%が愛煙家である。
車に乗った教会
● 英国国教会の辺ぴな教会区にある古い教会の多くがばく大な借金を抱え込み,荒れ放題になっているため,革新的な考えを持つ一人の僧職者が,自分の教会をバスの上に建てるというアイデアを思いついた。祭壇の場所を設けるために前方の席を除去すれば,バスは32人分の座席を持つ教会に変身するが,これは通常の日曜日の聴衆を収容するのにごくふさわしい大きさである。2階付きの新しいバスの値段は5万ポンド(約2,116万円)だが,古い教会の改造費に比べればわずかなものである。そして良質の中古品を使えば値段はかなり安くなる。
こじきの組合
● 「万国のこじきは皆団結すべし!」このスローガンを掲げているのはインドのジャイプルで結成されたばかりのこじきの組合である。組合長のケララ州のケンナはこう説明している。「我々の組織は,物乞いをすることにより家族を養う人々から成る組織である。この職業は,他のすべての職業と同じほど古い歴史を持ち,他のすべての職業と何ら変わるところがない」。この組合の目的とするところは,個々のこじきないしグループを成すこじきの独占的領土権を確立することによって,物乞いのシステムを改革することにある。ケンナはこう述べている。「様々な場所に人がひしめき合っているので,この組合員すべてが家族を養えるだけの“かせぎを得る”ためにどうしてもこのシステムを導入することが必要だ」。ところが,家賃を払って家や部屋を提供できる人が一人もいないため,この組合は本部を設立する面で問題に陥っている。
飲酒家の女性に伴う危険
● 医師の間では,アルコール飲料によって女性が男性の2倍も肝硬変になりやすいことが知られるようになっている。「アルコール中毒に関するロンドン協議会々報」という雑誌の中で,キングス・クロス病院のジョン・サンダース博士はこう書いている。「女性は毎日摂取するアルコールが40㌘を超えると肝硬変になることがあるが,男性は1日の摂取量が80㌘を超えるまでは大きな危険はないということがはっきりした」。また,深酒をすると,男性は22年で,女性はそれよりもずっと早く平均13年でこの病気にかかる。それは,女性が平均して軽量で体の脂肪の量が多く,男性と同じ量だけ飲んでも血流中にアルコールがはなはだしく集中するためである,と医師は説明している。
学校での宗教
● 米国では,依然として進化論者対創造説信奉者の論争が白熱しているが,シンガポール政府は,この島国が「どろぼうの国」になることを防ぐため,学校での宗教の授業を義務づける計画を打ち出している。生徒たちは様々な言語でキリスト教,イスラム教,仏教,ヒンズー教のうち好きなものを選んで学ぶことになる。どれも気に入らない生徒は,世界の宗教に関する概論を取らなければならない。子供たちに宗教教育を受けさせたくないと親が考える場合,教育省にその旨を申し出ることができる。
ガソリンの臭いをかぐ原住民たち
● ガソリンの臭いをかぐことがオーストラリア,ノーザンテリトリー州の原住民の間で深刻な問題となっているため,地元の当局者は,スカンクの臭いがする添加剤を用いてこの傾向を阻止しようとしている。政府の調査が明らかにしたところによると,9歳から14歳までの少年の半数,および少女の4分の1が定常的にガソリンをかいでおり,この習慣は大人の間にも広がっている。その有害な結果として,言語能力,集中力,筋肉運動の協同作用などに障害が現われる。政府のスポークスマンはその原因として,「原住民の村落で仕事が不足していること」を挙げた。法律によって罰金を科したり禁令を加えたりするよりも,スカンクの臭いでこの習慣を阻止するほうが効果が上がるだろうと期待されている。
自暴自棄になる在監者たち
● 全米刑務所及び代替機関研究所は,米国刑務所の在監者の自殺率が,一般国民の16倍も高いことを明らかにした。平均すると1日に最低一人の在監者が命を絶っている。その研究はさらに,自殺者の大部分がアルコールや薬物の乱用で投獄された人々で占められていることも明らかにした。
自動車の安全性
● 「米国製の小型車は,日本製の小型車よりも安全だが,その安全性も十分ではない」とワシントンのUPI特電は伝えている。その特電は,安全性が平均以下だった17車種のうち,13種は日本製だったという,ある生命保険会社の報告を引用している。しかしその報告によれば,衝突した場合,製造国のいかんを問わず,小型車に乗っていた人の方が大型車に乗っていた人よりも死ぬ確率が2倍も高い。
汚れた川にどんな将来があるか
● 英国は,汚染された川をきれいにするキャンペーンを20年にわたって行なってきた。しかし,全英飲料水協議会は,「現在の経済状況」にかんがみて,このキャンペーンが中止されることになったと述べている。その報告は,汚染された川や三角江が将来よくなる見込みは,少なくとも経済力が回復するまで「厳しい」と説明している。