世界展望
価値ある聖書翻訳
● カナダ,トロントのザ・グローブ・アンド・メール誌は,過去20年間に出版された,数多くの新しい英訳聖書について最近論評を加えた。「エホバの証人の新世界訳を含め,各々の新しい訳は現代語を用いたり,古代のヘブライ語,アラム語,……ギリシャ語原文からの学問的な発見を組み入れたりして,聖書の音信を明確にすることを試みている」。
ヨーロッパで急増する犯罪
● 「ヨーロッパ全土で犯罪が増えており,調査した11か国の中ではフランスの増え方が最もひどかった」と,ロンドンのザ・デーリー・テレグラフ紙は報じている。「イングランドとウエールズが第2位である」。西ドイツの犯罪上昇率はここ10年間のうちの最高で,1980年には前年の8%増加となり,盗みは23%,殺人は6%増加した。オランダは,1980年までの5年間に13%の増加があったと報告している。ベルギーのブリュッセルにおける1980年の暴力犯罪は,前年度より17%増加した。スペインでは,殺人と暴力行為が増加し,若者たちによる強盗の件数は,最大の上昇率を示した。スカンジナビア諸国でも,若者による犯罪が著しく増加していると報告されている。
銀行は危機にひんしている?
● 「慎重で控え目な表現を好む最も保守的な職業である銀行業に携わる人の中で,第三世界の破産は西欧の銀行システムの崩壊を招く恐れがあると公に述べる人が増えている」。これは,ワールド・プレス・レビュー誌の報告である。「第三世界の負債は過去12か月で大幅に30%も上昇し,1980年末の4,160億㌦(約95兆6,800億円)から約5,400億㌦(約124兆2,000億円)にまで増加した。問題なのは,負債額の大きさではなく,負債を制御できなくなっていることである」。1981年に,8か国が負債の支払いを延期した。その結果はこうである。「これらのことすべては,銀行界が以前に認めることをよしとした程度を超えて,世界の銀行業と経済体制を破滅の瀬戸際へと追いやった」。今年,債務不履行とスケジュールの組み直しがもっと増えるとすれば,「崩壊への連鎖反応」が生じかねない,とこの記事は警告している。
無視される,患者の権利
● 南アフリカ共和国の51歳になるウィリアム・ダイソンは,自動車事故で重傷を負い,その後宗教上の理由により二度にわたって輸血を拒否した。家族もそれに同意したが,裁判所の命令によってこの男の人に輸血が強制的に施された。しかし,裁判所や病院の取った措置について,医療関係の権威者すべてが同意したわけではない。フェレーニギング病院の院長,D・J・L・ファン・ルーイ博士はこう言明した。「健全な精神を持つ人であれば,自分に同意できないいかなる医療をも拒む権利がある。……病院は常に患者の感情や状況に敬意を払うべきである」。ヨハネスブルグのザ・ランド・デーリー・メール紙もそれに同調した。「患者の権利を踏みにじった医師たち」との見出しの下に,その新聞記事は次のような賛成論を述べた。「そもそも医師の務めとは,命を救い痛みを和らげることであろうが,だからといって医師には,人が生活する際の,またそのためなら死ぬことも辞さないような価値規準を破壊する権利があるわけではない」。エホバの証人が輸血を拒否するのは,『血を避けよ』という神の律法にまさにそうした意味があると考えるからである。彼らは代わりの医療を受け入れる。―使徒 15:29。
確証された,テレビと暴力の関係
● 10年にわたる研究の末,全米精神衛生協会の報告は,テレビでの「過度の」暴力が,子供や十代の若者たちの攻撃と暴力的行動に直接結び付くことを示す「圧倒的な」科学的証拠がある,と結論付けている。その報告は,「テレビの暴力は,その規模から言って,これまで測定されてきた他のどんな行動変数にも劣らぬほど,攻撃行動と密接な関係にある」と述べている。そしてテレビを,「影響力が浸透し,かつまた累積する恐るべき教師」と呼んでいる。家族関係を改善したり教育の手助けをしたりする,テレビの有益な可能性はほとんどが現実のものとはなっていないと,その報告は特に言及している。
求められる「オンコセルカ症」のワクチン
● 「オンコセルカ症」の影響は破壊的なものとなる場合がある。西アフリカのサバンナ地帯だけでも,10万人以上の人々がこの伝染病のために視力を失っている。それに加え,アフリカの赤道地帯,イエメン,そして中南米では,何千万もの人々がこの症状に悩まされている。このことに触発されて,工業国や発展途上国の幾つかの研究機関がこの病気と取り組むようになった。コートジボアールのアビジャンの新聞フラテルニテ・マタンはこう述べた。「オンコセルカ症に効くワクチンの完成こそ,英国の研究者とスーダン人の研究者が密接な協力の下に目標としているものである」。川のそばに住むこととこの病気にかかることが関連しているため,地元の人は肥沃な川の流域を捨て,やせた土地に移動した。「したがって,人が住まず不毛の状態を続けるこの肥沃な河川の流域を,人の住めない,またその結果として経済的な発展の見られない所としている主要な障害は,この病気である」と,フラテルニテ・マタン紙は述べている。
帽子ははげの原因となるか
● 米国オハイオ州クリーブランド診療財団の皮膚病学者,ウィラード・D・ステック博士の意見によると,一部の人の考えとは違い,仕事中に堅い帽子をかぶってもはげになることはない。「米国医師会ジャーナル」誌上で,同博士はこのように説明した。「男性型の脱毛症は遺伝的なものであり,普通は成人に達してから早い時期に突如毛が抜け始め,急激に症状が進んで,やがて遺伝的に決まっている形状に至る」。頭皮は厚く,血管が十分に通っているので,堅い帽子をかぶっても,はげを生じさせるほどに頭皮の血液の循環を悪くすることはない,とステック博士は考えている。そして,帽子をかぶることとはげが早く出たり,はげの原因となったりすることの関連を示す科学的な研究は存在しないとしている。
教会の権利を縮小するギリシャ
● ギリシャ正教会は,ギリシャ憲法により,経済的援助を受ける権利と,行政問題に関与する権利を有する国教会として認められていたが,そのような状態も,パパンドレオー内閣によると,間もなく終止符が打たれる模様である。同内閣が最終的な目的としているのは,教会を霊的な役割のみに限り,30万エーカー(約12万㌶)に及ぶ教会の土地を,農家の人々や農業協同組合に委譲することだと言われる。国家の前にすべての宗教の平等をうたう,憲法の修正条項も計画中である。
「ぶっつけ婦女暴行魔」にご注意
● 一人で自動車を運転する女性は,婦女暴行魔が用いる新しい手口,つまり自動車事故に注意すべきである。パレード誌はこう説明している。「“ぶっつけ婦女暴行魔”とは,一人で運転している女性に目を付け,自分の車を……相手の車にぶっつける男のことである。驚いた女性が車から出て来て傷を調べ,免許証の提示を求めるや,男は女性をナイフや銃で脅す。そして女性を無理に車の中に連れ込み,走り去って暴行し,物を奪うのである」。米国カリフォルニア州ロサンゼルスの地方検事代理ジャクリン・コーナーは,女性にこう警告している。「暗い所に車を止めてはいけない。そうする場合には,車をぶつけた男と話をしようと窓ガラスを下げてはならない。車が走れるなら,警察やガソリンスタンドや人々がいるどこか明るい所に行くこと。幹線道路上では車から出てはならない。車が立ち往生した場合には,緊急灯をつけること」。
無視されるベストセラー
● ドイツの福音教会が行なった最近の調査により,ドイツのプロテスタント信者がいかに聖書を読まないかが明らかになっている。教会員の大多数は家に聖書を置いているが,「ひんぱんに」読むと言ったのはわずか5%だった。13%は「時々」と答え,25%は「ほとんど読まない」と答えた。そして,聖書を「全然読まない」と答えた人が半数以上(55%)いた。大部分の教会員はマルティン・ルターの訳による聖書を好み,現代語訳を用いる人は7%に過ぎなかった。福音派の教会員の4分の1は,家に聖書を置いていないと調査は述べている。
不可能な夢?
● 新婚夫婦が自分の土地と家を持ちたがるのは普通のことである。しかし日本では,「家を持つことは不可能な夢になった」と,英文毎日は述べている。東京では1平方㍍の土地が15万円もする。同紙の社説は,「給料のよいホワイトカラーの勤労者が,1か月の給料をもってしても1坪の土地を買えないというのは,全く異常な事態である」と論評している。この割合でいくと,縦30㍍横15㍍の土地を買うのに,5,500万円以上のお金が必要になる。「“自分の持ち家”という考えが,月旅行になぞらえられるのもうなずける」と,この記事は述べている。
最も長寿なのはだれか
● アイスランド,ノルウェー,日本で生まれ,また生活している女性の平均寿命は世界でも最も長い。アイスランドで生まれた女の子は,平均79.3歳生きることができる。アイスランドに僅少差で続いているのがノルウェーで,女性の平均寿命は79歳である。また日本の女性の平均寿命は78歳である,とアサヒ・イブニング・ニューズ紙は報じている。男子の寿命はどうだろうか。アイスランドと日本の男子の平均寿命は73歳で現在のところ世界のトップ,そして72.4歳のノルウェーの男子がそれに続く。オスロのベルデンス・ガング紙によると,研究者たちは,遺伝だけで寿命が決定されることを示す証拠は何もないとしている。17年間にわたり,2,000人の老人を対象に長寿のパターンを研究した後彼らはこう結論づけている。「我々の中にいる高齢者は,節度を保ち,もの静かで,人々や将来のことに関心を持つ人々である」。
慈善活動への圧力に対する反対
● 会社が従業員に慈善活動への寄付を強要する圧力に対し,数多くの労働者から憤りの声が上がっている,とウォール・ストリート・ジャーナル紙は論評した。そこには,寄付を拒否したために解雇された銀行の金銭出納係の例が引用された。慈善活動を監視する団体の指導者であるロバート・ボスウェルは,「慈善活動は圧力という名のゲームである」と述べている。調査の対象になった労働者のうち,15%の人々が,自分たちは寄付をするよう強制されたと感じている。同紙によれば,彼らは,「グループの集会を開くこと,100%の参加を勧めること,相当の寄付額が示唆されること,寄付する人々に経済的な報いを提供すること」などの習慣について不満を述べている。
船酔い防止に役立つしょうが
● 英国の医学誌ザ・ランセットは,乗り物酔いを防ぐ面でしょうがの根の粉末2カプセル(計940㍉㌘)には,通常用いられている薬ドラマミン(100㍉㌘)の2倍の効能がある,と報じている。二人の心理学者が行なったこの研究では,36人の大学生を,モーターの取り付けられたいすに座らせ,6分間回転させた。しょうがを摂取した学生の約半数は,最後まで持ちこたえたが,ドラマミンを服用した人の方は一人も持ちこたえられなかった。前述の心理学者のうちの一人,モーリー博士は,しょうがには,胃腸のウイルス性疾患によって生ずる下痢やおう吐を阻止する働きがある,と主張しているが,過度の投与は消化管上部の炎症を引き起こす可能性がある,とも警告している。