わたしたちの住む「宇宙の宝石」は窮地に陥っているか
月探険飛行の際にわたしたちの住む惑星を見たアメリカの一宇宙飛行士は,地球を「目に入る天体すべての中で最も美しいもの」と描写しました。白と茶の模様が点々とするブルーの球体は,正にこの上なく見事な「宇宙の宝石」のようです。
月面から見るとわたしたちの住む地球は静穏で優美に見えますが,地球上ではその美しさが損なわれています。その住民は大きな問題を抱えています。解決しなければならない問題の中でも特に困難で,知らぬ間に進行する複雑な問題は人口爆発です。
政治家や専門家たちは再三再四この問題を検討してきました。ところが,年と共に問題は大きくなるばかりで,それは何らかの仕方で読者にも影響を及ぼしています。例えば,大都会に住んでいるなら,しばしば交通が渋滞してのろのろ運転になり,時にはまひしてしまうことに気づいておられるでしょうか。バスや電車や地下鉄や歩道がどんなに混雑しているかを経験したことがありますか。ですから,人口が急激に増加して10億を超えた中国本土の政府は,法律によって子供の数を一家族当たり一人に制限しようとしているのです。
最も楽観的な専門家でさえ,洪水のように増え続ける世界の人口を容易ならぬ問題と見ています。なぜなら食糧や土地や職や天然資源は限られているからです。それに加えて,この分野の権威者の中にはこの地球の美しさを損なう他のさまざまな問題の責任も人口爆発にあるとする人が少なくありません。そうした問題には次のようなものがあります。
● 飢きん。発展途上国の都市の中には,朝,街頭を掃除する人が側溝から死人を片付けなければならないことが少なくないという所もあります。確かに,飢えと栄養不良のために毎年幾百万もの人々が死んでいます。しかも,世界の食糧需要は今から17年もたたない西暦2000年には倍になると予想されているのです。
● 野生生物の損失。人間の居住地が拡大しているために,幾千種もの動植物が絶滅の危機にひんしています。
● エネルギー不足。人口が急増し,不経済な消費が増加するにつれて,限りのある化石燃料の枯渇が心配されています。先進国で生まれる赤ちゃんのほうが発展途上国で生まれる赤ちゃんよりも世界の資源をはるかに多く消費することになります。
● 汚染。都市が乗り物でいよいよ混雑するにつれて,大気汚染はひどくなっています。食糧増産のために使われる化学肥料や殺虫剤が自然の水系に入るにつれて,水質汚染が増大しています。
● 戦争の脅威。将来には,より多くの領土や資源を手に入れるために隣国の譲歩を取りつける目的で核による恐かつが行なわれるかもしれません。西暦2000年には30か国以上が核兵器を保有するようになるでしょう。
● 失業。オートメーションはしばしば失業を招きます。仕事が十分になくて完全雇用の状況を実現できない国が次から次に増えています。
こうした諸問題のために,地球は限りのある宇宙船で,自分たちはその一時的な乗客であるという点を悟るようになっている人々が増えています。米国の外交官であった故アドレー・スチーブンソンは次のように述べてその点を見事に言い表わしています。「我々は共に旅をする小さな宇宙船の乗客で,損なわれやすい空気と土壌に依存しており……,この壊れやすい宇宙船に対する世話と仕事,そして私が思うに愛とによってのみ絶滅せずにすんでいる」。
わたしたちの宇宙船地球号は定員過剰になっているのでしょうか。乗客が増え過ぎているというこの問題に対する人道的な解決策があるでしょうか。宇宙船地球号 ― この美しい「宇宙の宝石」― での人間の生存を確実なものとするために,わたしたちはだれに頼れるでしょうか。