世界展望
死の商人
「通常兵器の蓄積は非常に長い間つづいており,世界的に広がりを見せ,膨大な量に達しているので,分別のある論議や責任のある行動によってとどめ得る域を越えてしまったと言えるかもしれない」と,ナショナル・カトリック・リポーター誌は,マイケル・T・クレアの書いた「米国兵器スーパーマーケット」と題する新刊書の書評の中で述べている。クレアによると,米国は世界の兵器の売上高全体の34%を占め,ソ連は29%を占めている。その書評はこう述べている。「米国は自国が世界の兵器供給国の筆頭に数えられて果たしている役割に関して,愛他的また戦略的な理由を唱道しつづけている」が,その理由として,武器の売り上げは友邦を勝ち得,それらの兵器を売らなければ「第三世界はその兵器をソ連から買い入れることが十分考えられる」という点を挙げている。しかし,「政治的に不安定な国々にこうした膨大な量の兵器の備蓄があるという事実そのものが世界平和を脅かしている,ということにはほとんど注意が払われていない」。
「実りのない犯罪」
ウォールストリート・ジャーナル紙は,「実りのない犯罪」に関する報道の中で,銀行強盗の検挙率が約70ないし80%であるのに対し,ほかの強盗の検挙率は25%である,と述べている。それでも,1976年から1980年までの間に,銀行強盗の発生件数は71%増加した。それに比べて,路上での強盗事件の増加率は45%,コンビニエンス・ストアでの強盗事件は47%,一般家庭に対する強盗事件は17%,ガソリンスタンドに対するものは5%の増加であった。連邦捜査局(FBI)のニコラス・V・オハラは,「1970年代の半ばに,[銀行強盗の]統計の中で麻薬使用者が目立つようになりはじめた」と述べている。「昔は彼ら(犯罪者)は犯行を徐々に重ねてついには銀行を襲うまでになったが,今では,初めから大もうけをたくらんでいる」。しかし,銀行強盗の奪ったお金は,1983年中,平均6,327㌦(約164万5,000円)にしかならなかった。現在服役中の44歳になる銀行強盗はこう述べている。「7,000㌦(約182万円)といえば19歳の人間には大金かもしれないが,責任のある男にとって7,000㌦などほんのはした金で,何ということのない金だ」。
深海植物
太陽光線が海面下180㍍より深い所に到達することはめったにないので,二人の植物学者はバハマ沖の海面下268㍍の所で植物が生えているのを見つけて非常に驚いた,とオンタリオ科学センターのニューサイエンス誌は伝えている。幾つかあるそうした植物の一つ,石のように堅い種類の紅藻は,浅い所に生える同類の紅藻よりも,光をとらえ,それを利用する効率が100倍も高い。その理由の一つは,この紅藻の類例を見ないような構造にある。その細胞壁は並外れて薄く,細胞は縦に積み重なっており,一番上の細胞に光が少しでも当たれば,下のほうの細胞に届くようになっている。
幸福な結婚
ニューヨーク・タイムズ紙は,長続きする結婚に関する最近の調査結果を要約して,「問題について話し合う能力は,二人がどれほど愛し合っているか,あるいは二人が結婚前にどれほど幸福だったか以上に重要である」と伝えている。デンバー大学の心理学者,ハワード・マークマンはこう述べている。「どんな夫婦も結婚生活において浮き沈みを経験するが,そのような難しい時期に自分たちの結婚を犠牲にしてしまいやすいのは,十分に話し合わない夫婦である」。マサチューセッツ大学のジョージ・レビンガーはこう付け加えている。「幸福な結婚生活を送る上で重要なのは,どれほど気が合っているかではなく,気が合わないときにそれにどう対処するかである」。
最良の育児
「親と同じ程度のことを子供にしてやれる託児所などというものはない」と,「人生の最初の3年間」の著者,バートン・L・ホワイトは述べている。子供たちの人生の最初の3年間を子供たちと共に過ごしてやるために,親は出世を先に延ばし,さらには貧しい生活をもいとうべきではない,とホワイトは主張している。この提案には例外もあることを認めながらも,一般論を言えば,子供の必要にこたえ応じ,子供の成し遂げたことをほめ,その成長の方向付けをするのに一番適しているのは生みの親である,とホワイトは考えている。そして,「自分の子供を育てるのに,自分よりも優れた人が得られる可能性はそれほど高くない」と付け加えている。
家事
「女性は家事から解放されたとされているにもかかわらず,女性の93%は家の掃除の大半を依然として行なっており,掃除の仕事の大半を行なっている夫は2%にすぎず,少しでも手伝いをする夫は27%にすぎない」と,ロンドン・タイムズ紙は伝えている。さらに,母親の掃除に手を貸す女の子はわずか8%,男の子は3%にすぎなかった。
「刑務所へ逃亡」
カナダ,トロント市のグローブ・アンド・メール紙の中で,オンタリオ州仮釈放委員会の一委員,ジェフリー・フェローズはこう書いている。「記録の示すところによると,毎年冬になると,刑務所に収容される者の数が著しく増加する」。なぜだろうか。それは,「寒さをしのぐために収容されようというりょうけんで,あえて軽微な犯罪を犯す者が少なくない」からであると,フェローズは推測している。これら犯罪志願者たちはどんな人間なのだろうか。「社会の落伍者,雇用不適格者や浮浪者などである」と,フェローズは述べている。しかし,そうした者たちの足を刑務所に向けさせるのは季節だけではない。刑務所はそうした者たちに食事と雨つゆをしのぐ場所とを提供し,責任から解き放ち,先の見通しを立てられる生活様式を与える。
「スペアタイヤ」の危険
「おなかの周りのスペアタイヤ,つまり太鼓腹や布袋腹」は,そのような脂肪のついていない人よりも心臓病や脳卒中になる「危険性が5倍も高いことを示している」と,カナダのトロントのメディカル・ポスト誌は伝えている。「脂肪のついた太もも,脚,臀部は,危険がずっと少ない」。この調査結果は,スウェーデンにおける長期間にわたる幾つかの調査に基づいている。スウェーデンのイェーテボリ大学のウルフ・スミス博士は,健康のためには男性のウエストはヒップよりも大きくなってはならず,女性のウエストはヒップの0.8倍を超えてはならない,と勧めている。スミスは,おなかの大きい人に希望を差し伸べるものとして,運動をして最初になくなるのは上腹部の脂肪であることを指摘している。
軍隊大司教
法王ヨハネ・パウロ2世は去る3月に,米軍,在外米公館,および復員軍人援護局の病院に属する210万人のローマ・カトリック教徒とその家族のための最初の大司教を任命した。「初めてのこととして,本土および外国で国のために尽くすアメリカ人の霊的必要を監督することだけを任務とする司教がいることになる」と,カトリックの当局者はニューヨーク・タイムズ紙に語った。米軍代牧区は世界中にある30のカトリックの軍代牧区の中で最大のものであるだけでなく,世界の教区の中でも最大級のものでもある。
「どちらの側にも友人」
著名な福音伝道師のビリー・グラハムは南部バプテスト協議会の集まりで主要な話し手をしばしば務めてきたが,聖書に誤りはないということに関する同教派内の目下続いている論争に巻き込まれないようにするため,今年ダラスで開かれる同教派の集会に出席しないと語ったことをクリスチャン・センチュリー誌は伝えている。ダラス・モーニング・ニューズ紙のインタビューに答えて,グラハムは次のように語った。「私は福音宣明師であり,できるだけ広い範囲の人々に訴えなければならない。私は聖なる,霊感による神の言葉を信じているが,私にはどちらの側にも友人がいる」。
カトリックの浸礼
「浸礼による新約聖書式のバプテスマがローマ・カトリック教徒の間で人気を得てきている」と,セントルイス・ポスト-ディスパッチ紙は伝えている。幼児や成人改宗者の頭に水を振りかけたり注いだりすることによるバプテスマが依然として標準的な習わしになっているものの,今では浸礼のほうが好まれている,とセントルイス大司教区礼拝局のジェームズ・T・テルソースト局長は語っている。その地域の三つの教会はバプテスマのために浸礼プールを使用している。「浸礼によるバプテスマは初期教会における標準的な習わしであった」ことをテルソーストは認めている。しかしこの報道は,幼児のバプテスマの例が聖書の中に一度も記録されていないという事実には触れていない。
遺伝学のショック
「AID[非配偶者間人工受精]を実施する379人の医師を対象にした調査が1979年に行なわれたが,そのうちのほぼ90%は特定の精子供給者を利用する上限に関して何の方針も持っていなかった」と,「今日の心理学」誌は伝えている。この結果生ずる数多くの問題の一つが,英国ロンドンのサンデー・エクスプレス紙に最近報道された。婚約中の女性の父親が婿になろうとしている実業家に,自分の娘が実子ではないことを打ち明けた。ある精子銀行で,その人の妻は人工受精を受けていた。その実業家は,幾年も前にその同じ精子銀行に精子を提供したことがあったので,不安になった。その精子銀行の記録を調査する許可を得た後,その人が一番恐れていたことが確証された。「彼は確かに自分が花嫁にしようとしていた女性の父親であり,その上806人もの他の子供たちの父親でもあったのである」と,その記事は伝えている。結婚式は取りやめになり,やるせない気持ちになったこの実業家は,同じ過ちを繰り返す危険性を少なくするために,別の地域で求愛をすることに決めた。
婚前交渉の増加
「米国女性の4分の3以上が結婚前に性活動を始めている」と,ニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。この調査結果は,米国の国立健康統計センターが15歳から44歳の女性を対象にして実施した調査に基づいている。とりわけ,1975年から1979年の間に結婚した女性の79%は婚前に性体験をしていたが,1960年から1964年に結婚した女性の場合,その率は52%であった。また,私生児の出生率も高くなり,1960年に5%だったのが,1982年には19%になったことが伝えられている。
健康のための助言
「過去10年間に,健康関係の出版物の年間売上高は3倍になり,3億㌦(約780億円)を超えるまでになった」と,ウォールストリート・ジャーナル紙は伝えている。「しかし,この産業が急成長しているために,誤導するような情報や偽りの情報を甚だしく大量に含んだ出版物が出回る結果を招いている,と警告する医師や栄養学者もいる」。例えば昨年,全米科学・健康協議会は定期刊行物30点を調査し,その健康に関する記事の3分の1が「一貫していない」(50%から80%は正確)か「信頼が置けない」(正確なのは50%以下)と報じている。ウォールストリート・ジャーナル紙はさらにこう述べている。「回報か雑誌,あるいは書籍のいずれを読むにしても,偏見を持たずなおかつ懐疑的であるよう,健康問題の専門家は消費者に勧めている」。
「サルのように」動く
分子やエネルギーは細胞内でどのように動くのだろうか。ロンドン・タイムズ紙の伝えるところによると,米国の4人の神経生物学者が最近,「分子と,細胞のエネルギー源であるミトコンドリアとは『微小管』と呼ばれる糸に沿って動き回り,再三結び付いて,森の中のサルのように糸から糸へと移って行く」ことを示した。小さなたんぱく質の亜単位でできている微小管は,細胞の必要に応じて一所に集まったり散らばったりする。これらの発見は啓発となるものではあるが,科学者たちは何がそのすべてを動かしているかを説明できないでいる。