ジウリアから聞いたスパゲッティ料理
イタリアの「目ざめよ!」通信員
大抵の人は深皿にたっぷり盛られたあつあつのスパゲッティを食べるのが好きです。ところで,この円柱状のパスタが,紐のように見えるところからスパゲッティという名を得たことをご存じですか。イタリア語で紐のことをスパゴと言います。これから派生した語が「スパゲッティ」,つまり「短い紐」です。
「料理はどういうふうにするんですか」と,私たちは尋ねました。うれしいことに,料理のとても上手なジウリアという人がこの質問に答えてくれます。ジウリアは自分の好きな話題,つまり料理のこととなるといつでも喜んで話してくれます。
ジウリアはさっそく始めます。「使うソースのほかに大切なのは,スパゲッティそのものを固めにゆでることです。沸騰したお湯に塩を少し加えてスパゲッティをゆで,軟らかくなり過ぎないうちに取り出します。ゆで加減は少し歯ごたえがあるくらいが理想的です。私たちイタリア人はその状態をアル デンテ(歯にこたえる)と呼びます。ですから上質のスパゲッティは普通の小麦粉では作れません。デュラム小麦の粉でしか作れないのです。パスタをほどよくゆでること,これがおいしいスパゲッティ料理を作るこつの一つです」。
「パスタをゆでるのはとても難しいんですか」と次に聞いてみました。ジウリアはその質問を予期していたかのように,すかさず,「そんなに難しいことではありません。でも,本当においしく作ろうと思えば,パスタをゆで過ぎてはいけないということを忘れないことですね」と言いました。ジウリアの勧める点を幾つか挙げてみましょう。
ジウリアが勧める作り方
パスタ100㌘につき水約1㍑を鍋に入れ,粗めの塩を5㌘a 加えて火にかけ,沸騰してから2分ほどしてスパゲッティを入れ,くっつかないようにすぐにスプーンかフォークでかき混ぜます。一時的に沸騰は止まりますが,ふたはしません。
湯が再び沸騰し始めたなら,わずかに沸騰する程度に温度を下げ,時々かき回します。ゆでる時間は,パスタが太いか細いか,その種類によって異なります。また標高にもよります。標高が高ければ水はより低い温度で沸騰するからです。スパゲッティの袋にゆで時間が表示されていることもあります。いずれにせよ,スパゲッティをゆでている時は目を離さないことです。とりわけ何度も試食してみることです。
パスタを混ぜていると,軟らかくなり始めるときが分かります。そのときには1本取り出して試食してみます。舌にやけどをしないように,お皿の上に載せて冷ましてから食べてみます。まだ固いようであればもう少しゆでます。軟らかくてもまだ少し固さが残っていれば,それがアル デンテです。鍋を火から下ろすときです。スパゲッティはすぐにざるに空けます。いつまでも熱湯に入れたままにしておくと,煮え続けて軟らかくなり過ぎてしまいます。
「スパゲッティを作るときには,そこのところだけ気をつければいいわけですか」と私たちは尋ねました。
「パスタをゆでるのは,食欲をそそるスパゲッティ料理を作る仕事のほんの一部分です」と,ジウリアは続けます。「スパゲッティにはソースがいります。ソースをおいしく作ることも成功の秘けつの一つです。皮をむいたトマト,みじん切りのにんにく,そして玉ねぎを少量のオリーブ油で一緒にいためて作るトマトソースは,スパゲッティととてもよく合います。あるいはバターをまぶし,パルメザン・チーズを振りかけて出すこともできます。でも,食欲をそそるスパゲッティ料理を2種類ほどご紹介しましょう」。
ジウリアの特別料理
スパゲッティ・アラ・カルボナーラ
4人前
□ スパゲッティ,300㌘から400㌘
□ 脂の少ないベーコン,120㌘
□ バター,50㌘
□ 卵黄,4個分
□ パルメザン・チーズあるいはロマノ・チーズをおろしたもの40㌘
□ 調味料はコショウと塩
沸騰する湯の中へスパゲッティを入れる直前に ―
1. ベーコンを3㍉から4㍉の角切りにする。
2. 鍋を弱い火にかけ,バターを溶かす。
3. ベーコンをバターでいためる。
4. 塩とコショウを加える。ベーコンがかりかりにならないように絶えずかき回し,きれいなきつね色になったら鍋を火から下ろす。
5. 卵黄4個とおろしチーズをボールに入れて強く混ぜる。
6. ベーコンの入っている鍋に卵とチーズを混ぜたものを移し,1分ほど煮る。卵が固まってしまわないようによく注意する。
スパゲッティがアル デンテにゆで上がったならすぐに湯を捨てる。スパゲッティを深皿に盛り分け,用意されているソースを混ぜる。これであつあつのスパゲッティはでき上がり。
「カルボナリ党(炭焼党)の人たちがスパゲッティをこのようにして食べたかどうかは分かりませんけれど,とてもおいしいことは請け合いです」と,ジウリアは言います。「カルボナリ党のことは聞いたことがありますか。彼らは19世紀の革命家たちで,ある秘密結社のメンバーでした。この料理の名前は彼らの名前にちなんで付けられたことも考えられますし,あるいは同じ名前を持つ,もっと平凡な,炭を売る人たちに敬意を表してこういう名前になったのかもしれません。その由来は実際には分からないと思います。聞こえがいいのでその名が考え出されたのかもしれません」。
ペスト・アラ・ジェノベセ
4人前
□ 小さくて新鮮なメボウキの葉,50㌘
□ オリーブ油,1カップ
□ にんにく,2片
□ 松の実,30㌘
□ パルメザン・チーズまたはロマノ・チーズをおろしたもの,50㌘
□ 塩少々
1. メボウキの葉を冷水できれいに洗い,清潔なふきんで水気を取る。(メボウキの葉は大きな木から取らないことが大切。香りがあまり良くない。)
2. にんにくの皮をむいて薄切りにし,乳鉢に入れ,メボウキの葉を加える。乳棒でにんにくとメボウキの葉を乳鉢の底や側面に押しつけてつぶし,滑らかな糊状にする。(乳鉢がなければ,同じ材料をミキサーにかけても同様の結果が得られる。)
3. おろしチーズ,オリーブ油,松の実を少しずつ加えながら混ぜ,また練って,とろりとしたきれいな緑色のソースを作る。固すぎるようであればオリーブ油を少し加える。
4. 一つまみの塩を加える。使うチーズの種類によって差があるため,ペストの味をみて塩加減を調整する。ペストはコールドソースなので煮る必要はない。
5. スパゲッティがアル デンテにゆで上がったらすぐに湯を捨て,深皿に盛り分ける。そしてソースをかけて熱いうちによく混ぜる。これでいつでも食卓に出せる。
「ペストはリグリア州の主要都市ジェノバの典型的な料理です」と,ジウリアは説明します。「ご存じのようにペストの材料は乳鉢に入れて一緒に突きつぶしたり,こねたりします。『つぶす』とか『こねる』という意味を持つイタリア語はペスタレですから,そのようにして作られるソースはペストとして知られています」。
この二つの料理を作ってみようとお考えでしょうか。もしそうであれば,ジウリアは喜んで,「ブォン アペティト!(たくさん召し上がってください)」と答えるでしょう。
[脚注]
a 分量はすべて個人の好みに合わせます。