世界展望
たばこを吸う幼児たち
大勢の中学生や高校生が煙の出ないたばこを常用していることは,ずっと昔から研究者たちの耳に入っていたが,小学生や学齢期前の子供たちによる喫煙に関しては,最近になるまで何の資料もなかった。米国の疾病対策センターが5,000人の子供たちを対象に行なった調査により,3歳児もたばこを常用していることが分かった。調査の対象となった5歳の幼児グループのうち,女子の17%,男子の10%がかぎたばこなどの製品を1年ないしそれ以上常用していた。米国のワシントン特別区で発行されているヘルス・レター誌によると,「無料のサンプルが広く宣伝され,ばらまかれているために」幼いたばこ愛用者たちは,煙の出ないたばこに魅せられ,それを入手できるようになった。パッケージには必ず警告の表示をしなければならないが,それが読めない子供たちも多い。幼い子供たちはそのような製品を,友達,兄か姉,あるいは親からも紹介してもらうようである。
就職できない大学卒業生
「大学を卒業しても就職できるとは限らない」というのが,1985年春,カナダのオンタリオ州にある15余りの大学の卒業生を調査した結果である。彼らの未就業率は7.3%だったが,これはその地域の他の労働者の未就業率と本質的に変わらない。未就業率が10.6%だった同じ20歳から24歳までの他の労働者と比較して,わずかにましなだけである。加えてこの調査は,大卒であっても給料が一律であるとは限らないことを明らかにした。
危機に瀕するマウンテンゴリラ
「今すぐにマウンテンゴリラを救済しなければ,この無防備な生物は,発見されたのと同じ世紀内に実際に抹殺されてしまうかもしれない」とWWF(世界野生生物基金)は警告している。なぜだろうか。WWFの報告によれば,坑夫や材木切り出し人たちが,世界のマウンテンゴリラ全体の約3分の1が生息しているウガンダ南西部の密林を伐採し続けているからである。加えて,生きたマウンテンゴリラの子供や,「ゴリラの手でできている文鎮などのグロテスクな製品」を闇市場に供給するために,密猟者たちがゴリラを殺している。過去20年間に,マウンテンゴリラ全体の約半数が姿を消した。現在この内気で穏やかなアフリカの猿は,わずか400頭ほどが野生の状態で生き残っているにすぎない。
高くつくアルコールの使用
政治家の中には酒類の販売から得られる税金により,政府の歳入は実質的に増えると考える人もいるが,このほど明らかにされた情報では別の見解が示されている。カナダ,トロントにある常用癖研究財団のバーバラ・コールテスによると,カナダでは1年間に「アルコールのため,余分に20億㌦(約3,000億円)の医療費がかかり,社会福祉に14億㌦(約2,100億円),法執行のためにさらに6億5,200万㌦(約980億円)が費やされている」。またアルコールのために「仕事の生産性が損なわれ,その損害額は推定12億㌦(約1,800億円)に上る」が,これも支出に関して無視できない一面である。これらの支出すべてを酒税による歳入で賄えるのだろうか。オンタリオ州だけをとってみても,最近の1年だけで,支出(16億㌦[約2,400億円])は歳入(6億7,800万㌦[約1,000億円])をほとんど10億㌦(約1,500億円)も上回っている。
解決策が見つかる
イエスの生誕の地に建っているとされるベツレヘムの降誕教会の年1度の大掃除が,やっとのことで平和裏に終えられた。掃除をする権利は所有権の象徴とみなされたため,対立する司祭たちのグループが過去数年にわたって殴り合い,激論を闘わせてきた。この問題はどのように解決されただろうか。世界教会協議会の報道局は次のように伝えている。「イスラエル政府職員による細心の注意を払った折衝は,夜遅くまで続いた。その後,抗争中の二つの主要なグループであるギリシャ人(東方正教会)とアルメニア人(東洋正教会)は,議論の的となった,降誕の小洞くつに通じる入り口のずっと上の部分は,どちらも掃除しないということで合意した」。
名字の選択
1986年の初めから,名字に関する新しい法律がフィンランドで発効した。結婚した後も妻は結婚する前の名字をそのまま使用でき,夫婦で妻の名字を使うこともできる。結果はどうだっただろうか。人口登録センターによると,昨年結婚した2万6,000組の夫婦のうち,約2万4,000組は夫の名字を使う伝統的な方法を選んだ。約1,950組の結婚では,夫と妻がそれぞれ自分の名字を継続して使用している。夫婦の名字として妻の姓を選んだのは,わずか116組にすぎなかった。
広がる酸性雨
トロント・スター紙に掲載された報告記事は,米国環境保護庁による「最新のデータ」を引用し,有害な酸性雨は米国内をさらに南へ向かって広がりつつある,と主張している。酸性雨は現在ミシシッピー州,サウス及びノース・カロライナ州,バージニア州,ジョージア州,そしてフロリダ州の一部に影響を及ぼしている。「サウス・カロライナ州に降った最悪の雨はトマトジュースよりも強い酸性を示し,通常の雨の275倍も酸性が強かった」とその報告は述べている。同紙は今年これより前にも,「フロリダ州に……ひどい酸性雨が降ったため,ジャクソンビル港で下ろされたBMW製の自動車の塗装がはがれた」ことについて伝えている。
「体内のジョギング」
笑いの生理学の権威であるウィリアム・フライ教授は,「込み上げてくる笑いや声を出して笑うことは,主な身体器官系統のほとんどに影響を与える」と主張している。同教授がニューヨーク・デイリー・ニューズ紙に語ったところによると,笑いに関係した筋肉の運動量は,体操をした時に匹敵する。フライは笑うことを「体内のジョギング」と呼んでおり,笑った振りをするだけでも効果があると述べている。教授の説明では,笑うことにより3分ないし5分間,心臓の鼓動は倍になり,胸,首,顔,肩,腹部,頭皮などの筋肉を使うことになる。心からの笑いは筋肉の緊張をほぐすので,体内に蓄積された二酸化炭素を大量に取り除くことができる,とフライは主張する。有益な別の影響としては,神経系統が刺激され,エンドルフィン(体に備わっている鎮痛剤)の分泌によって痛みが治まり,思考能力が活発化することなどが含まれる,と言われている。「笑うことは本当に良い運動になる」とフライは述べている。
コーヒーが犯人か?
ホノルル心臓研究所の矢野教授は,コーヒーを飲むと心臓病にかかりやすくなるという主張に異議を唱えている。この調査は15年間に及び,7,194人の日本人男性を対象に行なわれたが,そのうち6,055人はコーヒー愛飲家だった。同教授によれば,コーヒーの摂取量を増やすと心臓疾患にかかりやすくなるはずであったが,この研究に携わった研究者たちは,喫煙のような他の危険な要因を考慮に入れると,心臓の不調とコーヒーの消費量との相関関係はなくなることを発見した。研究者たちは,コーヒー愛飲家の中に心臓疾患を抱える人たちがいるのはコーヒーを飲んだためではなく,喫煙の結果である可能性が強いという結論を下した。
よみがえる古代の伝統的手法
ウォールストリート・ジャーナル紙によると,フランスの化学者ジョゼフ・ダビドビは,古代エジプト人が使用した何千年も持ちこたえるセメント混合物の成分を発見したと主張している。考古学者のマージー・モリスは,この古代のセメントの粘着性がエジプトのピラミッドをしっかりと固定させてきたことを示している。ちなみに,現代のポルトランドセメントは200年持ちこたえるにすぎない。マージー・モリスの説明によれば,エジプト人はナトロン(炭酸ナトリウム)と石灰の混合物を用いて水酸化ナトリウムを生成し,それをシナイ砂漠から採掘したケイ酸塩鉱石や,アルミニウムを豊富に含んだ,ナイル川の沈泥と混ぜた。さらにヒ素鉱石などの他の成分を加えると,ちょうど自然に石ができる時のように分子が結合するので,素早くしっかりとくっつくセメントが出来上がる。ある会社はこの古代のセメントの現代版を開発中であるが,その速効性と持続性は現代に応用すれば利用価値が高いと見込まれている。