世界展望

非正統的な行状

米連邦政府により昨年の秋に実施されたおとり捜査の際，ギリシャ正教会の一司祭が，国税局の係官に対する総額50万㌦（約6,500万円）の贈賄のかどで逮捕された。その賄賂は「[同司祭，]ならびに他の30人に課されていた所得税，源泉課税，支払給与税，法人所得税，および失業保険税を210万㌦（約2億7,300万円）削減してもらうことに対する謝礼である」と，米国バージニア州アーリントンの定期刊行物「タックス･アナリスツ」は伝えている。この司祭は政府の調査に協力することに初め同意したものの，連邦地方裁判所のリチャード･オーエン判事は，「自ら稼いだ金に関する自供を一切拒んで，政府との合意に同司祭が違反したことが分かったため，[同司祭に]即座に懲役刑の」判決を下したと「タックス･アナリスツ」は述べている。その報告によると，同司祭は，ニューヨークにある「ギリシャ正教の聖ゲラシモス教会という聖域で」僧服を身に着けたまま，おとり捜査官に賄賂を差し出した。

エイズに関する最新情報

研究者たちの現在の推定によると，「米国で大手術を受ける人々のうち，何と5,000人に一人が，スクリーニング処置を通過した汚血によりエイズウイルスに感染するかもしれない」とニューヨーク･ポスト紙は伝えている。ところがニューヨークのように，エイズがとりわけ一般化している地区では危険率は劇的に増大する。そのような場合，「大量の献血された血液を必要とする人々500人に一人」がエイズウイルスに感染する危険を冒すことになる，と同紙は述べている。その理由は，研究者のアラン･サルツバーグ博士によると，現行の検査法では，感染した血液をスクリーニング処置の際に完全には検出できない点にある。ウイルスに対する抗体は，当人が感染した数週間後にも血液中に現われないことが多く，感染者はその期間中に献血するかもしれない。

「煙の出ない」たばこの広告

ここ数年，喫煙を勧める大方の雑誌や新聞の広告には，火のついたたばこから立ち上るはずの目に見える煙が描かれていないことが多い。オーストラリアの新聞「シドニー･モーニング･ヘラルド」によると，禁煙運動団体はこの種の広告を，目に見える煙を見せると逆効果が生じる現代の傾向を考えた意図的なごまかしの事例とみなしている。たばこ会社の代表者たちはこれを「禁煙運動の宣伝」として問題にしなかったが，印刷広告には，がっしりした男が馬に乗ってたばこを口にくわえたり，日曜日の遅い朝食に集まる魅力的な若い男女がたばこを指にはさんだりする「健康的」で煙のないイメージを好む傾向が明らかに認められる。

同性愛者の聖職者

昨年の8月，数か月にわたる討論の末，カナダ合同教会の指導者たちは205票対160票で同性愛者を聖職に叙任することを支持する票決を下した。ニューヨーク･デイリー･ニューズ紙によると，「同性愛者の叙任に反対する宣言書に署名したのは，同教会の4,000人の聖職者の4分の1，86万人の教会員のうち3万人」にすぎなかった。カナダ合同教会は「カナダ最大のプロテスタントの宗派」と言われている。

スポーツのための中絶

競技の際の運動能力を向上させることを目指して，ある国々の女子陸上選手は意図的に妊娠し，次いで中絶する，と英国のサンデー･ミラー紙は伝えている。同紙によると，こうした行為は妊娠初期の月々に女性の筋力が大幅に増強されるとの発見に基づくものである。その記事は，陸上競技の一部の役員が女子陸上選手に人工授精で妊娠することさえ勧めている，と述べている。フィンランドのスポーツ医学の専門家であるリストー･エルコーラ博士によると，「競争相手より優位に立つための手段として，妊娠が好まれるようになっている」と同紙は伝えている。

失われた世代

18歳から24歳までのアメリカ人は地理的な意味で方向を見失っている。九つの工業国で最近実施されたギャラップ調査で，16か所の地理上の位置を確認するよう求められたとき，彼らの成績は最下位であった。米国地理学協会の主催したこの調査で，前述の年齢層のアメリカ人5人に一人が「世界地図上で米国を見つけられない」ことが明らかになった，とUS･ニューズ･アンド･ワールド･リポート誌は伝えている。調査の対象となった人々のうち，4人に一人は太平洋の位置を指摘できず，5人に一人はヨーロッパ諸国の国名を一つも挙げることができなかった。また，二人に一人はニューヨーク州を地図上で指摘できなかった。

牧師を首にせよ！

不満を抱く教区民は教区牧師について何ができるだろうか。西ベルリンのプロテスタント系月刊誌は，牧師をその立場から投票で締め出すように提案している，とドイツの新聞「ナッサウアー･ターゲブラット」は伝えている。「教区民は無能な牧師や偽りを教える者たちを，追い出せるようでなければならない」と，この記事は言明している。仮にこの提案が実施されると，ドイツルーテル教会の1万600の教区に奉仕する1万2,600人の牧師に影響が及ぶことになる。

虫刺され警報

襲って来るスズメバチをつぶすと，仲間のスズメバチの大編隊が攻撃に加わるのはなぜだろうか。昆虫学者のピーター･ランドルトによると，スズメバチをつぶすと，毒液の入っている袋状の部分が破れ，危険を知らせるフェロモンが空中に放出され，それが警報となって他のスズメバチが救助に来る，とサイエンス･ダイジェスト誌は伝えている。ランドルトと化学者のロバート･ヒースは自分たちの発見を裏づけるため，フロリダのスズメバチの巣の近くで，危険を知らせる合成フェロモンを試してみた。ランドルトの報告によれば，500匹ものスズメバチが攻撃のため「巣から出て来て，針で刺し始めた」。ランドルトは，スズメバチをつぶさないよう忠告している。

クマを追跡する人工衛星

1974年以来，フランスのアルゴス衛星システムは，海で遭難した人々の位置を突き止めたり，火山や氷山を監視したりする面で特に貢献してきた。今このシステムには，米国のハイイログマを追跡するという異例の務めが課されている。「[グレーシャー国立]公園の南側にいる4頭のハイイログマは無線装置付きの特殊な首輪をはめ，フランスの人工衛星アルゴスが頭上を通過する101分ごとにその周波数が探知されている」と，インタナショナル･ヘラルド･トリビューン紙は伝えている。「フランスの地上局は衛星から送られるデータによりクマの位置を図示し，情報をモンタナに中継する」。同衛星はクマの頭部の動きをとらえることもできるが，頭の動きによって，この動物が冬眠しているか死んでいるかが分かる。

行方不明の子供たち

行方不明の子供たちを捜し出すことは，子供たちの顔立ちが成長に伴って急速に変わってしまうため，厄介な問題となる。数年の開きがあると，子供の今の顔が古い写真の顔とあまり似ていないことがある。ところが今度，イリノイ大学の科学者たちは，既知の48の顔の特徴に基づいて最新の肖像画を10分以内に作成するコンピューター･プログラムを開発した。人間はあらかじめ定められた遺伝学上の特徴にしたがって年取ってゆく。そのため，コンピューターに性別，年齢，子供の人種を，手元にある写真の日付と共に入力することにより，髪型以外は比較的正確な画像が得られる，とロンドンのサンデー･タイムズ紙は伝えている。

趣味のよい農作物

スピーカーを製造する日本のあるメーカーは，音楽を流すことで温室の植物の発育を促すシステムを開発した。技術者の説明によると，音楽の刺激で植物の気孔，つまり葉の表面にある植物が呼吸するための微小な穴の開きがよくなる。とはいえ，どんな音楽でもよいというわけではない。毎日新聞は，太鼓の音をずっと聞かせたら，枯れてしまったというインドの植物の例を引き合いに出し，植物は速いテンポの音楽，特にロックンロールには弱そうだと伝えている。音楽を植物の発育を速めるのに利用している大阪のある農園は，「音楽はクラシックに限らなければならない」と述べている。少なくともこの農園のメロンやトマトはよい趣味を持っている ― モーツァルト，バッハ，ビバルディがお気に入りである。