世界展望
忘れられた犠牲者
妻や恋人を強姦された男性は,「忘れられた犠牲者」と呼ばれている。ロンドンの精神科医,アンソニー・ベートマンによれば,それらの男性は,犯罪が起きた時からかなりたっていても,うつ病,罪悪感,性的な障害といった深刻な問題に苦しむ。被害者がどこへ行くときにも付き添ったり,ある時間になったら“連絡を入れる”ように求めたりして,過保護になる場合もある。伝えられるところによれば,ベートマン博士は,そうした男性が事件から立ち直るには,集中的な精神療法が必要かもしれないと述べている。
馬のマンション
カナダ南西部のバンクーバーで,馬のためのマンションが馬術家たちに売り出されている。マンションの個室を与えられた馬は,自動的に水おけを満たす作り付けの給水管,杉の板でふいた屋根,木製の壁,中庭に出られる,などを特色とする11平方㍍の厩舎での生活を楽しめる。こうした馬のためのマンションが作られる背景には,地価の高騰や,それに伴う固定資産税の上昇がある。2万6,000カナダ㌦(約312万円)という購入価格は,「裕福な南部地方で,貸し小屋に馬を預けるのに毎月300㌦(約3万6,000円)以上」を払っている人々にとっては魅力的な額かもしれない,とサンデー・スター紙は伝えている。
残虐行為にさらされる
ドイツの教職員協会は,情報媒体を通して示される残虐行為を子供たちに見せないための手段を講じるよう親と教育者に勧めている。ハード・ロック音楽やビデオで「悪魔主義,麻薬,死,残虐行為などが驚くほど美化されている」ため,思春期の子供たちは暴力に鈍感になり,感情的に害を被りかねないと同協会の会長は主張している。教師と親は,ビデオやハード・ロック音楽の内容がどんなものかほとんど知らないようだ。若者の二人に一人はホラー・ビデオをたくさん見ていると言われている。若者たちは,そのようなビデオを良いビデオ,あるいは非常に良いビデオとみなす。
犯罪防止になる外出禁止令
夜11時以降は若者を家から出さないために,オーストラリアはクイーンズランド州のある田舎町では,非公式な外出禁止令を出し,望ましい結果を得た。警察や町議会の議員たちは,その地域での犯罪が大幅に減少したことを報告した。そのためクイーンズランド州政府は現在,15歳未満の子供たち全員に試験的に外出禁止令を課すことに関し,内閣の承認を求めている。これは,二つの外出禁止令を,一つは都市部に,もう一つは地方の町に試験的に出して,その結果を見るという計画である。この試験的な外出禁止令が,犯罪の発生率を下げる点で望ましい成果を上げるならば,州政府は次に州の若者全員に対する外出禁止令の立法化を検討するよう要請を受けるだろう。
ラグビーによる背骨のけが
南アフリカのある病院は,この23年間に,ラグビーをしていて背骨に重傷を負った88人の若い男性患者の治療を行なった。ラグビーの場合のフライングタックルは,普通アメリカン・フットボールのタックルほど激しい衝撃はないにしても,やはりそれでけがをすることがある。スクラムも危険だ。つまり,相手チームの選手たちがスクラムを組み,ボールを取ろうと一丸になって押しまくる時である。「南アフリカ医学ジャーナル」誌は,「次のようなシーンが余りにも頻繁に起こっている。スクラムが崩れ,選手たちはグラウンドから立ち上がるが,身動きもせずに横たわっている選手が一人いる。救急隊員がフィールドに駆けつけ,けがをした選手をそっと担架に乗せて病院に運ぶ。首の骨が折れ,脊髄がやられて,その選手は一生のあいだ四肢麻痺患者になってしまう」と述べている。南アフリカでは1989年に,3人の小中学生の男子がラグビーをしている最中に死亡した。
高くつく遅れ
ドイツ空域利用者協会の報告書によれば,ヨーロッパの航空輸送の遅れは,航空会社と乗客に年間40億㌦(約5,600億円)という膨大な損害を与えているとみられる。同報告書は,空域を上手に利用していないことが問題の原因であると断定している。米国全土に航空交通管制センターが20しかないのに対し,ヨーロッパには44ある。全ヨーロッパのための一つの統合航空交通管制システムを作るとすれば,50億㌦(約7,000億円)から100億㌦(約1兆4,000億円)の経費がかかるが,それだけの投資で,現在の航空交通管制の遅れは事実上すべて解消できる,とロンドンのフィナンシャル・タイムズ紙は述べている。現在のばらばらな方法では,航空機は非効率的な飛行高度や経路を取らざるを得ないため,ヨーロッパの典型的な路線は,必要な距離よりも10%長くなっている。
勝利と敗北
「幸運が死を招くこともある」という見出しのもとに,ブラジルの新聞「オー・エスタド・デ・サンパウロ」は,最近宝くじに当たった人の悲惨な経験について伝えている。この男性はその宝くじに一人だけ当たり,93万ノボス・クルザード(約5,600万円)を受け取った。しかしその後,宝くじの賞金を探していた泥棒に3人の近親者が殺されたという悲報が届いた。
結婚式を売り出す
ヨーロッパの旅をする日本人観光客に,カトリック教会での結婚式を含むパックツアーが売り出された。「結婚という神聖な儀式を商売の種にする」というバチカンの抗議にもかかわらず,カトリック教徒ではない日本人のカップルが「イタリアやフランスの教会で結婚式を挙げる」ケースは増えてきていた,とザ・デーリー・ヨミウリ紙は伝えている。バチカンがそれに気を悪くしているのは,ローマ・カトリック教徒か,またはカトリックの宗教研修を受けた人に対してのみ結婚式を行なうよう,司祭たちに指示が与えられているからである。しかし日本の旅行代理店は,「そうした結婚式を挙げるために,それほど厳格ではない教会」を選んで,教会の方針をかわすことができた。
行動範囲の広いバッタ
昨年,1億匹のダイミョウバッタがカリブ海の島々やガイアナ,ベネズエラなどに来襲した時,専門家たちの間では,「バッタはどのようにして大西洋横断をやってのけたのか」という疑問が持ち上がった。以前それらの地域ではこの昆虫は知られていなかった。ダイミョウバッタは気温の高いほうが楽に飛べるため,普通は日中に飛ぶ。そのことを考えると,4,000㌔から5,000㌔の距離を四日ないし六日で飛んだということはまさしく偉業である。夕方になって気温が下がると,このバッタは飛行をやめる。フランスの新聞「ル・モンド」によれば,大西洋横断飛行の際は翅を休める所も食べる物もないので,バッタは恐らく空中にじっとしていたのだろう,と研究者たちは結論している。しかし一つのこと,つまり生きて大西洋を横断したバッタよりも海で死んだバッタのほうが多いことは確かだと彼らは見ている。
『エイズよりも強力な殺し屋』
オーストラリアのある大病院の医学調査責任者は,15年にわたって肝臓の病気を研究していたが,最近,肝炎は「エイズよりもずっと強力な殺し屋」であるという警告を発し,「1年に約200万人が肝炎で死んでいるとみられるが,私の知る限り今のところエイズはその割合に達していない」と付け加えた。この人は,致死的なC型肝炎ウイルスについて人々に警告しているが,そのウイルスは肝臓を攻撃し,今のところ検出方法がない。毎年オーストラリアでは,汚染された血液の輸血によってC型肝炎にかかり死亡する人が10人ないし15人いる,と研究者たちは信じている。シドニーの新聞「ザ・オーストラリアン」は,オーストラリアで輸血に使われる血液の400パック中1パックは致死的なC型肝炎ウイルスに汚染されていると伝えた。
水質試験の名人
「水質を試験するには,名人のもとに持ち込むのが一番よい」と,ウェールズの水道局の広告はうたっている。しかし,その名人とは魚 ― しがないニジマス ― である。魚は生まれつき汚染に敏感だ。呼吸する時には,えらからわずかに電流を発生させる。水が汚染されていると,呼吸が困難になり,電流も乱れる。この電流の乱れをコンピューターでチェックし監視することができる。マスは,「我々が夢想だにしないような物質を感知し警告してくれる。これも大きな利点だ」と,英国水質調査センターの一職員は語っている。ロンドン・タイムズ紙によると,この監視システムは現在,国内はもとより世界中の関心を集めている。