世界展望
チェルノブイリ最新情報
ソ連のチェルノブイリにおける原発事故から3年半余りが経過したが,地元の住民,「特に子供たちが,甲状腺腫や白内障にかかり,無気力になっている。またガンの発生率も上昇している」。これは,マンチェスター・ガーディアン・ウィークリー紙の報道である。医学専門家の予言によれば,ある地域では,これから何万という人々が放射能のためにガンで死亡する。農場経営者たちは,「頭や脚や肋骨や目のない牛,頭蓋骨の異常な豚」など,欠陥動物の生まれる比率が上昇していると語っている。その地域の放射能値は通常の30倍だという。白ロシア,モギリョフ地方のある病院の院長,ゾーヤ・ツカホバは,「汚染地域の住民に健康的な生活を保証することはできない」と語った。
「世界最後の大いなる未開地」
入手できる天然資源の量が減少し続けているため,地表面積のほぼ10分の1を占める南極大陸が資源の新たな宝庫として注目されている。氷に覆われたこの大陸は,1959年の南極条約で保護されており,各国は自主的に採掘を控えている。ところが,油田探査や採掘に道を開くことになりかねない新しい条約が提唱されている。インタナショナル・ヘラルド・トリビューン紙によれば,南極条約加盟国のうち,オーストラリアとフランスの2か国は,この新しい条約に署名することを拒否している。オーストラリアのボブ・ホーク首相は,環境面から見た鉱物資源開発の危険性を思い起こさせる不吉な事例として,アラスカと南極での原油流出事故を引き合いに出した。そして,「世界最後の大いなる未開地として残っているこの場所の保護を強化すること」を求めた。
太陽が輝いているうちに
ドイツ連邦共和国のある建築技師は,見かけは奇妙でも性能の抜群によいソーラー・カーを設計製作した。ディー・ツァイト紙によると,その建築技師の郷里では,子供たちがその車に大喜びしている。一方,大人たちは,まるで卓球台だとかヒラメに似ているなどと口々に話す。しかし見かけはさておき,その車の出来は上々である。ソーラー・カーの世界選手権を獲得し,時速130㌔を出した。もっとも,それは電池をいっぱいに充電しての話だ。太陽光線だけに頼って走った場合は,時速30㌔しか出ない。しかも,それは太陽が輝いているうちだけである。
[28ページの図版のクレジット]
From a photo by Trykowski/Dürschner
香りの力
日本企業は,行動を変化させる香りについて実験を行なっている。日本のある専門家によれば,エアコンの排気口から出てくるそうした香りは,「療養所の不安な患者の心を落ち着かせ,工場や事務所で働く作業員の能率を高め,ストレスを緩和することが分かった」。13人のキーパンチャーを30日にわたって監視する実験を行なったところ,オフィスにレモンの香りを漂わせた場合,1時間当たりの誤りの平均回数が54%減少した。ディスカバー誌の報道によると,「ニューヨーク市の地下鉄内にどんな香りをスプレーで吹きかければ,通勤者のけんかが少なくなり,一層仲よくなるか調べるため」,心理学者が「雇われた」。
人のいない教会
ドイツ連邦共和国で行なわれた最近の調査によれば,ドイツ人の70%は神を信じており,無神論者を自任する人は13%にすぎない,とドイツの新聞「シュバインフルター・タークブラット」は伝えている。しかし,アレンスバッハ世論調査研究所による,その調査の結果では,ドイツ連邦共和国において欠かさず礼拝に出席しているのは,ルーテル派信者のわずか5%,カトリック教徒の25%であり,このうち50%は60歳を超えた人である。
コウモリと人間
ヨーロッパでは,狂暴なコウモリが人間にとって危険な存在になりつつある,とマンチェスター・ガーディアン・ウィークリー紙は伝えている。近年ヨーロッパでは,コウモリにかまれて病気に感染した例が幾百も記録されているが,問題はヨーロッパだけのものではない。1983年以来,ソ連では二人,フィンランドでは一人が,病気に感染したコウモリにかまれた結果,死亡したと伝えられる。同紙は,「現在中南米では,血を吸うコウモリの間に狂犬病が流行している」と述べている。それに加え,フランスでは最近コウモリに襲われた人から,コウモリに影響を与えている新種のウイルスが発見された。狂犬病のウイルスに似たこの新しいウイルスは,ヨーロッパ・コウモリ・ウイルスと呼ばれている。
貧しい子供たち
米国は繁栄と豊かさで知られている国である。ところが,政府機関の行なった研究によって,健康に恵まれず教育も受けていない子供たちがこの国に何百万人もいることが明らかになった。国勢調査局の調べによれば,米国の子供の5人に一人 ― 18歳以下の1,260万人 ― は最低限の生活を維持するのに必要な所得水準以下で生活している。経済学者のD・リー・ボーデンは,貧しい子供たちの増加の一因として,片親の家庭が増えていることを挙げている。米国には,片親と暮らしている子供たちが1,700万人余りいるとみられている。
旅行するマラリア
英国,フランス,オランダ,スイスなどの空港の近く,もしくは空港の敷地内でマラリアに感染したケースが数例伝えられている。マシン・デザイン誌は,この病気に感染した人の中には,過去1年間に海外旅行をしていない人もいると述べ,こうした状況は,「長距離飛行で空港に到着した蚊によってマラリアが伝染した」ことを示唆していると付け加えている。
年若い婦女暴行魔
メディカル・アスペクツ・オブ・ヒューマン・セクシャリティー誌によると,米国内で生じた150万件の性的暴行,および婦女暴行未遂のうち,その半数近くは青少年の暴行魔によることが最近の調査で明らかになった。米国で行なわれた別の調査では,研究者たちが次のことを突き止めた。「青少年の婦女暴行魔のうち,72%は事件当日に一種類以上の麻薬を使用していた。54%はアルコール,44%はマリファナ,25%はその他の麻薬を使用していた。……43%は暴行の際に酔っていた」。同誌の報告によると,暴行魔はアルコールの勢いで,極度の暴力や力を使って暴行に及ぶことが少なくないようである。
模造のハチ
1945年に,動物学者カール・フォン・フリッシュは,働きバチのダンスが非常に複雑な信号であることを突き止めた。つまり,ハチは新しく見つけた花蜜のありかを,ダンスによって仲間のハチに知らせるのである。フリッシュは後に,この発見でノーベル賞を受賞した。それ以来,科学者たちは,同じことができるロボットのハチを作ろうと試みてきたが,結果は思わしくなかった。偽物のハチは狂ったようにダンスをするが,本物のハチには大抵無視された。しかしドイツの新聞「ハノーフェルシェ・アルゲマイネ」によれば,科学者たちは,ダイヤモンドの基部に小さな翅を付けて,ロボットのハチを作った。その翅はダンスに不可欠な独特の音を発する。デンマークで試したところ,このロボットはほかのハチの注意を引いた。ハチはロボットに襲いかかり,刺して殺そうとした。しかし別の町のハチは,いんちきなダンスを真に受けて,花蜜を探しに行った。
増加する自殺
◻ トロント・スター紙の伝えるところによると,1980年代に,年配の男性の自殺率はカナダ史上最悪のものになった。統計は自殺者の80%が男性であることを示している。ベイクレスト老人医療センターの精神科主任代理のデービッド・コーン博士は,体の病気,潜在的なアルコール中毒,退職や家族を亡くした後の孤独感などが重なった状況を,考え得る原因として挙げている。同紙は,「うつ病の人が飲酒をすると,自殺したいという考えを抱く場合がある」と述べている。警告となる兆候には,ほかにどんなものがあるだろうか。カナダ保健福祉局で精神衛生の相談員をしているバーバラ・ディバックは,医薬品を備蓄すること,自分の葬式を計画すること,遺言を変更すること,臓器を移植のために寄贈すること,いつも死のことばかり考えていることなどを挙げている。
◻ 南アフリカはヨハネスブルクのサタデー・スター紙は,同国における自殺の原因として考えられるものの一つとして,「諸教会が死後の世界を魅力的なものに描いていること」を挙げている。そして同紙は,「死後の命のなぞに魅せられると」自滅につながることを指摘し,自殺を遂げた16歳の少年の例を引用している。新聞の伝えるところによれば,この少年は遺書の中で,「死後の命を見いだすという理由だけのために自殺することにした,と家族に書き残していた」。
虐待か訓練か
米国で237人の受刑者を対象に,子供が暴力的な大人になる理由についての調査が行なわれた。サイエンス・ダイジェスト誌の1990年1月号によると,「子供のころ親に蹴られたり殴られたりしたと答えた受刑者の87%は凶悪犯だった」。親がもう一方の親をたたくのを目撃した子供も,同じような影響を受けた。しかし,罰として子供のしりをたたくこと自体は,子供が暴力的な大人になる要因ではなかったようだ。