読者からの質問
■ ある人が“忠実を誓う宣言書”に署名した後,その取り決めの破棄される場合がありますか。
この質問は,大多数の国には適用されない一つの備えに関するものですから,まずその厳粛な暫定的取り決めがどういうものかを調べましょう。
「ものみの塔」誌,1977年7月1日号には,一部の国々に存在するある種の問題が取り上げられました。聖書的な根拠に基づく離婚は神により許されていますが,一部の政府は離婚という備えを設けていません。(マタイ 19:9)あるいは,法律的な理由により,離婚成立までに多年を要するなど,離婚が非常に困難な場合があるかもしれません。そのため,その号の雑誌の中で,エホバの証人にはそのような国々においてのみ適用される一つの譲歩事項があることが説明されました。すなわち“忠実を誓う宣言書”に関する事柄です。その取り決めの一例として,次のような場合を考えてみてください。
ある女性が,法律上の妻と何年も前に別居した男性と一緒に生活している間に(そして,その男性との間に子供もいるような状況下で)キリスト教の真理を知るようになります。真理に関心を抱くようになったこの女性は,相手の男性に対して忠実であり,その男性と正式に結婚したいとも思っていますが,その男性が法律上の妻と離婚することは法的に許されないので,正式には結婚できません。したがって,会衆の長老たちは,そのほかの面ではその女性とその男性との関係は神に受け入れられると確信できるなら,“忠実を誓う宣言書”に署名することをその女性に許可するでしょう。その女性は宣言書の中で,現在の関係を合法的なものとするために手を尽くしてきたこと,この宣言書が拘束力を有することを神の前で認めていること,可能になれば直ちに法律的に正式な結婚をするようにし,自分がクリスチャン会衆の一員になれるようにしたこの宣言書を破棄するつもりであることを述べます。
しかし,次のような質問が生じます。その女性(あるいは,そういう状況下にいる人)がそのような宣言書によって会衆に入ったのに,その宣言書を無効にする,あるいは無効にできるような何らかの事態が生じるのでしょうか。
そもそもその宣言書は,それに署名した人が『現在の関係をエホバ神およびすべての人の前で拘束力を持つきずな,神の言葉の示す原則に全く一致して継続し尊重すべきものと認める』ことを宣言するものです。ですから,会衆の見地からして,その宣言書には合法的な結婚と同じように道徳的な拘束力があります。しかし,配偶者が死亡した時には,結婚関係も,そのような宣言書の下での結び付きも無効とされます。(ローマ 7:2)また,聖書には,配偶者にポルネイア(結婚関係外の性的な不道徳)の罪がある場合,潔白なほうの側は離婚することができる,と述べられています。(マタイ 5:32; 19:9)これに対応して,“忠実を誓う宣言書”の下でも,配偶者の不道徳行為は,潔白な側が望むならば,二人の結び付きを無効とする根拠となり得ます。潔白な側のクリスチャンは,その不忠実を長老たちの前で立証しなければならないでしょう。これによってその宣言書は破棄されます。それから後は,潔白な側は聖書的な意味で自由になります。
会衆が,“忠実を誓う宣言書”には合法的な結婚と同じように道徳的な拘束力があるとみなすことを考えると,それに関連した一つの問題が持ち上がります。これは,以前にあった,結婚を妨げる障害が除かれる時に生じます。例えば,さきの例で考えると,男性の法律上の妻が死亡したり,政府が離婚を法的に認めたりするかもしれません。また,その男性にはクリスチャンのその女性と正式に結婚する意志があります。その場合,その姉妹が今さら結婚を合法的なものにするのは面倒だというような理由で,あるいは物質的な利点を幾らか失うかもしれないと考えて,“忠実を誓う宣言書”の下にとどまり続けることはできません。自分の宣言に一致して,今度は自分たちの結び付きを法的に認可してもらうための処置を取らなければなりません。さもなければ,会衆はその宣言書を無効としますから,その姉妹はその男性と別居しなければならなくなるか,排斥されることになるでしょう。
しかし,未信者のその男性が正式な結婚を拒むならどうでしょうか。その姉妹が宣言書に署名した時,会衆は二人の結び付きを拘束力のある道徳的なものとみなしました。その姉妹が同棲している未信者の男性に自分たちの結び付きを合法化するよう強要できないという事実のために,その結び付きが不道徳なものとなるわけではありません。ですから,その姉妹は配偶者として引き続き忠実さを示せます。その未信者と別居する必要はありませんが,自分たちの結び付きを法律にのっとったものとするようねばり強い努力を続けるべきです。(この点では,1985年11月1日号の「読者からの質問」にある説明に調整が加えられています。)― 裁き人 11:35; ルカ 18:1-5と比較してください。
もちろん,両人が宣言書に署名し,二人ともバプテスマを受けたクリスチャンとなったのであれば,事情は違ってきます。この場合両人は,政府による障害が除かれたなら合法的な結婚関係に入るということを厳粛に誓いました。その障害が除かれた時点で宣言書は破棄されるでしょう。両人は道理にかなった期間内に自分たちの誓いを果たすか,そうせずに会衆にとどまるためには,別居しなければなりません。(「ものみの塔」誌,1982年12月1日号の「読者からの質問」と比較してください。)もし両人が実際に別居するなら,道徳的に拘束力のある宣言書はそのまま適用されますから,ほかのだれかと一つに結ばれる自由はどちらの側にもありません。―コリント第一 7:10,11と比較してください。
“忠実を誓う宣言書”の取り決めは,大多数の地域には適用されることがないとはいえ,以上の論議は,「結婚はすべての人の間で誉れあるものとされるべきです。また結婚の床は汚れのないものとすべきです。神は淫行の者や姦淫を行なう者を裁かれるからです」という,どの地域でも適用される聖書の規準に基づいています。―ヘブライ 13:4。