アドバイスするとき，ヨブ記が役立つ

1-2. ヨブの3人の友人とエリフは，どんな難題に取り組む必要がありましたか。

裕福なヨブが全てを失った，という衝撃的なニュースが広まります。ヨブの身に降り掛かったことを聞いたエリパズ，ビルダド，ツォファルは，ヨブを慰めるためウツにやって来ます。3人は苦しんでいるヨブの姿を目の当たりにしてショックを受けます。

² ヨブは何もかも失っていました。たくさんの羊や牛，ラクダやロバを奪われ，子供たちや召し使いたちを殺されました。子供たちがいた家も倒壊してしまいました。追い打ちをかけるように，ヨブの体には痛みの伴う腫れ物ができました。憔悴して灰の中に座っているヨブを，3人の友人は遠くから眺めています。彼らはどうするでしょうか。耐え難い苦痛を味わっているヨブが目の前にいるのに，なんと7日間もヨブに一言も話し掛けませんでした。（ヨブ 2:12，13）そこへ，エリフという若い男性がやって来て3人の近くに座ります。ついにヨブが沈黙を破り，「いっそ生まれてこなかった方がよかった」と言います。（ヨブ 3:1-3，11）ヨブは慰めてもらう必要がありました。では，エリフと3人の友人はヨブに何を言うでしょうか。どんな言い方をするでしょうか。そこに，本当にヨブのことを気遣っているかどうかが表れます。

3. この記事ではどんなことを学びますか。

³ エホバは，3人の友人とエリフが言ったことやしたことをモーセに記録させました。注目したい点があります。エリパズの発言の一部は邪悪な天使の影響を受けていたと思われます。一方，エリフの発言はエホバの聖なる力に導かれていました。（ヨブ 4:12-16; 33:24，25）それで，ヨブ記には最高のアドバイスと最悪のアドバイスの両方が含まれています。ヨブ記を読むと，アドバイスするときに覚えておきたいことが学べます。まず3人の友人の悪い例を，次にエリフの良い例を考えます。そういう記録がどのようにイスラエル人にとってためになったか，現代の私たちにどのようにためになるかも学びます。

3人の友人はどのようにアドバイスしたか

4. 3人の友人のしたことがヨブにとって慰めにならなかったのはどうしてですか。（挿絵も参照。）

⁴ 3人の友人は，つらい思いをしている「ヨブに同情して慰め」るために来ていました。（ヨブ 2:11）でも，慰めるためにしたことが逆効果になってしまいました。どうしてでしょうか。少なくとも3つの原因があります。1つ目に，ヨブの話をきちんと聞きもせず，結論を急いでしまいました。例えば，ヨブが苦しんでいるのは犯した罪の罰を受けているからだという考え違いをしました。a （ヨブ 4:7; 11:14）2つ目に，3人のアドバイスは不親切でヨブを傷つけました。もっともらしく聞こえても，中身のないアドバイスでした。（ヨブ 13:12）ビルダドはヨブに，いつまで話し続けるのかと2度も冷たく言いました。（ヨブ 8:2; 18:2）ツォファルは，ヨブが「愚か」だと決め付けました。（ヨブ 11:12）3つ目に，3人はヨブに声を荒げることはなかったかもしれませんが，見下した，嫌みっぽくて責めるような話し方をしました。（ヨブ 15:7-11）結局のところ，3人は傷ついたヨブの心を癒やし，エホバをもっと信じるよう助けるどころか，ヨブの間違いを証明することに夢中になってしまいました。

5. 3人の友人のアドバイスはヨブにどんな影響を与えましたか。

⁵ ヨブが3人の言葉に慰められるどころか，打ちのめされたのも当然です。（ヨブ 19:2）自分を弁護したくなったのも無理はありません。ヨブはバランスの取れた考え方ができなくなり，言うべきではないことを言ってしまいます。（ヨブ 6:3，26）3人は，エホバがヨブに伝えたいと思っていることを話すことができませんでした。ヨブを思いやることもできませんでした。そのつもりはなかったとはいえ，サタンにいいように使われてしまいました。（ヨブ 2:4，6）ヨブの物語のこの部分はイスラエル人にとってどのようにためになったでしょうか。私たちにとってはどのようにためになりますか。

6. イスラエルの長老たちは，ヨブの3人の友人たちの悪い例からどんなことを学べたはずですか。

⁶ イスラエル人にとってどのようにためになったか。エホバはイスラエル国民に律法を与えた後，民を正しく裁くため，信頼できる男性たちを選びました。（申 1:15-18; 27:1）そういう長老たちは，アドバイスしたり裁いたりする前にまず相手の話をよく聞く必要がありました。（代二 19:6）自分が全ての事実を知っていると思い込むのではなく，質問することも大切でした。（申 19:18）助けを求めてきた人たちに，きつい話し方をするべきではありませんでした。いらいらした気持ちが伝わると，相手は心を閉ざして本当のことを言わなくなってしまうかもしれません。（出 22:22-24）イスラエルの長老たちは，ヨブの物語からたくさん学べたはずです。

7. イスラエル人はヨブの物語からどんなことを学べたはずですか。（格言 27:9）

⁷ 仲間にアドバイスしたのは長老たちだけではありませんでした。老若男女を問わず，全てのイスラエル人がお互いにアドバイスできました。改善点を指摘したり，仲間がエホバともっと親しくなれるようにしたりするためです。（詩 141:5）相手のためを思ってアドバイスするのは，本物の友情の証しです。（格言 27:9を読む。）イスラエル人は誰かにアドバイスしようと思うとき，ヨブの3人の友人を反面教師にできたはずです。アドバイスするときにどんなことを言うべきではないか，どんなことをするべきではないかが学べたからです。

8. アドバイスするとき，どんなことに気を付けるべきですか。（写真も参照。）

⁸ 私たちにとってどのようにためになるか。私たちは，兄弟姉妹が苦しんでいるとき力になりたいと思います。でも，ヨブの3人の友人のようになってはいけません。まず，アドバイスする前によく事実を確認します。結論を急いだりしません。次に，聖書を基にしてアドバイスします。エリパズのように，自分の考えで話すべきではありません。（ヨブ 4:8; 5:3，27）さらに，相手を責めるような冷たい話し方をしないようにします。もちろんエリパズもほかの2人も，正しいことを何も言わなかったわけではありません。後にパウロがエリパズの言葉を引用したほどです。（ヨブ 5:13をコリント第一 3:19と比較。）でも3人はほとんどの発言の中で，エホバについて事実とは違うことを言い，ヨブを傷つけました。それで，そのことをエホバからはっきり指摘されました。（ヨブ 42:7，8）私たちもアドバイスするとき，相手に「エホバは厳しい」とか「エホバは愛してくれていない」などと思わせたくはありません。次にエリフから学べることを考えましょう。

エリフはどのようにアドバイスしたか

9. 3人の友人とのやりとりの後，ヨブが慰め正してもらう必要があったのはどうしてですか。エホバはどうやってヨブを助けましたか。

⁹ ヨブと3人の友人のやりとりの後，その場の空気はとても張り詰めていたはずです。聖書の28の章にも及ぶ長い話し合いでしたが，ほとんどは怒りやいら立ちに任せた発言でした。ヨブは心の傷が全く癒えていません。慰めてもらい，正してもらう必要があります。エホバはどうやってヨブを助けるでしょうか。エリフを通してヨブにアドバイスします。でも，エリフはすぐに話さず，ヨブと3人の友人の話し合いが終わるのを待っていました。どうしてでしょうか。こう言っています。「私は若く，皆さんはお年を召しています。それで私は敬意を込めて身を引き……ました」。（ヨブ 32:6，7）エリフは，人生経験のある年長の人の方が，若い人よりも知恵があるということを分かっていました。確かにその通りです。でも，エリフはヨブと3人のやりとりを聞いて，黙っていられなくなりました。こう言っています。「ただ年を取れば賢くなるのでも，ただ年を重ねれば正しい事を理解するのでもありません」。（ヨブ 32:9）では，エリフはどんなことをどんなふうに話すでしょうか。

10. エリフはヨブにアドバイスする前に何をしましたか。（ヨブ 33:6，7）

¹⁰ エリフはヨブにアドバイスする前に，まず自分の感情をコントロールしました。聖書によると，エリフはヨブの話を聞いて怒りを感じていました。（ヨブ 32:2-5）それでも腹立ち紛れにヨブを非難したりはしませんでした。それどころか，「見てください，真の神の前で私はあなたと同じです」と言って，ヨブをほっとさせました。そうやって，緊張した雰囲気を和らげるようにしました。（ヨブ 33:6，7を読む。）それからエリフは，ヨブの6回の発言のポイントを簡潔にまとめて，ヨブの話をよく聞いていたことを伝えます。（ヨブ 32:11; 33:8-11）エリフは，その後ヨブにアドバイスした時も，ヨブの言葉を繰り返しています。（ヨブ 34:5，6，9; 35:1-4）

11. エリフはヨブにどのようにアドバイスしましたか。（ヨブ 33:1）

¹¹ エリフは，ヨブに思いやり深く敬意を込めてアドバイスしました。例えば，ヨブに名前で呼び掛けました。ほかの3人は一度もそうしなかったようです。（ヨブ 33:1を読む。）それに，アドバイスするときも，ヨブにも話すチャンスを与えました。もしかするとエリフは，ヨブと3人のやりとりを聞いていて自分も話したいという気持ちになったことを思い出したのかもしれません。（ヨブ 32:4; 33:32）ヨブの間違った考え方をはっきり指摘しつつ，エホバの知恵や力，公正さ，揺るぎない愛に目を向けられるよう優しく助けました。（ヨブ 36:18，21-26; 37:23，24）こういうエリフのアドバイスのおかげで，ヨブはエホバからのアドバイスを聞く心の準備ができました。（ヨブ 38:1-3）エリフの手本は，イスラエル人にとってどのようにためになったでしょうか。私たちにとってはどのようにためになりますか。

12. エホバは預言者たちを通して，どのようにイスラエル国民を助けましたか。イスラエル人はエリフからどんなことを学べたはずですか。

¹² イスラエル人にとってどのようにためになったか。エホバは預言者たちを通してイスラエル人を教え，正しました。例えば，裁き人の時代，デボラがまるで母親のように国民を守り，世話しました。サムエルは若い頃からエホバのメッセージをみんなに伝えました。（裁 4:4-7; 5:7。サム一 3:19，20）王たちの時代にも，エホバは次々と預言者たちを遣わしました。国民が正しくエホバを崇拝できるよう助けるため，またエホバに従わなくなった人たちを正すためです。（サム二 12:1-4。使徒 3:24）そういう役割を任されたイスラエル人は，ヨブ記に出てくるエリフから，アドバイスするときに何をどのように言うべきかが学べたはずです。

13. どのように仲間を元気づけることができますか。

¹³ 私たちにとってどのようにためになるか。私たちも，預言者たちのように神の考えを聖書から人に伝えます。また，言葉で仲間の兄弟姉妹を慰め，元気づけます。（コリ一 14:3）長老たちが兄弟姉妹に「慰めの言葉を掛け」るのは特に大切なことです。感情的になったり「言葉が過ぎ」てしまったりする人にもそうします。（テサ一 5:14。ヨブ 6:3）

14-15. 長老はアドバイスするとき，どのようにエリフに倣えますか。

¹⁴ 例えばある長老が，会衆の姉妹が落ち込んでいる，と聞いたとします。それで長老はほかの兄弟と一緒に，姉妹を励ますために家に行きます。姉妹はネガティブな気持ちを口にします。集会にも奉仕にも行っているけど楽しくない，と言います。長老はどうするでしょうか。

¹⁵ まず，兄弟は姉妹がそのようにつらく感じている本当の理由を知ろうとします。そのために姉妹の話をじっくり聞きます。自分はエホバに愛してなんかもらえないと感じているのでしょうか。「生活上の心配事」でいっぱいいっぱいになってしまっているのでしょうか。（ルカ 21:34）それから，姉妹のよく頑張っているところを褒めます。例えば，気持ちが晴れなくても集会に出席し，伝道に出ていることです。姉妹の状況や落ち込んでいる理由が分かったら，長老は聖書を使い，エホバが姉妹を愛していることを信じられるように助けます。（ガラ 2:20）

ヨブ記から学び続ける

16. ヨブ記はどのように役立ちますか。

¹⁶ ヨブ記は本当にためになる本です。前の記事で考えたように，つらいことが起きるのを神が止めない理由や，苦しいときもどんなふうに忍耐できるかを学べます。この記事ではどうすれば良いアドバイスができるかを考えました。ヨブの3人の友人ではなく，エリフに倣いましょう。誰かにアドバイスするときには，ヨブ記から学んだことを思い出してみるのはどうでしょうか。最近ヨブ記を読んでいないなら，ぜひ読み返してみましょう。ヨブ記は今でもとても役立つ本だからです。