脚注
a アメリカ合衆国対ジョージ・ウイルソンの訴訟事件。この事件は1830年6月14日ジャクソン大統領の出した特赦を受け入れることを,この人が拒否したために起きました。最高裁判所の判決は次のように述べています。「本人が恩赦の益を請求し請願また要請によってそれに頼らないかぎり,法廷が恩赦の益を囚人に与えることはできない。この場合,請求の形式は問題ではないが,何らかの形による本人の請求が必要である。それは彼に与えられるものであり,彼の所有に帰するものである。彼はそれを受け入れることも拒絶することもできる……恩赦はそれに先だつかあるいはそれに伴う条件を付して与えられることがある。そしてこの条件を履行しなければ,罰を受けることもある……恩赦の条件が囚人に受け入れられないものであったと仮定しよう。たとえば追放が恩赦の条件であり,宣告された刑のほうが軽い罰であると本人が考えるならばどうであろうか。一時の誘惑によって犯した罪の償いをするには,刑を受けるほうが自分の益になると考えたとすれば,どうであろうか……」
マーシャル首席判事は最高裁判所の意見としてアメリカ合衆国政府に次のことを指摘しています。「恩赦には条件の付されることがある。そして宣告された刑よりも恩赦の条件のほうが好ましくない場合もあり得る……当法廷の意見によれば,この件における恩赦は請求,要請その他によって法的に法廷に提出されたものでないゆえに,判事はこれをとりあげることができない……」
したがってジョージ・ウイルソンを助命することのできた恩赦も,彼に対する判決を左右することはありませんでした。―32U.S.(7Peters),page150 ff.