不穏な状態が広く見られるのはなぜですか
1 今日の世界の不穏な状態について,不思議に思われることはなんですか。
今日,不穏な状態が世界の諸方それも意外なところに見られます。暴動はどんな場所にでも突然に起きます。自分の意見を自由に表明できる民主主義の国々では,些細なことからデモが行なわれ,暴動さえも起きます。避暑地その他においてさえ,理由なしに,また主義主張とはなんの関係もなしに群衆が乱暴して物をこわし,罪のない人々を傷つけたり,殺したりします。いわゆる自由諸国のみならず,政府の統制が強いソ連,中国などの共産主義諸国においても,事態は変わりません。“文明”からどんなに遠くへだたっていても,たとえば簡素な生活を送り外の世界と没交渉であったアフリカの奥地でも,暴動が起きます。それはいったいなぜですか。
2 不穏な状態の原因はなんですか。世の宗教はそれをしずめるのに力となりましたか。
2 それは世界にゆきわたっている,ある精神が不穏な状態をひきおこしているためです。この精神は,それをひろめることが単に人間や人間の組織に依存していないため,非常に広範囲にゆきわたっており,あらゆる場所で同じ実を生み出しています。世の宗教や思想が霊的な健康を人々に与えていないために,それはいっそう大きな働きをしています。世の精神と戦う力は,世の宗教や思想からは得られません。キリスト教国の宗教指導者は「神は死んでいる」と言い,その宗教自体もほとんど死んだものであって,人々の必要とするものを与えることができません。仏教,神道,回教など,世のすべての宗教は解決策を持たず,むしろ問題を大きくしているのが実情です。他方,無神論の共産主義も失敗しています。最近モスクワの学生の一グループが行なったデモの時,ある者は「信ずることのできるものを与えよ」と叫んでいました。
第七の災いは空中に注がれる
3 第七の災いが空中に注がれたことは,なぜ甚大な影響を及ぼしたのですか。
3 聖書の黙示録に描かれている七番目の災いと関係があるのはこの精神です。「第七の者[天使]が,その鉢を空中に傾けた。すると,大きな声が聖所の中から,御座から出て,『事はすでに成った』と言った」と,しるされています。(黙示 16:17)鉢が,精神にではなく空中に傾けられたと聖書に述べられているのはなぜですか。黙示録の与え主は,それ以前の災いにおいて「海」「地」「川」を象徴的な意味に用いており,この場合も空中ということばを象徴的な意味に用いているのです。ここに述べられているのは,放射能を持つ降下物質によって,人間の呼吸する空気そのものを汚す核爆発の大気汚染ではありません。もっとも核爆発によって大気はすでにある程度汚されています。広範囲な汚染はすべての人にとって致命的なものとなるでしょう。人の呼吸する空気は生命そのもの,わたしたちの魂を意味するからです。(創世 6:17; 7:15,22。ヨブ 9:18)食物をとらなくてもかなりの期間生きることができ,水を飲まなくても何日か生きられます。しかし空気を断つならば,その結果は瞬時に現われます。ゆえに第七の災いが空中に注がれることは,地と海と川と水の源にそそがれた以前の災いとくらべて,それが大きな災いであることを示しているのです。
4 空気に関して,異教の宗教はどんなことを信じていましたか。
4 空気が何を象徴しているかは,聖書また昔の宗教の信条をしらべる時に明らかとなります。古代バビロニア人は,悪霊や悪鬼が空中に住むと考えていました。彼らが恐れた七つの悪霊のうち,第一の者は南風,第六の者はつむじ風,第七の者は嵐(ハリケーン)でした。また悪霊の三位一体があり,病気をおこす悪霊はそれだけで一つの階級を成していたようです。しかし悪霊にはそれぞれ名前があり,また何らかの恐ろしい形をしているものと考えられていました。ピタゴラスの追随者は,空中に霊者が住み,空中の帝国を司るかしらの霊者の支配下にあると信じていました。このような霊者は力のあるものであり,しかも悪いしわざをするものであって,人間を悪にかりたてるものと考えられていたのです。
5 (イ)「空気」を意味するギリシャ語はどんなことばですか。(ロ)精神を空気また風にたとえることができるのはなぜですか,
5 これらの悪霊の住みかと考えられていた「空中」ということばは,聖書のギリシャ語で言うと,エアロプレイン[飛行機]という英語のことばに含まれているエアということばです。空気の動きは風となって力を起こします。人々はこの世の精神を空気のように吸い込み,したがってこの世の精神の及ぼす力を受け,そのことを行動に表わします。神の怒りの最後の鉢を傾けられるほど,神の大きな怒りを受けているこの力は,何者によって支配されていますか。聖書をしらべてみましょう。
世の精神を支配する者
6 サタン悪魔をさして,「空中の権を持つ君」と言える理由を説明しなさい。
6 聖書は霊者の住む,見えない領域のことを述べています。霊者すなわち天使は人間よりも力があり,人の住む地球を取り囲んでいる大気が存在しない,星の間の空間を動き回ることができます。そして言うまでもなく,人間の呼吸する空気を必要とせず,その影響や支配を受けません。彼らは空気のように目に見えません。しかし人間の行動を左右する力を及ぼし,実際に人間を動かす時,彼らは空中の権を持つと言えます。聖書はこの表現を用い,サタン悪魔をさして,「空中の権をもつ君,すなわち,不従順の子らの中に今も働いている霊」また「空中の権威をもつ支配者」と述べています。―エペソ 2:2,口語訳,新世訳。
7 (イ)サタン悪魔は人間に対してどんな力を持っていますか。いつその力を得ましたか。(ロ)死をもたらすサタンの力が用いられた例をあげなさい。
7 ゆえに,神に敵対する世の精神はサタンに支配されている精神であり,また反逆したその初めから神に敵対してきたサタン自身の精神でもあります。サタンの力を過小評価して自分をあざむいてはなりません。サタンは霊者であり,強力な生き物です。そしてヘブル人への手紙 2章14節によれば,死をもたらす手だてを持つ者です。サタンは,エデンの園においてアダムとエバを罪におとしいれて,二人の子孫である全人類に死をもたらした時,その力を得ました。人類を罪におとしいれて以来,サタンは人間の不完全さにつけ込んで一部の人間を堕落させ,また特に戦争の時には人々を殺人にかりたてます。ヨブの忠実をためすため,サタンに特別な許しが与えられた時,ヨブの子供10人か嵐で殺されました。ヨブ記に描かれた天の光景の中で,サタンは神の前に現われたことが示されています。エホバの問いに答えて,サタンは自分の行動につき,地のここかしこを歩き回ってきたと述べています。それでサタンはおそらく空中すなわち地球の大気圏内を動き回って,人間を神に敵対させる活動を行なっていたのでしょう。―ヨブ 1:7,18,19; 2:2,6。
8 サタンが神のしもべを苦しめることを許されてきたのはなぜですか。サタンはどんな手段を用いて「不従順の子ら」を支配してきましたか。
8 ヨブ記に明らかにされているように,神の主権に関する論争およびそれに関連した,神に対する人間の忠実という問題を解決するために時が許されている間,エホバ神はサタンが地に出入りして神のしもべを試みることを許していられます。それで悪霊の強力な組織を持つサタンは,空中の権を持つ支配者と呼ばれているのです。ゆえに人類の中の不従順な子たちは,サタン悪魔の精神をいわば吸い込んでいると言えます。彼らはこの精神に動かされ,サタンを神とするこの事物の制度に従った生き方をします。―エペソ 2:2。コリント第二 4:4。
世の精神に対する神の怒り
9 第七の鉢が傾けられた時,その中味はどこにそそがれましたか。それは何を示していますか。
9 これらの事からわかるように,第七の天使がその鉢を空中に傾けた時,天使は,サタン悪魔が影響を及ぼしている領域と悪魔の精神および人間に見られるその実に対して神の怒りをそそいだのです。これは地上の人間がその生活の中に表わしている悪魔の精神が,神の怒りを受けていることを示しています。またその上に神の怒りが災いとなって注がれていることは,サタンの領域およびこれら不従順の子らが破滅に直面していることを物語っています。それは毒された空気が,それを呼吸する人間にとって災いになるのと同様です。
10 「事はすでに成った」と言ったのはだれの声ですか。その声が聖所から聞こえたのはなぜですか。
10 第七の鉢が傾けられると同時に天の聖所から聞こえた大声は,だれの声ですか。それはほかならぬエホバご自身の御声です。黙示録 15章8節には,災いの終わるまで聖所にとどまる神の決意が示されています。鉢を傾けた天使たちは神に報告しなければなりません。この災いは,神の怒りの表現を全うするに足るものでした。それは人間が生きるために最も重要なものの一つ,すなわち空気の中に注がれました。いま天使は聖所にもどり,任務を従順にはたしたことを報告できます。―黙示 16:17。
11 (イ)サタンの攻撃のおもな目標となっているのはだれですか。(ロ)いまどんな戦いが行なわれていますか。現在それが激しくなっているのはなぜですか。
11 サタンとその悪霊の組織は,キリストの霊的な兄弟のうち地上に残る者たちに攻撃のほこ先を向けています。彼らは,地的な希望を持つ「他の羊」の大ぜいの群衆とともにサタンと悪霊に立ち向かいます。イエス・キリストが王権を執られたのにつづいてサタン悪魔と悪霊が天を追われた西暦1914年以来,とくにそう言えるのです。その時以来サタンと悪霊は地球の大気圏に束縛され,そのことは神のしもべにいっそうの試練をもたらす結果となりました。またあらゆる艱難が人類に臨む結果ともなっています。サタンはその時の短いことを知っているからです。これら目に見えない,神と人間の敵は,地上のあらゆる場所で同時に不穏な状態をかもし出すことができます。ゆえにまことのクリスチャンはどんな人間あるいは地上の政府とも戦うのではなく,見えない天の悪霊と戦うのです。―黙示 12:5-12。エペソ 6:11,12。
クリスチャンは第七の災いを宣明する
12 (イ)エホバの証人はどんな武器をとって戦いますか。彼らが災いを宣明する特権に恵まれているのはなぜですか。(ロ)第七の災いがそそがれたことは,特に何によって明らかにされましたか。
12 サタンと悪霊との戦いにおいてこれらのクリスチャンすなわちエホバの証人は,バビロン的な宗教のまちがった教義およびサタンの精神が生み出したイデオロギーと戦うために,みたまの剣である神のことばを使ってきました。ゆえに彼らは災いを宣明する特権を与えられたのです。第七の鉢に関連して神の怒りが宣明された明らかな証拠は,1928年8月5日,日曜日の朝,現在エホバの証人と呼ばれ,当時は聖書研究生と呼ばれた献身したクリスチャンの,ミシガン州デトロイトにおける大会で示されました。「サタンに敵し,エホバの側に立つ宣言」と題する決議が,ものみの塔聖書冊子協会の当時の会長J・F・ラザフォードによって提出されました。その第三条は次のように述べています。
13 1928年の国際大会において採決された宣言の第三条から,それが悪魔の“空気”にそそがれたものであることを示しなさい。
13 第三……サタン悪魔は諸国民を争わせ,すべての残酷な戦争,悪しき殺人,凶悪な犯罪,他のあらゆる腐敗の原因となってきました。現在に至るまで,サタンが力と影響を人間に及ぼすことは,エホバによって許されてきました……何世紀もの間サタンは世の見えない支配者であり,常にエホバ神の御名を汚し,人々と諸国民に大きな害を与えてきました。
14 宣言および「人々の支配者」と題する講演を聞いた人は何人ですか。
14 決議の提出に続いて行なわれた公開講演は「人々の支配者」と題して決議を裏づけたものであり,1万2000人の聴衆に加え,106の放送局を通して多くの人々がこれを聞きました。この話の中で講演者は次のように述べて,人類に対する悪魔の影響を暴露しました。
15 エホバ神に敵対し,人類に働きかけている悪魔の影響を暴露した講演「人々の支配者」の引用文の要点を述べなさい。
15 「……聖書はこの者をサタン,へび,龍および悪魔の名で呼んでいます。今まで行なわれた,すべての不義の戦い,人間の犯したすべての残酷な殺人は,サタン悪魔の影響によるものです。なぜなら,サタンは最初の人殺しであり,偽りの父でした。(ヨハネ 8:44)不当な仕打ちと圧制に泣く人々の涙も,その原因をたずねるなら,サタンの影響に帰せられます。サタンは大いなる悪しき圧制者だからです。(詩 72:4)クリスチャンととなえる人々の間に存在してきた,すべての悪意,宗教的偏狭とクリスチャンの迫害とは,サタンの責めに帰せられるべきものであり,エホバ神に対する中傷と,聖なる御名に対する汚しごとは,サタンから出たものです。
「……イエスを死なせたのは,この世の見えない支配者サタンでした。御子に対するこのような悪しき迫害がエホバ神からのものであるはずはありません。その時から今日に至るまで,クリスチャンは激しく迫害されてきました……
「その後ローマ人はクリスチャンを迫害してその多くを死においやりました……
「すべての証拠は,このような悪行に対する責任者がサタンであることを示しており,またこの結論はイエスのことばとも一致しています……クリスチャンの戦いは人間に対するものではなく,目に見えないサタンと,サタンの悪の軍勢に対するものです……。―エペソ 6:11,12,ウェイマウス訳」。
講演者はこの世におけるサタンの悪を詳しく述べ,いろいろな出版物から引用しました。そして次のようにことばを続けています。
「エホバが残酷で血に飢えた神であるという非難をよく聞きますが,その非難は全くまちがっています。エホバは生命の唯一の源であることを心に留めてください……エホバ神は悪魔の組織をまもなくくつがえし,地に正義を回復されます……
「……この宣言は,全創造物の共通の敵に対するものです。それは何世紀もの間エホバ神の御名を汚し,人間を限りなく苦しめてきた敵に対するものです。それはサタンおよび暗黒と悪の中にいるサタンの同盟者に対するものです。それは,サタンの悪の支配がまもなく終わりを告げ,エホバ神が御名と人々の救いのため,地の全国民を祝福する正義の政府を建てられることを証しします」。
16 ラジオ聴取者をも含む聴衆が聞いたこの話は,どのようにさらに広く伝えられましたか。
16 決議は大会で採決されました。決議および「人々の支配者」と題する講演は冊子に印刷され,多くの言語で全世界に何百万冊も配布されました。この同じ大会で,8月3日には「政府」と題する本が発表されて多くの言語で配布されはじめました。これは,見えない悪の支配者サタン悪魔の支配する「空中」に神の怒りが注がれていることを人々に知らせるものでした。
多くの人が宣明に応じて行動を起こす
17 第七の災いの宣明によって,多くの人はどんな事実に目ざめましたか。
17 この時まで何百万の人々は,サタンがこの事物の制度の神であり,神に対する不従順の精神をこの世に満たして悪意のある影響を人々の生き方におよぼしていることに気づいていませんでした。また何百万の人々はこの時にいたるまで次のことを悟ってはいなかったのです。すなわち1914年以来,世界が艱難に遭遇してきたのは,サタンの活動がいま地に限定されたためであり,全人類を神に敵対させて滅びにおとしいれようとするサタンの必死の活動のためであるということです。
18 (イ)この世の精神の影響を避けるのは,なぜ今とくに緊急なことですか(ロ)第七の災いの宣明は1963年,どのように力を加えられましたか。
18 このことが世界に宣明されてから,すでに38年以上になります。この世の精神を避けるようにとの警告が発せられ,キリストの国の下に保護を求め,神の霊すなわち神のことばと戒めに従順を示す精神を導きにすることがすすめられてきました。生命を願う人が,1928年に決議を採決した人々と同じ立場をとるとするならば,そのために残されている時間は確かにいま少なくなっています。さらに何十万の人々がこの立場をとりつつあることは,1963年に世界各地で開かれた「永遠の福音」大会に45万4977人が出席した事実からも明白です。これらの人々は決議文を採決し,それを全世界に配布しました。その最後の2節は一部次のように述べていました。
19 エホバの証人が1963年に採決した決議は,彼らが知識と理解を持ち,第七の災いを注ぐことをすすんで支持する決意をどのように示していますか。
19 現在,私たちはこの世にいることを余儀なくされていますが,私たちはこの世の精神を吸い込みません。それは神の御霊ではなく,「この世の支配者」である悪魔の精神だからです。人類の世界は,目に見えないその支配者の精神に導かれて,何千年のあいだ堕落した肉欲のわざにふけってきました。いまや世界は,サタン悪魔の精神を吸い込んで,神にさからう肉欲のわざにふけってきた報いを刈り取っています。現代の宗教的バビロンは,神の御霊をつちかうことを人々に教えませんでした。人は神の御霊の実を刈りとるとき,神の造る新しい秩序に永遠の生命を獲得するのです……
……イエス・キリストの下にある神の天使は,私たちのために働いています。私たちはこの事をエホバ神に感謝します。天使たちの助けと神の聖霊およびみことばの助けによって,私たちは差別なくすべての人に対して,メシヤによる神の国と神の裁きに関する「永遠の福音」を宣べ伝えつづけます。神に敵対する者にとり災いとなっても,神の裁きはかならず執行され,霊と真をもって創造主なる神に正しい崇拝をささげたいと願うすべての人々を解放します。
20 世の精神にはどんな危険がありますか。どうすればそれを避けられますか。
20 汚れた“空気”すなわち災いによって暴露されている,世にある悪魔の精神は,人を霊的に死んだ者にならせます。そのような人は,きたるべき「全能の神の大なる日の戦闘」のとき,神から滅ぼされる結果になります。悪魔の精神を吸い込んで,世の不穏と暴力にまき込まれてはなりません。それは死をもたらします。生気を与え,生命をもたらす,新鮮な清い精神を吸い込んでください。それは神のことば聖書を読むことにより,また聖書の真理を信じて教える人々と交わることによって得られます。
21 次号の「ものみの塔」は,第七の災いに関して何をとりあげますか。
21 エホバの天使は災いを注ぎ,神の地上のしもべは神の霊に力を与えられて災いを宣明します。エホバは彼らがわざをなす時,満足を表明されます。しかしこれらの災いは神の怒りの表明であるにとどまらず,神の怒りが世に臨んだ実際の結果を霊肉両面にわたってもたらします。それは神の敵に災いとなり,神のことばに従う人々にとって福祉となります。第七の災いが注がれた結果生じた,世界をゆるがす出来事の描写については,本誌の次号をごらんください。