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  • 「マケドニアへ渡ってきて……ください」
  • 神の王国について徹底的に教える
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神の王国について徹底的に教える
徹 16章 124–132ページ

16章

「マケドニアへ渡ってきて……ください」

必要とされる所に喜んで出掛け,前向きな気持ちで迫害に耐えると,うれしい経験ができる

使徒 16:6-40

1-3. (ア)パウロの一行はどのように聖なる力に導かれましたか。(イ)これから何を見ていきますか。

マケドニアの町フィリピから,女性たちが出ていきます。少し歩くと,ガンギテスという細い川に着きます。いつものように川岸に座り,イスラエルの神に祈ります。エホバは天からその様子を見ています。(代二 16:9。詩 65:2)

2 そこから800㌔以上東では,男性たちがガラテア南部の町ルステラを出ていきます。数日後,西に延びるローマの街道に着きます。アジア州の人口が多い地域につながる舗装された道です。パウロ,シラス,テモテの3人は,その道を通ってエフェソスなどの町に行こうと考えています。そこの人たちにキリストについて伝えたいと思っています。ところが,旅を始めようとすると,聖なる力によって止められます。どう止められたかは聖書に書かれていませんが,いずれにしてもアジア州での伝道を禁じられました。どうしてでしょうか。イエスには考えがありました。聖なる力によってパウロたちを小アジアの先に導こうとしていました。エーゲ海を越えて,ガンギテスという小川の岸辺にまで行かせたいと思っていたのです。

3 イエスがパウロたちをどのようにマケドニアに導いたかを調べると,大切なことを学べます。では,49年ごろに始まったパウロの2度目の宣教旅行の様子を見てみましょう。

「神が私たちを招いた」(使徒 16:6-15)

4,5. (ア)ビチニアの近くで,パウロたちにどんなことがありましたか。(イ)パウロたちはどうすることにしましたか。それでどうなりましたか。

4 アジアでの伝道を禁じられたパウロたちは,北に向かうことにし,ビチニアの町々で伝道しようと考えます。そこへ行くために,フリギアとガラテアの人口が少ない地域を通り,舗装されていない小道を何日も歩いたかもしれません。しかし,ビチニアに近づくと,イエスが再び聖なる力によってパウロたちを止めます。(使徒 16:6,7)パウロたちは戸惑ったはずです。何について伝道するか,どのように伝道するかは分かっています。でも,どこで伝道したらよいか分かりません。アジアへの扉をたたきましたが,駄目でした。ビチニアへの扉をたたきましたが,それも駄目でした。それでも,パウロは諦めません。開く扉が見つかるまでたたき続けるつもりです。どうしたでしょうか。パウロたちは一見合理的とは思えないルートを選びます。西に進路を変えて550㌔歩き,次から次へと町を通り過ぎていきます。そしてトロアスの港に着きます。マケドニアへの船が出ている港です。(使徒 16:8)そこでパウロは3つ目の扉をたたきます。扉はついに大きく開きます。

5 トロアスでパウロの一行に加わったルカは,こう書いています。「パウロは夜に幻を見た。マケドニアの男性が立っていて,『マケドニアへ渡ってきて私たちを助けてください』と頼むのだった。パウロがその幻を見てからすぐ,私たちは,彼らに良い知らせを広めるために神が私たちを招いたのだと結論して,マケドニアへ行こうとした」。a (使徒 16:9,10)ついに,どこで伝道したらよいかが分かりました。パウロは,途中で諦めなくて本当によかったと思ったことでしょう。4人はすぐに出発し,船でマケドニアに向かいます。

使徒パウロとテモテが船に乗っている。テモテが遠くを指さしている。船員たちが働いている。

「それで,私たちはトロアスから船に乗っ[た]」。使徒 16:11

6,7. (ア)パウロの旅からどんなことを学べますか。(イ)パウロが経験したことから,私たちもどんなことを期待できますか。

6 ここから何を学べるでしょうか。注目したいポイントがあります。聖なる力の働き掛けがあったのは,パウロがアジアに向けて出発した後でした。イエスの考えが分かったのも,パウロがビチニアの近くに行った後でした。イエスがマケドニアに行くよう導いたのも,パウロがトロアスに着いた後でした。会衆のリーダー,イエスは,現代でも私たちを同じように導きます。(コロ 1:18)開拓者になりたい,伝道者が多く必要とされている地域で奉仕したいと願っている人もいます。でも,願っているだけでは目標は達成できません。行動を起こした後に,イエスが聖なる力によって導いてくれます。これは車の運転に似ています。運転手は行きたい方向に車を運転できますが,車が動いていなければ右にも左にも曲がれません。同じように,私たちが動いていなければ,つまり目標に向かって行動していなければ,イエスは私たちを導けません。

7 行動してもなかなか目標が実現しないとしたら,どうでしょうか。聖なる力に導かれていないと考えて,諦めた方がよいのでしょうか。いいえ,諦めてはいけません。パウロも,何度も壁にぶつかりました。でも,開く扉を探し続け,ついに見つけました。私たちも「活動への大きな扉」を探し続けましょう。そうすれば,パウロのようにきっと見つけられます。(コリ一 16:9)

8. (ア)フィリピはどんな町でしたか。(イ)パウロが「祈りの場所」で伝道したことにより,どんなうれしいことがありましたか。

8 マケドニア州に着いたパウロたちはフィリピに向かいます。フィリピの人たちは,ローマ市民であることを誇りに思っていました。フィリピは退役したローマ兵が住むイタリア風の町で,まるで小さなローマでした。パウロたちは,町の外を流れる細い川のそばに「祈りの場所」がありそうだと考えます。b 安息日にそこに行き,神に祈るために集まっている女性たちを見つけます。そこに座って話し掛けます。聞いていた人の中に「ルデアという女性」がいて,「エホバは彼女の心を大きく開」きました。ルデアはパウロたちの話を聞いてとても感動し,ルデアも家の人たちもバプテスマを受けました。その後ルデアは,パウロたちを家に招いて泊めてあげました。c (使徒 16:13-15)

9. パウロに倣っているどんな人たちがいますか。どんな良い経験をしていますか。

9 ルデアがバプテスマを受けて,パウロたちはどんなにかうれしかったことでしょう。「マケドニアへ渡ってきて……ください」という呼び掛けに応じて本当によかった,と思ったはずです。信仰のあつい女性たちの祈りに答えるために,エホバが自分たちを遣わしてくれたのです。現代でも,たくさんの兄弟姉妹が,伝道者が多く必要とされている地域に引っ越しています。若い人もいれば,年配の人もいます。独身の人もいれば,結婚している人もいます。そうやって引っ越すには,もちろん苦労が伴います。でも,ルデアのように聖書を学ぼうとする人に出会えると,苦労などなかったかのようにうれしい気持ちになります。あなたも「渡って」いけますか。きっと素晴らしい経験ができます。中央アメリカの国に移住した20代のアーロンは,こう言っています。「外国で奉仕するようになって,クリスチャンとして成長できました。エホバとの絆が強くなりました。ここでの伝道は最高です。8件の聖書レッスンをしています」。アーロン以外にも,同じような経験をしている人がたくさんいます。

2人の姉妹が道で若い女性に伝道している。2人が何を話しているかを知りたそうに,若い男性が見ている。

あなたも「マケドニアへ渡って」いけますか。

「群衆は2人に対していきり立った」(使徒 16:16-24)

10. パウロたちは,邪悪な天使たちが起こしたどんな出来事に巻き込まれましたか。

10 サタンは激怒していたでしょう。邪魔者のクリスチャンがこれまでいなかった地域で,良い知らせが広まり始めていたからです。そのため,邪悪な天使たちがある出来事を起こし,パウロたちが巻き込まれます。祈りの場所に通っていたパウロたちはある日,邪悪な天使に取りつかれた召し使いの女性に付きまとわれます。主人たちはこの召し使いに運勢占いをさせて金もうけをしていました。女性はこう叫び続けます。「この人たちは至高の神の奴隷で,救いの道を広めています」。邪悪な天使は,占いをする女性にそう叫ばせて,パウロの教えも彼女の占いと特に変わりがないと人々に思わせたかったのかもしれません。これにより,周りの人たちはクリスチャンたちの話に興味を持たなくなったかもしれません。そこでパウロは,女性から邪悪な天使を追い出して,叫ぶのをやめさせました。(使徒 16:16-18)

11. パウロが女性から邪悪な天使を追い出した後,どんなことがありましたか。

11 召し使いの女性の主人たちは金もうけの手段を失い,激しく怒ります。パウロとシラスを捕まえて,広場まで引きずっていきます。行政官(ローマを代表する役人)たちが裁判をする場所です。主人たちは,裁判官たちの愛国心と優越感をくすぐる訴えをします。「このユダヤ人たちは,私たちローマ人には受け入れられない習慣を教えて,騒動を起こしている」というような訴えです。するとすぐに,「[広場にいた]群衆は2人[パウロとシラス]に対していきり立」ち,行政官たちは2人を「棒で打ちたたくようにと命令し」ます。その後,2人は牢屋まで引きずっていかれます。牢番は,傷を負った2人を奥の牢屋に入れ,足かせをはめます。(使徒 16:19-24)牢番が戸を閉めると,監房は真っ暗になり,お互いの顔も見えません。でも,エホバは見ていました。(詩 139:12)

12. (ア)キリストの弟子たちは迫害されたとき,どう考えますか。どうしてですか。(イ)サタンはどんな手を使って反対をあおりますか。

12 イエスは弟子たちに,「人々[は]あなたたちをも迫害します」と言っていました。(ヨハ 15:20)パウロたちはマケドニアに来た時,迫害を覚悟していたはずです。迫害に遭ったとき,エホバから見放されていると考えるのではなく,怒り狂ったサタンから攻撃を受けていると考えました。現代でも,サタンにいいように使われている人たちは,フィリピの人たちと同じような手を使います。学校や職場で私たちについて事実ではないことを言って,反感をあおります。国によっては,宗教家たちが裁判でエホバの証人を訴えて,こういうようなことを言います。「このエホバの証人たちは,代々信仰を守ってきた私たちには受け入れられない習慣を教えて,騒動を起こしている」。エホバの証人が捕まり,打ちたたかれて刑務所に入れられている国もあります。でも,エホバは見ています。(ペテ一 3:12)

「すぐにバプテスマを受けた」(使徒 16:25-34)

13. どんなことがあって,牢番は「救われるには何をしなければなりませんか」と尋ねましたか。

13 波乱の一日を終え,パウロとシラスの気持ちはまだ高ぶっています。でも,真夜中になる頃にはいくらか落ち着き,「祈ったり歌で神を賛美したりして」いました。すると突然,地震が起き,監房が揺れます。目を覚ました牢番は,戸が開いていることに気付き,囚人たちが逃げてしまったと思い込みます。責任を問われて処刑されると思った牢番は,「剣を抜いて自殺しようとし」ます。しかしパウロが叫びます。「やめなさい。皆ここにいます!」取り乱した牢番は尋ねます。「先生方,救われるには何をしなければなりませんか」。パウロとシラスには救えません。救えるのはイエスだけです。それでパウロたちはこう答えました。「主イエスを信じなさい。そうすれば救われます」。(使徒 16:25-31)

14. (ア)パウロとシラスは牢番にどんなことをしてあげましたか。(イ)前向きな気持ちで迫害に耐えた2人に,どんなうれしいことが待っていましたか。

14 「何をしなければなりませんか」と聞いた牢番は,本当に知りたくてそう尋ねたのでしょうか。パウロは牢番の誠実さを感じ取りました。牢番は異国人で,聖書の知識がありませんでした。クリスチャンになるには,基本的な教えを学び,信じなければいけません。それでパウロとシラスは時間を取って,「牢番……にエホバの言葉を語」りました。熱中して教えるあまり傷の痛みも忘れてしまっていたかもしれません。でも,牢番は2人の背中の深い傷に気付き,手当てしてあげます。その後,牢番と家の人たちは「すぐにバプテスマを受け」ました。前向きな気持ちで迫害に耐えた2人に,こんなにもうれしいことが待っていました。(使徒 16:32-34)

15. (ア)多くのエホバの証人はどのようにパウロとシラスに倣っていますか。(イ)会衆の区域の人を繰り返し訪問することが大切なのはどうしてですか。

15 現代でも,パウロとシラスのようにしている兄弟たちがいます。信仰を貫いたために刑務所に入れられた多くのエホバの証人が,そこで良い知らせを伝え,聞いた人たちがクリスチャンになっています。例えば,活動が禁止されていたある国では,刑務所で聖書を学んだ人がエホバの証人全体の40%を占めていた時期があります。(イザ 54:17)ほかにも注目したいポイントがあります。牢番が学ぶ姿勢を示したのは,地震があった後でした。同じように,これまでは良い知らせに関心がなかった人も,生活を揺るがすようなショッキングな事が起きた後,学ぼうとすることがあります。家の人が関心を持った時にいつでも聖書を学べるよう,会衆の区域の人を繰り返し訪ねるのはとても大切なことです。

「今,ひそかに出そうというのですか」(使徒 16:35-40)

16. パウロとシラスが打ちたたかれた翌日,どのように形勢が逆転しましたか。

16 棒で打ちたたかれた日の翌朝,行政官たちはパウロとシラスの釈放を命じます。でもパウロはこう口を挟みます。「あの人たちはローマ市民である私たちを,有罪の宣告もせずに人前で打ちたたき,牢屋に入れました。それを今,ひそかに出そうというのですか。それはなりません! 彼らが出向いてきて,私たちを連れ出すべきです」。行政官たちはパウロたちがローマ市民であることを知って,「恐ろしく」なります。2人の権利を侵害してしまっていたからです。d 形勢逆転です。パウロとシラスは人前で打ちたたかれました。今度は,行政官たちが人前で謝罪しなければいけません。行政官たちは,フィリピから去るようにと2人に懇願します。2人はそれに応じますが,その前にまず,新しくクリスチャンになった人たちを訪ね,励ますことにします。その後,町を出ていきました。

17. 新しい弟子たちは,パウロとシラスの手本からどんな大事なことを学んだはずですか。

17 パウロとシラスは,自分たちがローマ市民であることを早めに伝えていれば,打ちたたかれることはなかったかもしれません。(使徒 22:25,26)でもそうすると,フィリピの弟子たちはどう感じたでしょうか。2人がキリストのために苦しまなくて済むよう市民権を利用した,という印象を持ったかもしれません。フィリピのローマ市民ではない弟子たちは,ローマ法で守られてはいません。2人が早めに市民権を行使したら,そういう弟子たちは,2人の信仰を手本にしにくく感じたかもしれません。パウロたちは自ら罰に耐えることで,新しいクリスチャンたちに大事なことを教えました。キリストの後に従う人たちは迫害に遭っても信仰を貫ける,ということです。さらに,その後パウロとシラスは市民権を行使し,行政官たちが違法行為を公に認めざるを得ないようにしました。そうすることで,この先クリスチャンたちはひどい扱いを受けにくくなり,法的に守られやすくなったかもしれません。

18. (ア)現代の監督たちはどのようにパウロに倣いますか。(イ)エホバの証人は,「良い知らせを……広める法的権利を得るため」にどんなことをしますか。

18 現代の監督たちも,自ら手本になって教えます。兄弟姉妹にこうしてほしいと思うことがあれば,自分もそれを実践します。さらに,パウロに倣って,いつどのように法的手段を取るかを慎重に判断します。必要であれば,法的な保護を受けるために裁判所に訴えます。国際裁判所に訴えることもあります。目的は,世の中を変えることではありません。パウロが10年ほど後にフィリピの会衆に書いた通り,「良い知らせを擁護し,その知らせを広める法的権利を得るため」に,そうします。(フィリ 1:7)もちろん,裁判の結果がどうであろうと,パウロたちのように,聖なる力が導いてくれる場所で「良い知らせを広め」続けます。(使徒 16:10)

ルカ 「使徒の活動」を書いた人

「使徒の活動」は16章9節まで第三者の視点で書かれています。つまり,登場人物の発言や行動が客観的に書かれています。しかし,使徒 16章10,11節から書き方が変わります。11節には,「私たちはトロアスから船に乗ってサモトラケ島に直行し」たとあります。ここで筆者のルカが旅に加わったということが分かります。でも,ルカの名前は「使徒の活動」には出てきません。どうしてルカが書いたと分かるのでしょうか。

ルカが机に向かって座っている。巻物を書いている。

「使徒の活動」とルカの福音書の冒頭部分から分かります。両方とも「テオフィロ」という人物に宛てて書かれています。(ルカ 1:1,3。使徒 1:1)「使徒の活動」はこう始まっています。「テオフィロ様,私は最初の記述で,イエスが行い,教え始めた全ての事柄についてまとめました」。「最初の記述」つまり福音書をルカが書いたことは,古代の学者たちも認めています。それで,「使徒の活動」もルカが書いたと考えられます。

ルカについての情報は少なく,ルカの名前は聖書に3回しか出てきません。使徒パウロはルカのことを,「皆に愛されている医者」とか,「私と共に働く仲間」と呼んでいます。(コロ 4:14。フィレ 24)ルカが「私たち」と書いている箇所を調べると,ルカは50年ごろパウロの旅行に初めて同行し,トロアスからフィリピまで行ったことが分かります。パウロがフィリピを離れた時には,ルカは一緒にいなかったようです。2人は56年ごろにフィリピで再会し,ほかの7人の兄弟と一緒にフィリピからエルサレムへ旅しました。パウロはそこで捕らえられます。2年後,ルカは,鎖につながれたままのパウロに同行し,カエサレアからローマに行きました。(使徒 16:10-17,40; 20:5–21:17; 24:27; 27:1–28:16)パウロはローマで2度目に拘禁されていた時に,処刑される日が近いと感じます。その時,一緒にいたのは「ルカだけ」でした。(テモ二 4:6,11)ルカは各地を旅し,良い知らせのために苦労を惜しみませんでした。

ルカは,自分がイエスについて書いた内容はどれも実際に見たことだ,とは言っていません。「目撃証人」から話を聞き,「出来事を1つの記述にまとめ」たと言っています。「全てのことを初めから綿密に調べ」,「順序立てて書」きました。(ルカ 1:1-3)ルカが書いたものを見ると,入念に調査したことが分かります。情報を集めるために,エリサベツや,イエスの母マリアなどから話を聞いたかもしれません。ルカは,ほかの福音書にはない情報をたくさん載せています。(ルカ 1:5-80)

パウロによれば,ルカは医者です。ルカは苦しんでいる人について,医者らしい観点で書いています。例えば,イエスが邪悪な天使に取りつかれた人を癒やした時に,「邪悪な天使はその男性[に]傷を負わせることなく出ていった」と書いています。また,使徒ペテロのしゅうとめが「高い熱」で苦しんでいたことや,イエスが癒やしたある女性が「18年間邪悪な天使に取りつかれて病弱」だったことも書いています。(ルカ 4:35,38; 13:11)

ルカは「主の活動」に打ち込みました。(コリ一 15:58)医者としての成功や名声を追い求めるのではなく,エホバについて伝道して教えることに集中しました。

ルデア 紫布を売る人

ルデアは,マケドニアの大きな町フィリピに住んでいました。出身は小アジア西部のリュディア地方の町テアテラで,紫布の商売をするためにエーゲ海を渡ってきました。敷物,タペストリー,布地,染料など,紫のさまざまな品物を扱っていたようです。フィリピで見つかった碑文によれば,フィリピには紫布を売る人たちの組合があったようです。

ルデアが生地を見せている。

ルデアは「神を崇拝」していたと書かれていますが,これはユダヤ教に改宗していたことを意味しているようです。(使徒 16:14)ルデアは,故郷の町でエホバについて知ったのかもしれません。フィリピとは異なり,そこにはユダヤ人の集会場がありました。ルデアという名前は,フィリピで彼女に付けられたあだ名(「リュディアの女性」という意味)だと考える人もいます。でも,ある文献によれば,ルデアは実名としても使われていたようです。

リュディア地方と周辺の地域は,ホメロスの時代(紀元前9世紀か8世紀)以来,紫の染色技術で有名でした。テアテラの水を使うと「最も鮮やかであせにくい色」が生まれるという評判までありました。

紫の品物はぜいたく品で,裕福な人にしか買えませんでした。紫の染料はいろいろな物から採れましたが,地中海の貝を原料とするものが最も上質で高価で,上等の亜麻布に使われました。1個の貝から採れる染料はごくわずかで,1㌘採るのに8000個もの貝を処理しなければなりませんでした。そのため,紫色の布はとても高価でした。

ルデアの商売にはかなりの資金が必要でした。それに,パウロ,シラス,テモテ,ルカの4人を泊められるだけの家を持っていました。そのことからすると,ルデアは商売で成功した裕福な人だったと思われます。「家の人たち」のことが出てくるので,親族と一緒に住んでいたか,奴隷や召し使いがいたのかもしれません。(使徒 16:15)パウロとシラスはフィリピを出る前に,ルデアの家で兄弟たちと会いました。ルデアの家は,フィリピで新しくクリスチャンになった人たちが集まる場所になっていたようです。ルデアは人をよくもてなす女性でした。(使徒 16:40)

パウロが10年ほど後に書いたフィリピ会衆への手紙には,ルデアのことが出てきません。ルデアについて分かるのは,使徒 16章に書かれていることだけです。

a 「ルカ 『使徒の活動』を書いた人」という囲みを参照。

b フィリピには退役軍人が多く住んでいたため,ユダヤ人は町の中に会堂を設けることを禁じられていたのかもしれません。あるいは,この町ではユダヤ人の男性が10人(会堂の設立に必要な最低人数)に満たなかったのかもしれません。

c 「ルデア 紫布を売る人」という囲みを参照。

d ローマ法によれば,市民には常に正当な裁判を受ける権利があり,有罪の宣告もせずに市民を人前で処罰するようなことをしてはなりませんでした。

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