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オーストリア1989 エホバの証人の年鑑
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兄弟は数か月前に一人の姉妹が自分に近づいて来て,「ゲレス兄弟,主の業のために何かをさせていただきたいのですが」と述べたのを思い出しました。それはハンジ・フローン(現在のブフナー)で,彼女は1931年にバプテスマを受けていました。姉妹は外国で何年かを過ごしました。そしていま,危機的な時期にオーストリアに戻ったのです。姉妹は心から進んで,困難な使いの仕事を引き受けました。
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オーストリア1989 エホバの証人の年鑑
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また,異なる場所からでしたが,ハンジ・フローンはそれら印刷物を取りに来て,兄弟たちに配達しました。
再び謄写版印刷機の移動が必要となり,シェーン兄弟は公園にある休憩所にその隠し場所を見つけました。兄弟ともう一人の兄弟はその場所で印刷を行なったのです。その神権的な用事を済ませると,シェーン兄弟は研究資料を兄弟たちに配達しました。ある日,配達先で兄弟は,ちょっと休んで話でもしてゆくようにと言われました。これは誤算でした。兄弟はそのあとすぐに逮捕されたのです。
フローン姉妹はこの残念な経験から教訓を得ました。姉妹は配達を手早く行なっては,また次の所へと向かいました。およそ6か月後に,姉妹もやはり逮捕されました。それでも姉妹は,『主のために何かを行なう』という自分の熱烈な願いを果たすことができたのです。
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オーストリア1989 エホバの証人の年鑑
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一斉に逮捕された44名の兄弟姉妹たちの中に,兄弟たちの使いとして働いたハンジ・フローンがいたことは確かです。
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オーストリア1989 エホバの証人の年鑑
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後日,フローン姉妹が取り調べを受けていた時,官憲は突然尋問を中断して,部屋を出て行きました。官憲がいない間,フローン姉妹はある調書,すなわち記録に目が留まりました。それはエルンスト・ボヤノーウスキの取り調べに関するものでしたが,姉妹はそれを読んで,ショックを受けました。そこには非常に多くの兄弟たちの氏名と,ほかにもボヤノーウスキが当局に協力したとしか思えない詳しい情報がおびただしく記されていたのです。
官憲は故意にそれらの書類をそこに残しておき,姉妹の意気をくじいて,姉妹からさらに多くの情報を聞き出そうとしたのでしょうか。
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オーストリア1989 エホバの証人の年鑑
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[108ページの図版]
テレーゼ・シュライバー(左)は,謄写版で文書を印刷し,ハンジ・フローン(ブフナー)は使いを務めた。二人とも逮捕を経験した
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