世界展望
「1日に8,000人が死亡」
健康問題の専門家たちにとって,たばこの使用は今も心配の種である。彼らの予想では,喫煙者の将来は暗い。WHO(世界保健機関)が先ごろまとめた研究報告は,今後25年間で推定5億人が喫煙のために死亡すると警告している。WHOの調査では,今世紀の終わりまでに,喫煙が世界の死因の第一位を占める見通しである。オーストラリアのパースで開かれた「たばこと健康に関する世界会議」の席上,WHOのある代表者はこう述べた。「今は喫煙で1日に8,000人が死亡する。しかし子供たちが中年になるころには,1日におよそ2万8,000人が死亡するだろう」。
裁判所はエホバの証人の夫婦に有利な決定を下す
1990年4月13日,米国カリフォルニア州サンフランシスコの上級司法裁判所陪審は,カリフォルニア大学(サンフランシスコ病院および診療所)と指導的な腎臓移植医に対し,50万㌦(約7,500万円)を支払うよう答申した。原告は,自分たちの意志に反して未成年者の息子に輸血をされたエホバの証人の夫婦で,輸血が行なわれたのは,父親の提供した腎臓を息子に移植する手術が成功した後のことだった。(エホバの証人は聖書的な理由で輸血を拒否し,その代わりに無血性の医療処置を選ぶ。)その夫婦の代理をした弁護人の一人は「目ざめよ!」誌にこう語った。「両親に対しては,病院と接触した最初の時点から手術が行なわれた当夜まで,輸血をせず法廷命令も取りつけないという保証が与えられていた。ところが病院側は,ほとんど最初から,その家族の基本的権利を完全に踏みにじる策略を裏で企てていた」。医師は契約を破り,手術の数日前に両親に無断で法廷命令を取りつけるための措置を講じた。そのため陪審は,病院の落ち度として,米国人である両親の公民権を侵害したことと欺まんを挙げ,医師と病院双方の落ち度として,信頼を故意に裏切ったことを指摘した。「エホバの証人の関係する輸血訴訟で医師に損害賠償を求めた評決としては,これが米国で最初のものだ」と弁護人は語った。
命をねらわれやすい服装
米国の大都市のスラム街には,仲間から格好良く思われたい,受け入れてもらいたいという一心で,誘いこまれるかのように,流行している高価な服を買い,その服の代償として命を失っている若者がいる。175㌦(約2万6,250円)もするスニーカーをはき,200㌦(約3万円)もするスポーツ・ジャケットを着ている若者は,暴行や強奪の標的になりやすい。高い買い物をしたために必死になってその服にしがみつき犯人に抵抗した結果,刺されたり撃たれたりした犠牲者もいる。死者の数は急増している。ニューヨーク・タイムズ紙は次のように論評する。「こうした事件は,路上の犯罪や暴力が現在スラム街の生活にどれほど浸透しているか,その程度を強調しているだけではなく,地域の最新流行を裏側から測る目安にもなっている」。
危険な仕事
ジャーナリストの仕事はいつも過酷で,長時間の労働を伴う。ところが今や,この仕事は死の危険をはらむようにもなった。昨年,世界中で殺されたジャーナリストは53人に上り,これは1988年の2倍に相当する。中でも最も危険なのは,冒険的なフリーのレポーターやカメラマンである。また,この種の「死による検閲」を行なう一番手と目されるのは麻薬王や軍の司令官である,とニューヨーク・タイムズ紙の社説は述べている。ジャーナリストが「口を封じられたり,投獄されたり,検閲されたりする[と],理解は鈍り,情報は消される」。
大多数が独身制の廃止に賛成
オーストラリアの定期刊行物「カトリック・ウィークリー」に掲載された調査では,同国のカトリック教徒の70%が,司祭に要求されている独身の誓いを廃止することに賛成した。つまり,司祭にも結婚が許されるべきだと考えている。その理由の一つとして,結婚すれば司祭はもっと「信頼できる生活」を送るようになり,教区民との一層親密な接触が保たれるかもしれないことが指摘されている。また,調査の対象となった人の中には,独身制を廃止すれば司祭志望の若者が増えるのではないかと言う人もいた。(現在オーストラリアのカトリック司祭の平均年齢は63歳。)ある司祭は,自分が司祭を目ざして修養を積んでいたころは,クラスに学生が25人から30人はいたと嘆いている。ところがわずか10年後に,クラスの学生は12人に減少した。
離婚について調べる
ドイツ連邦共和国では離婚が急増しており,1961年に4万9,300件だったのが,1988年には12万8,700件に達した,とフランクフルター・アルゲマイネ紙は伝えている。離婚の半数は子供のいる家族で起きており,合計9万3,000人の未成年者が巻き込まれた。妻の側から離婚を申し出るケースが,夫から申し出るケースの2倍もあり,結婚して4年から6年たっている場合が大半である。社会学者ペーター・ハルトマンは離婚率の差異に注目した。ハンブルク,ブレーメン,ベルリンといった大都市では離婚率が相当に高く,また長期失業に悩まされる地域は裕福な地域よりも離婚率が高い。報告の中で驚くべき点が一つある。それは,カトリック圏とプロテスタント圏の離婚率にほとんど差がないということだ。
世界最長の光ファイバーケーブル
オーストラリアは,光ファイバーケーブルの世界最長記録を作ったと主張している。この遠距離通信ケーブルは,2,600㌔余り離れたオーストラリアの二つの州都アデレードとパースの間を結び,不毛の砂漠にも似た有名なナラーバー平野を横断している。テレコム(オーストラリアの遠距離通信システム)のスポークスマンが,ザ・ウェスト・オーストラリアン紙に語ったところによると,光ファイバーケーブルを使う今,衛星による遠距離通信は時代遅れになっている。同紙はこう説明する。「光ケーブルによって,わずか2秒間で8,000回の通話と8,000回のファックスが可能になり,テレビ電話も実現する。このすべてが12本のファイバーケーブルで伝送されるが,各ファイバーは人間の髪の毛ほどの太さしかない」。この驚くべき容量も1990年代の半ばには4倍になる,とテレコムでは見込んでいる。
油っこい簡易食品
簡易食品が生活の中に定着した幾つかの工業国では,チキンサンドやフィッシュサンド,それにチキン“ナゲット”の人気が高まっている。これらを,従来のハンバーガーに代わる低脂肪食品とみなす人が少なくないからだ。しかしこれらも,飽和脂肪酸を多く含んだ油で調理される場合がある。それに,簡易食品のチキンサンドには鳥の皮がたくさん入っている場合が多いため,これには「1.5パイント(約700㍉㍑)のアイスクリームと同じだけの脂肪が含まれているかもしれず,チキン“ナゲット”を6個食べれば,ハンバーガーを1個食べるよりも多くの脂肪をとることになる」。これは,マサチューセッツ医学協会が行なった最近の調査結果をインタナショナル・ヘラルド・トリビューン紙が伝えたものである。脂肪分の多すぎる食事をとると,糖尿病,冠状動脈疾患,高血圧,脳卒中,肥満などの問題を抱え込む危険が高くなると言われている。
無関心層
宗教に対する無関心は世界中に広まっており,その傾向は特に,かつてキリスト教世界のとりでだった国々で著しい。イエズス会士のザビエル・ニコラスは,カトリック系のラ・クロワ紙上で,深刻化するその問題の現状を嘆いている。彼が言うには,信者と不信者は何世紀もの間,神,死後の世界,宗教などに関する根本的な問題を巡って幾度も対立してきた。ところが今では,無関心層という第3のグループが存在する。宗教に賛成も反対もせず,人生の根本的な問題にもほとんど関心を示さない人々である。ニコラスの考えでは,教会は現代の真の世俗主義の広がりをつかみ切っていない。彼はこう問いかける。『質問が発せられなければ,我々としても,どうして答えを持っていると主張できようか』。
無意味な告白
「罪を司祭に告白して許しを得るという儀式」はどこでも廃れている,とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。「この廃れゆく傾向は,静かに,自然に,だれからの勧めもなく,ほとんど議論されることもなく生じている」。教会に通うカトリック教徒を調査した結果,月に1回告白に行く人は6%にすぎず,2回以上行く人はわずか1%であった。もっとも,四旬節の痛悔の時期に毎年行っているという人は大勢いた。このような事態の進展に教会の幹部は当惑している。カトリック教会が避妊を禁じていることへの不満が原因だとする人もいれば,地獄を信じない人が増えていること,罪の意識が無くなっていること,正邪に関する混乱が生じていることなどを挙げる人もいる。しかし調査結果が示すとおり,平信徒の側からすると,「告白が減っているのは,ほかの方法でも優れた許しや清めが得られるからである」。また,「カトリック教徒自身,真の霊的な変化を経験するのに告白が役立つかどうか疑念を深めている」と同紙は付け加えている。