ポルノという名の疫病 ― 現実の脅威!
このページの囲み記事は,現代のポルノの実例です。ひどいと思われますか。胸が悪くなりますか。ところがこれは,現在出回っているポルノの内容を控え目に表現している出版物から引用したものなのです。元の出版物では,一般の人々が読むのにふさわしいと考えられた言葉遣いがされていますが,「目ざめよ!」誌は読者が害を被ることがないよう,その言葉遣いの一部にさらに手を加えなければなりませんでした。
ですから,『ポルノはいつの時代にもあったのだから,何も心配する必要はない』という意見は,最近のポルノの内容が大きく変化していることに対する認識不足を表わしています。ポルノで扱われているのは,もはや裸体や性交の場面だけではありません。今では卑わいな事柄,倒錯的な行為,残忍極まりない暴力行為など,胸の悪くなるようなことがたくさん盛り込まれるようになりました。異性愛者および同性愛者による強姦の場面,男女の同性愛行為,口腔交接,肛門交接,グループセックス,近親相姦,獣姦,拷問,身体の切断,殺人などの場面があり,13歳未満の子供たちが関係していることも珍しくありません。ポルノには害はなく,したがって自分にとって危険ではないという一部の人々の意見を考慮するに当たり,上記のことを念頭に置くのは大切です。
有害か,有益か
ポルノの影響に関しては,二つの一般的な説があります。一つはカタルシス,つまり「放出」が行なわれるという説で,その唱道者たちは,そのような読み物などは普通の人々に悪い影響を及ぼすどころか,かえって性的に活発な人々の欲望が安全な方法で放出されるので,害がないばかりか,場合によっては有益でさえある,と主張します。もちろん,そのように主張する人々は,人が読んだり見たりするものが確かに何らかの影響を生じさせることを認めています。それなのに,ポルノと強姦などの暴力行為との関連を示す確たる証拠はないと言うのです。
しかし,確かに関連はあると主張する,同様に強力な声も聞かれます。それは,ポルノの及ぼす憂慮すべき影響の問題を直接扱わねばならない人々の,経験に基づいた意見です。それらの人たちは,その関連を証明するには『正確な科学的データ』が必要であるとする多くの主張を見掛け倒しとして退け,別の説を主張します。それは,ポルノで見た事柄をまねる,またまねた人々が実際にいるという説です。
ポリス・タイムズ紙の共同編集者の一人はニューヨーク・タイムズ紙にあてた手紙の中で,「人を性的に虐待したり食い物にしたりする行為を助長する道徳上の社会的風土を造り上げるのに,ポルノが一役買っている」ことを多数の警察関係者に確信させる実例を列挙しました。その一部を次に挙げましょう。
● 「カナダにおいて婦女暴行を働いて服役している人々を調査したウイリアム・マーシャルは,『種々の形態のポルノ的な空想は,犯罪を誘発することがある』と伝えている。婦女暴行を働いた18人のうち10人までが,ポルノの影響を受け,力ずくで女性と性関係を持った,と告白している」。
● 「フェニックス市を本拠地とする,『法律を遵守する市民の会』の創設者……によれば,『警察の風紀犯罪取締班は,少年に性的ないたずらをした人の77%,少女に性的ないたずらをした人の87%が,ポルノをまねてその種の性行動に走る気になったことを認めたと報告している』」。
● 「ロサンゼルス警察は,調査した40件以上の子供に対する強制わいせつ行為の……どの場合にも,ポルノ的な写真がからんでいることを指摘している」。
● 「子供たちをそそのかして性行為をさせるために……大人のポルノと子供のポルノが用いられている。ある事件では,父親が娘を誘惑するためにポルノを使ったと当の6歳の娘が証言した」。
加えて,1986年5月14日付のニューヨーク・タイムズ紙によれば,米国司法省が設けた「ポルノグラフィーに関する委員会」は,1年間に行なった調査から,「この種の読み物などにかなり長く接することと,そのように接している人々の性的な暴力行為,性的な強制力,不本意な性的攻撃欲の度合いとの間には,ある程度の因果関係がある」と結論しました。
確かに,この結論に同意しない人々もいますが,そのような人たちでさえ,不必要な暴力行為を抑え,子供たちをポルノにかかわらせないようにする必要性を認めています。やはり彼らは,ポルノを用いる人々が確かにその影響を受けることを事実上認めているのです。人が見たり読んだりするものと,人が考え,行なう事柄の間に関連性があるのは明らかなことです。
関連があるとする考えに反対する巧妙な論議があるとしても,一つのことは明らかです。つまり,ポルノの製作者は自分がわいせつなものを作る理由をはっきり知っており,使うほうもそれを買う理由をはっきり知っているのです。その目的とは,ポルノの製作者が認めているように,性欲を高めることです。その後に起きる事柄は,マスターベーションであれ,もっとひどい行為であれ,単に使用者の責任として冷淡な態度で片づけることはできません。出来上がった製品は,造りそのものからして,消費者を侮辱しているのです。あらゆる麻薬や麻薬密売人の場合と同じように,ポルノとその商人はどの点から見ても責任を問われなければなりません。
『人権についてはどうか』
それでも,何であれ,自分の好きなものを自分の家で個人的に所持したり,読んだり,見たりする権利,ならびにそういう読み物などを出版したり配布したりする権利を人々から奪う恐れについて警告する人々がいます。検閲が乱用されることを恐れているのです。
こうした懸念は概して妥当なものです。しかし言論の自由といったものがあるとしても,他の人を中傷する事柄を口にしたり,公表したり,あるいは他の人の安全と命を危うくするような事実無根の非難を公然と行なったりすることはできません。絶対的な自由を保障する人間の政府は一つもありません。他の人の権利や自由も考慮に入れなければならないのです。
「ポルノをまねて他の人を傷つけるのでなければ,個人的にポルノを見るのがどうして悪いのか」と問う人々は,人権の重要な側面を見過ごしています。近親相姦や子供に対する他の形態の強制わいせつ行為に関係させるよう幼い子供たちをそそのかすためにポルノが用いられ,写真や映画に出てくる大人や小さな子供たちがしばしばポルノ製作に強制的に参加させられている以上,それらの人たちが害を受けていることをだれが否定できるでしょうか。
さらに,ポルノ製作のために使われる人々が縛られ,拷問を受け,体を切断され,痛ましい不自然な性行為をさせられるときに加えられる暴力についてはどうでしょうか。また,ある子供たちが,利益の上がる国際貿易の商品として性を売り物にしている連中に引き渡されることについてはどうですか。「胸がむかむかする」と言われるかもしれません。しかし,そのような子供たちの権利についてはどうですか。それは,ポルノを“楽しむ”権利を持つ他の人々のために支払われるべき代価なのでしょうか。それは,『自分にして欲しいと思うことを,同じように人にもする』ことでしょうか。―マタイ 7:12。
それでもなお,検閲は答えにならないという人が多くいます。一つには,ポルノ製作者を起訴するには,何がポルノで何がポルノではないかを見分けることができなければなりません。ところが,裁判所でさえそれを首尾よく行なうことができません。
あなたもご家族の皆さんも,このポルノという名の疫病に脅かされていることは明らかです。警察,反ポルノ団体,税関,検閲官のいずれも,この疫病を征圧したり除去したりすることはできないようです。問題を憂慮している人々が自分の愛する人たちを守る方法は果たしてあるのでしょうか。
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「3人の男は一人の女 ― 12歳の少女 ― とその祖母をまんまと誘拐し,二人を意識がなくなるまで殴打し,顔,頭,体などを所かまわず足で蹴り上げた。二人は気絶した後に暴行され,再び殴打された」。
『裸にされ,手足を切り取られた女たちの体は,有刺鉄線のへいの上にさかさまに吊り下げられた。そして一人の女は強制的に[動物と交接させられた]』。
『幼い少女たちは[口腔交接や動物との交接を強いられ],10歳にもならない少年たちは……肛門交接をさせられた』。
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ニューズウィーク誌のためにギャラップ研究所が米国で1985年3月に行なった世論調査は,ポルノに関係した問題をめぐるアメリカ人の次のような興味深い見解を明らかにしました。
● 性的に露骨な読み物などによって「一部の人々は強姦や性的暴力に走るようになる」と考えているアメリカ人は73%という圧倒的な数に上る。
● ポルノは「性的な問題を抱える人々にとって安全なはけ口」になると考えている人は,わずか34%にすぎない。
● 76%という大多数の人々が,露骨な読み物などのために「ある人々は女性に対する敬意を失うようになる」と考えている。
● 3分の2以上にあたる67%の人々が,ポルノは「社会道徳を崩壊させる」恐れがあると考えている。
● 63%ないし73%ものかなりの数の人々が,性的暴力を特色とするビデオ,映画,雑誌などを全面的に禁止すべきであると考えている。