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  • 存在を認められた正体不明の病気
    目ざめよ! 1992 | 8月22日
    • 存在を認められた正体不明の病気

      CFS(慢性疲労症候群)は「エイズに次いで大きな健康上,また経済上の脅威である」。

      カナダの医師バイロン・ハイドは,英国のケンブリッジで1990年4月に開かれた世界初のCFSシンポジウムの席上でそのように述べました。事実,サンフランシスコのエイズ研究者ジェイ・リービーは,CFSを「90年代の病」と呼びました。

      「救急医療」誌はCFSを,「中枢神経系と免疫機構,そしてしばしば筋骨格系に影響を及ぼす,複数の器官系が関係した病気」と説明しています。この病気に対する不安は増大しています。米国の雑誌「ニューズウィーク」が1990年11月にCFSの特集記事を掲載したところ,その号はその年に最も多く売れました。

      米国アトランタにある疾病対策センター(CDC)はこの病気に真剣に取り組んできました。指導的な立場にあるこの米国の保健機関は1988年,一組の徴候と症状を医師の診断基準として設け,正体不明のこの病気の存在を公式に認めました。共通する主な症状が疲労であることから,同センターはこの障害を慢性疲労症候群と名づけました。

      名称に問題あり

      ところが多くの人は,その名称は適切でないと考えており,病気の重さが伝わらないと言います。CFSの特徴である疲労は普通の疲れとは異なっているというわけです。ある患者は,「普通の疲れとこの疲労とは,火花と稲妻ほど違う」と説明しました。

      CFS患者を何百人も治療してきた医師ポール・チーニーは,この病気を慢性疲労と呼ぶのは,「肺炎を“慢性咳症候群”と呼ぶようなものだ」と言います。J・バン・エアーディ医師も同意見です。しばらく前,この医師はフルタイムの仕事を二つ持ち,夜間は医師として,昼間は科学者として働いていました。その上,妻も子供もいました。昨年,エアーディ医師がCFSについて語った経験がカナダのメディカル・ポスト紙に掲載されました。

      「寝具を持ち上げてベッドから出るのにも大変骨が折れるほど人の活力を奪い去る病気を想像すればよいだろう。非常にゆっくり歩いても,家の周りを一街区歩くのが大仕事になったし,よちよち歩きの幼児を抱き上げるにも息が切れる。地階の書斎には行かないようになる。戻る時,階段の途中で腰を下ろして休まなければならないからだ。想像してみてほしい。新聞記事の文字や文は読めても,意味がつかめないのだ……

      「一度に何百本もの筋肉注射を体中の筋肉に打たれて,座るにも痛み,動くこともできず,抱擁されることさえ不快に感じるところを想像してもらいたい。……頻繁に悪寒がして冷や汗が流れ,たいてい微熱が伴う。こうした症状を一まとめにして,あなたが引いたことのある最もひどい風邪と比較すると分かるだろう。ただし,この病気のほうがずっと重症であり,丸1年,場合によってはそれ以上続く。

      「やっと克服したと思うたびに再発して苦悩と深い失望を味わうところを想像してほしい。自分の知らない肉体の中に閉じ込められているように感じるため,またその状態がいつまで続くのか,果たして治るのかが分からないために恐怖におののいているところを想像してほしい」― 1991年9月3日付。

      英国とカナダでこの病気に与えられている名称は病気の深刻さを裏書きしています。両国では筋痛性脳脊髄炎,略してMEと呼ばれています。

      この障害は免疫機構に影響を与えるため,現在米国に幾百も存在する患者の支援グループは,この病気を慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)と呼んでいます。

      これは本当に新しい病気なのでしょうか。どのようにして一般の人に知られるようになったのでしょうか。

      歴史を振り返る

      CFSは新しい病気ではないでしょう。前世紀に神経衰弱と呼ばれていた一連の症状と同一視する人もいます。CFSは,結合組織炎としても知られている線維筋痛症とも似ています。CFSと線維筋痛症は同一の症候群かもしれないとさえ考えている人もいます。

      過去数十年の間に,CFSのような病気が数多く報告され,そのほとんどは米国で発生したものでした。しかし,英国,アイスランド,デンマーク,ドイツ,オーストラリア,ギリシャでも発生し,アイスランド病,アクレーリ病,ロイヤル・フリー病などと呼ばれました。

      もっと最近では1984年に,米国のカリフォルニア州とネバダ州の境界に近い小さな町インクライン・ビレッジで,約200人がしつこい風邪のような病気にかかりました。そのうちの多くを治療したチーニー医師は,「患者たちが生産的で,幸福で,元気な大人たちであることは知っていた」と説明します。「そういう人たちが突然病気になり,よくならないのだ。寝汗がひどくて,配偶者が起きてシーツを取り替えなければならないような患者たちもいた」。

      インクライン・ビレッジでのこの病気の発生をヤッピー風邪と軽べつして呼ぶ人たちもいました。おもに中産階級に属し,上方階層を志向する若者たちがかかっていたからです。患者は急性伝染性単核球症にかかっているのかもしれないと考えられていましたが,検査の結果,患者のほとんどは陰性でした。しかし血液検査によって,ヘルペスウイルスの一種であるエプスタイン-バーウイルスに対する抗体の量が多いことが明らかになりました。そのためしばらくの間,この病気は一般に慢性エプスタイン-バーとして知られていました。

      存在を認められる

      チーニー医師はインクライン・ビレッジで起きている事柄を疾病対策センターに伝えましたが,その報告は当初あまり信用されませんでした。しかし,間もなく全国各地から似たような健康上の障害が報告されました。

      そのうちに種々の研究が行なわれ,時とともに,大部分の症例がエプスタイン-バーウイルスから起こるのではないことが分かってきました。実際,成人の約95%がこのウイルスを保有しています。ウイルスは人々の体内で眠っているのです。CFSを調査している一人の医師は,「ウイルスは目を覚ますと,病気の原因となるかもしれない」と説明しました。しかし,いつもそうなるとは限りません。

      CFSの原因究明のため多くの調査が行なわれています。その結果,恐らく幾百万もの人に影響を与えている病気が本当に存在しているということを,ますます多くの医師が認めるようになっています。米国ミネソタ州ロチェスターにあるメイヨー・クリニックの感染症科の責任者ウォルター・ウィルソン医師は,自分は考えを変えたと言いました。ウィルソン医師は非常に多くの人が大金を費やして助けを求めているのを見て,「その人たちが経験している苦しみに配慮を払って治療しなければならない」と言います。

      多くの人の生活が,共通の症状を示す一つの病気によって台なしになっていることは明らかなのです。疾病対策センターには症状について尋ねる電話が毎月幾千本もかかってきており,米国立衛生研究所では,エイズに次いで多くの問い合わせがあります。最近退職するまで疾病対策センターのCFS研究の責任者だったウォルター・ガンは,「何かが起きている。しかし,それが一つの病気なのか幾つかの病気なのか,原因は一つなのか複数あるのか,明らかではない」と説明します。

      CFSは本質的に精神医学上の問題であると考える人もいます。アメリカ精神医学ジャーナル誌,1991年12月号はこう述べています。「慢性疲労症候群は神経衰弱と同じ運命をたどるだろうと論じる著者もいる。つまり,CFS患者の大多数がもともと精神の障害を抱えていることが明らかになるにつれ,社会の中での評価は下がるというのである」。最近出版された「麻痺から疲労まで」の中では,CFSは「流行病」とみなされ,重大な病気とはならないだろうという点が暗に示されています。

      CFSは本質的に精神医学上の問題なのでしょうか。症状が現われるのは通例うつ病が原因なのでしょうか。CFSは本当に病気なのですか。

  • CFSは本当の病気か
    目ざめよ! 1992 | 8月22日
    • CFSは本当の病気か

      「病院を転々としました」と,米国ワシントン州に住むCFS患者プリシラは言います。「血液検査を受け,生活習慣について尋ねられました。お医者さんからはどこも悪いところはないと言われ,精神科医のカウンセリングを受けるよう勧められました。どのお医者さんも,私の言うことや病気の症状を真面目に受け止めてくれませんでした」。

      これは典型的な経験です。昨年,アメリカ医師会ジャーナル誌上で一人の医師はこう述べています。「CFS患者はここへ来るまでに,平均16人の医師に診てもらっている。ほとんどの人は,健康上どこにも問題はないとか,憂うつになっているのだろうとか,ストレス過剰などと告げられた人々である。精神科医のもとに送られた人は少なくない。今では状況は改善されたが,それほど大幅に改善されたわけではない」。

      アメリカ医学ジャーナル誌が述べているとおり,CFSは独特な難問を引き起こします。「身体的には元気そうに見え,理学的検査や臨床検査では正常な結果の出る病気に対処する時のストレスは非常に大きい。この病気は配偶者や親族,雇い主,教師,保健医療の専門家,保険会社などとの間のぎくしゃくした関係と結びつけられることが多い」。

      医師にとって問題なのは,疲労があまりにも一般的な症状だという点です。「疲れを訴える患者全員から一人につき1㌦ずつもらえば,医師はもう働かなくてもよくなる」と,ある医療主任記者は書きました。しかし疲労を訴える人のうち,CFS患者がわずかであることは明らかです。CFSの検査法がない以上,医師はどうやって診断すればよいのでしょうか。

      CFSの定義

      1988年3月,米国疾病対策センター(CDC)は「内科学年報」の中で,CFSを集合的に特徴づける一群の徴候と症状を公表しました。(囲み記事をご覧ください。)

      CFS診断の大基準は,(1)活動が50%減退するほどの疲労が6か月以上続くこと,(2)症状を引き起こし得る他の医学的,また精神疾患が除外できることです。しかし患者がCFSと診断されるには,それに加えて,11項目ある小基準の中の8項目,あるいはその11項目の中の6項目および身体所見3項目の中の2項目に該当していなければなりません。

      明らかに,CFSと診断される人は,極度に具合いの悪い状態が長期間続いている人たちです。疾病対策センターは患者を明確に見分けるため,CFSを非常に限定的に定義しました。このため,症状がそれほど重くない人は,現在のところCFS患者には含められていません。

      CFSはうつ病か

      CFS患者はうつ病や他の心理的な障害を抱えていると言う医師についてはどうでしょうか。これらの患者には典型的なうつ病の症状が見られるでしょうか。

      CFS患者はうつ状態にあるのが普通ですが,米国メリーランド州ベセスダにある医学校の教授クルト・クロンキーは,「1年以上疲れた状態にあれば,だれだって憂うつになるのではないか」と言います。ですから,うつ病はCFSの原因なのか,それともその結果として起きているのかを考えてみるのは妥当なことと言えます。

      多くの場合,この疑問に答えるのは容易ではありません。医師は大基準の第2項目,『症状を引き起こし得る精神疾患が除外できること』を考慮に入れ,患者はうつ病にかかっているのであって,器質的疾患あるいは身体の病気にかかっているのではないと判断するかもしれません。ところが,これが正確な診断でない場合が多いのです。

      医学ジャーナル「コートランド・コンサルタント」はこう述べています。「CFSが“器質的”疾患であることの最も動かし難い証拠として,患者の85%に徴候が突然現われている。大多数の患者は,熱や[のどの痛み,リンパ節の腫れ,筋肉痛]を特徴とする風邪のような症状やそれに関連した症状が,ある日突然現われて病気が始まったと言う」。CFSを扱った医師たちは,うつ病は多くの場合そうした症状の原因ではないということを確信しています。

      米国ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院の総合診療の責任者アンソニー・コマロフはこう伝えています。「症例を比較してみて,次の事実が強く印象に残った。患者のほとんどは申し分なく健康で,活動的で,人生において成功していたが,ある日突然,風邪やインフルエンザや気管支炎などにかかり,それ以後治らなくなってしまったのだ。うつ状態や倦怠感や睡眠障害など,心理的なものと考えられる症状は発病前には見られなかった」。

      うつ病の典型的な症状は,すべての事に対して興味を失うことです。しかしポール・チーニー医師はこう説明します。「この患者たちは全く逆である。自分の身に現われている症状が何を意味しているのかひどく心配している。本来の活動をすることができない。働くことができない。恐怖に身をすくませる者も少なくない。だが,周囲の物事に対して興味を失うことはない」。

      リンパ腺腫脹,発熱,白血球数の異常な増加,度重なる呼吸器感染症,筋肉と関節の痛み,そして特に,適度な運動をした後に生じることがある独特の不快感と筋肉痛などは,うつ病と関連した症候群の特徴には全く適合しない症状です。

      最近明らかにされた証拠の重要性

      アメリカ医師会ジャーナル誌の1991年11月6日号は次のように伝えています。「疾病対策センターが設けた慢性疲労症候群(CFS)の定義に該当する患者を対象に現在行なわれている調査の予備的な資料は,CFS患者の大半が,うつ病その他の精神医学上の病気の犠牲者ではないことを示している」。

      疾病対策センターでCFS調査を綿密に監察したウォルター・ガン医師はアメリカ医師会ジャーナル誌のその号の中で,「[調査の対象になった]患者たちは皆うつ病を抱えているだろうという多くの医師の予想に反し,疲労が始まった時点でうつ病の徴候が見られたのはCFS患者のうち30%に過ぎなかった」と説明しました。

      多くのCFS患者とうつ病患者との間には身体面の違いさえ現われる場合もあります。「大うつ病(MDD)の患者にはレム睡眠中に異常がしばしば見られるのに対し,CFS患者にはノンレム[睡眠]中に異常が見られる」と,医学ジャーナル「フィーメール・ペイシェント」は述べています。

      サイエンス誌(英文)の1991年12月20日号は別の重要な調査結果を報告しています。それによると,「CFS患者の特定の脳内ホルモンの量が変化していた」のです。さらに,「正常な人との違いはあまり大きくはないが,CFS患者は一様にステロイドホルモンコルチゾール値が低くなっており,脳下垂体ホルモンACTH(副腎皮質刺激ホルモン)値が高くなっていた。これはうつ病に見られる変化とは全く逆の現象である」と述べています。―下線は本誌。

      CFSが本当の病気だとしたらどうなる?

      医師たちはCFSのような理解できない疾患に対しては懐疑的です。トマス・L・イングリッシュ医師はこう書いています。「懐疑主義が我々の職業に浸透している。健全な懐疑的態度をとることが,知的で識別力のある医師たちの間で“はやって”いる」。しかしイングリッシュは,「もしCFSが本当の病気であるとすれば」,苦しんでいる患者にとって懐疑的な態度がどれほどの益になるのかという疑問を投げかけています。彼は懐疑的な仲間の医師たちに向かって,「もしもあなたが間違っているとしたらどうだろうか。あなたの患者はどうなってしまうだろうか」と問いかけています。

      イングリッシュ自身CFSを患っており,仲間の医師たちに向けて彼が書いた記事が昨年,アメリカ医師会ジャーナル誌に掲載されました。彼は苦しんでいる患者の立場に立って考えるよう医師たちに勧め,この症候群の特徴を次のように説明しています。

      「“風邪”を引いてからというもの,生活の質が元に戻らないほど変わってしまう。思考が明快でなくなる。……時には,新聞を読んだり,テレビ番組の話の筋を追ったりするのもやっとの思いである。際限なく続く時差ぼけみたいなものだ。かつては自信を持って歩いていた患者の世話という崖っぷちも,今では霧に包まれていて少しずつしか進めない。体のあちこちで筋肉痛が生じる。症状が現われては消え,悪化してはまた治まる。……同様の経験をしている他の患者と話すことがなければ,……あるいは同様の患者を何百人も診たことのある医師に相談することがなければ,あなたも自分の身に現われている症状を不可解に思うだろう。

      「私が話をしてきた多数の仲間の患者は,助けを求めて医師のところへ行った人たちだが,彼らは恥をかかされ,憤りと不安を抱いて病院を後にした。身体に異常のあることを自分の体が告げているのだが,医師からは心身症だろうと言われたため,ただ恐怖感といら立ちだけを覚え,安心感は得られなかった。そのため彼らは,医師たちが本当の問題をほとんど理解していないことに気づいた。……症状が奇妙であまり知られていなければそれだけで,病気は存在しないと考えるべきだろうか。検査室で検査をすれば,これまでの病気だけでなく新しい病気の判別も可能だとみなすべきだろうか。新しい考えに対する不信は人間の歴史と同じほど古くから存在し,その不信から生じる有害な結果もまた同じほど古くから存在する」― アメリカ医師会ジャーナル誌,1991年2月27日号,964ページ。

      病気を認めることの価値

      「CFS患者と長い時間をかけて話をする医師たちは,同じ話を繰り返し聞く。それは典型的な話である。慢性疲労症候群は現実に存在すると私は断言できる」と,感染症専門医アラン・カインドは述べています。

      その意見に賛成する医師は増えています。フィーメール・ペイシェント誌は医師たちに次のように勧めています。「明確な診断と適切な治療が確立されるまでの間,医師には,これらの患者に彼らが本当の病気にかかっており,“精神的な病気”とばかりは言えないことを告げる特別の責任がある」。

      患者が病気にかかっていることをはっきり示すと,大きな益が得られる場合があります。ある女性は,CFS患者であることを医師から告げられたとき,「涙がわいてきました」と語りました。彼女の病気が本物であり,名前もあることを医師の口から聞き,彼女は本当にほっとしました。

      とはいえ,CFSの原因は何でしょうか。調査の結果,何が明らかになりましたか。

      [7ページの囲み記事]

      慢性疲労症候群の診断基準

      大基準

      1. 活動が50%減退するほどの疲労が6か月以上続く

      2. 症状を引き起こし得る他の医学的,また精神疾患が除外できる

      小基準

      疲労が始まった時,またはその後に現われる症状

      1. 微熱

      2. 咽頭痛

      3. リンパ節の痛み

      4. 筋力の全体的な低下

      5. 筋肉痛

      6. 運動後の疲労が長引く

      7. 頭痛

      8. 関節痛

      9. 睡眠障害

      10. 物忘れ,混乱状態,集中力低下,うつ状態などの神経心理学的な障害

      11. 以上の症状が(数時間から数日のうちに)急に現われる

      身体所見

      1. 微熱

      2. 咽頭炎

      3. リンパ節が触れるか,あるいは圧痛がある

      [8ページの図版]

      医師は鋭い洞察力を働かせて,うつ病と慢性疲労症候群とを見分けなければならない

  • 原因の究明
    目ざめよ! 1992 | 8月22日
    • 原因の究明

      エイズ患者の免疫機構を破壊する原因の発見には何年もかかりましたが,CFS(慢性疲労症候群)患者の体や脳を損なうものの正体の究明には,さらに長い時間がかかっています。原因はまだ突き止められていませんが,医療当局は,患者に身体的な異常があることを示す,納得のゆく証拠を提出することができます。実際,そういう証拠が法廷で用いられてきました。

      カナダのメディカル・ポスト紙は,ある係争中の裁判で医療専門家たちが被告側の主張を弁護するため,患者の判断能力がその病気のために損なわれていたという証言を行なったことを伝えました。そのためウィリアム・G・N・エグバート判事は,「この病気は判断を要するあらゆる分野に影響を与える。……脳の小領域が障害を負っている」という結論を下しました。

      それは事実なのでしょうか。

      脳の異常

      CFS患者の脳が影響を受けているという主張は医学的な調査によって裏づけられています。1992年1月16日付のニューヨーク・タイムズ紙は,「慢性疲労患者に脳の異常を確認」という見出しを掲げました。その記事は,前日に「内科学年報」で伝えられた報告をもとにしたもので,次のように述べていました。

      「慢性疲労症候群に関する過去最大規模の調査により,患者の脳が炎症を起こしている証拠が発見され,この不可解な病気と神経学的な異常との結びつきを証拠づける初の資料となった」。さらにその記事はこう述べています。「最近,この症候群がみられる人と健康な人との間の免疫とホルモンの相違を示す一連の調査が行なわれてきたが,今回の調査はその中で最も新しいものである」。

      「臨床内分泌代謝ジャーナル」誌の1991年12月号で発表された別の調査結果も,広く人々の注意を引きました。CFS患者の内分泌腺と脳の中にホルモンが不足しているという徴候が発見されたのです。したがって,生化学的また免疫学的因子がCFSの症状を生み出しているという証拠はこの調査によってさらに増えたわけです。

      ウォルター・ガン医師は米国疾病対策センター(CDC)で働いている間,CFS患者の調査の多くを監察しました。彼は,「幾人かの立派な科学者がCFSの研究にかかわるようになってきた」と述べました。それらの研究者たちが発見した事柄は,様々な原因が考えられることを示す場合が多いものの,彼は,「異常なしと報告する者がだれもいないという点が一つ一致している」ことを強調しました。

      CFSを招く原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。ある種のウイルス,または複数のウイルスが関係しているのでしょうか。もしそうであれば,どのように関係しているのでしょうか。免疫機構はどんな悪影響を受けますか。免疫機能の異常はCFS患者に見られる症状をどのように引き起こすのでしょうか。

      考えられる原因

      ウイルスが関係していることを研究は示しています。しかし,どんなウイルスなのでしょうか。研究者たちは数多くのウイルスを関係づけています。「レトロウイルス,スプーマ(泡まつ状)ウイルス,エンテロウイルス,エプスタイン-バーウイルス,ヒトヘルペスウイルス・タイプ-6などはすべて広く知られている,また白熱した論議の的になっている部類のウイルスである」と,アメリカ医師会ジャーナル誌は昨年11月に報じました。

      ウイルスはどのようにCFSを引き起こすことがあるのでしょうか。それはまだ分かっていません。しかしCFS研究の第一人者,アンソニー・L・コマロフ医師は,「今浮かび上がりつつある図式は,免疫機構が慢性的に活性化される,つまり免疫機構が異物と識別した物質に対して慢性的に闘っているというものだ」と述べました。

      健全な免疫機構は敵のウイルスに反応し,サイトカインと呼ばれる化学物質を放出して侵入者と闘います。しかし緊急事態が処理されると,サイトカインは作られなくなるのが普通です。ところがCFS患者の場合,免疫機構がどうやらその生産を停止しないようなのです。CFS患者に一貫してサイトカインの量の増加が見られるということは,大きな意味を持っています。

      この点は重要です。なぜなら,ウイルスが体内に侵入した時に気分が悪くなるのはウイルスのせいではないからです。気分が悪くなるのは,体の細胞がサイトカインを作り出しているからです。発熱や痛みや疲労を引き起こしているのはサイトカインです。米国の医学教授ウィリアム・カーターによると,「サイトカインは残留して当人に害を与えるようになり,ついにはかろうじて身を動かすことしかできない寝たきりの病人にしてしまう」のです。

      では,サイトカインの産生を中止すべき時に免疫機構がそれを作り続ける原因はどこにあるのでしょうか。ジェイ・ゴールドスタイン医師によると,「何かが引き金になって,潜伏しているウイルスが活動的になるため,免疫機構の細胞が異常な量の[サイトカイン]を作り出す」のです。

      それに加えて,CFS患者の場合,侵入してくる生物に立ち向かう最前線の防衛手段としてのNK細胞やマクロファージの数の減少や機能低下のため,免疫機構がさらに弱くなっているようです。重要な点は,CFS患者の免疫機構が正しく機能していないように思えることです。しかし,その理由については様々な意見があります。

      前の記事で指摘されているとおり,多くの患者の場合,うつ病はCFSの原因ではないということを医師たちはしばしば観察してきました。しかし,うつ病のような心理的な問題が原因かもしれないと医師が考えるような患者もいます。興味深いことに,うつ病が免疫機構に害を与えることは研究の結果明らかになっています。「心理的な苦痛自体,神経ホルモン機能と免疫機能を乱しかねない」と,ワシントン特別区にあるウォーターリード陸軍医療センターのクルト・クロンキー医師は書いています。

      したがって,うつ病が引き金となって免疫機構に変化が生じ,CFSの一因となる場合もあることが考えられます。しかし,免疫機構が弱まることにはほかにも多くの要因が関係しているのかもしれません。

      数多くの因子

      大半の研究者の意見は,単一の要因がCFSを引き起こすことはありえないという点で一致しています。「むしろCFSは,弱っている人の体内で,うつ病や[アレルギー]やウイルス感染などの因子が,ある程度の免疫障害を引き起こすために生じる病気であろう」と,医学誌「コートランド・フォーラム」は説明しています。

      ある医師はカナダのメディカル・ポスト紙の中で次のように述べています。「遺伝的に感染しやすいことが必要条件なのかもしれないし,体の酷使も素因となるかもしれない。その疲れ切った体を,突然ある出来事が襲う。ほとんどの場合,それは急性のウイルス感染である。恐らく,こうした因子すべてが一緒になって免疫機構の障害を誘発するのだろう」。

      チャールズ・ラップ医師は,「我々はストレスが主な引き金の一つになっていると見ている」と言いました。「時にはある種の化学物質が作用しているのも見てきた。……興味深いことに,私の患者の中には(調査をしたことは一度もないが),殺虫剤やペンキやニス類が発病に関係していたようだと言った人も幾人かいた」。

      環境汚染によって人がこれほど多くの攻撃にさらされているのは,歴史上初めてのことです。食品添加物や薬物も体に害を与え,免疫機構に悪影響を及ぼすかもしれません。抗生物質の長期使用が免疫機構を弱めるとさえ言う医師もいます。

      幾千人ものCFS患者の苦しみには,ほかの要因も関係しているかもしれません。しかし,期待をかき立てるような手がかりや,興味をそそられるような可能性はあるものの,CFSの原因はいまだに分かっていません。

      終わりの日のしるしの一つ

      イエス・キリストは世界の体制の終わりの日に関する重大な預言の中で,「そこからここへと疫病……があります」と予告されました。(ルカ 21:11)今の時代はまさにその預言のとおりです。今日の病気の中には原因の分からないものが少なくありません。しかし,そのためにそれらの病気の実在性が薄れたり,人を衰弱させる力が弱くなるわけではありません。

      CFSも,終わりの日を特徴づけるとイエスが言われたしるしの一部を成す病気の一つだと思われます。しかしCFSで苦しんでいる人にとっては,それに気づいたからといって生活が楽になるわけではありません。CFS患者はどのように病気に対処することができるでしょうか。

  • CFSと闘う
    目ざめよ! 1992 | 8月22日
    • CFSと闘う

      シンポジウムで医師たちがCFS(慢性疲労症候群)の治療法を話し合うところがテレビで放映された時,一人の医師は,「これらの患者は皆,ここにご出席の皆さんと同じほど健康そうに見えます」と言いました。CFS患者は見た目には病人とは映らないため,すでに味わっている苦しみに追い討ちをかけるような扱いを受けることが多いのです。

      米国テキサス州に住むCFS患者のパトリシアは,「ヨブと同じ気持ちになる時があります。ヨブの友人たちは必ずしも助けにはなりませんでした」と言いました。例えば,見舞いに来たある女性はこう言いました。「元気そうじゃないの。もっとずっと悪いのかと思っていたわ。あなた,うちの義母と似たところがあるのね。義母も病気ではないかとあれこれ気にするたちなのよ」。

      そういう言葉は大きな精神的打撃を与えかねないため,CFSがもたらす大きな問題の一つでもあります。米国ユタ州に住むCFS患者ベティーはこう説明します。「“努力をしよう”としていないと言ってけなされる時の辛さは口では言えません。それはCFSの苦しみの中で最悪の部分です」。

      理解と愛は欠かせない

      ベティーは,CFS患者の気持ちを代弁するかのようにこう語りました。「私たちは哀れんでほしいのではありません。同情もいりません。ただ,もう少し理解を示してもらえればありがたいと思います。神はわたしたちが抱えている困難や悲しみを知っておられます。それはとても重要なことです。でも,クリスチャンの兄弟姉妹の感情面での支えも非常に大切です」。

      しかし,米国ワシントン州のある若い患者が言ったように,多くの人にとってCFSはいまだに理解しがたいものです。「みんながもっと感情移入をしてくれると本当にいいと思います。そう,同情ではなく,感情移入です。でも,こういう病気と闘ったことのある人はあまり多くないので,それは不可能です」。

      しかし,CFS患者を理解するのが不可能なはずはありません。もちろん,患者の身体はわたしたちが経験したことのないような状態にありますが,わたしたちはその病気について学ぶことができ,患者がどれほど重い病気にかかっているかを理解するようになります。死病のエイズとは違って,ある患者はCFSにかかると,「死んでいたらよかったのにという気持ちになる」と言いました。1986年に病気になったデボラは,「長い間私は,神に向かって,私を死なせてくださいと毎晩祈りました」と正直に言いました。―ヨブ 14:13と比較してください。

      もちろん,わたしたちは患者がCFSと闘えるよう助け,励ましたいと思いますが,残念なことに,口に出す言葉が逆効果を生む場合があります。例えば,善意で訪問したある人はCFS患者に,「晩に温かいミルクを飲むといいよ。そうするとよく眠れるし,数日すれば快復するさ」と言いました。これは,CFSを完全に誤解している言葉です。患者は助けられるどころか,傷ついてしまいました。

      病人は,クリスチャンの集会に出席することなど不可能だとしばしば感じるかもしれません。実際に出席した場合,わたしたちの理解をはるかに超える努力を払ったかもしれません。ですから,それまで欠席していたことに注意を向けるのではなく,「よくおいでになりました。集会に来るのが大変なこともありますよね。今晩はお会いできてうれしいです」と言うだけにしておくとよいでしょう。―囲み記事をご覧ください。

      CFS患者の神経系はたいてい影響を受けており,人との通常のやりとりにさえ困難を覚えます。CFS患者の夫を持つジェニファーはこう説明します。「私たちは患者と他の人たちとの間に立って患者を守る必要があります。患者のプライバシーを認め,患者と仲違いをしたりせず,不快な状況に直面させないようにして患者を助けなければなりません」。

      ジェニファーは,患者の病気が家族の負担になる場合があることを認めました。家族は患者のために一切のことをするので疲れてしまうかもしれません。しかしジェニファーの言うとおり,患者に休息を取らせなければ,快復は遅れるかもしれません。そうなると結局は皆が苦しむことになります。この病気に遺伝的にかかりやすい体質はありそうですが,幸いなことに,この病気が伝染することはめったになさそうです。

      CFS患者であり,エホバの証人の旅行する監督の妻であるトティーは,CFSと闘えるよう何年もの間夫が助けてくれたと語りました。トティーは夫に感謝の気持ちを伝えます。しかし,こう言います。「友人たちは私の具合いを尋ねてくれますが,夫のケンにも励ましが必要です」。

      良好な予後 ― しかし危険はある

      CFSで命を落とすことはめったにありません。そのことを知っているとCFSと闘う助けになるかもしれません。時間がたてば,ほとんどの人は快方に向かい,多くは快復します。アンソニー・コマロフ医師はこう述べています。「我々が調査した数百人の患者の中で,時の経過とともに次第に悪くなってゆくという慢性的進行型の患者は,診察の結果一人もいなかった。そういう状態になった人は一人もいなかった。それで,容赦なく進行する他の病気と比べると,この病気は非常に異なっている」。

      オーストラリアのCFS研究の第一人者アンドリュー・ロイド医師は,この点を確証してこう述べました。「快復すると ― 我々は快復するのが普通だと考えている ― それは完全な快復である。……したがってこれは,どのような過程を経てこの疲れた状態が生じるにしても,それを完全に元に戻せることを示している」。快復後,患者の体の器官に損傷は認められないようです。

      病気が余りにひどいため,死なせてくださいと繰り返し祈っていたデボラは,ついに容体が好転し,以前の自分に戻ったように感じています。最近彼女が語ったところによると,夫に加わって全時間宣教を再開する計画を立てています。同じような快復を経験した人はほかにもいます。それでも用心は必要です。なぜでしょうか。

      再発を経験したキースは,「この病気を軽く見ないこと,そして治ったものと早合点しないことはとても重要です」と注意しています。気分がよくなったキースは全時間宣教を再開し,再び運動を始め,定期的にランニングとウエートトレーニングをしました。しかし悲しいことに,病気が再発し,キースは再び寝たきりになりました。

      よく再発するというのが,この病気の油断のならないところです。再発を避けるのは容易なことではありません。エリザベスが語ったとおり,「気分がよくなりだすと,失った時間を取り戻さないようにするのはとても難しいことです。病気のことを忘れてしまいたいという気持ちがとても強くなって,いろんなことをしたくてたまらなくなります」。

      このようなわけで,CFSと闘うには努力と辛抱が必要です。

      患者にできる事柄

      患者が予測の立たない経過をたどる慢性病に対して精神的に慣れるのは大切なことです。CFSを長く患っているベバリーは言います。「調子の良い週や月に自分は本当によくなったと考えるようになると,大抵それまで以上に身体的に後退してしまいます。それで,いつも自分の限界を認めるように努めています」。キースは,「恐らく,辛抱することが最も重要でしょう」と言いました。

      CFS患者は力を蓄えて,体を快復させる必要があります。そのため,CFSにうまく対処している人々は,積極的安静療法と呼ばれる療法の価値をよく口にします。これは,何かの行事が近づくと前もって余分に休養を取って積極的に準備する方法です。そうすればCFS患者は,力を出し尽くして後で過度に苦しむことなくクリスチャンの大会その他の特別な行事に出席することができるでしょう。

      精神的また感情的なストレスは,激しい身体的な活動と同じほど突然の再発の原因になりやすいので,いつも落ち着いた,穏やかな精神を保つのもとても重要です。ですから,「自分を弁護しようとして力を浪費してはいけない」というのはよい助言です。つまり,理解を示さない懐疑的な人には自分の体調を説明しようとしないことです。

      CFS患者は,他の人があなたをどう思っているかではなく,創造者エホバ神がどう思っておられるかが大切であることに留意する必要があります。神はあなたが置かれている状況を理解しておられ,ご自分に仕えるためにあなたがどのような事柄を行なっていても,そのことのゆえにあなたを愛されます。エホバがみ使いたちと共に,あなたの産出力ではなく,ヨブに対するのと同様,態度や忍耐や忠実さを見ておられることを確信できます。

      CFSのために2年間の大部分を寝たきりで過ごしているスーザンは,CFSの極めて破壊的な特徴の一つとして,人生の目的がなくなったかのように患者が感じるという点を挙げました。そのためこう勧めています。「喜びや達成感を味わえる物事を見つけましょう。私はセントポーリアを3株育てて,毎日,新しい芽が出ていないか眺めています」。しかし,最も重要なのは「祈りを通してエホバに頼り,自分の霊性を優先させる」ことだとスーザンは言います。

      多くの患者は,聖書の朗読テープを聴くのが有益であることに気づいたと言います。2番目の記事に登場したプリシラは,自分が失ったものについてくよくよ考えるのをひとたびやめると,「その後はCFSにひどく打ちひしがれることはなくなります」と言いましたが,その言葉は注目に値します。「この状態が永久に続くなどと考えないよう,部屋の中のよく目につく場所に励みになる聖句を幾つか飾っています」。

      治療法はどうか

      現在のところ,医学的には症状に対処する以上のことはほとんど何もできません。治験段階の薬品アンプリゲンに対する期待が高まった時期がありました。この薬品を用いた人の多くは症状が改善されましたが,望ましくない副作用が現われた人もいたため,米国食品医薬品局はその薬の使用を一時停止しました。

      不眠症を含む睡眠障害はCFSに付き物です。興味深いことに,抗うつ薬 ― 時には,うつ病患者の服用量の100分の1 ― を服用することによって,全員ではありませんが,よく眠れるようになって症状が改善された人もいます。ベバリーは何年もの間そのような薬品を避けていましたが,一度試してみました。「効果はてき面でした。ただもっと早く始めておけばよかったと思います」とベバリーは言いました。

      フィーメール・ペイシェント誌はこう述べています。「CFSを治療するため,[一般に用いられている方法が効かない場合の“代用”治療法として患者が試してみたいと考えているものを含め]ほかにも多くの方法が試されてきた。それには,様々な薬物療法,物理療法,……鍼治療,ホメオパシー,自然療法,抗カンジダ療法,アーユルベーダ法などがある」。

      この医学誌はこう述べています。「医師は患者をよりよく理解して,患者に助言するため,自分個人が信じるかどうかにかかわりなく,そうした[治療法]についてある程度の知識を持っているべきである。多くの患者は,医師が耳を傾けて,患者の訴える様々な症状を真面目に考えているのを知るだけで感謝の気持ちを抱く。……頼れる医師がついていることを確信するだけでも,CFS患者のほとんどは気分がよくなり,症状が大きく改善される患者も少なくない」。

      治療法がないため,医師に診てもらうことの価値を疑問視する人もいます。しかし,診察してもらうなら,検査を受けてガンや多発性硬化症,エリテマトーデス,ライム病など,同様の症状を表わす他の病気ではないことを確認できるという極めて大きな益があります。これらの病気が初期の段階で確認されれば,効果のある治療を施すことができます。「救急医療」誌は医師に対して,「ひとたびCFSと診断したなら,患者に慢性疲労症候群の研究所に行くよう告げるのが最善の策である」と勧めています。

      休息をとるのは一番の治療法だとされていますが,注意を払って平衡を保たなければなりません。ですから,自分のペースをつかむのが最善です。自分の限界をわきまえて,その範囲内で活動し,毎日,毎週,毎月を過ごしましょう。歩いたり温水プールで泳いだりという軽い運動は,身体的また精神的な疲労に至らない程度に行なう限り効果がでることがあります。免疫機構を強めるような健康的な食事をとることも大切です。

      この病気には失望が伴う場合があります。トレーシーという名の患者に起きた事柄はその悲惨さを示しています。彼女は絶望的になって自殺してしまいました。しかし,死んで解決されるものではありません。一人の友人が彼女の死を悲しみながら述べたとおり,「トレーシーが何を本当に望んでいたのか私には分かります。死にたくなんかなかったのです。生きたかったのです。苦しみのない生活がしたかっただけなのです。それが私たちの目標に違いありません」。確かに,それはすばらしい目標です。ですから,目標がいつ達成されるとしても,死ぬことにではなく,生きてその目標に到達することに希望を置きましょう。

      CFSは,今日の人類を悩ましている多くの苦しみの原因の中に加えられた奇病の一つです。医学がどれほど進歩しても,それらをすべて治すには医療技術以上のものが必要です。偉大な医師であられるエホバ神はまさしくそれを行なおうとしておられます。つまり,ご自分の王国政府の愛情深い統治によって全世界的な規模ですべての病気を治そうとしておられるのです。その時には,『「わたしは病気だ」と言う居住者はいなくなります』。これは信頼できる神の約束です。―イザヤ 33:24。

      [12,13ページの囲み記事]

      周囲の人々が与えることのできる助け

      言ったり行なったりしてはいけないこと

      ◆ 「顔色は本当にいいですね」,あるいは「病気には見えないわよ」。このような言葉を聞くと患者は,自分が重症であることを信じてもらっていないと考える。

      ◆ 「僕だって疲れている」。これは苦痛をひどく軽視した発言である。CFSには単なる疲れ以上の多くの事柄が関係している。痛みを伴い,人を衰弱させる病気である。

      ◆ 「ああ疲れた。ひょっとすると僕もCFSかもしれない」。冗談のつもりで言ったとしても,CFSは笑い事ではない。

      ◆ 「僕も数日休みをとって日ごろの疲れを解消できたらなあ」。CFS患者はバカンスを楽しんでいるのではない。

      ◆ 「働き過ぎたから,病気になったんだ」。患者の身に降りかかったことは本人の責任だと言っているように聞こえる。

      ◆ 「気分はどうですか」。本当に知りたいと思っているのでない限り,尋ねないこと。率直に言って,患者は普通大変気分が悪いのだが,不平を言いたくないと思っているかもしれない。

      ◆ 「◯◯さんもCFSにかかっていたけど,たった1年で治ったわよ」。CFSの重さと快復までの期間は患者によってそれぞれ異なる。短期間で快復した人のことを話すと,それより長く患っている人をがっかりさせるかもしれない。

      ◆ 医療上のアドバイスは,本人から尋ねられた場合や自分に資格がある場合以外は慎む。

      ◆ CFSが再発した場合,患者のしたことが原因であるかのように言わない。

      言ったり行なったりすべきこと

      ◆ 相手が本当に病気なのだとこちらが信じていることを示す。

      ◆ 電話をかけたり訪問したりする。先に電話をかけておくほうが普通は望ましい。

      ◆ 訪問や電話の制限がある場合,それを尊重する。

      ◆ 訪問できない場合,はがきや手紙を送る。患者は毎日手紙を開けるのを楽しみにしているものである。

      ◆ 同情を示す。時には,病人が経験している事柄を認めるだけで同情を示すことになる。

      ◆ 使い走りを申し出たり,代わりに食料品を買ってきたり,病院へ連れて行ったりする。

      ◆ 「お会いできてとてもうれしいです。兄弟が忠実に忍耐しておられるのをエホバは確かに理解してくださいますよ」とひとこと言うことができる。

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