あなたは神と共に働く者になりますか
「疲れ果てることも,うみ疲れることも」なく働かれる方,エホバは,救いにふさわしい羊のような人々を集めるため働いておられます。(イザヤ 40:28。マタイ 25:31-34)その集める業の結果,大きな増加がもたらされていますが,そのすべての誉れはエホバに帰せられなければなりません。―詩編 115:14。
わたしたちには神と共に働くすばらしい特権があります。わたしたちはその『幸福な神の栄光ある良いたよりを託され』ています。(コリント第一 3:9。テモテ第一 1:11)ここで『託される』と訳されている言葉は,「信じる」を意味するギリシャ語ピステウオーから来ており,エホバがわたしたちを信頼して,「良いたより」をゆだねてくださったことを意味しています。そうであれば,わたしたちは神の信頼に足る者であることを証明してゆかなければなりません。
「終わりの日」が始まって既に4分の3世紀が過ぎようとしている今,良いたよりを宣べ伝え羊とやぎを分ける業の手を休めるべきでしょうか。(テモテ第二 3:1)いいえ,むしろエホバは「小さな者が千となり,小なる者が強大な国民となる」という預言の言葉をお告げになった後,「わたし自ら,エホバが,その時に速やかにそれを行なう」と言葉を続けられました。(イザヤ 60:22)これはエホバがご自分の民を集める業の速度を上げてゆかれるということです。「終わりの日」の預言が最終的成就に向かって「息をはずませてゆく」今,神と共に働く者たちの仕事はいよいよ増し加わっています。―ハバクク 2:3。
新工場 ― 神が働いておられる証拠
海老名ベテルの敷地に最近完成し,使用されるようになった6階建ての新しい工場は,エホバが宣べ伝えて弟子を作る業をさらに拡大しようとしておられる証拠です。どうしてそう言えるのでしょうか。
新工場に様々な部門が移ることによって,工場の生産能力が大幅に向上したからです。現在新工場の3階と4階には製本部門が入り,3階には製本ラインや表紙を作る機械が入っています。4階にはデラックス版の聖書に金箔を付ける部門があり,既にポケット版のデラックス聖書の生産が始まっています。ほかにも手製本などの部門が4階に置かれています。また2階は発送部門の倉庫として用いられています。1階は巻紙倉庫また購入や輸出入の部門になっています。天井の高い地下には既に,工場の機械や部品を製造するマシンショップが入って,広々とした作業場で兄弟たちが熱心に働いています。4月末には既に旧工場より移された製本ラインからポケット版の配布用書籍が次々に流れ出て来ていました。
新工場へ移ったことには製本部門にとってどんな利点があったのでしょうか。これまでは輪転機で折り丁[書籍の32ページ分に相当する一区分]を印刷する速度と,製本部門の生産能力が異なるため機械を止めなければならないことがありました。例えば,ポケット版の書籍10万冊の印刷は1日半ほどで済みますが,その同じ量を製本するには5日間かかります。一方,聖書を10万冊生産する場合,印刷に32日かかるのに対し,製本には20日から25日しかかかりません。印刷済みの折り丁を蓄えておく場所がなかったために輪転機で印刷されたものはすぐに製本しなければなりませんでした。このため製本の機械は輪転機に合わせて忙しくなったり仕事がなくなったりしていました。ところが,新工場にはスペースが十分にあるので,折り丁を印刷したあと蓄えておき,次いで計画生産していくことができます。
「このことには別の益もあります。紙は生きていると言われるように,印刷がすんだばかりの折り丁は水分を含んでいて,まだ伸び縮みします。印刷の後,少し置いておくと,紙も落ち着くので製本してから縮むこともなく,安定した良い書籍になります」と,製本部門の監督は新工場の利点について話しています。
新工場の3,4階の製本部門および地下東側のマシンショップは活動に満ちていますが,地下の西側半分はがらんとしています。2台の高速オフセット輪転機の入る場所が空けてあるのです。現在のところ,日本および日本支部が文書や書籍を供給しているアジアの国々の必要を満たすには従来の3台の輪転機だけで十分です。また,新工場の5階と6階はまだ特定の用途がありません。このスペースは,「働く」神エホバがこれからも業を「速やかに」行なわれ,大きな増加をもたらすためにわたしたちに『託して』くださったスペースと言えるのではないでしょうか。神はわたしたちを信頼し,いわば委託資産としてこのスペースを活用するようわたしたちを招いてくださっているのです。このスペースはエホバが増加をもたらしてくださることに対するわたしたちの「信仰」の表われであるだけでなく,こうしたスペースが必要になるというエホバの「信頼」の表われとも言えます。わたしたちは神と共に働く者となって,その「信頼」にこたえるでしょうか。
メップス ― もう一つの委託資産
エホバ神は新工場に加えて,もう一つの委託資産を与え,「共に働く」者となるよう日本の兄弟たちを招いてくださいました。それは日本語の雑誌や文書をメップス[ものみの塔協会の開発した多言語電算写植システム]でページの形に組み上げ,写植することと関係があります。日本支部では,本部や世界の多くの支部で用いられているメップスの電算写植システムがこれまで用いられていませんでした。日本支部が開発した「スクリプト」という優れたシステムが既にあり,コンピューターを使って印刷のための版下を作っていたからです。わざわざ多大の時間をかけて,メップスのプログラムに日本語の組版のための新たな機能を付け加える当面の必要はありませんでした。メップスで処理できる言語として日本語は複雑すぎるように思われていました。
ところが昨年の10月,それまで6年余り使用されてきた電算写植機が故障してしまったのです。電算写植機とはコンピューターでページの形に組み上げられた情報を印画紙に書き出す機械です。この機械を修理する努力が払われましたが,部品が手に入らなくなっており修理は不能との連絡が入りました。新しい電算写植機を買うためには莫大な費用がかかります。しかし,電算写植機がなければ雑誌の印刷はできません。霊的な食物の供給を一時的に止めるわけにはゆきません。一体どうしたらよいのでしょうか。
ブルックリン本部と日本支部との間で電話で緊急な連絡が取られ担当の兄弟たちはエホバ神に導きを求めました。(フィリピ 4:6)短時間で決定が下され,ものみの塔農場のコンピューター部門の開発したメップスセッター(メップスの電算写植機)を日本で計画していたよりも早く使うことになりました。しかしメップスセッターで日本語を出すにはコンピューターで組んだ情報をメップスが読み取れるようにするプログラムが必要です。そうすればすでに組み上がったページを印画紙に焼き付けられます。そのプログラムの開発には少なくとも6か月から1年はかかると考えられていました。それだけの時間の余裕はありません。工場の監督は,この難しい局面に立った時「どうなるか全く分かりませんが,エホバが必ず道を開いてくださるでしょう」との信頼を言い表わしました。(詩編 62:8)エホバはどのように道を開いてくださいましたか。
国際的な兄弟関係を通して道が開かれました。ちょうどそのころ,ものみの塔農場でメップスセッターの開発に携わった兄弟がフィリピン支部に協会の仕事で来ていました。協会はその兄弟が日本支部へ来るよう取り決め,さらにものみの塔農場から二人の兄弟たちがメップスへの移行を助けるために派遣されました。6か月から1年かかると考えられた仕事は,エホバ神と共に働く兄弟たちの献身的な働きにより,わずか6週間で完成しました。この仕事に携わった兄弟は,「エホバはこれまで助けを与えてくださいましたが,今回も考えられないような仕方で助けてくださいました」と話しました。
現在のところ,日本語の出版物の組版はおもにスクリプトを用いて行なわれていますが,徐々にメップスで組版も行なわれるようになるでしょう。将来は電算写植機だけでなく出版システムのすべての工程がメップスで行なわれるようになります。メップスを使うことによって金銭面で大きな節約になることに加え,最大の贈り物として,出版システムの面でも世界的な兄弟関係の一致に日本支部も加えられることになったのです。しかし日本支部がこのような仕方で早期にメップスへ移行したことにより,働く方であられるエホバは,さらにご自分と共に働くよう日本の兄弟たちに招待を差し伸べてくださいました。
それは,日本支部がメップスのメインテナンス支部としてアジア地域のメップスを使う国々のコンピューターやプログラムの維持管理を支援するという特権です。たとえ難しい割り当てでも,エホバから託された奉仕の特権をとらえる時にさらに多くの仕事を託されるという形で豊かな報いが与えられるのです。それはイエスのたとえ話に出て来る,「タラント」を託された奴隷たちの場合に似ています。能力に応じて与えられたタラントを倍に増やした奴隷は,さらに多くのものを託されました。(マタイ 25:14-23)わたしたちも,今日の勤勉な「奴隷」級の模範に見倣って,託された資産を十二分に活用してゆきたいものです。
心を動かす出版物
エホバがこのようにして現在も働いておられるということは,あなたにどんな影響を及ぼしますか。イエスはみ父が働いてこられたという事実に促されてこう言われました。「わたしの父はずっと今まで働いてこられました。ですからわたしも働きつづけるのです」。(ヨハネ 5:17)わたしたちも『キリストに見倣い』,「働きつづける」よう心を動かされるのではありませんか。(コリント第一 11:1)わたしたちひとりひとりは,神の『王国の良いたより』を託されています。(マタイ 24:14)わたしたちは,「自分が神によって吟味され,良いたよりを託されるにふさわしい者とされたこと」を大いに喜べます。(テサロニケ第一 2:4)この「良いたより」は人々を幸福にするからです。―テモテ第一 1:11。
宣べ伝える業の頻度が増しているということは,「終わりの日」がいよいよ進行していることを示しています。何度も区域を回って,反応が速くなるにつれて,ある人々は『なぜ何度も訪問しなければならないのか』と考えるかもしれません。しかし関心を持つ大勢の人々が文書を協会に直接注文してきているということはまだまだ「羊」のような心の持ち主がいることを示しています。
最近,東京の一人の「目ざめよ!」誌の読者からこんな手紙が協会に寄せられました。「目ざめよ!誌,いつも送ってくださりありがとうございます。今ではすっかりファンになり,次号が待ち遠しくてなりません。薄い雑誌ですが,何と多くの栄養分がバランスよくびっしり詰まっていることでしょう。この薄いところが気に入っております。どこへ行くのにも手軽に持って行けます。……心からエホバ神と,エホバの証人の方々の愛にあふれた行ないに感謝いたします。これからも頑張ってください。わたしもガンバリます」。
八王子市の一女性からはこのような手紙が寄せられています。「昨年の秋,伝導の方がおいでになってエホバの王国につきまして話してくださいました。しかし,わたしは宗教を信じていませんでしたので当然お断わりしたのですが,その方の態度が良かったこともありまして一応本を求めて読ませていただくことにしました。本を読みながらその内容の確かさを感じました。そしてこれはわたしにとって正に天の王国の良いたよりでした。昔から人が人を支配して良くなったためしはありません。多忙な多くの人は幸福を求めながらその方法を知らずに過ごしているような気がします。つきましては近い所に集会所がございましたらお知らせいただきたくお願い申し上げます」。
広島市に住む一人の主婦は,「今までは妙な方が聖書だと言って売りに来られた」と述べていますが,次のような手紙を寄せました。「拝啓一筆申し上げます。去る日曜日,どこかの子供さんが来られて,この時年老いた母が応対したので分かりませんでした。その子供さんが,『聖書が信頼できる理由』[という]ほんの小さな小冊子を1冊あずけて行かれました。……中を読んでみましたけれどこれなら理解できると思いました」。この人は「創造」の本を注文してきました。
これらは,宣べ伝える業を行なうための道具として「忠実で思慮深い奴隷」が備えてくださっている雑誌や出版物がいかに効果的で人の心を動かすかを物語っています。(マタイ 24:45)わたしたちはエホバ神の備えてくださったものを感謝して十分に用いているでしょうか。エホバは王国の良いたよりを宣べ伝えるひとりひとりが,伝道用の出版物を活用することをご意志とされているとの確信を抱けるのではありませんか。もしそうしたことをエホバが考えておられなければ,工場の広いスペースを備えたり新しい組版システムへの移行を導いたりはされなかったはずです。日本支部のこうした拡大は正に,日本の兄弟たちひとりひとりの前に「活動に通ずる大きな戸口」を開くものではないでしょうか。(コリント第一 16:9)では託された,人を救うすばらしい「良いたより」をわたしたち個人個人がどのように運用できるでしょうか。
あなたに託された資産を活用していますか
わたしたちは自分に与えられた奉仕に満足しきっているでしょうか。毎週定期的に野外奉仕に携わっているならそれは称賛に値することです。しかし,もう少し時間を調整するなら補助開拓奉仕に携わることができるかもしれません。さらには正規開拓奉仕の機会をとらえることさえできるかもしれません。こうした開拓奉仕の機会という特権を託されるにふさわしい者であることをわたしたちは示していますか。エホバはわたしたちのためにそうした取り決めを設けてくださっているのではないでしょうか。
もちろん,人の事情は異なりますから開拓者精神を抱きながら開拓奉仕にあずかれない人も大勢います。しかし,土地の人々の反応に合った証言の仕方を工夫することによって,たとえ相手の反応が速くても出版物を配布する道が開けることがあります。食べず嫌いの子供の口に食物を入れるには工夫が必要とされます。母親は子供にニンジンを食べさせようとして,それを花形に切ったり,食べやすくしたりします。協会は美しいさし絵を用いたり,興味深い記事を準備したりして霊的食物を一般の人々に受け入れやすいものにしています。ほんの二,三年前の雑誌と最近号の雑誌を比べるだけでも,いかに人々を引き付けるものになっているかが分かるはずです。ではわたしたちの提供の仕方はそれと同じほど進歩しているでしょうか。雑誌の提供の仕方を工夫して,自分が「神と共に働く者」であることを実証してゆきましょう。
宣べ伝える業を拡大する点で,街路伝道を考慮してごらんになったことがありますか。松山市に住む正規開拓者の一姉妹は松山市駅前で街路伝道をする届けを警察に出して,駅前に立っています。色々な号を8冊ほどよく見えるようにして両手に持ち,歩いて来る人の中から一人を選んで近づきます。目でその人に話していることを知らせ,声をかけ,相手の反応に応じて雑誌を紹介します。この姉妹は目標を高く持ち定期注文を増やしてゆき,月500冊を目標にして,1か月で515冊の雑誌を配布したこともありました。どのようにしてそれほど多くの雑誌を配布するのでしょうか。きちんとした身なりをし,温かいほほえみを浮かべて街路に立ち,積極的な態度で雑誌を提供することによってです。この結果姉妹は多くの人に知られ,街路での雑誌経路までできました。姉妹を見ると,向こうのほうから近づいて来て新しい号の雑誌を求めるのです。あなたもこの分野の奉仕を楽しんでみませんか。
非公式の証言も実りの多い奉仕の分野です。エホバは手軽に持ち運べる様々なパンフレットを備えてくださいました。ポケット版の聖書もあります。「ものみの塔」誌や「目ざめよ!」誌も持ち運びに便利です。こうした道具も携帯していなければ活用はできません。是非いつも身近に置いて,親族や友人,近所の人々などに人々を幸福にする良いたよりを伝えてゆきましょう。
日本中の兄弟たちが熱心に奉仕に励み,「神と共に働く者」になってきたことに対する報いとして,エホバはすばらしい贈り物を与えてくださいました。それは新しい工場と日本語の組版写植システムのメップスへの移行です。しかしその報いはさらに大きな仕事と責任を伴っています。新しい工場が実際に十二分に活用されるようになるかどうかはひとりひとりの伝道者の熱心な働きにかかっています。エホバはわたしたちを信頼し,大きな能力を持つ工場を与えてくださいました。あなたの奉仕はどうですか。エホバから与えられる奉仕の務めをこれからもりっぱに果たし,さらに奉仕の質を向上させて人々を弟子とする業に励みましょう。わたしたちは神から託された「良いたより」を宣べ伝え,弟子を作る業に「力を尽くして励(む)」時,「神と共に働く」すばらしい特権を味わい知ることができるのです。―ペテロ第二 1:10。コリント第一 3:9。ペテロ第一 2:3。
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工事中の新ホーム棟から見た新工場
[4ページの図版]
デラックス版聖書に金箔を付ける部門
生産が始まった新工場3階の製本ライン
[5ページの図版]
印刷済みの折り丁を蓄えるスペースが十分にできる
メップスを使ってページを組む向こう側に見えるのがメップスセッター
[6ページの図版]
工場5階と6階のこのスペースは活用されるようになりますか