世界展望
通常戦争 ― 核の脅威?
たとえ通常戦争であるとしてもヨーロッパで戦争が行なわれるなら,「広範囲に放射能が広がり,膨大な面積の土地が幾世代も人の住めないところとなる」,とニュー・サイエンティスト誌は述べている。というのも,ブラッドフォード大学平和研究学部の報告によれば,攻撃目標の中に原子力発電所が含められることは必至だからである。「原子炉はドイツだけでも約30,英国に38,ヨーロッパ全体には120[以上]ある」と,その報告は述べ,「このほかにも建設が予定されている原子炉は多く,これらの発電所が攻撃される公算は極めて大きい」と付け加えている。同じ研究によれば,ドイツ連邦共和国に攻撃がなされて原子炉が爆撃・破壊されただけでも,「チェルノブイリのような場所がたくさん」生まれる。
複雑化するエイズ問題
やはりエイズの原因となり得る新たなウイルスの存在が,フランスはパリのパスツール研究所の研究者たちによって確認された。「ニューイングランドジャーナル・オブ・メディシン」誌に発表された報告の中で,彼らはこう述べている。「HIV-1型と関連はあるものの異質のウイルスであるHIV-2型が,西アフリカの一部に見られるエイズの原因であり,新たなエイズ禍を引き起こすことは確実と見られる」。当初は西アフリカの地域に限定されたこの新種のウイルスは,英国,フランス,西ドイツ,ブラジルでもすでに報告されている。これら2種類のウイルスは遺伝学的には異なるため,エイズの血液検査である標準的なスクリーニングテストでは,HIV-2型が見落とされやすい。双方のウイルスにこのような相違が見られるので,この病気に効くワクチンを発見する仕事は一層複雑になるのではないかと懸念されている。
頭のよい鳥
その風変わりな巣と順応性があることで知られるブラジルのキバシリカマドドリは,捕食者である人間と動物の裏をかくこつを心得ている。普通この鳥は自分の住まいとなる木に五つも巣を作るが,住むのはそのうちの一つで,残りの巣は偽物である。だらしなく見えるそれらの巣の上下左右には普通,数個の入り口 ― そのうちの幾つかは偽物 ― が設けられる。ヘビの抜け殻の断片が巣作りの材料に取り入れられることもあるが,これは明らかに侵入者の意気をくじくためである。ブラジルの鳥類学者フラービオ・クリースピ・アラウージョは,この鳥の捕食者が増えた分だけ偽物の巣の数も増えたと報告している。最近では,一本の木に巣を12個も作った鳥が観察されている。
本物に似過ぎている
批評家たちは,赤外線の光を利用して標的をねらい撃ちできるレーザー・タッグ・ガンの作り方は本物に似過ぎているかもしれない,と主張している。先端技術を駆使したこのおもちゃの銃で,19歳の若者の命が奪われた。ある日の夕方遅くに3人の年若い友人と戦争ゲームをしている最中,レオナルド・ファルコンは,てっきり仲間の若者だと思い,ある人物めがけてプラスチック製のピストルを発射した。その人物は若者ではなく,銃を持った空き巣がいるとの報告を調べに現場を訪れていた警官だった。暗がりにいたその警官は,若者のレーザー・ガンが放った光を実際の銃火と間違えて,すぐさま2発の散弾を発射し,若者を死亡させた。この少年の父親は,レーザーを用いた本物そっくりのこのおもちゃを使って同様の結果を招く人が他にも出ることを懸念して,「人々に警告を与えるために何らかの手段を講じなければならない」と述べた。
優れた情報伝達誌
スコットランドの一教会が発行している「ライフ・アンド・ワーク」誌の最近号に載せられたある手紙の中で,同教会の僧職者の一人,ラッセル・モファットは,「ものみの塔」と「目ざめよ!」の両誌に高い点数を付けた。エホバの証人の成長について注解したモファットは,証人たちが成功を収めている一因は「証人たちの発行している出版物の質の良さ」にあると述べた。「ものみの塔」と「目ざめよ!」の両誌についてモファットは,「[各号の]内容は興味深い仕方で提供されており(カラー写真入り),今日的な問題と関心事を扱った記事を載せ,道徳的な問題に関しては確固とした立場を取り,明確であいまいさのない教えと助言を与えている。(例えば,最近の「ものみの塔」誌には,性的いやがらせに関する問題を取り上げてクリスチャンの女性に対する実際的な提案を述べた,「職場の女性」に関する記事が載せられた。)さらに最も重要な点として,両誌は,同派の教えを簡潔で理解しやすく,聖書に基づいた仕方で提供している」と説明し,「要するに,情報の伝達がたいへん上手なのである」と付け加えた。
好まれる書物
米国のカリフォルニア州サンフランシスコにあるスタンフォード・コート・ホテルはこれまで15年間,同ホテルにある402の客室すべてに聖書を置いてきたが,今度は各客室に辞書も置こうという提案がなされ,約7,000㌦(約105万円)がこの投機的事業につぎ込まれた。これまでに聖書が盗まれたことは一度もなかったが,辞書は最初の1か月だけで41冊盗まれた。
ゴミからできたレンガ
工業国にある多くの都市にとって,ゴミの処理はますます大きな問題となっている。中国最大の人口を有する都市上海<シャンハイ>も例外ではない。毎日1万㌧以上のゴミを処理しなければならないが,その大半は,同市の運営する処理工場が受け入れている。処理されたゴミの一部は肥料や土地の埋め立てに活用される。さらに,「中国建設」誌が伝えるところによれば,中国人たちは,灰や石やレンガの破片を処理済のゴミと化合させることによって,建築資材の特性を備えたレンガを製造できることを発見した。ここ数年の間に,数百万個のレンガが製造されたと言われている。地方で現在見られる建築ブームのおかげでレンガの需要は大きい。
自らの主張にふさわしく生きる
菜食主義者は本当に長生きするだろうか。明らかに長生きしている,とドイツのハイデルベルクにある「ドイツ・ガン研究所」は言明している。5年間にわたり1,904人の菜食主義者を調査した後,同研究所は,心臓血管の問題で死亡したのはわずか36人で,死亡率はドイツ連邦共和国の平均を80%下回る,と述べた。胸部や前立腺や腸のガンで死んだ人もほとんどいなかった。「胃ガンの死亡率だけは全国平均とほぼ同じだったが,調査の対象となったグループの中で胃ガンのために死亡した人々は80代だった」と,アジア・ウイーク誌は述べている。「さらに総括的な結論を出すため」,この調査はもう5年間継続される。
泥製の調理コンロ
エチオピアの研究者たちは,全世界で減少している森林を救おうとして,薪を燃料とする省エネ型コンロを開発した。ニューヨーク・タイムズ紙によれば,それら研究者たちが設計した最新式のコンロは泥と藁でできている。このコンロは燃料効率がよいため,調理に必要とされる薪は従来よりずっと少なくて済む。鍋が二つ入る標準タイプは,燃料の薪から得られるエネルギーの24%を活用できる。ちなみに,裸火の場合は5ないし10%のエネルギーが活用されるにすぎない。目下テスト段階にある新型の泥製コンロは33%という効率を示している。泥と藁でできたこの“家庭用品”を使用することにより,エチオピアのようなアフリカ諸国が経験している森林消失の速度はゆるやかになるのではないかと考えられている。これらの地域において森林が陸地に占める割合は今世紀に入って以来,40%から3%以下にまで減少した。
人間 ― 危機にひんする種?
現在の環境の情勢は人間の生命が危機にひんするほど,地球に徹底的な影響を与える恐れがある,との結論が「世界環境・開発委員会」から出された。同委員会の最初の会合が開かれて以来900日の間に,栄養不良や汚染飲料水に関連した病気のために6,000万人の子供が命を失った。アフリカにおける干ばつは,さらに百万人の命を奪う結果となった。また,インドのボパールやソ連のチェルノブイリなどで起きた産業事故は3,000人の命を奪い,さらに幾百万もの人々に影響を与えた。今後の30年間に関する予想はどのようなものだろうか。ロンドンのタイムズ誌によれば,サウジアラビアに匹敵する面積の農地が砂漠と化し,インドとほぼ同じ面積の森林が消失する。国連により設立された同委員会は,人類の生存を確実なものとするには「思い切った国際的な行動が早急に必要とされる」と述べている。