世界展望
都市を逃れて農業を始める
都会の生活様式はストレスになり,テンポが速くて目まぐるしいので,それに嫌気がさし,都市を後にして農業を始める日本人が少数ながら増えている。農村部の生活は確かに自然に囲まれたシンプルなものかもしれないが,スーツから作業着に着替えることに問題がないわけではない。「安定した給料や都市生活の快適さ,そして恐らくは一流企業の社員という社会的な地位も手放して,新たに農業を始めた人も少なくない」と,アジアウィーク誌は述べている。さらに,「転職して地方に住むようになった人々は財政面で切り詰めなければならず,時には収穫物による収入を補うために興味のわかない仕事をせざるを得ないことを認めている」。しかし,農林水産省は転職を決意している人たちのために就農準備校を開設し,都市に住む人たちが農村の生活に首尾よく順応するよう助けている。
教会は性転換した牧師を認める
米国でのこと,長老派の一牧師は,性転換の手術を受けた後もその職にとどまることを許可された。このような裁決が下されたのは,49歳のエリック・スウェンソンが生殖器を取り除く外科手術を受けた後,その名前をアーウィンに変えてほしいと大アトランタ(ジョージア州)の中会(長老派教会の一機関)に申し出た時のことである。クリスチャン・センチュリー誌の報告によると,「中会の一員で公正と女性の問題を担当しているアン・セアは,中会は『苦しい選択を迫られた』ものの,叙任を取り消すための『神学的あるいは道義的な根拠はない』と判断した,と指摘している」。しかし,スウェンソンの申請に対して反対の票を投じた牧師のドン・ウェードは,「神学上の問題点の本格的な審議はなかった」と述べている。
人間の指紋に似ているコアラの指紋
オーストラリアの一科学者によると,コアラの手足の指紋は驚くほど人間のものに似ている。アデレード大学の生物学者で法医学の専門家でもあるマーチェイ・ヘンネバーグ教授は,「走査型電子顕微鏡でもその違いを見分けることはできない」と述べている。その類似点はコアラの手の全体的な形ではなく,その皮膚紋にある。つまり,手足の肉趾の出っ張りや溝や渦巻きのパターンが類似しているのだ。さらに,コアラの手足の指紋は,人間と同じように各個体特有のものである。
離婚は学習されるか
オーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルド紙は,「離婚した親を持つ夫婦は,今も結婚関係にある両親を持つ夫婦に比べて結婚生活の破綻を経験する可能性がはるかに高い」と報告している。米国のネブラスカ大学のポール・アマトー教授は,「約2,000人の既婚の米国人を12年間にわたって追跡調査した」。同紙によるとアマトー教授は「離婚した人の子供は,対人関係におけるつき合い方や振る舞い方のお粗末さを“受け継ぐ”ことがあり,そのために子供たち自身の結婚が離婚に終わる可能性は大いに高くなっている」ことに気づいた。同紙は次のように指摘している。「配偶者双方の両親が離婚している場合,夫婦のどちらの両親もまだ結ばれている場合と比べて結婚が破綻する危険は300%も高い」。
500年後の謝罪
1496年,ポルトガルの王マヌエル1世は領土内に住むユダヤ教徒に,ローマ・カトリック教に改宗せよ,さもなければ国を出て行け,と命令した。約500年後の1988年に,ポルトガルは公式に謝罪した。そして最近,厳粛な式典の中で,償いをすると表明した。AP通信によると,ポルトガルのジョルジェ・サンパイオ大統領は,国会で行なった演説の中で,追放は「深刻かつ破壊的な結果をもたらした非道な行為」であったと述べた。法相であるジョゼ・イズワルド・ビラ・ジャルディンはこの追放のことを「我が国の歴史上の汚点」と言い,さらに,ポルトガルはユダヤ教徒に対して幾世紀にもわたる「残酷な迫害」の「道義的な償い」をしなければならないと述べた。ポルトガルの人口は現在約1,000万人であるが,ユダヤ教を実践している人口は1,000人程度にすぎない。
偽の処方薬にご注意
偽の薬の産業は,年間の売り上げが約160億㌦(約1兆9,200億円)に上り,大繁盛している。パリのル・モンド紙によると,「世界保健機関(WHO)は,毎年世界中で売りさばかれている薬の少なくとも7%は偽物であると推定している」。ブラジルでは,それが30%,アフリカでは60%にも上るものと思われる。偽の薬は,混ぜ物によって効力の弱められた本物まがいのものから,全く無益な,あるいは有毒な物質にまでおよぶことがある。ル・モンド紙は一例として,ニジェールで髄膜炎が流行した時のことを挙げている。その時,幾千人もの人が予防接種を受けたが,接種されたものはただの水だったことが後日判明した。またナイジェリアでは,不凍液を含んだシロップ剤が子供たちに与えられ,109人が死亡した。同紙は,「病院自体が,製品をより手ごろな値段で提供するやみ取り引きに頼ることが少なくない」と述べている。多くの国では,法の施行に効果がなかったり不正が見られたりするために,保健当局者がこの問題の解決策を見いだすことに困難を覚えている。
僧職者のさらなる問題
「今日のキリスト教」誌によると,去る1996年11月,米国聖公会の約40人の主教は,「聖職者の性行動に関する明確で拘束力のある規準を設けるよう」教会に要求する声明に署名した。同教会は僧職者が関係する数々のスキャンダルに動揺しているが,保守派に言わせると,それは「性行動に関する教会の教理を明確に述べなかった」結果である。例えば,米国ニューヨーク州ブルックリンにある米国聖公会の教区主任牧師は,同性愛関係を一度ならず持ったことを認めて辞任した。米国合同聖公会の総務主事であるトッド・ウェッツェルは,「米国聖公会が直面しているスキャンダルは一つだけではない。多くのスキャンダルに直面しており,この件はそのうちの最もひどいものである」と述べている。米国聖公会はかつて,退職したウォルター・ライター主教が性的に活発な同性愛者を執事に叙任した時に同主教を異端者として告発し,一躍脚光を浴びたことがある。この告発は,「米国聖公会の裁判所が,同教派にはセックスを結婚相手だけに制限する『核心となる教理』がないと裁定した」あと却下された。
ニンニク臭い息
台湾省の行政当局は最近,ニンニクの供給過剰を減らす助けとなる革新的な手段を講じた。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると,行政官たちが人々に「ニンニクをもっと食べるよう」勧めたのだ。台湾省の農業委員会の役員である古徳業<グ デーイエ>氏は,「確かに今年は,ニンニクを多く植えすぎた」と説明している。消費量を促進しようとして,政府はニンニク料理の作り方を載せた小冊子を出版する予定だ。しかし,同紙によると,古氏は「この問題をすべて市民に消化してもらうことは期待できない」ことを認めた。
女性の不妊手術が増加
1960年代,平均的なブラジル人の家庭には6.1人の子供がいた。今日では,2.5人が平均になっている。どうして激減したのだろうか。応用経済研究所の調査によると,その理由の一つは,「[ブラジルの]既婚女性の40%が不妊手術を受けている」からである,とジョルナル・ド・ブラジル紙は述べている。加えて,女性が比較的若い年齢で不妊手術を受けるのが一般的な傾向になっている。例えば,10年前,ブラジルの女性が不妊手術を受ける平均年齢は34歳だったが,今では29歳である。この調査ではさらに,「不妊にするのは大抵,出産時」,特に帝王切開による出産の場合であることが示された。それとは対照的に,ブラジル人の男性で不妊手術をすでに受けている人はわずか2.6%である。
漁業紛争
US・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌によると,減少しつつある魚群を追う漁船が多すぎるため,「漁船団とその領海の海軍との間に激しい衝突が生じている」。1990年に,世界の漁船の数は約300万隻に膨れ上がった。それは1970年当時の数のほぼ2倍である。さらに,最新の漁具,例えば魚群探知機や巨大なトロール網などにより,漁師の効率は格段に良くなった。「沿岸国の政府は」減少する資源の保護に努めるため,「外国の漁船団との追撃戦にのめり込む羽目になっている」。過ぐる2年間だけでも,敵対する船が公海上で衝突して,8人の漁船乗組員が死亡した。