世界展望
信教の自由が擁護される
読売新聞の伝えるところによれば,最高裁判所は1996年3月8日,武道の授業を拒否したエホバの証人,小林邦人さんに対する神戸市立工業高等専門学校の退学処分は違法であるとの判決を下した。この判決により日本における最上級裁判所は高専側の上告を棄却し,今後の事例への判例を確立した。(詳細については,「目ざめよ!」誌,1995年10月8日号をご覧ください。)最高裁は,この生徒の剣道実技への参加拒否の理由を,彼の信仰の「核心部分と密接に関連する真しなもの」と認めた。また,小林さんを「成績優秀」な生徒と呼び,学校側は剣道に代わる体育種目を履修させることができたはずだと述べた。
広がる無神論
ヨアヒム・マイスナー枢機卿は,ドイツには「無神論への強い推進力」があると見ている。共産主義は経済では負けたかもしれないが,イデオロギーでは勝ったようだ,とマイスナーは述べた。「この傾向は新[旧共産主義]連邦から旧[西]連邦へと広がったものと見られる」と,同枢機卿は論評している。ウェーゼル・クリール紙によれば,旧東ドイツに住んでいる1,600万人のうちの約7割は教会に属していない。「もし,明らかになった真実を公表して攻勢に出るだけの勇気が教会になければ,教会に勝ち目はない」と同紙は伝えた。
虫料理をまわしてください
例外と言える人もいるようだが,病気の治療に虫を食べることなど,多くの人にとって食欲をそそられる話ではない。しかし,アジアウィーク誌によれば,これは別に目新しいことでもない。シンガポールのインペリアル・ハーバル・レストランでは,アリやサソリなどを材料にした料理が出される。どちらの虫も栄養があるだけではなく,治療効果もあるという評判だ。このレストランの女性経営者ティー・イン・ワンリーさんの話では,アリはリウマチに効くし,サソリの毒は神経の緊張をほぐし,偏頭痛を緩和すると言われている。虫を使った薬にはほかにも,鎮痛効果のある乾燥地虫や,腸内ガス,単純疱疹,はしかなどに効くセミの幼虫,寄生虫に対して殺虫効果のあるスズメバチの巣などがある。これらの生き物はどんな味がするのだろうか。アリは風味の強い,酢のような味がし,サソリは歯ごたえがある。ワンリー夫人は,「慣れればおいしい」と言う。
燃えつきにブレーキを
あらゆるタイプのストレスが増大傾向にあるため,心理学者のエレン・マグラーは,米国の雑誌「ヘルス」の中で,ストレスによる燃えつきを防止するための方法を幾つか提案している。
■ 小休止する。どんな形でもよい: 10分間散歩する。あるいは,5分間静かに深呼吸する。毎日,一日の初めと終わりに15分ほどの時間を取って,読書または黙想をする。
■ 生活を管理する: 思わず微笑みがこぼれるようなもの ― 写真,花,思い出の品など ― を身の回りに置く。自分の予定は自分で立て,比較的リラックスした時間帯に必要なことをするようにする。
■ 栄養のある食事をきちんと取る: 空腹になりきってしまうまで仕事をするようなことはしない。また,どんなに忙しくても,スナック食品で間に合わせるようなことをしない。果物や野菜を中心にした食事を頻繁に取ることは,疲労を避けるのに役立つ。
■ 絶えず体を動かす: 活発な運動をするとストレスが軽減され,満足感や,自分で生活を管理しているという意識が強化される。運動を楽しんで行なう。
子供の服毒を防ぐ
FDAコンシューマー誌によれば,幼い子供たちは,小児用ではないほんの小さな錠剤を1錠のみ込むだけでも,自宅で毒に冒される危険がある。薬,家庭用化学製品,アルコール飲料などをのみ込んで,幼児が病気になったり,場合によっては死亡したりすることもある。それで,これらの製品は子供の手の届かない所,子供の目に触れない場所に保管すべきである。鉄分強壮剤の過剰服用が特に懸念されているが,その中には小児用ビタミン剤も含まれている。「なぜなら,市販のもの[小児用ビタミン剤]はキャンディーや漫画のキャラクターの形をしているので,キャンディーのように見え,薬には見えないからである」と,米国にあるケンタッキー地区中毒研究センターのジョージ・ロジャーズ博士は説明している。子供の目の動きがいつもと違う,極端に眠たがるなどの異常な症状が見えたり,錠剤の瓶のふたが開いているのを見たりした場合は,直ちに医師あるいは毒物対策センターに電話をし,その指示に正確に従うように,と専門家は勧めている。
読書 ―“徐々に死んでゆくこと”?
小規模出版社協会のためにイタリアで実施されたある調査によれば,昨年中,イタリア人の8割は,「一度も本を開かなかったか,開いたとしても,本のタイトルや著者さえも覚えていない」。イタリア人の振る舞いや行動や生活は,伝統的に,読み物よりも,テレビをはじめとする,目に見えるものに影響される,とローマのラ・レプブリカ紙は見ている。「イタリア人は読書をしないし,そのことで何か大切なものを得損なっているということには,少しも気づいていない」と,同紙は述べた。前述の調査では,多くのイタリア人が,読書では「“温かい”人間関係が築けない」とか,読書は「情熱に欠ける」などと考えていることが明らかになった。本を読まない人は,「読書は時間の浪費にすぎない,年寄りのすること」,それどころか「“徐々に死んでゆくことに等しい”とさえ考えている」。
助けを求める電話
グローブ・アンド・メール紙の伝えるところによれば,カナダの悩む若者たちのための,悩み事相談全国フリーダイヤルには,「これまでにないほど深刻な絶望感」を打ち明ける電話が一日に4,000本もかかってくる。この企画のカウンセリングの責任者であるクリスティーン・シモンズ-フィジックは,「世界[経済]の移り変わりによって大人は不安定な状態にあり,それが子供たちにも徐々に浸透している」と語った。電話の内容のほぼ半数は人間関係に関するもので,78%は女子からの電話である。男子よりも女子のほうが,電話相談をしやすく感じている。若者たちが電話をかけてくるのは,自分たちの問題を大人が真剣に扱ってくれるからだ,とシモンズ-フィジックは見ている。そして,親や他の大人たちは大抵,「子供たちの問題を一過性のものとして片づけてしまう傾向がある。大きくなればそういう問題はなくなると言う」と述べ,「もし親がそういう態度を取っているなら,間違いなく,子供は二度と親のところへ助けを求めには来なくなる」と付け加えた。
チョウの航空士
毎年3月になると,オオカバマダラの大群が,メキシコから外洋の上を800㌔も飛んで米国ルイジアナ州沿岸のある小さな地方にやって来る。チョウたちはそれからさらに北へと旅を続け,遠くカナダにまで行くものもある。その年の10月には,彼らの孫の孫たちが同じルートをたどってメキシコへ戻る。しかし,ピンの頭ほどの小さな脳しか持たない彼らに,どこへ飛んでゆくべきかがどうして分かるのだろうか。それは今もって謎である。カリフォルニア州チコのエンタープライズ・リコード紙が伝えるところによれば,チョウの研究家ゲリー・ノエル・ロス博士は,磁力がこの昆虫を導いているのではないかと見ている。不可解なのは,メキシコへ帰還する飛行計画がどんな方法で5世代にわたって伝わるのか,ということである。ロス博士は,「このすべてに関する詳細な事柄は我々の理解の及ばないところである」と語った。
新しい衣類に関する警告
アジアウィーク誌によれば,フランスや英国やタイなどでは,衣類の製造に用いられる化学物質の危険性に関して警告が出されている。染料に使われるホルムアルデヒドという強力な防腐剤が多くの生地に含まれており,それが皮膚や目や呼吸器官に有害な影響を及ぼすと言われている。同誌の報告によれば,繊維産業に従事する作業員は,工場内の換気がよくて空気が乾燥していないと,危険にさらされるおそれがある。そして消費者は,体によくない反応が出るかもしれないので,新しい衣類はどんなものでも,着る前に洗うのが望ましい。
犯罪とロシアのティーンエージャー
ロシアのサンクトペテルブルクでは,「青少年犯罪がますます残虐で,計画的になっている」と,サンクトペテルブルク・プレス紙は報じている。例えば,1995年にある市立学校で,学年末試験を終えたばかりの13歳の少年が縛り上げられ,殴られて死亡した。学校内の暴力犯罪を心配した父兄や教師は,女生徒のための「医学の基礎知識」をはじめとして,「学校で生き延びるための基礎知識」に関する,生徒たちのための特別な講習会を設けた。その講習会で行なわれた教師を対象にしたセミナーで,同市の女子中高生の25%が,売春はロシア人の生活の肝要な部分を占めていると考えていることが明らかにされた。さらに,国連人口基金の雑誌「ポピュリ」によれば,17歳未満の少女の妊娠中絶件数は,過去5年間に2倍になったものと見られている。