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救出は近づいています,勇気を出しなさいものみの塔 1997 | 4月1日
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救出は近づいています,勇気を出しなさい
「『わたしがあなたと共にいて,あなたを救い出すからである』と,エホバはお告げになる」― エレミヤ 1:19。
1,2 人類はなぜ救出を必要としていますか。
救出! なんと慰めとなる言葉でしょう。救出されるとは,良くない不幸な状況から助け出される,つまり自由にされることです。これには,ずっと良く,ずっと幸福な状態に携え入れられるという概念が含まれています。
2 人類は今この時代にそのような救出をなんと切実に必要としているのでしょう。人々は至るところで,経済,社会,身体,精神,感情など様々な面で難しい問題に押しひしがれ,気落ちしています。大多数の人々は,世界の動向に不満を抱き,落胆しており,良い方向への変化を望んでいます。―イザヤ 60:2。マタイ 9:36。
「対処しにくい危機の時代」
3,4 今,救出がこれまでにまして必要なのはなぜですか。
3 この20世紀はこれまでのどの世紀にもまして大きな苦しみを経験してきたため,救出の必要は今やかつてなく大きくなっています。今日,優に10億人以上が極貧状態にあり,その数は年に約2,500万人ずつ増加しています。毎年約1,300万人の子供たちが,栄養失調その他貧困に関連した原因で死亡しています。1日に3万5,000人を上回る割合です。また,成長しても様々な病気で早くに死んでしまう人が幾百万人もいます。―ルカ 21:11。啓示 6:8。
4 戦争や内乱は,筆舌に尽くし難い苦しみを引き起こしてきました。「政府の引き起こす死」という本は,戦争,民族紛争や宗教紛争,また政府自らによる自国民の大量殺りくで「今世紀に殺された人の数は2億300万人を超える」と述べています。そしてさらに,「その死者の数はおよそ3億6,000万人に達するのではないかと思われている。人類はまるで現代の黒死病に打ちのめされているかのようだ。現にそうなのだが,それは細菌によるのではなく,権力という疫病によるのである」と述べています。著述家のリチャード・ハーウッドは,「過去の世紀に行なわれた野蛮な戦争も,これに比べれば路地裏のけんか程度のものだった」と述べました。―マタイ 24:6,7。啓示 6:4。
5,6 今の時代がこれほど悲痛なものになっているのはなぜですか。
5 近年のそうした悲痛な状態をいよいよひどいものにしているのは,暴力犯罪,不道徳,家族の崩壊などの甚だしい増大です。元米国教育長官ウィリアム・ベネットによれば,30年間に米国の人口は41%増加しましたが,暴力犯罪は560%,私生児の誕生は400%,離婚は300%,ティーンエージャーの自殺率は200%増加しました。プリンストン大学の教授ジョン・ディウリョ・ジュニアは,「殺人,暴行,強姦を行ない,強奪,強盗を働き,共同社会の秩序を甚だしく攪乱する」若年層の「ひどく野獣的な者たち」の隊伍が増大していることを警告しました。彼らは「逮捕の恥辱,投獄の苦痛,良心の呵責などを気にしない」のです。今やこの国では,殺人が15歳から19歳の若者の死因の第2位に上っています。また,4歳以下の子供では,病気より虐待のために死ぬ子供のほうが多くなっています。
6 こうした犯罪や暴力は一つの国だけのことではありません。ほとんどの国で同様の傾向の見られることが伝えられています。その一因となっているのは,幾百万もの人々を堕落させている,麻薬の違法な使用の急速な広まりです。オーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルド紙は,「国際的な麻薬の取り引きは,武器の取り引きに次いで,世界第二のもうかる商売になっている」と述べました。もう一つの要素は,今テレビ番組に浸透している暴力と不道徳です。多くの国で,子供は18歳になるまでに,テレビを通して暴力行為や不道徳行為を数限りなく目にします。これは人を堕落させる重大な影響です。わたしたちの人格は,自分の思いにいつも取り入れるものによって形作られるからです。―ローマ 12:2。エフェソス 5:3,4。
7 聖書預言は現在の悪い状態をどのように予告していましたか。
7 聖書預言は,今世紀の出来事がこうした恐ろしい傾向を示すことを正確に予告していました。地球規模の戦争,流行病,食糧不足,不法の増加などが生じると述べていました。(マタイ 24:7-12。ルカ 21:10,11)そして,テモテ第二 3章1節から5節に記されている預言を考えてみると,毎晩のニュース報道を聴いているかのようです。その預言は,今の時代が「終わりの日」であることを明示して,人々が『自分を愛する者,金を愛する者,親に不従順な者,忠節でない者,自然の情愛を持たない者,自制心のない者,粗暴な者,誇りのために思い上がる者,神を愛するより快楽を愛する者』となると述べています。今日,世界はまさにそのとおりになっています。ウィリアム・ベネットが,「文明の腐敗を物語るしるしが余りにも多すぎる」と認めているとおりです。文明は第一次世界大戦の勃発と共に終わったとまで言われているのです。
8 ノアの日に神が洪水を生じさせたのはなぜですか。このことは今日とどのような関係がありますか。
8 今の状況は,「地(が)暴虐で満ちるようになった」ノアの日の洪水以前よりもさらに悪くなっています。当時の一般の人々は,自分たちの悪い道を悔い改めようとはしませんでした。そのため神は,「彼らのゆえに地は暴虐で満ちている……。いま,わたしは彼らを地と共に滅びに至らせる」と言われました。そのときの暴力的な世は大洪水によって終わりました。―創世記 6:11,13; 7:17-24。
人間による救出はない
9,10 人間に救出の希望を託すべきでないのはなぜですか。
9 人間の努力でこうした悪い状態から救出されることは可能でしょうか。神の言葉はこう答えます。「高貴な者にも,地の人の子にも信頼を置いてはならない。彼らに救いはない」。「自分の歩みを導くことさえ,歩んでいるその人に属しているのではありません」。(詩編 146:3。エレミヤ 10:23)過去何千年という歴史は,それらの言葉の真実さを実証してきました。人間は考えつく限りのあらゆる政治体制,経済体制,社会体制を試みてきましたが,状態は悪くなっています。人間による解決策が存在するとしたら,今までに明らかになっているはずです。むしろ,「人が人を支配してこれに害を及ぼした」というのが現実です。―伝道の書 8:9。箴言 29:2。エレミヤ 17:5,6。
10 数年前,米国の国家安全保障担当補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーはこう述べました。「地球規模の種々の傾向を偏りなく分析すれば,社会の混乱,政情不安,経済危機,国家間のあつれきなどはいよいよ広まる公算が強いと結論せざるを得ない」。そしてさらに,「人類が直面している脅威は,地球規模の無政府状態である」と述べました。世界情勢についてのこのような評価は,今日,いよいよ当てはまっています。米国コネティカット州ニューヘブンのレジスター紙の論説は,暴虐激化のこの時代について論評し,「我々は余りにも度を越してしまい,歯止めが利かなくなっているようだ」と言明しました。そうです,世界のこうした悪化に歯止めは利きません。この「終わりの日」についての預言は,「邪悪な者とかたりを働く者とはいよいよ悪に進み,惑わしたり惑わされたりするでしょう」とも述べています。―テモテ第二 3:13。
11 悪化してゆく状態を人間の努力で逆転させられないのはなぜですか。
11 人間がこうした傾向を逆転させられないのは,サタンが「この事物の体制の神」だからです。(コリント第二 4:4)そうです,「全世界(は)邪悪な者の配下にある」のです。(ヨハネ第一 5:19。ヨハネ 14:30もご覧ください。)聖書は今の時代について正確にこう述べています。「地と海にとっては災いである。悪魔が,自分の時の短いことを知り,大きな怒りを抱いてあなた方のところに下ったからである」。(啓示 12:12)サタンは,自分の支配と自分の世が終わろうとしていることを知っているため,「ほえるライオン」のように「だれかをむさぼり食おうとして」います。―ペテロ第一 5:8。
救出は近い ― だれにとって?
12 だれにとって救出が近づいていますか。
12 困難の度を増す地上の状態は,大々的な変化が,そうです,壮大な救出が近づいていることの紛れもない証拠です。だれにとってそうなのでしょうか。警報となる種々の知らせに注意を払って適切な行動をとる人々にとって,救出が近づいているのです。ヨハネ第一 2章17節は,何を行なわなければならないかを示しています。「世[サタンの事物の体制]は過ぎ去りつつあり,その欲望も同じです。しかし,神のご意志を行なう者は永久にとどまります」。―ペテロ第二 3:10-13もご覧ください。
13,14 いつも目ざめているべきことをイエスはどのように強調しましたか。
13 イエスは,今日の腐敗した社会が間もなく,「世の初めから今に至るまで起きたことがなく,いいえ,二度と起きないような」苦難の時にぬぐい去られることを予告しました。(マタイ 24:21)そして,それゆえにこう警告しました。「食べ過ぎや飲み過ぎまた生活上の思い煩いなどのためにあなた方の心が押しひしがれ,その日が突然,わなのように急にあなた方に臨むことがないよう,自分自身に注意を払いなさい。それは,全地の表に住むすべての者に臨むからです。それで,起きることが定まっているこれらのすべての事を逃れ(る)ことができるよう,常に祈願をしつつ,いつも目ざめていなさい」― ルカ 21:34-36。
14 「注意を払い」,「いつも目ざめてい(る)」人は,神のご意志を見きわめて,それを行なうでしょう。(箴言 2:1-5。ローマ 12:2)サタンの体制に間もなく臨む滅びを「逃れ(る)ことができる」のは,そのような人たちです。その人々は自分たちが救出されるという全き確信を抱けます。―詩編 34:15。箴言 10:28-30。
主要な救出者
15,16 主要な救出者はだれですか。その方の裁きが義にかなっていることをなぜ確信できますか。
15 神の僕たちが救出されるためには,サタンとその世界的な事物の体制全体が除き去られる必要があります。それには,救出をもたらす,人間よりはるかに強力な方が必要です。その方は,畏怖すべき宇宙の全能の創造者である,至上の主権者,エホバ神です。この方こそ主要な救出者です。「わたしが ― わたしがエホバであり,わたしのほかに救う者はいない」と言っておられます。―イザヤ 43:11。箴言 18:10。
16 エホバには,究極的な力,知恵,公正,愛があります。(詩編 147:5。箴言 2:6。イザヤ 61:8。ヨハネ第一 4:8)ですから,エホバが裁きを執行される時,わたしたちはその行動が義にかなっていることを確信できます。アブラハムは,「全地を裁く方は正しいことを行なわれるのではありませんか」と尋ねました。(創世記 18:24-33)パウロは声を大にして,「神に不正があるのですか。断じてそのようなことにはならないように!」と述べました。(ローマ 9:14)ヨハネは,「そうです,全能者なるエホバ神,あなたの司法上の決定は真実で義にかなっています」と書きました。―啓示 16:7。
17 昔のエホバの僕たちは神の約束に対する確信をどのように表明しましたか。
17 エホバは,ご自分が救出を約束したなら必ずそれを成し遂げられます。ヨシュアは,「エホバが……なさったすべての良い約束は,ひとつの約束といえども果たされないものはなかった」と言いました。(ヨシュア 21:45)ソロモンは,「(神が)約束された,その良い約束はみな,一言もたがいませんでした」と述べました。(列王第一 8:56)使徒パウロは,アブラハムが「信仰を欠いてたじろいだりすることなく,……神はご自分の約束した事を果たすこともできるのだと十分に確信してい(た)」ことに注目しました。サラも同じように,「約束してくださった方を忠実な方とみなし」ました。―ローマ 4:20,21。ヘブライ 11:11。
18 今日のエホバの僕たちは自分が救出されることをなぜ確信できますか。
18 人間とは違って,エホバはどこまでも信頼できる方であり,自分の述べたことをそのとおりに果たされます。「万軍のエホバは誓って,言われた,『まさしく,わたしの図った通りに事は成り,わたしの計った通りのことが実現する』」。(イザヤ 14:24)ですから,聖書が「エホバは,敬虔な専心を保つ人々をどのように試練から救い出すか,一方,不義の人々……を,切り断つ目的で裁きの日のためにどのように留め置くかを知っておられる」と述べていれば,わたしたちは,それがそのとおりになされることを全く確信できます。(ペテロ第二 2:9,10)エホバの僕たちは,たとえ強力な敵たちから死の脅しを受けても,エホバの持たれる態度のゆえに勇気を出せます。神の態度は,預言者の一人に対する次の約束に反映されています。「彼らは必ずあなたと戦うことになるが,あなたに打ち勝つことはない。『わたしがあなたと共にいて,あなたを救い出すからである』と,エホバはお告げになる」― エレミヤ 1:19。詩編 33:18,19。テトス 1:2。
過去における救出の例
19 エホバはどのようにロトを救出されましたか。わたしたちの時代にはそれと似たどんな救出がありますか。
19 エホバは以前に何度も救いの業を行なわれました。その幾つかを振り返ると大きな励みが得られます。例えば,ロトはソドムとゴモラの邪悪さに「大いに苦しんで」いました。しかしエホバは,それらの都市についての「苦情の叫び」に注意を払われました。エホバはふさわしい時に使者たちを遣わして,ロトと彼の家族がその地域からすぐに出るよう強く促しました。結果はどうなったでしょうか。エホバは「義人ロトを救い出(し)」,「ソドムとゴモラの都市を灰に帰させ」ました。(ペテロ第二 2:6-8。創世記 18:20,21)今日の場合も,エホバはこの世の甚だしい邪悪さに関する苦情の叫びに注意を払っておられます。ご自分の現代の使者たちがその緊急な証しの業をご自分の望むまで完遂したなら,この世に対して行動し,ロトの場合と同じように僕たちを救出されます。―マタイ 24:14。
20 エホバが古代イスラエルをエジプトから救出された時のことを説明してください。
20 古代エジプトでは,幾百万人という神の民が奴隷にされていました。エホバは彼らについてこう言われました。「わたしは……その叫びを聞いた。わたしは彼らの忍ぶ苦痛をよく知っているのである。それでわたしは下って行って彼らを……救い出(そ)うとしている」。(出エジプト記 3:7,8)しかしファラオは,神の民を去らせた後になって考えを変え,強大な軍隊を率いて彼らを追跡します。イスラエル人は紅海のきわに追い詰められたように見えました。それでも,モーセは言いました。「恐れてはいけない。しっかり立って,エホバの救いを見なさい。それをあなた方のために今日成し遂げてくださるのです」。(出エジプト記 14:8-14)エホバは紅海の水を分け,イスラエル人は逃れます。ファラオの軍隊は彼らを追撃しましたが,エホバが力を及ぼされたので,『海は彼らを覆い,彼らは荘厳な水の中に鉛のように沈み』ました。そのあとモーセは歓喜して,「神聖さにおいて強大なことを示されるあなたに並ぶ者がいるでしょうか。賛美の歌をもって恐れかしこむべき方,驚くべき事を行なわれる方」とエホバに歌いました。―出エジプト記 15:4-12,19。
21 エホバの民は,アンモン,モアブ,セイルからどのように救われましたか。
21 また別の時には,敵国のアンモン,モアブ,セイル(エドム)がエホバの民に滅びの脅しをかけました。エホバはこう言われました。「あなた方はこの大群のゆえに恐れたり,おびえたりしてはならない。この戦いはあなた方のものではなく,神のものだからである。あなた方は……戦うにはおよばない。……立ち止まって,あなた方のためのエホバの救いを見よ」。エホバは,敵の隊伍に混乱を生じさせて同士討ちをさせ,ご自分の民を救い出されました。―歴代第二 20:15-23。
22 エホバはイスラエルにアッシリアからのどんな奇跡的な救出をもたらされましたか。
22 アッシリア世界強国がエルサレムに攻めて来た時,セナケリブ王は,城壁の上にいる民に次のように述べてエホバを嘲弄しました。「これらの地のすべての神々のうち,だれがわたしの手から自分の地を救い出したので,エホバがわたしの手からエルサレムを救い出せるというのか」。また,神の僕たちにこう言いました。「ヒゼキヤが,『必ずエホバはわたしたちを救い出してくださり,この都市はアッシリアの王の手に渡されることはない』と言って,お前たちをエホバに依り頼ませることがあってはならない」。その時ヒゼキヤは,救出を求めて,「地のすべての王国が,エホバよ,あなただけが神であることを知るためです」と熱烈に祈りました。エホバは18万5,000人に上るアッシリアの兵士を討ち倒し,神の僕たちは救出されました。後にセナケリブは,自分の偽りの神を崇拝していた時,自分の息子たちに暗殺されました。―イザヤ 36章と37章。
23 今日における救出についてどんな問いに答える必要がありますか。
23 わたしたちは,エホバがかつてご自分の民を驚くべき仕方で救出されたのを見ると,確かに勇気づけられます。今日はどうでしょうか。神の忠実な僕たちは間もなく,神による奇跡的な救出を必要とするどんな危険な事態に面するのでしょうか。神が彼らを救い出すことを今まで猶予してこられたのはなぜですか。「これらの事が起こり始めたら,あなた方は身をまっすぐに起こし,頭を上げなさい。あなた方の救出が近づいているからです」というイエスの言葉には,どんな成就があるのでしょうか。(ルカ 21:28)また,すでに亡くなった神の僕たちの救出はどのように実現するのでしょうか。そうした質問は次の記事の中で考察されます。
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義の新しい世への救出ものみの塔 1997 | 4月1日
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義の新しい世への救出
「(彼らは)豊かな平和にまさに無上の喜びを見いだすであろう」― 詩編 37:11。
1,2 (イ)わたしたちの時代にエホバが行なわれる救出は,古代に行なわれた救出とどんな点で異なっていますか。(ロ)エホバはご自分の民をどんな世界に携え入れますか。
エホバは救出の神です。古代に,ご自分の民を救い出されたことが何度もありました。そうした救出は一時的なものでした。エホバはそのうちのいずれの場合にも,サタンの世全体に対して恒久的な裁きを執行されたわけではないからです。しかしこのわたしたちの時代に,エホバは間もなく,ご自分の僕たちのためにこれまでで最大の救出を行なわれます。この度は,全地にわたるサタンの体制を跡形なく滅ぼし,ご自分の僕たちを恒久的な,義の新しい世に携え入れられます。―ペテロ第二 2:9,10; 3:10-13。
2 エホバはこう約束しておられます。「ほんのもう少しすれば,邪悪な者はいなくなる。……しかし柔和な者たちは地を所有し,豊かな平和にまさに無上の喜びを見いだすであろう」。(詩編 37:10,11)それはどれほど長く続くのでしょうか。「義なる者たちは地を所有し,そこに永久に住む」のです。(詩編 37:29。マタイ 5:5)しかし,そうなる前に,この世界はこれまでに経てきた中で最大の患難の時を迎えます。
「大患難」
3 イエスは「大患難」をどのように描写されましたか。
3 この世界は1914年に「終わりの日」に入りました。(テモテ第二 3:1-5,13)その期間に入って今は83年目であり,その期間の終わりが近づいています。その時には,イエスの予告どおりに次の事が生じます。「世の初めから今に至るまで起きたことがなく,いいえ,二度と起きないような大患難があ(りま)す」。(マタイ 24:21)そうです,約5,000万人の命を奪った第二次世界大戦より大規模な患難があるのです。何という時になるのでしょう。世界を揺るがすその時は足早に近づいています。
4 「大いなるバビロン」に神の裁きが臨むのはなぜですか。
4 「大患難」は,驚くほど突然に,「一時のうちに」到来します。(啓示 18:10)それが始まったことのしるしとなるのは,神の言葉の中で「大いなるバビロン」と呼ばれている偽りの宗教すべてに対する神の裁きの執行です。(啓示 17:1-6,15)古代バビロンの主要な特色は偽りの宗教でした。現代のバビロンは古代のその原型に似ており,偽りの宗教の世界帝国を表わしています。偽りの宗教は政治分子に屈従して娼婦のように振る舞ってきました。政治分子の行なう戦争を支持し,相対するどちらの側でも軍隊を祝福したため,同じ宗教の人々が互いに殺し合う結果になりました。(マタイ 26:51,52。ヨハネ第一 4:20,21)また,自分の信奉者の腐敗した行ないには目をつぶり,その一方で真のクリスチャンを迫害してきました。―啓示 18:5,24。
5 「大患難」はどのように始まりますか。
5 「大患難」は,政治分子が突然「大いなるバビロン」に襲いかかる時に始まります。政治分子は「娼婦を憎み,荒れ廃れさせて裸にし,その肉を食いつくし,彼女を火で焼き尽く(し)」ます。(啓示 17:16)その後になって,彼女の以前の支持者たちは「彼女のことで泣き,悲嘆して身を打ちたたく」のです。(啓示 18:9-19)しかしエホバの僕たちは,この時をずっと待ち望んできたので,声を大にしてこう言います。「あなた方はヤハを賛美せよ!……神は,その淫行によって地を腐敗させた大娼婦に裁きを執行し,ご自分の奴隷たちの血の復しゅうを彼女の手に対して行なわれた」― 啓示 19:1,2。
神の僕たちが攻撃される
6,7 エホバの僕たちが「大患難」の期間中に攻撃されても確信を抱いていられるのはなぜですか。
6 偽りの宗教を滅ぼした政治分子は,今度はエホバの僕たちに矛先を向けます。預言の中で「マゴグの地のゴグ」と呼ばれているサタンは,「わたしは,騒乱のおそれもなく,安らかに住んでいる者たちのところに入って行く」と言います。サタンは彼らを格好の餌食と考え,『地を覆う雲のように,おびただしい軍勢』によって襲いかかります。(エゼキエル 38:2,10-16)エホバの民は,自分たちがエホバに依り頼んでいるゆえにこの攻撃が失敗に終わることを知っています。
7 ファラオとその軍隊が神の僕たちを紅海のきわに追い詰めたと思ったその時,エホバは奇跡によってご自分の民を救出し,エジプトの軍隊を滅ぼされました。(出エジプト記 14:26-28)「大患難」の期間中,諸国民がエホバの民を追い詰めたと思う時,エホバは再度奇跡によって救助を施されます。「その日,……わたしの激しい怒りがわたしの鼻の中に上る。そしてわたしは,わたしの激情によって,わたしの憤怒の火によって話さなければならなくなる」。(エゼキエル 38:18,19)その時,「大患難」はいよいよ最高潮を迎えます。
8 エホバが邪悪な者たちを処刑される前にどんな超自然の出来事が起きますか。それはどんな影響を及ぼしますか。
8 「大患難」が始まった後,しかしエホバがこの世の残りの部分に裁きを執行される前のある時点で,超自然の出来事が起きます。それがどんな影響を及ぼすかに注目してください。「その時,人の子[キリスト]のしるしが天に現われます。そしてその時,地のすべての部族は嘆きのあまり身を打ちたたき,彼らは,人の子が力と大いなる栄光を伴い,天の雲に乗って来るのを見るでしょう」。(マタイ 24:29,30)「太陽と月と星にしるしが……あるでしょう。同時に人々は,人の住む地に臨もうとする事柄への恐れと予想から気を失います」― ルカ 21:25,26。
「あなた方の救出が近づいている」
9 超自然の出来事が起きる時,エホバの僕たちはなぜ『頭を上げる』ことができますか。
9 ルカ 21章28節の預言はその時のことを述べています。イエスはこう言われました。「これらの事が起こり始めたら,あなた方は身をまっすぐに起こし,頭を上げなさい。あなた方の救出が近づいているからです」。神に敵対する者たちは,起きている超自然の出来事がエホバからのものであることを知って,恐れおののくことでしょう。しかし,エホバの僕たちは,自分たちの救出が近づいたことを知って歓びます。
10 神の言葉は「大患難」の最高潮をどのように描いていますか。
10 その時エホバはサタンの体制に決定的な打撃を加えます。「わたしは疫病と血とをもって[ゴグ]に対して裁きを行なう。わたしはみなぎりあふれる大雨と雹,火と硫黄を彼とその隊……の上に降らせるであろう。……そして彼らはわたしがエホバであることを知らなければならなくなる」。(エゼキエル 38:22,23)サタンの体制の残存物はことごとく滅ぼし去られます。神を無視する人々から成る人間社会は完全に滅ぼし尽くされます。それが「大患難」の最高潮をなすハルマゲドンです。―エレミヤ 25:31-33。テサロニケ第二 1:6-8。啓示 16:14,16; 19:11-21。
11 エホバの僕たちが「大患難」の中から救出されるのはなぜですか。
11 全地の幾百万人というエホバの崇拝者は,「大患難」の中から救出されます。それら崇拝者たちは,「すべての国民と部族と民と国語の中から」来た「大群衆」を構成しています。彼らがそうした畏敬すべき方法で救い出されるのはなぜでしょうか。なぜなら,彼らはエホバに『昼も夜も神聖な奉仕を』ささげているからです。そのゆえにこの世の終わりを生き残り,義の新しい世に招じ入れられます。(啓示 7:9-15)ですから彼らは,「エホバを待ち望み,その道を守れ。そうすれば,神はあなたを高めて地を所有させてくださる。邪悪な者たちが断ち滅ぼされるとき,あなたはそれを見るであろう」というエホバの約束が成就するのを目撃します。―詩編 37:34。
新しい世
12 ハルマゲドンを生き残る人たちは何を期待できますか。
12 何という感動の時となるのでしょう。悪は除き去られ,人類史上最も栄光ある時代が始まるのです。(啓示 20:1-4)ハルマゲドンを生き残った人たちは,楽園<パラダイス>に変えられる地上に神が作られる輝かしく清い文明,つまり新しい世に入ったことについて,どれほどエホバに感謝することでしょう。(ルカ 23:43)そして彼らは,もう決して死ぬ必要がありません。(ヨハネ 11:26)実際のところ,その時点からは,エホバが生きておられる限りずっと生きてゆくという驚くべき,まさに壮大な見込みを持つことになるのです。
13 イエスは地上で始めたいやしの業をどのように再開されますか。
13 エホバが天の王として任命したイエスは,救出された人たちの享受する,奇跡による祝福を監督します。地上にいた時,イエスは盲人の目を開け,聴力障害者の耳を開き,「あらゆる疾患とあらゆる病を」治されました。(マタイ 9:35; 15:30,31)新しい世でその偉大ないやしの業を再開されますが,今度はそれを全地球的な規模で行なわれます。イエスは神の代理者としてこの約束を成就されます。「神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」。(啓示 21:4)二度と再び,医療従事者や葬儀社が必要になることはないのです。―イザヤ 25:8; 33:24。
14 すでに亡くなったエホバの僕たちにはどんな救出がもたらされますか。
14 また,かつて亡くなった,神の忠実な僕たちも一人残らず救出されます。新しい世で,それらの人は墓の掌中から救助されます。エホバは,「義者と不義者との復活がある」と保証しておられます。(使徒 24:15)恐らく,「義者」は早いうちに復活して,パラダイスを拡大する業に貢献することでしょう。ハルマゲドンを生き残った人たちにとって,ずっと昔に亡くなり,いま生き返ったそれら忠実な人たちの経験談を聞けるのは,何と胸の躍ることなのでしょう。―ヨハネ 5:28,29。
15 新しい世で経験できる状態がどのようなものかを幾つか説明してください。
15 その時,生きている人すべては,詩編作者がエホバについて述べたこと,すなわち,「あなたはみ手を開いて,すべての生きているものの願いを満たしておられます」という言葉の真実さを経験するでしょう。(詩編 145:16)もはや飢えはありません ― 地球は生態系のバランスを取り戻し,あふれるほど豊かに産出するようになります。(詩編 72:16)もはやホームレスの人はいません ―「彼らは必ず家を建てて住み」,各々「自分のぶどうの木の下,自分のいちじくの木の下に座り,これをおののかせる者はだれもいない」のです。(イザヤ 65:21,22。ミカ 4:4)もはや恐れはありません ― 戦争や暴力行為や犯罪は全くなくなります。(詩編 46:8,9。箴言 2:22)「全地は休息し,騒乱はやんだ。民は快活になって歓呼の声を上げた」― イザヤ 14:7。
16 新しい世に義が行き渡るのはなぜですか。
16 新しい世ではサタンの宣伝媒体は除き去られています。代わって,「産出的な地に住む者たちは必ず義を学(び)」ます。(イザヤ 26:9; 54:13)年々霊的に健全な教えが施される結果,「水が海を覆っているように,地は必ずエホバについての知識で満ちる」ようになります。(イザヤ 11:9)人類の間には,人を向上させる考えや行動が行き渡ります。(フィリピ 4:8)次のような状態を想像してみてください。道徳に反する行ない,自己本位の性向,ねたみなどからは全く解放された人々の世界的な社会,すべての人が神の霊の実を表わす国際的な兄弟関係です。実際,大群衆は今すでにそのような特質を培っています。―ガラテア 5:22,23。
これほど長く猶予されたのはなぜか
17 悪を終わらせるのをエホバがこれほど長く猶予されたのはなぜですか。
17 しかしエホバが,悪を除いてご自分の民を新しい世へと救出するのをこれほど長く猶予されたのはなぜでしょうか。何が成し遂げられなければならなかったかを考えてください。最も重要なのは,エホバの主権,つまりエホバの持たれる支配の権利が立証されることです。エホバは十分の時が経過するのを許すことにより,ご自分の主権を無視した人間の支配が甚だしい失敗に終わることを疑問の余地なく実証してこられました。(エレミヤ 10:23)ですから今エホバが,人間の支配に替えてキリストの治める天の王国の支配を始めさせても,何も不当なところはありません。―ダニエル 2:44。マタイ 6:9,10。
18 アブラハムの子孫はいつカナンの地を受け継ぐことになっていましたか。
18 これまで何十世紀にもわたって生じてきた事柄は,アブラハムの時代に起きた事柄と類似しています。エホバは,アブラハムの子孫がカナンの地を受け継ぐことをお告げになりましたが,それはなお400年後のことでした。『アモリ人のとががまだ満ちていなかった』からです。(創世記 12:1-5; 15:13-16)ここの「アモリ人」(支配的な部族)という語は,カナンの種々の民全体を表わしているようです。それで,エホバがご自分の民を導いてカナンを接収できるようにするまでに,およそ4世紀が経過することになっていました。その間エホバは,カナンの諸国民がそれぞれの社会を作り上げるままにされました。それはどんな結果になったでしょうか。
19,20 カナン人はどんな社会を作り上げましたか。
19 ヘンリー・H・ハーレイの「聖書ハンドブック」によると,考古学者たちはメギドで,バアルの妻に当たる女神アシュトレテの神殿の遺跡を発見しました。ハーレイはこう書いています。「この神殿からわずか数歩離れた所に墓地があった。そこから数多くの壺が見つかり,それにはこの神殿で犠牲にされた幼児の遺骨が収められていた。……バアルとアシュトレテの預言者たちは,国家公認の児童殺害者だった」。「もう一つのおぞましい慣行は,『土台の犠牲』と呼ばれる[もの]であった。家を建てるときには子供が犠牲にされ,その遺体が壁の中に埋め込まれたのである」。
20 ハーレイはこう注解しています。「バアル,アシュトレテ,その他カナン人の神々の崇拝は,甚だしく度を過ごしたお祭り騒ぎであった。彼らの神殿は悪徳の中心地であった。……カナン人は……不道徳行為にふけることにより,またその後,自分たちの長子をそれら同じ神々への犠牲として殺害することにより礼拝を行なった。カナンの地は大方,国家的規模でソドムとゴモラのようになっていたようである。……そのような忌まわしい汚れや残虐行為を事とする文明に,それ以上存続する権利があったであろうか。……カナン人の諸都市の遺跡を発掘する考古学者は,神がなぜもっと早く彼らを滅ぼさなかったのだろうかと不思議に思うほどである」。―列王第一 21:25,26と比較してください。
21 カナン人の状況とわたしたちの時代の状況はどんな点で似ていますか。
21 アモリ人の悪は「満ちて」いました。ですから,その時エホバが彼らを滅ぼし絶やすのは全く正当でした。今日でも同じことが言えます。この世界は,暴虐,不道徳,神の律法に対する侮りなどで満ちています。また,古代カナンの子供の犠牲という恐ろしい風習にぞっとするのであれば,カナンにおけるよりはるかにひどい,この世界の戦争で何千万人という若者が犠牲にされてきたことについてはどうでしょうか。確かに,今エホバがこの邪悪な体制を終わらせるのは全く正当なことと言えます。
ほかにも成し遂げられている事柄
22 この時代にエホバが忍耐しておられるおかげで何が成し遂げられていますか。
22 この終わりの日にエホバが忍耐しておられるおかげで,ほかにも重要な事柄が成し遂げられています。神は大群衆を集めて教育する時間を与えておられ,その大群衆はすでに500万人を超えています。エホバの導きのもとに,彼らは前進してゆく一つの組織へとまとめられてきました。男性も女性も若者も,他の人に聖書の真理を教えるために訓練されています。集会や聖書関係の出版物を通してすべての者が神の愛の道を学んでいます。(ヨハネ 13:34,35。コロサイ 3:14。ヘブライ 10:24,25)それだけではありません。「良いたより」を宣べ伝える業を支援するために,建設,電子工学,印刷その他の分野での技術も修得して,生かしているのです。(マタイ 24:14)そのような教える技術や建築の技術は,恐らく,新しい世で広く活用されることでしょう。
23 この時代に生きていることが特権なのはなぜですか。
23 そうです,今日エホバは,「大患難」を通過して義の新しい世に入れるよう,ご自分の僕たちを整えておられるのです。新しい世に入ったなら,サタンとその配下の邪悪な世に対して戦うことはもはやなく,病気も,悲しみも,死もありません。神の民は大きな熱意と喜びを抱いて,楽園の建設という喜ばしい仕事に取りかかります。そこでは毎日が「無上の喜び」となるのです。わたしたちにとって,歴史上最高潮の時期に生き,エホバを知ってこの方に仕え,『自分の救出が近づいているゆえに頭を上げる』時が非常に近いことを悟っているのは,何という特権なのでしょう。―ルカ 21:28。詩編 146:5。
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