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私たちの“設計図”はどこから来たのか生命の起源 5つの大切な質問
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働く機械たち
静かな博物館を見学しながら,1つ疑問が湧きます。実際の細胞核は,この模型のようにじっと静止しているのでしょうか。ふと見ると,別の展示物があります。ガラスのショーケースにDNAの模型の一部が入っていて,その上に「ボタンを押してください」と書かれています。ボタンを押すと,音声ガイドが流れます。「DNAが行う大切な仕事を2つご紹介します。1つ目は複製です。DNAは,新しい細胞に1そろいの遺伝情報が含まれるようにするため,コピーされる必要があります。それがどのように行われるかご覧ください」。
展示物の端の扉から,いかにも複雑そうな機械が現れます。幾つものロボットが組み合わさった機械です。DNAに近づいて密着し,線路の上を走る列車のように,DNAに沿って動きます。速過ぎて何をしているのかよく分かりませんが,機械の後ろから,元々は1本だったDNAのロープが2本に増えて出てきているのが見えます。
音声ガイドが流れます。「これは,DNAの複製の様子をごく簡単に再現したものです。酵素と呼ばれる機械のような分子が幾つも,DNAに沿って移動します。まず,DNAを2本のひもに分け,それぞれのひもを鋳型として,それと対になる新たなひもを作り出します。全てをお見せすることはできませんが,ほかにもいろいろなものが関わっています。例えば,複製機械の前を行き,DNAの片方のひもを切断して,DNAのねじれを緩める小さな装置があります。また,DNAの“校正”も何度か行われます。驚異的な正確さで,誤りを発見し,修正します」。(16-17ページの図をご覧ください。)
音声ガイドが続きます。「作業速度はお分かりいただけると思います。ロボットはかなりのスピードで動いています。実際の酵素は,DNAの“線路”に沿って,1秒で100の横木つまり塩基対を通り過ぎます。23 鉄道の線路の大きさまで拡大すると,この酵素の“機関車”は時速80㌔以上で疾走していることになります。細菌の中では,酵素はその10倍もの速度で動きます。ヒトの細胞では,そうした何百もの複製機械がDNAの“線路”のあちこちで働き,ゲノム全体のコピーをわずか8時間でやってのけます」。24 (20ページの「読んでコピーできる分子」という囲みをご覧ください。)
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