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失読症による失意を克服する目ざめよ! 1996 | 8月8日
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失読症とは何か
失読症のことを「読む能力が障害を受けた状態」と定義している辞書もあります。失読症は読書障害とみなされることが少なくありませんが,それ以上の事柄が関係している場合もあります。a
失読症に相当する英語のdyslexiaの語根は,「……をする困難」という意味のギリシャ語のデュスと,「言葉」という意味のレクシスから来ています。失読症には,言葉あるいは言語の面での困難な状態も含まれています。また,1週間の曜日や一つの単語の文字の場合のように,物事を順序正しく配列するのが困難な状態さえ関係している場合があります。英国の失読症研究所のH・T・チェスティー博士によれば,失読症とは,「短期記憶,認知力,および手を使う技能が損なわれる機能障害」です。確かに,失読症の人が失意を感じるのも少しも不思議ではありません。
デービッドの例を考えてみましょう。以前は,熱意のこもった上手な読み方をする人だったのに,どうして妻に助けてもらいながら,もう一度読み方を学び直さなければならなくなったのでしょうか。脳卒中のためにデービッドの脳は,言語を使う機能と関係のある部分が損傷を受け,その結果,読む能力の面での進歩が,悲痛なまでに遅くなったのです。ところが,デービッドにとっては,長い単語よりも短い単語のほうが問題でした。デービッドの場合,後天的失読症にかかっていたにもかかわらず,会話力や鋭敏な知性が損なわれることはありませんでした。人間の脳の働きは複雑極まりないため,聴覚や視覚からの信号を脳が処理する過程に関係する事柄すべてを研究者たちが理解するのは,なお将来のことなのです。
一方,ジュリーやバネッサは発達障害としての失読症にかかっており,このことは二人が成長するにつれて明らかになりました。研究者たちは普通,知能は明らかに正常な七,八歳の子供が,読み書きや単語のつづり方を習うのに,これといった特徴のない難しさを感じていることを示すなら,失読症にかかっているかもしれないとみなします。失読症にかかっている若い人たちは,書き写そうとしている文字の左右を逆にして書く場合が少なくありません。先生が誤って,ジュリーやバネッサを愚かで,のろまで,怠惰な人間だと決めつけた時,実際,この二人が陥った失意のほどを想像してみてください。
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失読症による失意を克服する目ざめよ! 1996 | 8月8日
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a 中には,字を書くことに関連した学習の困難な状態を「失書症」,計算に関する同様の状態を「失算症」という用語で表わす権威者もいます。
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