家庭内の悩みの原因は何ですか
『うちの妻は怠け者で,ろくに家事をしないんです』と,ボブは声を荒立てました。
ジーンの反論はこうです。『そんなことはありません。夫はわたしが努力していることを何一つ分かってくれないんです。こんな厳しい人には会ったことがないわ』。
ボブとジーンの生活はどこがうまくいかなかったのでしょうか。a まだ新婚4か月なのに,もう破局を迎えようとしています。しかし,この二人のケースは例外的なものではありません。統計が示すとおり,夫婦の仲たがいは日常茶飯事です。今では,専門家によると,米国で新しく結婚するカップルの半数がやがて離婚することになります。他の多くの国でも,同様の悲惨な統計が出ています。しかし離婚はこの現象のほんの一面にすぎません。かつてないほど多くの家族が様々な理由で悩みを抱えているのです。
家庭内の悩みの幾つかの理由
家庭内に悩みの多い状況が存在していると,子供に大きな影響が及びます。ニューズウィーク誌(日本版)はこう伝えています。「[米国で]1980年代に生まれた子どものおそらく3人に一人は,18歳になる前に『複合家族<ステップファミリー>』の一員となる。親の離婚と再婚によって,血縁のない者同士が一つの家族になるのだ。現在,4人に一人の子どもが片親家庭で育っている。私生児は全体の約22%,うち母親が10代のケースが約3分の1に及ぶ」。
これと関連した家庭内の悩みの原因について,児童虐待に関する専門家J・パトリック・ギャノンはこう言います。「最近の調査が示すところでは,機能障害を起こした[正常な状態ではない]家庭,つまり暴力や近親相姦,またはアルコール中毒がらみの感情的虐待などが日常茶飯事の家庭で育った人が数千万人に上っている」。ですから当然,そのような環境で育った子供たちは往々にして,大人になったときに家庭内の悩みごとを回避するすべを知りません。
家庭内の悩みの原因は,先進国を襲った経済・社会・道徳面の変化にあると言う評論家もいるかもしれません。例えば,大勢の女性の職場進出が引き金になって,家庭内の役割や責任分担の見直しが必要になっています。そして,それが混乱を引き起こしている場合も少なくありません。母親は,さびついた仕事能力をもとに戻そうと神経をとがらせ,父親はしぶしぶ家事と格闘し,子供は託児所の生活に慣れようと涙ぐましい努力をしています。
世界中の多くの家族が極度の重圧にさらされています。仕事を持つある親は,「いつも非常事態の中で暮らしている」ようなものだと言いました。最近のギャラップ調査では,回答者のほぼ半数が,『アメリカの家族の状況は10年前より悪くなった』と答え,ほとんどの人が状況の好転を予想しなかったのも不思議ではありません。
ですから家庭内の悩みは,テレビやラジオのトークショーでも頻繁に話題に上ります。一般の人々は家庭生活に関する自習書のようなものに飢えており,そうした本の中には健全で実際的なアドバイスをある程度含んでいるものもあります。『もっと率直に話し合う』とか,『相手の気持ちを理解する』といった勧めは有効かもしれませんが,家庭問題の真因に迫るところまでは行っていません。次の記事では問題の真因に迫ると共に,家庭内の悩みごとに取り組む方法を考えます。
[脚注]
a 秘密を守るために仮名にしてあります。