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創造物に備わっている,目に見えない“時計”目ざめよ! 1986 | 6月8日
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時計を狂わせる
今,読者の体内時計はご自分の住んでおられる場所の時間帯に恐らく合っていることでしょう。しかし,アメリカのカリフォルニア州が午後なら,ヨーロッパは夜です。それで,この二つの地点の間をジェット機で飛ぶと,頭痛,機能低下,睡眠不足といった,普通,時差ぼけとして知られる症状を経験することがあります。
何が起きたのでしょうか。生物時計が混乱してしまったのです。それは,あなたが郷里にいた時の予定を必死に守ろうとします。(昼夜交替制で働く人はたいてい同様の不快な症状を経験します。)仕事の計画,会議,また休暇の楽しみさえ,時差ぼけがしばしばもたらす頭痛,不眠症,過敏症,消化不良や疲労などのために悪影響を受ける場合があります。
興味深いことに,そのような問題はもっと遅い輸送手段が使われていた時代には起きませんでした。体内時計には旅行者が目的地に着かないうちに新たな時間帯に適応する時間的余裕がありました。しかしジェット機で旅行する場合,ほんの数時間のうちに四つか五つの時間帯を横切ることがあります。これは食事や睡眠の予定をすっかり狂わせる恐れがあります。ご想像のとおり,これは特に航空会社の人々にとって厄介な問題です。国際線で働いていた元パイロットは「目ざめよ!」誌に次のように語りました。
「いわゆる12時間往復スケジュールの時は,また同じ24時間以内に帰国できるので,時間帯をいくつ通過しても問題はありませんでした。ところが,バンクーバー[カナダ]からアムステルダムやローマまでの途中下車の行なわれる五日間の特定の飛行の時には,問題が起こります。体全体の調子が狂うように思えます。問題を克服しようとして,体が大変疲れて眠らなければならなくなるまで歩いたものです。五日後には私の体はヨーロッパ時間にすっかり合っていました。そしてバンクーバーへ戻るのに,また同じことを一から全部やりなおすのです。鎮静剤は解決策にはなりませんでした。それは大変つらいことでした」。
経験の示すところによると,西から東へ向かう旅行者が最も厳しい調整問題で苦しむようです。東から西へ行く人は,1日が長くなるだけですから,体を調整しやすいので,あまり苦労しません。バンクーバー-東京間の飛行を担当させられた一パイロットは,どの都市にいる時でもいつも東京の時間にとどまっていることにより問題を最小限に抑えました。しかし,概日リズムは普通,南北両方向の飛行の場合,あまり影響を受けません。なぜなら,せいぜい一つか二つの時間帯の範囲内で飛ぶからです。
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創造物に備わっている,目に見えない“時計”目ざめよ! 1986 | 6月8日
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[19ページの囲み記事]
時差ぼけを克服する
できること
□ 西回りの飛行: 1日のうち遅い時刻に飛び立ち,いつもの就寝時間のころ目的地に着くようにする。
□ 東回りの飛行: 出発前夜,早く休む。夕方の時間に着くよう旅行する。夜の便なら,次の日は1日中起きているようにし,夕方早く休む。
□ もし六つ以上の時間帯を通過するなら,できれば,途中下車をするよう計画する。
□ 目的地に着いたら,適度の運動や散歩,ジョギングや水泳などをして,そのあと軽い夕食をとる。
□ 医療を受けている場合: 出発前に,新しい時間帯ではいつ薬を服用したらよいか,かかりつけの医師に相談しておく。特に糖尿病で,インシュリン注射を行なっている人はこの点に注意すべきです。
□ 飛行中,およびその前後の二,三日間は,軽い食事をとる。
すべきでないこと
□ 飛行機に乗る直前,あるいは飛行中,もしくは飛行旅行の終わりに,強いアルコール飲料を飲んだり,睡眠薬を服用したりしない。
□ 飛行中,その他どんな場合でも,たばこを吸わない。高度飛行の際,体に大変必要な酸素が奪われるからです。
□ 目的地に着く当日には,できるだけ商用や会議を避ける。
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