世界展望

奇跡の水？

イタリアの新聞「ラ･スタンパ」が最近伝えたところによると，「法王とルルドの司教は，ルルドの水の価値と重要性に関して相反する見解を持っており，同じ日にそれぞれの見解を述べた」。法王は，フランスのルルドの聖母のために行なわれたミサの間に，泉からわき出る水は，「マリアが行なう，驚嘆すべき，数多くの超自然的な行為に用いられる本物の道具」であると述べ，「奇跡的な力を持つルルドの泉の水」は，かつてイエスがある男をいやした時に用いたシロアムの池の水に匹敵する，と付け加えた。しかし同じ日にルルドの司教は，その水の売買のことを気にかけていたらしく，「あれは魔法の水ではない。実際，あれを『奇跡の水』と呼ぶのは誤解を招く行為である」と述べた。イタリアのパノラマ誌によれば，その水は，「細菌学的に言って純粋ではなく，実際，水がわき出ている層は，大きな汚染の危険にさらされている」。しかし，ルルドの商人たちにとって，その水は，「米国テキサス州やイランにとっての石油に似ている。それは主要な財源なのである」と，同誌は述べている。

死の遊び

イスラエルの若者たちは，「ロシアルーレットの奇妙な改作」を思いついた，とニューヨーク･タイムズ紙は伝えている。11歳か12歳の少年たちが，高速で走っている車の前に順番に飛び出すという遊びである。その遊びは元々，子供たちが，近づいて来る車の通り道に寝そべって，最後に危険から逃れた人が勝ちになるというものであった。列車の前に飛び出したり，車の通り道に置いてあるカバンなどを一斉に拾いに行ったりするものもある。なぜそのようなことをするのだろうか。ある若者は，「勇気を見せるためだ」と述べ，別の若者は，「死に挑む」方法だと言う。同紙によれば，一部の権威者は，「ここでの生活は一触即発的なもので，戦争やテロリストの攻撃の脅威に常にさらされている」ために，このような死の遊びから解放感を得ようとする，欲求不満を抱いた若者たちの一団が現われると見ている。4月初旬までに，少なくとも一人，11歳の少年が死に，もう一人がけがをした。

聖書の出版

少なくとも聖書の一部が出版されている言語の数は，昨年23増えて，全部で1,907になった。聖書全巻は，現在では310の言語で出版されており，以前より7言語増えた。その新しい言語の中には，カロ･バタク語，エケグシイ語，クスコ･ケチュア語，マラウィ･チ･トンガ語，オトジヘレロ語，ルクヮンガリ語，ティグレ語がある。

聖書は多くの国で出版されているが，世界最大の聖書輸出国となったのは韓国である。昨年韓国は，119の言語で印刷された430万冊の聖書を91か国に送り出したとコリア･タイムズ紙は言明している。韓国の聖書の輸出は年に20％伸びており，同国内での聖書の配布率は世界最高である。一国内での聖書総生産数においても，韓国は2年以内に米国に追いつくことを期待している。

やめるだけの価値がある

「ガン研究」に載せられたリポートによると，たばこを吸う女性が肺ガンにかかる危険は1,000％以上も跳ね上がる。しかし，喫煙の習慣をやめるだけで，その危険は劇的に減少することが研究によって分かった。ではどれほど減少するのだろうか。比較的短い期間に，10ないし15年たばこを吸っていない人とほぼ同じ程度にまで減少することを同リポートは示している。

イタリアにおける青少年の暴力

ローマは「今や背筋が寒くなるような暴力のはびこる」都市になったと，ローマの日刊紙「ラ･レプブリカ」は嘆いている。「研究者たちも言っているようであるが，この都市は暴力を耐え忍ぶことに慣れてしまって，もはや暴力的な手段に対する嫌悪感を表わすことができない」。同紙はさらに，イタリアにおける青少年の暴力に関する最近の調査から，今日の非行少年気質をかいま見ることができると述べている。それによると非行少年は，「自分自身のイメージや名誉を非常に気にし，障害を持つ人にはほとんど思いやりを示さず，諸制度やそれを代表する人々をひどく嫌う」ことが分かった。

よくない別居

2年余り前，オーストラリアの15歳の少年が，「意見の不一致」を理由に両親と「別居」した。（「目ざめよ！」誌，1987年3月22日号参照。）シドニーのサンデー･テレグラフ紙によると，現在17歳になるダミアンは，「自分のしたいことをするために，制度を悪用し，両親を裏切ったほんの子供にすぎなかった」ことを認めている。そして，「自分が哀れに思え，人から構ってほしかった」と述べた。しかし同紙によると，少年の母親は，「ダミアンの前に，ダミアンが持つべきではなかった権利を置いた」ことで，州の社会奉仕事業やソーシャルワーカーたちを非難している。家に戻ったその若者は，自分の家出について，「愚かなことをしてしまった……今は自分のしたことが信じられない」と語った。

幼児殺人

米国メリーランド州ボルティモア市にあるジョンズ･ホプキンズ大学の研究チームは，最近，『米国における幼児のおもな死因が殺人である』ことを明らかにするリポートを発表した。殺される赤ちゃんの数は，自動車事故で死亡する幼児の数よりも多い。1980年から1985年までの間に，1歳未満の赤ちゃんが1,250人も殺されている，とそのリポートは述べている。それらの赤ちゃんは，絞殺から溺死に至るあらゆる種類の虐待の犠牲になっただけではなく，火器を使った殺人の犠牲にもなった。同リポートは，米国のもっと年齢の進んだ子供たちが，自殺という別の危険に面していることを示していた。10歳から14歳の子供の自殺率は，1980年から1985年までの間に2倍になった。

テレビの視聴に平衡を保つ

米国カリフォルニア州の二人の心理学者が発表した最近の研究によれば，いつもテレビを見ていると，子供の想像力に悪影響が及ぶかもしれない。テレビを見過ぎるとその結果として，子供たちは「想像力をあまり使わなくなるかもしれず，言葉を正確に使い，積極的に頭を働かせるような刺激を受ける機会も少なくなるかもしれない」。同様に，カナダで行なわれたある研究の主宰者は，「テレビはまた，低学年の子供たちが流ちょうに読む能力を身に着ける妨げとなる」という点や，テレビを見る大人は，テレビを見ない人に比べて問題を解決するのが遅く，忍耐力が足りないという点を挙げている。カナダのイクイノックス誌によれば，心理学者たちは，「もっと読書をするよう子供を励まし，……子供とテレビ番組について話し合い」，「テレビの視聴に平衡を保つ」よう努めることを親に勧めている。

中東の水不足

「聖書ゆかりの干からびた[しなびた]地では，水の流れはいつも細々としたものであった」と，US･ニューズ･アンド･ワールド･リポート誌は指摘する。「いまその流れは危険なほど減少しつつあり，そうでなくても不安定な地域に緊張を増し加えている」。ワシントンに本拠を置く戦略･国際問題研究センターは，「2000年までに，中東の主要な資源問題となるのは石油ではなくて水である」と予言している。水不足をもたらす要因としては，ペルシャ湾諸国の好景気，アフリカ東部での10年に及ぶ干ばつ，エジプトの人口爆発などがある。ダムの建設によって一国の水の供給量を増やすことはできるが，下流にある国々への供給は減少してしまう。幾つかの解決策が目下検討されているが，解決できるかどうかは，関係諸国のトルコ人，アラブ人，ユダヤ人の協力にかかっている。「その協力は常に必要不可欠なのであるが，中東ではあらゆる面でそのような協力はめったに見られず……お金よりも，いや水よりも乏しいのである」と，同誌は述べている。

武器の売買

ドイツ連邦共和国では，銃や潜水艦，弾薬や軍事用エレクトロニクスなど，正式に認可されている品目の輸出額は年間300億ドイツマルク（約2兆1,000億円）に達しており，同国の輸出総額の5％に相当する。しかし西ドイツは軍需品では，米国，ソ連，フランス，英国に次いで世界第5の輸出国にすぎない。それらの軍需品はどこに行くのだろう。ハンブルクの政治･防衛研究所によれば，1973年から1980年までの間に西ドイツから輸出された兵器全体の60％は，戦争や内乱のある国々に送られた。「約30万人の人間を雇っていながら，兵器産業ほど大衆の目から隠されている産業はほかにない」と，南ドイツ新聞は述べている。

上海の驚き

中国最大の都市である上海の住民は，現在，法律によって献血を要求されており，違反すれば罰金を科される。健康状態の良好な20歳から55歳までの男性と20歳から50歳までの女性は，少なくとも5年間に1度は献血をしなければならない，と法律は規定している。上海の軍関係者や大学生もそれに従わなければならない。新華社通信によれば，上海市は，市内の病院が十分な量の血液を確保するために，そのような処置を講じた。昨年，地元の病院に供給された血液の大半は，外国からの輸入によるものだった。