世界展望
信教の自由について再考するギリシャ
「最近，[ギリシャ]政府は，信教の自由の権利をめぐる問題に関心を持ち，未決になっている憲法の修正も考慮しているようだ」と，アテネのト･ビマ紙は伝えている。「宗教の自由に関する法の枠組みを再検討するため，外務省内に非公式の委員会が設けられた。独裁者メタクサスの制定した，改宗を犯罪としている法や，正教会に属さない少数派の宗教が教会や集会場所の設置を認可されるさいの条件も検討される」。記事はさらに，この動きのきっかけはおもに，ギリシャのエホバの証人によって非常に多くの訴訟がヨーロッパ人権裁判所に提出されたためである，とした。
ラテン語は生きている
ラテン語は1960年代に，ローマ･カトリックの典礼では使用しなくてよくなったが，バチカン市の公用語として現在も残っている。専門家がローマ･カトリック教会の文書をラテン語に翻訳するが，ラテン語は現在バチカン内でもあまり用いられない。しかし，1997年11月，法王は話し言葉からラテン語が衰えていることを嘆き，その復興を力説した。一方バチカンの学者たちの一グループは，8年がかりのプロジェクトで現代風のラテン語辞書を完成させて，出版した。「エアゾールスプレー」，「空港」，「百貨店」，「タクシー」，「交通渋滞」などの現代語に対応するラテン語が作られた。どこにでも見られる携帯電話も，telephonium cellulareとなる。ラテン語好きの人にとってはさらに良いニュースもある。ローマの一司祭はインターネット上にラテン語に関するウェブサイトを開いたと，ロンドンのタイムズ紙は報じている。
彫刻の“クローン”
2000年ごろには，ローマの公園に置かれる彫刻はすべて複製になっているかもしれない。なぜだろうか。「記念物を保存するには複製しか方法がない」と，ローマのある歴史協会の会員カルラ･ベノッチは説明する。その一部は「劣化が驚くほど進んでいて，時の流れ，車，蛮行，盗品を手に入れる人たちによって侮辱されている」とも彼女は述べた。どんな素材を使えば元のものに劣らぬ美的効果が保証され，同時にスモッグや，蛮行の猛撃にも耐えられるかについて実験が続けられている。“クローン”の幾つかは樹脂製である。セメントに大理石の粉末をかぶせたものもある。それらは「実物に非常に忠実なので，本物と間違えた泥棒が頭部を切断したり，まるごと持ち去ろうとしたほどだ」とベノッチは述べている。元のものはどうなるのだろうか。美術館に保存されて，危険にさらされずに鑑賞されることになる。
栄養失調で死ぬ子供たち
「流行病，自然災害，戦争などよりも栄養失調が多くの子供たちを死なせている」とフランスの日刊紙「ル･モンド」は伝えた。毎年ほぼ700万人の子供たちが十分な食べ物がないために死んでいる，と推定されている。国連児童基金（ユニセフ）の1997年の報告によると，5歳未満で死ぬ年間1,200万人の55％は，栄養失調が原因である。栄養失調は，子供の死だけでなく，免疫系を弱めさせ，また非常に多くの身体および精神障害の原因ともなっている。南アジアでは，子供の二人に一人が栄養失調で苦しんでいる。アフリカでは3人に一人である。しかし，この問題は先進工業国にも及んでいる。例えば，ユニセフは，米国の12歳未満の子供4人に一人は必要な栄養を取っていない，と報告している。
月に水？
ニューヨーク･タイムズ紙は，無人宇宙船「ルナ･プロスペクター」が月の北極と南極の氷と思われるものを発見した，と報じている。無人宇宙船上の機器は水素の存在を示しており，月に水素が存在するとしたら，水の元素として存在する可能性が最も高い，と考えられている。水は小さな氷の結晶として砂層の中に混じっているものとみられる。岩地の場合の含有量は1％以下になるようである。すでに科学者たちの中には，この水を用いて人間のいる基地の生活を支えたり，月から発射される宇宙船の燃料として水素と酸素を供給したりできる，と予測する人もいる。また，水があったとしても，取り出すのは経済的でないと懸念する人もいる。カリフォルニア工科大学のブルース･マレー博士は，地球から水を運んだほうが，月から水を掘り出すよりも安く上がるだろうと語った。
鎮痛剤についての注意
「アセトアミノフェンは，タイレノール，エクセドリン，その他，処方箋がなくても手に入れられる鎮痛剤の多くに含まれる有効成分だが，体に応じた量よりわずかに多めの服用でも，とりわけアルコールと一緒の時には，肝臓に重大な損傷を与える可能性がある」とヘルス誌は警告する。死に至ることもある。「たいていの人は勧められる量より二，三倍多めに飲んでも害はないと考えているが，この薬は違う」とテキサス大学サウスウェスタン医療センターの内科学の専門家ウィリアム･リーは言う。アセトアミノフェンは体内で分解されると，肝臓に害を及ぼす副生物を生じる。肝臓は解毒作用のあるグルタチオンで自分を守ろうとする。しかし，アセトアミノフェンを過剰に摂取すると，肝臓のこの防御機能は働かなくなる。アルコールはグルタチオンの蓄えを使い果たしてしまう。それで，アルコール飲料を二，三杯飲んでからこの薬を内服するのは特に危険である。300以上の製薬にアセトアミノフェンが使われているので，気づかないで過剰に服用してしまいやすい。
誘拐対策の授業
現在，台湾省の学校の子供たちには，新しい学課，つまり誘拐対策のための授業がある。「台湾省は，フィリピンに次いで子供が誘拐される可能性が高い。平均2日半に一人」とアジアウィーク誌は伝えている。犯罪件数が上昇し続けているので，次の誘拐の犠牲者が我が子だったらと心配する親たちが，そのプログラムを求めた。誘拐対策の学課で，子供たちは，独りで歩くとき，エレベーターに乗るとき，公共の交通機関に乗るときなどに用心深くするよう訓練される。様子の怪しい人に警戒したり，誘拐されたらどうするかも教わる。消極的な内容の学課だが，子供たちが積極的な態度で生活できるように助けることに努力が払われている。
「絶滅」と思われていたが
モリコキンメフクロウは，この113年間，確認された目撃例がなく，絶滅したと考えられていたが，インド，ムンバイの北東，シャハダの近くの森林地域で発見され，撮影された。体高およそ20㌢のこの褐色の鳥は，大きな目があり，特大のくちばし，足，かぎづめを誇示する。「この鳥は，インドにいるなぞの鳥の一つです」とワシントン国立自然史博物館のパメラ･ラスムッセンは語る。彼女は二人の同僚と協力して写真を撮った。「これは，一生に一度あるかないかのことです」。生存の証拠記録がなく，インドでなぞの鳥とされるあとの2種は，1930年代を最後に姿が見えないバライロガモと，約100年間も目撃されていないケバネウズラである。
「穏やかに効く理想の麻薬」？
何百年も昔から，チョコレートには興奮作用，抗うつ作用，媚薬の効能があると言い伝えられてきた。ところが最近の調査によると，チョコレートは確かに「不安の度合い，心の平静，性行動」に影響を与えるらしいと，フランスのル･モンド紙は伝えている。科学者たちはチョコレートの中に，アンフェタミンに似たところのある物質や，「抗うつ作用で注目される」別の物質を発見した。また，最新の研究ではアナンダマイドの存在も明らかになった。これは神経伝達物質の一つで，インド大麻と同じように「感覚と陶酔感を高める」効果を生じさせる。このことと，チョコレートの毒性が弱いことも考え合わせて，同紙はこう結論した。「身体および知的活動を刺激し，活力を与えて幸福感を持たせ，しかも副作用がほとんど何もなくて中毒レベルが低いという点で，チョコレートは穏やかに効く理想の麻薬と言ってよい」。