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創造者は人間に楽園を与える聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション1
創造者は人間に楽園を与える
神は宇宙と,地球上の生命を創造する。完全な男女を創造し,美しい園に住まわせ,二人に命令を与える
「初めに神は天と地を創造された」。(創世記 1:1)書物の書き出しの言葉として,世界中でこれ以上有名なものはないと言えるでしょう。この簡明かつ壮大な一文により,聖書全巻の中心を成す方が紹介されます。その方は全能の神エホバです。聖書の冒頭のこの節は,神がわたしたちの住む地球を含む広大な宇宙の創造者であることを明らかにしています。次の節以降で説明されているように,比喩的に「日」と呼ばれている一連の長い期間の中で,神は自然界のあらゆる素晴らしいものを造り,人間のために地球という住まいを整えました。
神の地上の創造物の中で,最高の傑作は人間です。人間は神の像に造られ,愛や知恵などエホバの特質を反映することができます。神は地面の塵から人を造り,アダムと名づけて,エデンの園という楽園に置きました。その園は神ご自身が設けたもので,実り豊かな美しい木々で満ちていました。
神は人が配偶者を必要としていることを見て取ります。そこでアダムのあばら骨の一つを使って女性を造り,妻としてアダムのところに連れて来ました。この女性は後にエバと名づけられます。アダムは喜びにあふれ,「これこそついにわたしの骨の骨,わたしの肉の肉」という詩的な表現を口にします。それに対し,神はこう述べます。「それゆえに,男はその父と母を離れて自分の妻に堅く付き,ふたりは一体となるのである」。―創世記 2:22-24; 3:20。
神はアダムとエバに二つの命令を与えます。まず,地を耕し,地球という住まいを管理して,やがて子孫で満たすようにと言いました。次いで,広大な園の中の1本の木,「善悪の知識の木」の実だけは食べてはならないと告げます。(創世記 2:17)この命令に背いた場合,二人は死ぬことになります。これらの命令に従うなら,アダムとエバは,神を自分たちの支配者として認めていることを示せました。また,神への愛や感謝を示すことにもなりました。二人には神の思いやり深い支配を受け入れるべき十分な理由がありました。完全な人間だったこの男女には欠陥がありませんでした。聖書はこう述べています。「神は自分の造ったすべてのものをご覧になったが,見よ,それは非常に良かった」。―創世記 1:31。
― 創世記 1章と2章に基づく。
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楽園が失われる聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション2
楽園が失われる
反逆したみ使いが最初の男女を唆し,アダムとエバは神の支配を退ける。その結果,罪と死が世に入る
人間を創造するはるか前に,神は目に見えない霊の被造物である無数のみ使いを創造しました。後に悪魔サタンとして知られるようになった反逆的なみ使いが,エデンで狡猾にエバを誘惑し,神が禁じた木の実を食べさせようとします。
サタンは蛇を使って語りかけ,神がエバと夫に良いものを与えないでいることをほのめかします。このみ使いはエバに,彼女も夫も禁じられた木の実を食べても死ぬことはないと言います。サタンはこうして,神は自分の子どもである人間にうそをついていると非難しました。欺く者であるサタンは,神に背けば啓発と自由が得られると主張し,不従順な歩みを魅力的なものに見せかけたのです。しかし,それは地上で語られた最初のうそであり,すべて偽りでした。ここで問題とされたのは,神の主権すなわち至上の支配権です。つまり,神には支配する権利があるのか,また神は義にかなった仕方で臣民の最善の益を図って支配権を行使しているのか,ということです。
エバはサタンのうそを信じました。禁じられた木の実を食べたいと思うようになり,とうとう少し食べてしまいます。その後,夫にも実を与え,夫もそれを食べます。このようにして,二人は罪をおかしました。単純に思えるその行為は,実際には反逆の表明だったのです。アダムとエバは故意に神の命令に背くことにより,完全な命を含むすべてのものを与えた創造者の支配を退けました。
その胤は「お前の頭を砕き,お前は彼のかかとを砕くであろう」。―創世記 3:15
神は反逆者たちに裁きを宣告します。そして,蛇の背後にいたサタンを滅ぼす胤つまり救出者が到来することを予告します。神はアダムとエバを直ちに死に至らせることはせず,猶予期間を与えることにより,二人のまだ生まれていない子孫に憐れみを示します。その子孫は希望を持つことができます。神から遣わされる者が,エデンでの反逆によってもたらされた悲惨な結果を取り除くからです。この将来の救い主に関する神の目的がどのように果たされるのか,まただれが遣わされるのかについては,聖書が書き記されるにつれて徐々に明らかになってゆきました。
神はアダムとエバを楽園から追放します。エデンの園の外で何とか生きてゆくためには,汗水流して土地を耕さなければならなくなりました。やがてエバは妊娠し,長子のカインを産みます。アダムとエバには他の息子や娘たちも生まれますが,その中にはアベルや,ノアの先祖となったセツがいました。
― 創世記 3章から5章,啓示 12:9に基づく。
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人間は大洪水を生き残る聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション3
人間は大洪水を生き残る
神は邪悪な世を滅ぼすが,ノアとその家族を保護する
人間が増えるにつれ,地上に罪と悪が急速に広まりました。たった一人で預言を行なっていたエノクは,神がいずれ不敬虔な人々を滅ぼすと警告します。それでも悪は蔓延し,一層ひどくなります。一部のみ使いたちがエホバに反逆し,天での持ち場を離れて地上で人間の姿になり,貪欲にも女性たちをめとりました。その不自然な結びつきにより,混血の子孫である巨人たちが生まれます。ネフィリムと呼ばれたそれらの暴漢たちは,世の中の暴虐と流血に拍車をかけます。神は地上の創造物が損なわれるのを見て,心に痛みを覚えました。
エノクの死後,邪悪な世の中で周囲とは明らかに異なる人がいました。ノアという人です。ノアとその家族は,神の目に正しいことを行なおうとしました。神は当時の世の邪悪な人々を滅ぼすことにした時,ノアと動物たちは守りたいと思いました。それで,巨大な箱船を造るようノアに告げます。その箱船の中で,ノアとその家族および多くの動物たちは,全地球的な規模の大洪水を生き延びるのです。ノアは神に従いました。そして,箱船を造るのに費やした幾十年もの間,「義の伝道者」としても働きます。(ペテロ第二 2:5)ノアはやがて来る大洪水について警告しますが,人々は耳を貸そうとしません。ついに,ノアと家族が動物たちと共に箱船に入る時が来ます。入り終わると,神が箱船の戸を閉じました。その後,雨が降ってきます。
豪雨が40日40夜降り続け,陸地はすっかり水に覆われます。邪悪な人々はいなくなりました。何か月もたち,水が引いてゆくと,箱船はある山の上で止まります。箱船から出られるようになったころには,丸1年が経過していました。ノアは感謝を表わすために,捧げ物をエホバにささげます。神はそれにこたえてノアと家族に,二度と再び洪水によって地上の生物をぬぐい去ることはしないと約束します。その慰めとなる約束を思い出させる,目に見える保証として,エホバは虹を生じさせます。
大洪水後,神は人間に新しい命令を幾つか与えました。動物の肉を食べることを許しましたが,血を食べることは禁じました。さらに,地に広がるようノアの子孫に命じたものの,それに従わなかった人たちもいます。ある人々はニムロデという指導者のもとで団結し,後にバビロンと呼ばれるようになったバベルという都市に巨大な塔を建て始めます。その目的は,全地に広がるようにとの神の命令に逆らうことでした。しかし,神は人々が使っていた唯一の言語を混乱させ,様々な言語を話すようにさせることにより,反逆者たちの目的をくじきます。人々は意思を通わせることができなくなったため,計画を断念し,散ってゆきました。
― 創世記 6章から11章,ユダ 14,15に基づく。
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神はアブラハムと契約を結ぶ聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション4
神はアブラハムと契約を結ぶ
アブラハムは信仰を抱いて神に従う。エホバはアブラハムを祝福して子孫を殖やすことを約束する
ノアの時代の大洪水から,350年ほどが経過しました。族長アブラハムは,繁栄していたウルという都市に住んでいました。ウルがあったのは,現在のイラクの領土内です。アブラハムは際立った信仰の持ち主でした。しかし,その信仰は試されることになります。
エホバはアブラハムに,生まれ育った国を離れ,外国の土地へ行くよう告げます。アブラハムはためらわずに従い,家の者たちを連れて行きます。その中には妻のサラや甥のロトもいました。そして長旅の末カナンに行き着き,そこで天幕生活をするようになります。エホバはアブラハムと契約を結び,アブラハムから大いなる国民を作ること,地上のすべての家族がアブラハムによって祝福されること,またアブラハムの子孫がカナンの地を所有することを約束しました。
アブラハムとロトは繁栄し,羊や牛の大きな群れを持つようになります。アブラハムは寛大にも,ロトに住みたい場所を選ばせます。ロトはヨルダン川の流れる肥沃な地域を選び,ソドムという都市の近くに落ち着きました。ところが,ソドムの人々は不道徳で,エホバに対して甚だしい罪人でした。
後にエホバ神は,アブラハムの子孫が天の星のようにおびただしい数になることを再び保証します。アブラハムはその約束に信仰を置きました。しかし,愛する妻のサラにはずっと子どもが生まれません。アブラハムが99歳,サラが90歳近い時に,神は二人の間に息子が生まれることを告げます。神の言葉どおり,サラはイサクを産みました。アブラハムには他の子どももいましたが,エデンで約束された救出者はイサクを通して来ることになります。
ロトとその家族はソドムに住むようになっていましたが,義人ロトはその都市の不道徳な住民のようにはなりませんでした。エホバはソドムに裁きを執行することにした際,間近に迫った滅びについてロトに警告するため,み使いたちを遣わしました。み使いたちはロトと家族に対し,ソドムから逃げ,後ろを振り返らないようにと言います。それから神はソドムと,近くの邪悪な都市ゴモラの上に火と硫黄の雨を降らせ,住民をすべて滅ぼします。ロトと二人の娘は逃れました。しかし,ロトの妻は振り返ってしまいます。残してきたものに未練があったのかもしれません。その不従順な行動のため,ロトの妻は命を失いました。
― 創世記 11:10–19:38に基づく。
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神はアブラハムとその家族を祝福する聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション5
神はアブラハムとその家族を祝福する
アブラハムの子孫は繁栄する。神はエジプトでヨセフを保護する
エホバは,将来ご自分の最愛の者が苦しんで死ななければならないことを知っていました。創世記 3章15節の預言は,そのことを示唆していました。その死がどれほど大きな痛手となるかを,神はどのように人間に伝えるのでしょうか。聖書に記録されている一つの出来事を通してそうします。神はアブラハムに,愛する息子イサクを犠牲としてささげるよう求めたのです。
アブラハムは強い信仰を持っていました。予告された胤つまり救出者がイサクを通して来ることを,神が約束したのを思い出してください。アブラハムは,必要とあれば神がイサクを復活させてくださると信じ,従順に息子をささげようとします。しかし,すんでのところで神のみ使いにとどめられます。神はアブラハムが自分の最も大切なものを進んでささげようとしたことを褒め,この忠実な族長に対する約束を再び述べます。
後にイサクには,エサウとヤコブという二人の息子が生まれます。ヤコブはエサウと違って霊的な物事の価値を認識していたので,報いを受けます。神はヤコブの名をイスラエルに変え,12人の息子はそれぞれイスラエル国民の部族の頭になります。しかし,この家族はどのようにして大いなる国民になったのでしょうか。
息子たちのほとんどが弟のヨセフをねたんだことがきっかけとなり,一連の出来事が生じます。ヨセフは兄たちによって奴隷として売られ,エジプトへ連れて行かれます。しかし,神はその忠実で勇敢な若者を祝福します。ヨセフはひどい苦難を経験しますが,やがてエジプトの支配者ファラオの目に留まり,大きな権威を与えられます。それは時宜にかなったことでした。飢きんが生じ,ヤコブは食料を買わせるために息子の幾人かをエジプトへ遣わしますが,その食物をすべて管理していたのがヨセフだったのです。ヨセフは兄弟たちとの劇的な再会の後,悔い改めていた兄たちを許し,家族全員がエジプトで暮らすよう手配します。彼らは非常に良い土地を与えられ,繁栄してゆきます。神がご自分の約束を果たすために物事をそのように運んだことを,ヨセフは理解していました。
年老いたヤコブは,増えてゆく家族に囲まれてエジプトで余生を送りました。そして死の間際に,約束の胤つまり救出者が息子のユダの家系に生まれ,強力な支配者になることを予告しました。それから何十年も後,ヨセフは自分が死ぬ前に預言をし,神がいつの日かヤコブの子孫をエジプトから連れ出すと述べます。
― 創世記 20章から50章,ヘブライ 11:17-22に基づく。
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ヨブは忠誠を保つ聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション6
ヨブは忠誠を保つ
サタンは神の前でヨブの忠誠に疑問を投げかけるが,ヨブはエホバに忠実であり続ける
人間は,極限まで試され,従順を示しても全く得にならないように思える場合でも,神に忠実であり続けるでしょうか。ヨブという人に関連して,この疑問が提起され,答えが出されました。
イスラエル人がまだエジプトにいたころ,アブラハムの親族のヨブは,現在のアラビアに当たる地域に住んでいました。ある時,天のみ使いたちが神の前に集まり,その中に反逆者サタンもいました。エホバはみ使いたちの前で,ご自分の忠節な僕ヨブに対する確信を言い表わします。ヨブのように忠誠を示している人はほかにいないと述べたのです。しかしサタンは,ヨブが神に仕えているのは神から祝福され保護されているからだと主張します。そして,持っているものをすべて失えばヨブは神をのろうだろうと言います。
神は,サタンがまずヨブの富と子どもたちを奪い,次いでヨブを病気にならせることを許します。ヨブはサタンが関与していることを知らなかったので,なぜ神がそのような試練をお許しになるのか理解できませんでした。それでも,ヨブは神に背を向けたりはしませんでした。
3人の偽りの友がヨブの元にやって来ます。ヨブ記の大部分を占める一連の発言を通して,3人はヨブを不当に非難します。隠された罪ゆえに神から処罰を受けているということをヨブに認めさせようとするのです。彼らは,神がご自分の僕たちに喜びを見いだすことも,信頼を置くこともないとさえ主張します。ヨブは彼らの間違った推論を退け,確信をこめて,自分は死ぬまで忠誠を保つと宣言します。
しかし,ヨブは自分の正しさを証明することに気を取られすぎていました。それまでずっと議論に耳を傾けていた,年下のエリフという人が口を開き,ヨブの間違いを指摘します。ヨブは,人の正しさが立証されることより,エホバ神の主権が立証されることのほうがはるかに重要であるという点を十分認識していなかったのです。エリフはさらに,ヨブの偽りの友たちを厳しくとがめます。
次にエホバ神がヨブに話しかけ,ヨブの考え方を正します。エホバは数々の素晴らしい創造のみ業に注意を引き,神の偉大さと比べて人間がいかに小さな存在であるかをヨブに悟らせます。ヨブは神からの矯正を謙虚に受け入れます。「優しい愛情に富まれ,憐れみ深い方」であるエホバは,ヨブの健康を回復させ,以前の2倍の富を与え,10人の子どもを授けました。(ヤコブ 5:11)ヨブは厳しい試練のもとでもエホバへの忠誠を保つことにより,人間は試みに遭うと神に忠実でなくなるというサタンの主張に対して見事な答えを提出しました。
― ヨブ記に基づく。
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神はイスラエルの子らを救い出す聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション7
神はイスラエルの子らを救い出す
エホバはエジプトに災厄を下し,モーセがイスラエルの子らをその地から導き出す。神はモーセを通してイスラエル人に律法を与える
イスラエルの子らは長い年月の間エジプトに住み,繁栄していましたが,ヨセフのことを知らない新しいファラオが王位に就きます。この冷酷な暴君は,殖え続けるイスラエル人を恐れて奴隷にし,生まれてくるイスラエル人の男子をすべてナイル川でおぼれさせるよう命じました。しかし,一人の勇敢な母親が自分の赤ちゃんを守ろうと,かごに入れて岸辺の葦の間に隠します。ファラオの娘がその男の子を見つけてモーセと名づけ,王家の一員として育てます。
モーセは40歳の時,イスラエル人の奴隷をエジプト人の職長から守ろうとして問題を起こしました。そのため遠い地へ逃げ,亡命者として生活します。そして80歳の時,エホバに遣わされてエジプトに戻り,ファラオの前に出て,神の民の解放を求めます。
ファラオは全く聞き入れようとしません。それで神はエジプトに十の災厄を下します。モーセがファラオの前に出て次の災厄を回避する機会を差し伸べるたびに,ファラオはふてぶてしい態度を示し,モーセとその神エホバをさげすみました。ついに十番目の災厄により,エジプトの地にいるすべての初子に死が臨みます。しかし,エホバに従って犠牲の子羊の血を戸柱につけた家族の初子は無事でした。滅びをもたらす神のみ使いがそれらの家を過ぎ越したのです。イスラエル人はこの驚くべき救いを記念し,年に一度,過ぎ越しと呼ばれる祝いを行なうようになります。
長子を亡くしたファラオは,モーセとすべてのイスラエル人にエジプトを去るよう命じます。民はすぐにエジプトを脱出します。ところがファラオの気が変わり,多くの戦士と兵車を率いて跡を追います。イスラエル人は紅海の岸で逃げ場を失ったかのように見えました。しかし,エホバは紅海の水を分け,イスラエル人が水の壁の間の乾いた海底を歩いて渡れるようにしたのです。エジプト人たちが急いで追いかけると,神は水の壁が崩れ落ちるようにし,ファラオとその軍勢はおぼれてしまいます。
後にイスラエル人がシナイ山のそばで宿営を張っていた時,エホバはその民と契約を結びました。モーセを仲介者として用い,神は生活のほとんどすべての面で導きや保護となる律法をイスラエルに与えました。民が忠実に神の支配に服し続けるなら,エホバが彼らと共にいて,イスラエルは諸国民にとって祝福となるはずでした。
しかし,イスラエル人の大半は嘆かわしい信仰の欠如を示しました。それゆえエホバは,その世代を荒野で40年間さまよわせます。モーセは廉直な人ヨシュアを後継者として任命します。そしてついにイスラエルは,神がアブラハムに約束した地に入ることになります。
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イスラエルの民はカナンに入る聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション8
イスラエルの民はカナンに入る
イスラエルはヨシュアに率いられてカナンを征服する。エホバはご自分の民を圧迫から救い出すため,裁き人たちに権限を与える
イスラエルがカナンに入る何世紀も前に,エホバはアブラハムの子孫にその地を与えることを約束していました。そしてついにヨシュアの指導のもと,イスラエル人は約束の地を手に入れようとしています。
神はカナン人を裁き,滅びに値するとみなしました。彼らが極めて下劣な性的慣行や非道な流血行為で地を満たしたからです。したがって,イスラエル人は征服するカナン人の諸都市を完全に滅ぼすことになっていました。
しかし,その地に入る前に,ヨシュアは二人の斥候を遣わします。二人はエリコという都市に住むラハブという女性の家に宿を取ります。ラハブは斥候たちがイスラエル人であることを知っていましたが,家に迎え入れてかくまいます。ラハブはエホバがご自分の民を何度も救ったことを聞いていたので,イスラエル人の神に信仰を持っていました。それで,自分と家の者たちの命を助けることを斥候たちに誓わせます。
後にイスラエル人がカナンに入り,エリコを攻めた際,エホバは奇跡的にエリコの城壁を崩壊させます。ヨシュアの軍はなだれ込んでその都市を滅ぼしますが,ラハブとその家族の命は助けます。その後,ヨシュアは速やかな軍事行動により,6年で約束の地の大部分を征服しました。それから土地はイスラエルの部族の間で分配されます。
長年にわたって指導者として働いたヨシュアは,生涯の終わりごろに民を呼び集めます。そして,エホバが父祖たちのために行なった事柄を振り返り,エホバに仕えるよう民を促します。しかし,ヨシュアと年長者たちの死後,イスラエル人はエホバから離れて偽りの神々に仕えるようになります。およそ300年にわたり,民はエホバの律法に幾度も背きました。その間,エホバはフィリスティア人などの敵がイスラエルを圧迫することを許します。しかし,民がエホバに助けを求めると,エホバはイスラエル人を救うために全部で12人の裁き人を任命します。
聖書の「裁き人の書」に記録されている裁き人の時代は,オテニエルから始まり,歴史上最も力の強い人だったサムソンで終わります。「裁き人の書」の興奮を誘う記述の中では,次の基本的な真理が繰り返し示されています。エホバに対する従順は祝福につながり,不従順は災いをもたらすということです。
― ヨシュア記,「裁き人の書」,レビ記 18:24,25に基づく。
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イスラエル人は王を求める聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション9
イスラエル人は王を求める
イスラエルの最初の王サウルは不従順になる。神は後継者のダビデと,永遠に存続する王国のための契約を結ぶ
サムソンの時代の後,サムエルがイスラエルで預言者および裁き人として仕えました。イスラエル人は,自分たちも他の国々のように人間の王が欲しいとサムエルに訴え続けます。それは神にとって侮辱的な要求でしたが,エホバは民の求めに応じるようサムエルに指示し,サウルという謙遜な人を王として選びました。しかし,やがてサウル王はごう慢で不従順になります。エホバはサウルを王の立場から退けることにし,別の人を任命するようサムエルに告げます。選ばれたのはダビデという青年でした。とはいえ,ダビデが王となったのは何年も後のことです。
ダビデは,まだ十代のころだったと思われますが,サウルの軍にいた兄たちを訪ねました。イスラエル軍の兵士たちは皆,敵の一人の戦士におびえていました。それはゴリアテという巨人で,イスラエル人とその神を嘲弄し続けていたのです。ダビデは憤り,その巨人との勝負に応じます。そして幾つかの石と石投げだけを持って,3㍍近い身長の相手に向かって行きます。ゴリアテがあざけると,ダビデは自分のほうが強力だと答えます。エホバ神の名において戦っているからです。ダビデはたった一つの石でその巨人を打ち倒し,ゴリアテ自身の剣で首をはねます。フィリスティア軍は恐ろしくなって逃げてゆきます。
最初,サウルはダビデの勇気に感銘を受け,ダビデに軍の指揮をさせます。しかし,ダビデが幾度も成功を収めると,サウルは激しくねたむようになります。ダビデは自分の命を守るために逃げなければならず,何年ものあいだ逃亡者として生活しました。それでもダビデは,サウル王がエホバ神から任命されたことを念頭に置き,自分を殺そうとしていた王に忠節であり続けました。やがてサウルが戦いで死ぬと,程なくしてダビデはエホバの約束どおり王になります。
「わたしは必ず彼の王国の王座を定めのない時までも堅く立てる」。―サムエル第二 7:13
王となったダビデは,エホバのために神殿を建てることを切望しました。しかしエホバは,ダビデの子孫の一人が建てることになると告げます。それを行なったのはダビデの息子ソロモンでした。とはいえ,神はダビデと胸の躍るような契約を結ぶことにより,ダビデに報いを与えました。ダビデの家系が類例のない王朝となるのです。最終的に,この家系からエデンで約束された胤つまり救出者が出ることになります。その方は「油そそがれた者」を意味するメシアとして神から任命されます。エホバはそのメシアが永久に存続する王国つまり政府の支配者となることを約束しました。
ダビデは深く感謝し,神殿の建設のために大量の建築資材や貴金属を集めました。また,霊感のもとに多くの詩を作りました。生涯の終わりごろ,ダビデは「わたしによって語ったのはエホバの霊で,その言葉はわたしの舌の上にあった」と述べました。―サムエル第二 23:2。
― サムエル記第一,サムエル記第二,歴代誌第一,イザヤ 9:7,マタイ 21:9,ルカ 1:32,ヨハネ 7:42に基づく。
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ソロモンは知恵をもって支配する聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション10
ソロモンは知恵をもって支配する
エホバはソロモン王に知恵の心を与える。ソロモンの治世中,イスラエル人は比類のない平和と繁栄を享受する
もし一つの国家全体がエホバを主権者とし,エホバの律法に従ったなら,民はどのような生活を送ることになるでしょうか。その答えは,ソロモン王の40年にわたる治世中に示されました。
ダビデは死ぬ前に,息子のソロモンを後継者として選びました。神はソロモンの夢の中で,一つの願いを述べるようにと言います。ソロモンは,民を公平かつ賢明に裁くことができるように,知恵と知識を願い求めます。エホバは喜び,ソロモンに賢くて理解のある心を与えます。さらに,ソロモンが従順であり続けるなら,富と栄光と長寿を与えるとも約束しました。
ソロモンは知恵のある裁きを行なうことで有名になりました。一例として,二人の女性が一人の赤ちゃんをめぐって言い争い,どちらも自分が母親だと主張したことがありました。ソロモンは,その赤ちゃんを二つに切って女性たちに半分ずつ渡すよう命じます。片方の女性はそれに同意しますが,本当の母親はすぐに,子どもをもう一人の女性に渡してくださいと懇願します。ソロモンはそう願い出た女性が母親であることを見抜き,その女性に赤ちゃんを与えました。間もなく全イスラエルがその司法上の裁きについて聞き,人々は神の知恵がソロモンの内にあることを知ります。
ソロモンの偉業の一つは,エルサレムにエホバの神殿を建てたことです。それは壮麗な建造物で,イスラエルにおける崇拝の中心地となりました。神殿の奉献式で,ソロモンはこう祈りました。「ご覧ください,天も,いや,天の天も,あなたをお入れすることはできません。まして,私の建てたこの家など,なおさらのことです!」―列王第一 8:27。
ソロモンの名声は他の国々に広まり,遠いアラビアのシェバにまで達しました。シェバの女王は,ソロモンの栄光と富を見に,またその知恵の深さを試すためにやって来ます。女王はソロモンの知恵とイスラエルの繁栄に強い感銘を受け,この賢王を王座に就けたエホバを賛美します。エホバの祝福により,ソロモンの治世は古代イスラエルの歴史上,最も平和で繁栄した時代となりました。
残念ながら,ソロモンはエホバの知恵と調和した歩みを続けませんでした。神の命令を無視して何百人もの女性と結婚しましたが,その多くは異国の神々を崇拝していたのです。妻たちは徐々にソロモンの心をエホバから引き離し,偶像崇拝へと傾けさせました。エホバはソロモンに,王国を引き裂いて取り上げると告げます。ただし,ソロモンの父ダビデに免じて一部がその家系のために残されると言います。ソロモンの背信にもかかわらず,エホバはダビデとの王国契約に対して忠節を示し続けました。
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人々を慰め教える,霊感のもとに作られた歌集聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション11
人々を慰め教える,霊感のもとに作られた歌集
ダビデや他の人たちは崇拝に用いる歌を作る。「詩編」には,そのうち150の歌が収められている
聖書の中で最も長い書は,多くの神聖な歌を編さんしたものです。それらの歌は,約1,000年にわたる期間に作られました。「詩編」には信仰を言い表わす奥深い感動的な言葉がたくさん収められており,これまでに記されたあらゆる書物の中でも際立っています。喜び,賛美,感謝から,苦悩,悲嘆,悔い改めに至るまで,人間の様々な感情が表現されています。詩編作者たちが神を信頼し,神と近しい関係を築いていたことは明らかです。では,歌の中で取り上げられているテーマを幾つか考えてみましょう。
エホバは正当な主権者で,崇拝と賛美を受けるに値する方。「その名をエホバというあなたが,ただあなただけが全地を治める至高者である」と,詩編 83編18節は述べています。幾つかの詩は,創造のみ業 ― 星の輝く天や,地上の驚くべき生物,素晴らしい人体の造りなど ― ゆえにエホバを賛美しています。(詩編 8,19,139,148編)またある詩は,忠節な者たちを救い,保護するために行動する神として,エホバの栄光をたたえています。(詩編 18,97,138編)さらに,虐げられている者に安らぎをもたらし,邪悪な者を処罰する公正な神としてエホバを高めている詩もあります。―詩編 11,68,146編。
エホバはご自分を愛する者たちを助け,慰める。「詩編」の中で最も有名な詩は,おそらく23編でしょう。作者のダビデはエホバを,ご自分の羊を導き,守り,世話する愛情深い羊飼いとして描いています。詩編 65編2節は神の崇拝者たちに,エホバが「祈りを聞かれる方」であることを思い起こさせています。重大な悪行を犯してしまった人の多くは,詩編 39編と51編に大いに慰められてきました。その中でダビデは,深刻な過ちに対する心からの悔い改めを述べ,エホバが許してくださるという確信を言い表わしています。詩編 55編22節は,エホバを信頼し,その方に個人的な重荷をすべてゆだねるよう促しています。
エホバはメシアの王国を通して世界を一変させる。「詩編」には,予告された王であるメシアに明確に当てはまる句がたくさんあります。詩編 2編は,その支配者が敵対する邪悪な諸国民を滅ぼすことを預言しています。詩編 72編は,その王が飢えや不公正や虐げを終わらせることを明らかにしています。詩編 46編9節によれば,神はメシアの王国を通して戦争を終わらせ,あらゆる兵器を滅ぼします。詩編 37編にあるとおり,邪悪な者たちは除き去られますが,義なる者たちは地上で永久に暮らし,世界的な平和と一致を楽しみます。
― 「詩編」に基づく。
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生活に役立つ神からの知恵聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション12
生活に役立つ神からの知恵
「箴言」は霊感のもとに記された助言を集めたもので,大半がソロモンによって書かれ,日々の生活に導きを与えている
エホバは知恵に富む支配者でしょうか。この疑問に明確な答えを出す一つの方法は,エホバの助言を考察することです。その助言は役に立つでしょうか。それを当てはめると,意義のある良い人生を送れるようになるでしょうか。賢王ソロモンは,幾百もの箴言つまり格言を記しました。それらは生活のほとんどあらゆる面に言及しています。幾つか例を考えましょう。
神に依り頼む。信頼は,エホバとの良い関係を持つ上で欠かせません。ソロモンはこう書きました。「心をつくしてエホバに依り頼め。自分の理解に頼ってはならない。あなたのすべての道において神を認めよ。そうすれば,神ご自身があなたの道筋をまっすぐにしてくださる」。(箴言 3:5,6)神の導きを求め,神に従うことによって依り頼むなら,意義深い人生を送れます。そのような歩みにより,人は神の心を歓ばせることができ,エホバが敵対者であるサタンの提起した論争に対して返答することに貢献できるのです。―箴言 27:11。
知恵をもって人と接する。夫や妻,子どもたちに対する神の助言は,今日かつてないほど役に立っています。神は夫たちに,「あなたの若い時の妻と共に歓べ」と告げ,妻だけを愛し続けるようにと諭しています。(箴言 5:18-20)結婚している女性は「箴言」の中に,夫や子どもに称賛される有能な妻に関する生き生きとした描写を見いだすことができます。(箴言 31章)子どもに対しては,親に従うようにという助言があります。(箴言 6:20)この書はさらに,友情の大切さを示しています。人は孤立すると利己的になるからです。(箴言 18:1)わたしたちは友人から良くも悪くも影響を受けるので,友を賢く選ぶ必要があります。―箴言 13:20; 17:17。
知恵をもって自分と向き合う。「箴言」は,アルコールの乱用を避けること,健全な感情を育み有害な感情と闘うこと,勤勉に働くことなどに関する貴重な助言を与えています。(箴言 6:6; 14:30; 20:1)また,神の助言を無視して人間の判断に頼ると悲惨な結果を招くと警告しています。(箴言 14:12)さらに,「命は[心]に源を発している」ということを思い起こさせ,心を腐敗的な影響から守るよう促しています。―箴言 4:23。
こうした助言に従うならばより良い人生が送れるということを,世界中の幾百万という人々が実感してきました。結果としてそれらの人たちは,エホバを支配者として受け入れるべき十分の理由があると感じています。
― 「箴言」に基づく。
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良い王たちと悪い王たち聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション13
良い王たちと悪い王たち
イスラエルは分裂する。多くの王がイスラエル人を治めるが,ほとんどは神に不忠実だった。エルサレムはバビロニア人に滅ぼされる
エホバが予告したとおり,ソロモンが清い崇拝からそれた後,イスラエルは分裂します。ソロモンの子で後継者のレハベアムは無情な人でした。そのため,イスラエルの12部族のうち10部族が反逆し,北のイスラエル王国を形成します。エルサレムのダビデの王統に引き続き忠節を示した2部族は,南のユダ王国となります。
どちらの王国の歴史も波乱に富んでいましたが,それは主に信仰の欠けた不従順な王たちのせいでした。イスラエル王国の王たちは最初から偽りの崇拝を促進したため,同王国はユダ王国よりも悪い状態でした。死者を復活させることさえしたエリヤやエリシャをはじめ,預言者たちが強力な業を行なったにもかかわらず,イスラエルは邪悪な歩みを繰り返しました。ついに神は,北王国がアッシリアに滅ぼされることを許します。
ユダはイスラエルより100年以上長く存続しましたが,やはり神から処罰を受けます。ユダの王たちの中で,神の預言者たちの警告に応じ,民をエホバに立ち返らせようとした人はごくわずかでした。例えばヨシヤ王は,ユダを偽りの崇拝から清める運動に着手し,エホバの神殿を修復しました。モーセを通して与えられた神の律法の原本が発見された時,ヨシヤは深く心を動かされ,改革をいっそう強力に推し進めました。
しかし残念なことに,ヨシヤの後継者たちは良い模範に倣いませんでした。そのためエホバは,バビロンがユダを征服し,エルサレムとその神殿を滅ぼすことを許します。生き残った人たちはバビロンで捕囚の身となりました。神はその状態が70年間続くことを予告しました。ユダの地はその間ずっと荒廃していましたが,やがて民は約束どおり故郷に帰ることを許されます。
とはいえ,約束の救出者,予告されていたメシアが統治するようになるまで,ダビデの家系の王が治めることはなくなります。エルサレムでダビデの王座に座した王のほとんどは,不完全な人間には支配する資格がないということを示しました。真に資格を有するのはメシアだけです。それゆえエホバは,ダビデの家系に属する一連の王たちの最後の一人にこう告げました。「冠を取り外せ。……それは法的権利を持つ者が来るまで,決してだれのものにもならない。わたしはその者にこれを必ず与える」。―エゼキエル 21:26,27。
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神は預言者たちを通して語る聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション14
神は預言者たちを通して語る
エホバは預言者たちを任命して,裁きや清い崇拝,またメシアの希望に関する音信を伝えさせる
イスラエルとユダの王たちの時代に,特別な役割を担う人たちが活躍しました。それは預言者たちです。際立った信仰と勇気を示した人たちで,神からの宣告を伝えました。神の預言者たちが取り上げた重要なテーマを四つ考えましょう。
1. エルサレムの滅び。神の預言者たち ― とりわけイザヤとエレミヤ ― は,エルサレムが滅ぼされて見捨てられることをずっと前から警告し始めました。その都市がなぜ神の怒りを招いたのか,生々しい表現で明らかにしています。エルサレムはエホバを代表していると主張していましたが,偽りの宗教の慣行,腐敗,暴力行為などにより,その主張が真実ではないことが示されました。―列王第二 21:10-15。イザヤ 3:1-8,16-26。エレミヤ 2:1–3:13。
2. 清い崇拝の復興。70年間の捕囚の後,神の民はバビロンから解放されます。そして荒れ果てた故郷に戻り,エホバの神殿をエルサレムに再建します。(エレミヤ 46:27。アモス 9:13-15)イザヤは,バビロンを打ち倒して神の民に清い崇拝を復興させる征服者の名前 ― キュロス ― を,約200年も前に予告しました。それだけでなく,キュロスの異例の戦術についても詳しく述べていました。―イザヤ 44:24–45:3。
3. メシアの到来と経験する事柄。メシアはベツレヘムという町で生まれることになります。(ミカ 5:2)謙遜にも,ろばに乗ってエルサレムに入ります。(ゼカリヤ 9:9)穏やかで親切ですが,大勢の人たちから嫌われ,退けられます。(イザヤ 42:1-3; 53:1,3)そして,悲惨な死に方をすることになります。メシアの命はそれで完全に終わってしまうのでしょうか。そうではありません。メシアの犠牲により,多くの人々の罪が許されることになっているからです。(イザヤ 53:4,5,9-12)メシアの復活によってのみ,そのことが成し遂げられます。
4. メシアによる地上の統治。不完全な人間は平和な支配を行なうことができませんが,メシアなる王は「平和の君」と呼ばれます。(イザヤ 9:6,7。エレミヤ 10:23)その統治のもとで,すべての人は互いに平和な関係を築き,あらゆる動物とも平和に暮らします。(イザヤ 11:3-7)病気は存在しなくなります。(イザヤ 33:24)死さえも永久に呑み込まれます。(イザヤ 25:8)メシアの統治期間中,死の眠りに就いていた人々が地上に復活します。―ダニエル 12:13。
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捕囚にされた預言者が将来を垣間見る聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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セクション15
捕囚にされた預言者が将来を垣間見る
ダニエルは神の王国とメシアの到来について預言する。バビロンが陥落する
エルサレムが滅ぼされる前に捕囚としてバビロンへ連れて行かれた若者ダニエルは,神に対する際立った忠誠を示しました。征服されたユダ王国から他の幾人かのユダヤ人もダニエルと共に捕囚として連れて行かれますが,皆ある程度の自由を与えられます。バビロンで過ごした長い生涯の間,ダニエルは神から大いに祝福されました。ライオンの坑の中で死を免れたばかりか,幻を与えられて遠い将来を垣間見ることさえしました。ダニエルが記した極めて重要な幾つかの預言は,メシアとその統治に焦点を当てています。
ダニエルはメシアがいつ到来するかを知る。ダニエルは,神の民が待ち望む「指導者であるメシア」がいつ到来するかを告げられます。それは,エルサレムの城壁を修復して建て直せという命令が発せられてから69週年後です。一週間が7日なのに対し,一週年は7年です。その命令が出されたのは,ダニエルの時代のずっと後の西暦前455年でした。その時から69「週」つまり483年を数えると,西暦29年になります。その年に何が起きたかは,この冊子の続く部分で取り上げられます。ダニエルはさらに,贖罪のためにメシアが「断たれる」,つまり処刑されることを予見します。―ダニエル 9:24-26。
メシアは天で王となる。天そのものの特異な幻の中で,ダニエルは「人の子のような者」と呼ばれるメシアがエホバのみ座に近づくのを見ます。エホバはその者に「支配権と尊厳と王国」を与えます。その王国は永久に存続します。ダニエルはさらに,メシア王国に関する,胸の躍るような事柄を知ります。王は,「至上者の聖なる者たち」と呼ばれる一群の人々と共に統治を行なうのです。―ダニエル 7:13,14,27。
神の王国は世の諸政府を滅ぼす。神はダニエルに,バビロンの王ネブカドネザルを当惑させた夢を解き明かす能力を与えます。王は夢の中で巨大な像を見ますが,その頭は金,胸と腕は銀,腹と股は銅,脚部は鉄,足は鉄と粘土が混ざり合ったものでできていました。山から切り出された石が,もろい足のところを打って,像を粉々に砕きます。ダニエルは,像の各部が一連の世界強国を表わしていることを説明します。それらは,金の頭であるバビロンから始まり,長きにわたって順に台頭します。この邪悪な世の最後の強国の時代に,神の王国が行動を起こすことをダニエルは予見します。神の王国は世のすべての政府を打ち砕き,その後永久に統治します。―ダニエル 2章。
老齢になったダニエルは,バビロンの陥落を目にします。預言者たちが予告していたとおり,キュロス王がその都市を征服したのです。それから程なくして,ユダヤ人たちはついに捕囚から解放されます。故郷が70年間にわたって荒廃することが予告されていましたが,まさしくその期間が終了した時に故国に戻りました。忠実な総督や祭司や預言者たちの指導のもと,ユダヤ人たちはやがてエルサレムを建て直し,エホバの神殿を修復します。では,483年間が経過した後に何が起こるのでしょうか。
― ダニエル書に基づく。
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年表聖書 ― どんなメッセージを伝えていますか
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年表
「初めに……」
西暦前4026年 アダムの創造
西暦前3096年 アダムの死
西暦前2370年 洪水の水が降り注ぐ
西暦前2018年 アブラハムの誕生
西暦前1943年 アブラハム契約
西暦前1750年 ヨセフは奴隷として売られる
西暦前1613年以前 ヨブの試練
西暦前1513年 エジプトからの脱出
西暦前1473年 イスラエルはヨシュアに率いられてカナンに入る
西暦前1467年 カナンの大半の征服が完了する
西暦前1117年 サウルは王として油をそそがれる
西暦前1070年 神はダビデと王国に関する約束を結ぶ
西暦前1037年 ソロモンは王となる
西暦前1027年 エルサレムの神殿が完成する
西暦前1020年ごろ 「ソロモンの歌」が書き終えられる
西暦前997年 イスラエルは二つの王国に分裂する
西暦前717年ごろ 「箴言」の編さんが完了する
西暦前607年 エルサレムは滅ぼされる。バビロン捕囚が始まる
西暦前539年 バビロンはキュロスによって征服される
西暦前537年 捕囚になっていたユダヤ人がエルサレムに帰還する
西暦前455年 エルサレムの城壁が建て直される。69週年が始まる
西暦前443年以後 マラキは預言の書を書き終える
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