災害の下で喜びを保つ

昨年6月3日の大火砕流で43人の犠牲者を出した雲仙普賢岳は，1年以上たった今でも，その不穏な活動をやめていません。毎日新聞の報道によると，今年の5月の時点でも，1,946世帯7,609人が依然として避難しており，5,135人が仮設住宅で暮らしています。長期に及ぶ避難生活はだれにとっても，容易ではありません。長崎新聞の報じるところによると，終息の気配の見えない噴火災害や，長引く仮設住宅暮らしなどが誘因となって，避難住民の中に自殺者まで出ているとのことです。

安否を気遣う

災害直後，島原地方に親族，友人を持つ人々は，特にその安否を気遣いました。日本のエホバの証人は自分たちの信仰の仲間の消息を案じ，すぐに救援委員会を組織しました。ものみの塔協会の日本支部からも，二人の担当者が島原地方を訪れ，善後策を検討しました。支部の代表者たちは，何よりも神の「王国と神の義をいつも第一に求め」続けるよう救援委員と避難住民を励ましました。（マタイ 6:33）救援活動全体を通じて，この点が強調されました。

島原会衆に交わる42名の伝道者のうち，30名が避難を余儀なくされました。ほとんど着の身着のままで，不自由な暮らしをすることになったのです。会衆の人々が共に聖書を学ぶために用いていた立派な王国会館は警戒区域に入り，使用できなくなりました。

着の身着のままで避難した人々は，毎年夏に開かれるクリスチャンの大会に着て行けるきちんとした服もない有様でした。すぐに日本中のエホバの証人の会衆に呼びかけがなされ，救援基金の口座が開設されました。しかし，1か月もたたないうちに，地元の救援委員は十分すぎる額の基金が寄せられたため，送金をストップするよう要請を出さなければなりませんでした。この基金は当初，職を失った14人の人々や仮設住宅での不自由な生活に甘んじている人々の生活を助けるために用いられました。

王国会館の建設

島原会衆の区域は警戒区域に指定された水無川流域の地区により二分されてしまいました。その結果，島原会衆の成員で水無川の南に住む人々は，隣の口之津会衆と交わるようになり，他の成員は北隣の瑞穂会衆の王国会館で集会を開くようになりました。その後，島原半島の諸会衆の区域が調整され，口之津会衆がなくなり，新たに有家会衆が発足しました。

霊的に人々を養うために，島原会衆および有家会衆の王国会館を備えるための計画がすぐに始まりました。ものみの塔協会の指導の下で救援基金を用いて，まず有家会衆の区域に王国会館が建てられることになりました。王国会館の建設用地として候補に挙がった土地は，排他的な感情の強い区域にあります。その土地は，いわゆるキリシタンの起こした島原の乱を江戸幕府が鎮圧した後，わざわざ“信仰の固い”仏教徒を入植させた土地だったのです。そうした背景もあって，近隣からの反対や偏見がありました。しかし，神は人々の心を動かし，ついに今年の6月4日から7日の4日間をかけて，立派な速成の王国会館がその地に建てられました。

喜びをもって仕える

こうしたクリスチャンの救援活動ならびに愛ある気遣いは，島原のエホバの証人の心を動かしました。全国からの救援基金に加えて，温かい手紙が3,000通以上寄せられました。こうした人間味のある親切に接して，島原会衆の一成員は「今回のような災害に遭っても，感謝すべき理由は数多くあります。いつも積極的な見方を持つようにと協会が教えてくださっていたことがどういう意味か身をもって経験できました。エホバとその組織に感謝しています」と述べています。

島原および有家会衆そして島原半島の他の諸会衆も同様の感謝の気持ちを表わしました。今年の4月に日本全国でエホバの民が特別にその奉仕活動を増し加えたとき，有家会衆の20名の成員，そして島原会衆の28名の成員中バプテスマを受けた成員すべてが全時間の奉仕活動に携わりました。キリストの死の記念式には，有家会衆に52名，島原会衆に107名が出席しました。

仮設住宅の仮住まいにあっても，これらの人々は喜びを失いませんでした。大勢の人々が避難生活を余儀なくされた昨年6月以来，島原･有家両会衆の正規開拓者の数が7名増加したことは，災害に直面したエホバの証人の精神態度を如実に示しています。確かに「エホバの喜びはあなた方のとりで」です。―ネヘミヤ 8:10。