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赤ちゃんのモーセはこうして救われたわたしの聖書物語の本
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第28話
赤ちゃんのモーセはこうして救われた
かわいい赤ちゃんが,女の人の指をつかんで泣いていますね。この赤ちゃんはモーセです。きれいな女の人はだれでしょうか。この人はファラオのむすめ,つまりエジプトの王女です。
モーセの母親は,赤ちゃんをエジプト人に殺されたくなかったので,生まれてから三か月のあいだかくしました。でも,モーセが見つかることはわかっていたので,母親はその子を救うために次のようなことをしました。
かごを持って来て,それに水がしみこまないように工夫しました。それからモーセをその中に入れ,ナイル川の岸べのたけの高い草のあいだに置いたのです。モーセの姉のミリアムは,その近くにいてそれがどうなるかを見とどけるように言いつけられました。
まもなく,ファラオのむすめがナイル川へ水浴びにやって来ました。そしてふと,たけの高い草のあいだにかごを見つけました。それで王女はめし使いを呼び,『あのかごを取ってきておくれ』と言いました。王女がかごをあけると,中にはとても美しい赤ちゃんがいました。かわいい小さなモーセは泣いていました。王女は赤ちゃんがかわいそうになり,その子を殺させたくないと思いました。
するとミリアムがやって来ました。この絵の中にミリアムがいますね。ミリアムはファラオのむすめに,『この赤ちゃんに乳を飲ませるイスラエル人の女を呼んでまいりましょうか』とたずねました。
『お願い,そうしてちょうだい』と,王女は言いました。
そこで,ミリアムはすぐに走って行って母親に知らせました。モーセの母親が王女のもとに来ると,王女は,『お金をあげるから,この子を連れていって,乳を飲ませておくれ』と言います。
こうして,モーセの母親は自分の子供の世話をしました。そして,モーセが大きくなってから,ファラオのむすめのもとへ連れて行きました。王女はモーセを養子にしました。このようにして,モーセはファラオの家で成長するようになったのです。
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モーセはなぜにげたのかわたしの聖書物語の本
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第29話
モーセはなぜにげたのか
ごらんなさい,モーセがエジプトからにげて行きます。モーセを追いかける者たちが見えますか。その人たちはなぜモーセを殺そうとしているのでしょうか。その理由をさぐってみましょう。
モーセは,エジプトの支配者であるファラオの家で成長しました。モーセはたいへん知恵のあるえらい人になりました。モーセは自分がエジプト人でないこと,自分のほんとうの親はイスラエル人のどれいであることを知っていました。
40歳になっていたモーセは,ある日,自分の民の様子を見に行こうと決心しました。イスラエル人はとてもひどいあつかいを受けていました。そして,エジプト人がひとりのイスラエル人のどれいを打ちたたいているのを見ました。モーセはあたりを見まわして,だれも見ていなかったので,そのエジプト人をなぐりました。すると,そのエジプト人は死んでしまいました。モーセはその死体を砂の中にかくしました。
次の日,モーセは再び自分の民を見に出かけました。イスラエル人がこれ以上どれいのままでいなくてもよいように助けられると思ったのです。そのとき,モーセはふたりのイスラエル人がけんかをしているのを見ました。それで,モーセは,まちがっている悪いほうの人に,『あなたはなぜ自分の兄弟をなぐるのですか』と言いました。
その人は,『だれがおまえをわれわれの支配者,また裁き人としたのか。おまえは,あのエジプト人を殺したように,わたしをも殺すつもりなのか』と言いました。
そこでモーセは心配になりました。自分がエジプト人にしたことに人々が気づいていたからです。ファラオでさえそのことを耳にしました。こうして,モーセはエジプトからにげねばならなくなったのです。
モーセはエジプトを去って,遠いミデアンの地へ行きました。そこでエテロの家族に会い,そのむすめのチッポラと結こんしました。モーセは羊かいになって,エテロの羊の世話をしました。そして40年のあいだミデアンの地に住み,いまや80歳になりました。そうしたある日,羊の世話をしていたときに,モーセの一生を変える,あるおどろくべきことが起こりました。つぎにそれが何かを見ましょう。
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燃えるしばわたしの聖書物語の本
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第30話
燃えるしば
モーセは,羊に食べさせる草をさがしに,はるばるホレブ山まで行きました。そして,そこで燃えているしばを見ました。ところが,それは燃えつきてしまわないのです。
『これは不思議だ。近くへ行ってよく見よう』とモーセは考えました。モーセが近づくと,しばの中から声がして,こう言いました。『それより近づいてはなりません。サンダルをぬぎなさい。あなたは聖なる所に立っているからです』。モーセは顔をおおいました。神がみ使いによって語っておられたからです。
それから神は,こう言われました。『わたしは,わたしの民がエジプトで苦しんでいるのを見ました。それで,民を解放しようと思います。そして,あなたは,わたしの民をエジプトから導き出すためにわたしがつかわす者です』。エホバはご自分の民を美しいカナンの地へ連れて行こうとしておられました。
しかし,モーセは言いました。『わたしは取るに足りない者で,そのようなことはとてもできません。たとえ行ったとしても,イスラエル人は,「だれがあなたをつかわしたのか」と言うでしょう。そうしたら,わたしは何と言えばよいのでしょう』。
エホバはこうお答えになりました。『あなたはこう言いなさい。「アブラハムの神,イサクの神,ヤコブの神エホバがわたしをつかわした」と。これはわたしの永遠の名前です』。
『でも,あなたがわたしをおつかわしになったと言っても,人々が信じなかったらどうしましょうか』とモーセは言いました。
『あなたは手に何を持っていますか』と神はたずねました。
『つえです』とモーセは答えました。
『それを地面に投げなさい』と神は言われました。モーセがそのとおりにすると,つえはへびになりました。それからエホバはモーセに言われました。『手を長い衣の中へ入れなさい』。モーセが,そのとおりにしてから手を取り出すと,手は,雪のように白くて,おそろしいらい病にかかったようになっていました。ついでモーセに,三番めの奇跡を行なう力をおあたえになってから,最後にエホバは,『これらの奇跡を行なうなら,イスラエル人は,わたしがあなたをつかわしたことを信じるでしょう』とおっしゃいました。
そののち,モーセは,家に帰ってエテロに言いました。『どうか,わたしがエジプトにいるわたしの親族の様子を見に行くのをお許しください』。それでエテロはモーセに別れを告げ,モーセはエジプトへ帰って行きました。
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モーセとアロンはファラオと会うわたしの聖書物語の本
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第31話
モーセとアロンはファラオと会う
モーセはエジプトへもどって,兄のアロンに奇跡のことをすっかり話しました。モーセとアロンがそれらの奇跡を見せると,すべての人は,エホバがふたりとともにおられることを信じました。
それからモーセとアロンはファラオに会いに行き,ファラオにこう告げました。『イスラエルの神エホバは,「わたしの民を三日のあいだ自由にして,かれらがこう野でわたしを崇拝できるようにしなさい」と言われます』。ところが,ファラオは,『わたしはエホバを信じていない。イスラエルを自由になどするものか』と答えました。
イスラエル人が,エホバを崇拝するために仕事を休みたいと願っていたので,ファラオはおこって,かれらをもっと働かせました。イスラエル人は,自分たちが苦しめられているのをモーセのせいにしました。モーセは悲しくなりました。しかし,エホバはモーセに心配しなくてもよい,とおっしゃり,こう言われました。『わたしは,ファラオがわたしの民を出て行かせるようにします』。
モーセとアロンは再びファラオに会いに行きました。このたびは,ふたりは奇跡を行ないました。アロンがつえを投げると,それは大きなへびになりました。しかし,ファラオのがわの知恵のある者たちもつえを投げると,へびが現われました。ところが,ごらんなさい,アロンのへびは,その知恵のある者のへびを食べているではありませんか。それでもファラオはイスラエル人を行かせようとはしませんでした。
それで,エホバがファラオに教訓をおあたえになる時が来ました。あなたは,エホバがどのようにしてそうなさったと思いますか。エジプトに十の災い,つまり大きななやみをもたらされたのです。
いくつかの災いが起きたあと,ファラオはモーセをめし寄せて,こう言いました。『災いを止めてくれ。そうすれば,わたしはイスラエルを去らせる』。ところが,災いがやむと,ファラオは考えを変え,イスラエル人を行かせようとしませんでした。しかし,ついに,10番めの災いが起きたとき,ファラオはイスラエル人を去らせました。
あなたは十の災いのひとつひとつを知っていますか。次のページを開いてそれを学びましょう。
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十の災いわたしの聖書物語の本
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第32話
十の災い
この絵を見てください。それぞれの絵は,エホバがエジプトに下された災いを示しています。最初の絵は,アロンがナイル川をつえで打っているところです。アロンがそのようにすると,川の水は,血に変わってしまいました。魚は死んで,ナイル川はくさくなりはじめました。
つぎに,エホバはナイル川からかえるを上らせました。かえるは,かまど,なべ,人々の寝どこなどありとあらゆる所に上りました。かえるが死んで,エジプト人たちがその死がいを集めたところ,それは山のようになりました。エジプトの国はかえるの死がいのためにくさくなりました。
それからアロンはつえで地面を打ちました。すると,ちりはぶよになりました。ぶよというのは小さな飛ぶ虫で,人をさします。ぶよはエジプトの地の三番めの災いになりました。
残りの災いは,エジプト人だけにのぞんで,イスラエル人にはのぞみませんでした。四番めの災いでは,あぶがすべてのエジプト人の家に群がりました。五番めの災いは動物にのぞみました。エジプト人の家畜,羊,やぎの多くが死にました。
そのつぎに,モーセとアロンは,すすを取って空中に投げました。それは,人間や動物について,はれものになりました。これは六番めの災いでした。
そのあと,モーセは空にむかって手を上げました。すると,エホバはかみなりを起こし,ひょうを降らせました。それはエジプトでそれまでに降ったひょうのうちでいちばんひどいものでした。
八番めの災いはいなごの大群でした。それ以前にもそれ以後にも,そんなに多くのいなごが出たことはありませんでした。いなごは,ひょうでだめにならなかったものをすっかり食べてしまいました。
九番めの災いは暗やみでした。三日のあいだ,こい暗やみが国をおおいました。でも,イスラエル人たちが住んでいた所には光がありました。
最後に,神はご自分の民に,子やぎか子羊の血を,戸口にある柱にはねかけることをお命じになりました。それから神のみ使いはエジプトを通り過ぎました。み使いは,血を見たなら,その家の人を殺しませんでした。しかし,戸口の柱に血のついていない家は一けんも見のがさないで,人間と動物の初子を殺しました。これが10番めの災いでした。
その最後の災いののち,ファラオはイスラエル人に出て行くように命令しました。神の民は出かける用意をすっかり整えていました。そして,その夜に,イスラエル人はそろってエジプトから出て行きました。
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紅海をわたるわたしの聖書物語の本
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第33話
紅海をわたる
ごらんなさい,今起きていることを! 紅海の上につえを差しのべているのは,モーセです。モーセといっしょに無事にこちらの岸に来ているのは,イスラエル人です。しかし,ファラオとその全軍は海でおぼれています。では,どうしてこうなったのかを調べてみることにしましょう。
前に学んだように,神がエジプト人に10番めの災いを下されたあと,ファラオは,エジプトを出て行くようイスラエル人に命じました。大勢の女や子供たちのほかに,およそ60万人のイスラエル人の男子が,エジプトを出て行きました。そればかりか,イスラエル人以外の人で,エホバを信じるようになっていた大勢の人々も,イスラエル人といっしょに出かけたのです。その人々はみな,羊や やぎや家畜を連れて行きました。
出かける前に,イスラエル人はエジプト人に衣服とか,金や銀で作ったものを求めました。エジプト人は,最後の災いを受けてたいへんおそれていたので,イスラエル人が求めるものは何でもあたえました。
数日後,イスラエル人たちは紅海にとう着し,そこで休みました。いっぽう,ファラオとその家来たちは,イスラエル人を去らせたことをくやしく思うようになり,『われわれはどれいを去らせてしまった』と言いました。
それで,ファラオはもう一度考えを変えました。ただちに戦車と兵士を用意させたのです。そして,600台の特別な戦車ばかりか,エジプト中のほかの戦車を使ってイスラエル人を追いかけはじめました。
ファラオとその軍隊が追いかけて来るのを見たとき,イスラエル人たちはたいへんおそれました。にげる所はどこにもありませんでした。いっぽうは紅海で,べつの方向からはエジプト人がせまってきていました。しかし,エホバはご自分の民とエジプト人のあいだに雲を置かれました。ですからエジプト人はイスラエル人が見えず,こうげきすることができませんでした。
それからエホバはモーセに,つえを紅海の上に差しのべるよう命令されました。モーセがそのとおりにすると,エホバは強い東風を起こさせました。そのため海の水はわけられて,水は両側にとどまりました。
それで,イスラエル人たちは海の底のかわいた所を進みはじめました。何百万もの人々と動物が海のむこう岸まで無事にわたるには,何時間もかかりました。やっと,エジプト人たちは,イスラエル人を再び見ることができました。自分たちのどれいがにげているのです! エジプト人たちはそのあとを追って海の中へとっ進しました。
すると,神は,エジプト人たちの戦車の車輪がはずれるようになさいました。エジプト人たちはひじょうにおそれて,大声でこうさけびはじめました。『エホバはイスラエル人のためにわたしたちと戦っているのだ。ここから出よう』。しかし,それは手おくれでした。
そのとき,エホバは,絵にあったように,つえを紅海の上に差しのべるようにとモーセにお命じになりました。モーセがそのとおりにすると,水のかべはもとにもどって,エジプト人と戦車をおおいはじめたのです。軍隊全部がイスラエル人のあとを追って海にはいっていました。ですから,ひとりのエジプト人も生き残れませんでした。
神の民たちはみな救われて,どんなにかうれしかったでしょう。男たちは,『エホバはすばらしい勝利をおさめられた。エホバは馬と乗り手たちを海に投げこまれた』という,エホバへの感謝の歌をうたいました。モーセの姉のミリアムはタンバリンを取りました。そして,すべての女たちはタンバリンを持ってミリアムに続きました。男たちと同じように,『エホバはすばらしい勝利をおさめられた。エホバは馬と乗り手たちを海に投げこまれた』とうたいながら,女たちは喜びのあまりおどりました。
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新しい食べ物わたしの聖書物語の本
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第34話
新しい食べ物
人々は地面から何を拾い集めているのでしょうか。それは,白くて,うすくて,こわれやすい,しものようなものです。でも,しもではありません。それは食べ物なのです。
イスラエル人がエジプトを去ってから,ほんのひと月しかたっていません。イスラエル人はこう野にいました。こう野では食物がほとんど育ちません。それで,人々はこのように不平を言います。『エホバはわたしたちをエジプトで殺してくださったらよかったのに。なんといっても,エジプトには,ほしい食べ物だけはなんでもあった』。
するとエホバは,『食物を空から降らせよう』とおっしゃって,そのようになさいます。あくる朝,降ったこの白いものを見て,イスラエル人たちはたがいに,『これはなんだろう』と言い合います。
モーセは言います。『これは,エホバがあなたがたにおあたえになった食物です』。人々はそれをマナと呼びました。マナは,はちみつを入れて作ったうすいケーキのような味がしました。
『めいめい自分が食べられる分だけ拾いなさい』とモーセは人々に言います。ですから,人々は毎朝マナを拾うのです。日ざしが強くなると,地面に残ったマナはとけてしまいます。
モーセは,また,『マナを次の日までとっておいてはなりません』と言います。ところが,ある人たちはそれに聞き従いませんでした。するとどうなるのでしょうか。次の日には,とっておいたマナは,虫がいっぱいついていて,くさくなっています。
しかし,エホバが人々に,二倍のマナを拾うように命令された日が,一週間のうちに一日だけあります。それは第六日めです。エホバは,七日めには何も降らせないので,マナの一部を次の日まで残しておくようにとおっしゃいます。七日めまでマナをとっておいても,それは少しも虫がつかず,くさくもなりません。これはもう一つの奇跡です。
イスラエル人がこう野にいるあいだ中ずっと,エホバはかれらをマナで養われます。
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エホバは律法をおあたえになるわたしの聖書物語の本
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第35話
エホバは律法をおあたえになる
エジプトを去って二か月ほどのちに,イスラエル人たちはシナイ山にやって来ました。シナイ山はホレブとも呼ばれます。そこは,エホバが燃えるしばの中からモーセに語られたのと同じ場所です。イスラエル人たちはそこにテントを張って,しばらくのあいだとどまります。
人々を下に待たせて,モーセはシナイ山に登ります。山の頂上で,エホバはモーセに,イスラエル人がご自分に聞き従って,ご自分の特別な民になることを望んでいることを話されます。モーセは山を降りて,エホバがおっしゃったことをイスラエル人に伝えます。人々は,神の民になりたいので,エホバに聞き従うと言います。
そこでエホバは不思議なことを行なわれます。山の頂上から煙を出させ,大きなかみなりを起こされます。そして,人々にこう話されます。『わたしは,あなたがたをエジプトから連れ出した,あなたがたの神エホバです』。それから次のようにお命じになります。『あなたがたは,わたし以外の他のどんな神々をも崇拝してはなりません』。
神はさらに九つのいましめ,つまり律法をイスラエル人におあたえになります。人々はとてもおそれて,モーセにこう言います。『もし,神がわたしたちにお話しになると,わたしたちは死ぬかもしれないので,あなたがわたしたちに話してください』。
のちにエホバはモーセにこう命令されました。『山のわたしのところまで来なさい。わたしはあなたに,民の守るべき律法をわたしがしるした二枚の石の板をあたえよう』。それでモーセは再び山に登って行きます。モーセは山で40日40夜すごします。
神はご自分の民のために,とてもたくさんの律法を考えておられます。モーセはそれらの律法を書きとめます。神はまた,モーセに二枚の石の板をおあたえになります。その上には,すべての民に語られた十の律法が,神ご自身によって書きしるされています。その十の律法のことを十戒と言います。
十戒は大切な律法です。でも,神がイスラエル人におあたえになる,ほかの多くの律法も大切です。それらの律法の一つに,次のような律法があります。『あなたは,心をこめ,思いをこめ,たましいをこめ,そして力をこめて,あなたの神エホバを愛さなければなりません』。もう一つ,このような律法もあります。『あなたは,隣人を自分自身のように愛さなければなりません』。神のみ子であるイエス・キリストは,この二つの律法を,エホバがご自分の民イスラエルにおあたえになった最も重要な律法であるとおっしゃいました。あとで,わたしたちは,神のみ子とその教えについてたくさん学びます。
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金の子牛わたしの聖書物語の本
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第36話
金の子牛
おや,おや,人々はいま何をしているのでしょう。人々は,子牛に向かって祈っているではありませんか。どうしてそんなことをしているのでしょう。
モーセが長いあいだ山へ行ったきり帰って来ないので,人々は言います。『モーセはどうなってしまったかわからない。だから,この土地からわたしたちを導き出してくれる神を作ろうではないか』。
『よろしい。みなさんの金の耳輪をわたしのところへ持ってきてください』とアロンは言います。そして,人々が持ってきた金の耳輪をとかして,金の子牛を作ります。すると,人々は,『これこそ,エジプトから導き出してくださった,わたしたちの神だ!』と言い,大きな集まりを開いて,金の子牛を崇拝します。
エホバはそれをごらんになって,たいへん立腹されます。それでモーセにこう言われます。『いそいで山を降りなさい。民はひじょうに悪いことをしています。民はわたしの律法をわすれて,金の子牛にひれふしているのです』。
モーセはいそいで山を降ります。そして,近くに行ってモーセが見たのはこのような光景です。人々は金の子牛のまわりで歌ったり,おどったりしています。モーセはとてもおこって,律法の書いてある二枚の石の板を地面に投げます。石の板はこなごなにくだけます。それからモーセは金の子牛を取って,とかします。そして,それをひいて粉にします。
人々はほんとうに悪いことをしました。それでモーセはある男たちに,つるぎを取るように命令します。『金の子牛を崇拝した悪い者たちは死ぬのです』とモーセは言います。それで,3,000人がその男たちに打たれて死にます。このことから,ほかのいつわりの神々ではなく,エホバだけを崇拝するよう気をつけなければならない,ということがわかりますね。
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崇拝のための天幕わたしの聖書物語の本
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第37話
崇拝のための天幕
この建物は何でしょう。これは,エホバを崇拝するための特別な天幕で,幕屋とも呼ばれます。イスラエル人たちは,エジプトを出てから一年のちにこの天幕を完成しました。これを作ることはだれの考えだったのでしょうか。
それはエホバがお考えになったことでした。モーセがシナイ山の上にいたあいだに,エホバは,天幕をどのように作るかをモーセにお告げになりました。エホバは,すぐにくずしてたためるように作りなさい,とおっしゃいました。ですから,天幕をばらばらにしたものを別の所へ運び,そこで再び組み立てることができました。このように,イスラエル人は,こう野をあちこち移動するときに,この天幕を持ち運びました。
天幕の奥の小さな部屋の中を見ると,ひつ,つまり大きな箱が見えます。それはけい約の箱と呼ばれています。けい約の箱の両はしには,金でできたケルブというみ使いがひとつずつ置かれています。モーセが十戒の書かれた石の板を割ってしまったので,神は再び二枚の石の板に十戒を書きしるされました。その石の板はけい約の箱の中に入れられました。それから,マナのはいったつぼも,その中に入れられました。マナとは何か,おぼえていますか。
モーセの兄のアロンは,エホバによって大祭司に選ばれます。アロンは,人々がエホバを崇拝するのを指導します。アロンの息子たちも祭司です。
さて,天幕の大きいほうの部屋を見てください。この部屋は小さい部屋の二倍の広さがあります。けむりが立ちのぼっている小さな箱が見えますか。それは,祭司たちが,良いかおりのする香というものをたく,祭だんです。それから,七つのともしびがともる,しょく台があります。そして,その部屋にある三番めのものは机です。机の上には12個のパンが置かれています。
幕屋の庭には,水のいっぱいはいった大きなはちのようなたらいがあります。祭司たちは物を洗ったりするのにそれを使います。それから,大きな祭だんもあります。その祭だんで,エホバへのささげ物の動物の死体が焼かれるのです。崇拝のための天幕は宿営のちょうどまん中にあって,イスラエル人たちはそのまわりに天幕を張って住んでいます。
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12人のスパイわたしの聖書物語の本
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第38話
12人のスパイ
この人たちがかついでいるくだものを見てください。なんと大きなぶどうのふさでしょう。ふたりの男がぼうでかつがなくてはならないほどです。それに,いちじくやざくろもありますよ。こんなすばらしいくだものをどこから持ってきたのでしょう。カナンの地からです。むかし,カナンにアブラハム,イサク,ヤコブが住んでいたことをおぼえているでしょう。でも,そこがききんになったので,ヤコブは家族を連れてエジプトに移りました。それからおよそ216年がすぎて,今モーセはイスラエル人たちをひきいてカナンへもどるところです。そして,こう野のカデシという所にやって来ました。
カナンには,悪い人たちが住んでいます。それで,モーセは12人のスパイをつかわして,こう言います。『どのくらいの数の人が住んでいて,その人たちがどれほど強いかをていさつしてきてください。その土地は作物のよくできるところかどうかを調べてください。そして,そこで実ったくだものをぜひ持って帰ってください』。
スパイたちは,カデシにもどって来ると,『あそこはほんとうにすばらしいところです』とモーセに言います。その証明として,モーセにくだものを見せます。ところが,スパイたちのうちの10人は,『あそこには,大きくて強い人たちが住んでいます。あの土地をとろうとしたら,わたしたちは殺されてしまうでしょう』と言います。
イスラエル人はそれを聞くとこわくなり,こう言います。『エジプトか,このこう野で死んだほうがましだ。われわれは戦場で殺され,妻や子供はほりょになるだろう。モーセのかわりに別の指導者を立てて,エジプトへもどろう』。
しかし,ヨシュアとカレブというふたりのスパイは,エホバを信らいしているので,人々の心を静めようとします。そして,こう言います。『おそれてはなりません。エホバがわたしたちとともにおられます。あの土地をとるのはむずかしいことではありません』。でも,人々は聞き入れず,そのふたりを殺そうとさえします。
そのために,エホバはたいへんおいかりになり,モーセに次のように言われます。『20歳以上の者たちはカナンの地へはいれません。その者たちは,わたしがエジプトとこう野で行なった奇跡を見ましたが,それでもわたしを信らいしません。ですから,最後の人が死ぬまで,40年間こう野をさまようのです。ヨシュアとカレブだけがカナンの地へはいります』。
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アロンのつえに花がさくわたしの聖書物語の本
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第39話
アロンのつえに花がさく
このつえには,熟したアーモンドの実と花がついていますね。これはアロンのつえです。アロンのつえは,たったひと晩でこの花をさかせ,この実を結んだのです。では,そのわけを調べてみましょう。
イスラエル人がこう野をさまようようになってからしばらくたちました。ある人たちは,モーセが指導者であることや,アロンが大祭司になっているのがおもしろくありません。コラがそうですし,ダタンとかアビラム,また人々の長である250人もそう思っていました。それらの人たちがみなでモーセのところへやって来て,『あなたは,どういうわけで,わたしたちの上に立つのですか』と言います。
モーセはコラと,コラに従う人々にこう言います。『あすの朝,火ざらを取って,それに香を入れなさい。それからエホバの天幕に来なさい。エホバがだれをお選びになるかわかるでしょう』。
次の日,コラとコラに従う250人は幕屋にやって来ます。ほかの大勢の人たちも,コラたちをおうえんするためにやって来ます。エホバはたいへんおいかりになります。モーセはこう言います。『あの悪い者たちの天幕から離れなさい。かれらのものにさわってはなりません』。人々はそのことばに従って,コラ,ダタン,アビラムの天幕から離れます。
ついでモーセは言います。『これによって,あなたがたは,エホバがだれをお選びになったかわかるでしょう。地面が口を開いて,この悪い者たちをのみこむのです』。
モーセが語りおえるとすぐに,地面が口を開きます。コラの天幕と持ち物,ダタン,アビラム,それらの人といっしょにいた人々はそこに落ち,地面はふさがります。地中に落ちた人々のさけび声を聞くと,人々は大声で,『にげろ! わたしたちも地にのみこまれるかもしれない』と言います。
コラとコラに従う250人は,まだ幕屋のそばにいます。それで,エホバは,火を送って全員を焼きほろぼしてしまわれます。それから,エホバは,アロンの息子のエレアザルに,焼きほろぼされた者たちの火ざらを集めて,それで祭だんのうすいおおいを作るように命令されます。その祭だんのおおいは,アロンとその息子以外はだれもエホバの祭司の勤めをしてはならないということを,イスラエル人に警告するものとなります。
さらに,エホバは,アロンとその息子たちこそご自分が祭司に選んだ者であることをはっきりさせたいと思われました。そこで,モーセに次のようにおっしゃいました。『イスラエルの各部族の長に,各自のつえを持って来させなさい。レビの部族からは,アロンにつえを持って来させなさい。そして,それぞれのつえを幕屋のけい約の箱の前に置きなさい。わたしが祭司に選んだ人のつえには花がさきます』。
次の朝,モーセが見てみると,どうでしょう,アロンのつえには,この絵のように,花がさいて,熟したアーモンドの実がなっているではありませんか。エホバがなぜ,アロンのつえに花がさくようになさったか,これでわかったでしょう。
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モーセは岩を打つわたしの聖書物語の本
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第40話
モーセは岩を打つ
10年,20年,30年,39年,と長い長い年月がたちました。イスラエル人たちは,まだこう野にいます。しかし,そのあいだずっと,エホバは,民をマナでやしない,昼間は雲の柱,そして夜は火の柱で民を導いて,ご自分の民の世話をしておられます。その長い年月のあいだずっと,人々の服はすり切れず,足が痛くなることもありません。
さて,エジプトを出てから40年めの最初の月になりました。イスラエル人は,再びカデシでテントを張ります。およそ40年前,カナンの地をていさつするために12人のスパイがつかわされたときに,人々がいたのはこのカデシです。モーセの姉のミリアムは,カデシで死にます。そして,以前と同じように,ここでまた問題が起きます。
人々は,水が見つからないので,モーセにこう不平を言います。『死んだほうがましだった。どうして,あなたはわたしたちをエジプトから,何も育たないこのひどい土地へ連れてきたのですか。穀物もなければ,いちじくも,ぶどうも,ざくろもない。飲み水さえありません』。
モーセとアロンが幕屋へ祈りに行くと,エホバはモーセにこのようにおっしゃいます。『民を集めなさい。そしてかれらの前で,あの岩に向かって語りなさい。人々と動物全部が飲めるだけの水がそこから出て来ます』。
それで,モーセは人々を集めて,『聞きなさい,神を信らいしない人たちよ。あなたがたは,アロンとわたしにこの岩から水を出せと言うのか』と言います。それから,モーセがつえで岩を二度打つと,岩から水がどっとわき出て来ました。すべての人と動物が飲めるだけの水があります。
でも,エホバはモーセとアロンに対しておいかりになります。どうしてだかわかりますか。なぜなら,モーセとアロンは,自分たちが岩から水を出すと言ったからです。しかし,じっさいにはエホバがそうなさいました。モーセとアロンがそれについてほんとうのことを言わなかったので,エホバはふたりをばっするとお告げになります。そして,『あなたがたがわたしの民をカナンの地へ導き入れることはありません』とおっしゃいます。
まもなく,イスラエル人はカデシを去り,すこししてからホル山にやって来ます。この山の上でアロンは123歳で死にます。イスラエル人たちはとても悲しんで,みな30日のあいだ,アロンのために泣きます。アロンの息子のエレアザルは,イスラエル国民の次の大祭司になります。
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銅のへびわたしの聖書物語の本
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第41話
銅のへび
柱に巻きついているのは,本物のへびでしょうか。これは本物のへびではなくて,銅でできたへびです。エホバはモーセに,人々がそれを見つめて生きられるように,そのへびを柱につけなさいとお命じになりました。でも,地面にいるほかのへびは本物で,人々はそれにかまれてたおれました。なぜだと思いますか。
それは,イスラエル人が神とモーセにさからって,こう不平を言ったからです。『あなたはどうしてわたしたちをエジプトから連れ出して,このこう野で死なせるんですか。ここには食べ物や水がありません。それに,わたしたちはマナを食べあきました』。
しかし,マナは良い食べ物です。エホバは,奇跡によって人々にマナをあたえてこられました。また,エホバは水をも奇跡によってあたえてこられました。ところが,人々は,神がそのように自分たちの世話をしてくださったことを感謝していないのです。それで,エホバは,イスラエル人をばっするために,このような毒へびを送られます。多くの人はへびにかまれて死にます。
とうとう,人々はモーセにこう言います。『わたしたちはエホバとあなたにさからって罪を犯しました。これらのへびを取り去ってくださるよう,エホバに祈ってください』。
そこでモーセは人々のために祈ります。すると,エホバは,モーセにこの銅のへびを作って,それを柱につけるようにとおっしゃいます。また,へびにかまれた人はそれを見つめるようにと言われます。モーセは神がおっしゃったとおりにします。それで,へびにかまれた人は,銅のへびを見つめると,また元気になります。
このことからひとつの教訓が学べます。わたしたちみんなは,ある意味で,へびにかまれたイスラエル人のようです。わたしたちはだれでも死に向かっています。人々は年老いて,病気になって,死んでいきますね。それは,わたしたちすべてが,エホバにそむいた最初の男女であるアダムとエバの子孫だからです。でも,エホバは,わたしたちがいつまでも生きられる道を備えてくださいました。
エホバはみ子イエス・キリストを地につかわされました。イエスは木にかけられました。多くの人はイエスを悪い人だと思ったからです。しかし,エホバは,わたしたちを救うためにイエスをあたえてくださったのです。もし,イエスをあおぎ見て,イエスに従うなら,わたしたちは永遠の命を得ることができます。でも,そのことについては,あとでもっと学びます。
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