4原則で減量に成功
国際誌である「目ざめよ!」誌は,世界の様々な場所で広く見られる問題を取り上げますが,健康や医療に関する事柄を取り上げる場合,特定の療法を推奨もしくは推薦する意図はありません。
ふさわしい食物を,ふさわしい時に,ふさわしい量だけ食べ,ふさわしい運動をする
自分の体の脂肪細胞を嫌悪しないでください。それらはすばらしい細胞なのです。それらの細胞は重要な機能を果たすように設計されています。糖や脂肪酸から脂肪を造るのです。脂肪を蓄える場所が必要になると,それ自体が大きくなります。もっと必要になると,新たに細胞を造り,そこに脂肪を満たします。エネルギーを脂肪の形で蓄える驚嘆すべき細胞です。それは脂肪細胞の特性なのです。肝臓はエネルギーを貯蔵する媒体としてのグリコーゲン1ポンド(約450㌘)に250カロリーしか収められないのに対し,脂肪細胞1ポンドの中には3,500カロリーも蓄えられます。
脂肪細胞は知らせを受けてそれに従います。また,重要な器官を保護します。要請があり次第,備蓄エネルギーを放出し,それを体内で働く細胞に燃料として供給します。緊急事態の知らせを受けた時には一斉に活動します。命が脅かされているという知らせが送られてきたら救命措置をとり,脂肪の蓄積を始め,迫り来る危機に備えて保存します。
まだ完全には理解されていないものの,体の免疫機構の中で脂肪が重要な役割を果たしていることは明らかになっています。脂肪細胞は偽の知らせを受けて,危機的な事態になったと思い込む場合があります。思い切った食餌制限をすると,脂肪細胞には体が飢餓状態になりそうだ,餓死しそうだというのと同じ知らせが伝えられることがあるのです。脂肪細胞は脂肪を分解するどころか,実際には保存し,カロリーの放出をほんの少量に抑えるようになります。しかし,脂肪細胞にはその違いを見分ける術がありません。反応するよう設計されたとおりに反応するだけです。現在の必要よりも将来のもっと危機的な必要を予見してエネルギーを蓄えます。1987年3月号のペアレンツ誌は,考えられる説明として,「食餌制限の頻度が高くなればなるほど,つまり体が飢きんの状態を頻繁に感じれば感じるほど,それだけいっそう脂肪細胞は自らの貴重な原料を手放そうとしなくなる」と述べています。
体も筋肉をブドウ糖に変えることによって当面の危機に対処しようとします。脳にはそのブドウ糖がなければなりません。さもなければ,体全体が機能を停止してしまうでしょう。でも,減らしたいのは筋肉ではありません。脂肪です。思い切った食餌制限をしても勝ち目はありません。では,どんな方法があるでしょうか。勝ち目のある方法とは,ふさわしい食物を,ふさわしい時に,ふさわしい量だけ食べ,ふさわしい運動をすることです。ふさわしい精神態度も必要でしょう。減量しようとする人が自分で決めなければなりません。目標に到達できるかどうかは自分にかかっています。
ふさわしい食物
カロリーが高く栄養価の低い食物は,減量しようとする人にとってふさわしい食物ではありません。脂肪類と単糖類は,カロリーはありますが,滋養分はありません。体重調整にも栄養補給にもふさわしい食物とは,より複雑な炭水化物,果物,野菜などであり,肉類で好ましいのは魚肉や鳥類の肉です。
「よくある病気の百科事典」はこう述べています。「減量のための別の基本的な取り組み方は,精製されていない食品,栄養価の高い,加工されていない,天然の食品以外の食物をすべて自分の食事から除外することである。人体には常に,食物からのエネルギー……に加えて,体の働きにあずかる,また体の細胞を修復したり更新したりする,適量のタンパク質,脂肪,ミネラル,およびビタミンが必要である。精製されていない食品[加工されていない食品類]を食べるときは,“実質のない”カロリーではなく,必要な栄養素を摂取していると考えてよいだろう」。
ふさわしい時
テレビを見ている時は,ふさわしい時ではありません。何かをつまんでは食べ,それが何時間も続いてしまいます。恐らく,油っこいポテトチップやフレンチフライ,砂糖のたっぷり入ったクッキーや菓子類を食べて実質のないカロリーがいつの間にか何百カロリーにも達してしまうでしょう。油と食塩は風味を添えて後を引き,砂糖は甘党の人の味覚を喜ばせるため,この間食はなかなかやめられないのです。
「もし1日に取る食物の量を減らすことなく,食事の回数を増やして1回の分量を少なくするなら,体に脂肪が蓄積する傾向は抑えられる,と確信するようになった」栄養学者もいます。「また,一番大切な食事,つまり人の一日で一番カロリーを摂らなくてはいけない食事は朝食である,ということも分かって」います。
ふさわしい量
いろいろな種類の食物を十分に食べるようにしましょう。食事の量を切り詰めて脂肪細胞をあわてさせるとどんなことになるかはお分かりでしょう。減量の実験で,ネズミに餌を1日1回しか与えないで観察したところ,その期間中に,脂肪を蓄積させる働きをする酵素が10倍に増えました。その報告はこう述べています。「それはあたかもネズミの体が,『こういう緊急事態が再び生じる場合に備えて,今度また食物が得られた時にはいつでもすぐに余分の脂肪を蓄えるぞ』と言っているかのようだった」。
ですから,「もし食餌制限をしなければならないのであれば,断食する,あるいは食事を1日1回だけ(本質的には23時間の断食)にするという間違いをしてはならない」と述べられています。ゆっくりした減量で満足することです。週に約0.45㌔かその半分でもいいのです。長い間に脂肪が付いてしまったのですから,時間をかけて減らしてください。それで,十分に食事をして脂肪細胞をリラックスさせておき,脂肪細胞自体のカロリーを少しはその大義のために使わせるようにするのです。しかし,大食してはいけません。適度の食事で十分です。
時の経過と共に,少しの食事で十分になります。年を取ると筋肉細胞が減り,その分だけ脂肪細胞が増えます。この筋肉の部分が一番多くのエネルギーを必要とするので,その部分が少なくなれば,エネルギーの必要も少なくなり,新陳代謝も緩慢になります。それに応じて食事の量を減らさないなら,脂肪がたまってゆきます。しかも,大抵お年寄りは余り運動をしないので,そうなると食べる物はどんどん脂肪になってゆきます。それでも,「運動すれば筋肉内の脂肪を消散させることができる」と,ある研究者は述べています。しかし,時折パーティーで食べすぎるなら,ふさわしい食餌制限の努力も無駄になる場合があることを忘れてはなりません。
ふさわしい運動
科学者のコバート・ベーリは,自著「健康それとも肥満?」の中でこう述べています。「肥満の究極の治療法は運動だ。……決まった予定に従って体に酸素を消費させる運動をする人が太らないことは,分かりきった事実である。もしわたしが体の肥満傾向を抑える錠剤を提供するとしたら,太った人たちは列をなしてそれを求めに来るだろう。わたしはそのような錠剤を現に提供している。ただそれは呑み込むのに1日12分かかる錠剤なのだ」。しかし,大方のデータが示すところによると,体に酸素を消費させる効果が現われるまでには,少なくとも20分間運動を続ける必要があります。
ベーリが運動と言っているのはエアロビクスのことです。それは心臓の鼓動を速めさせる継続的な運動で,それによって相当量の酸素を体に送り,脂肪を燃焼させます。この種の運動で代表的なものは,ジョギング,縄跳び,自転車をこぐこと,早足で歩くことなどですが,そのような運動計画を実施する前に,医師に相談して指導を仰ぐのは賢明なことです。減量に関する研究をしている人は大抵,運動することを勧めています。次のような記事にそのことが示されています。
「低エネルギーの食餌療法をしている時に普通生じる[代謝率の低下]は,その療法に身体的活動を組み入れることによって予防もしくは軽減できるかもしれない」―「アメリカ医師会ジャーナル」。
「減量に関する専門家の一致した意見は,運動を日課として定期的に行なうことが,減量とその維持のための一つの鍵[主要な方法]だということである。循環器系を刺激する運動をすれば,休止していた体の新陳代謝が活発になり,その後15時間は持続する。それは運動を終えた後にも多くのカロリーが消費されるという意味である」― ペアレンツ誌。
「どんな効果的な体重調整プログラムにも不可欠なのは運動であり,運動の激しさよりも重要なのはその定期性である」―「コンの最新療法」。
「運動はわたしたちを変える。代謝率をよくし,筋肉の量を増大させ,筋肉中のカロリー消費酵素のレベルを上げ,脂肪の燃焼を増やす。……体の健康な人でも代謝がわずかながら高まる場合がある。健康な人は,休んでいる時でさえ,太っている人よりも多くのカロリーを燃焼させる」―「健康それとも肥満?」。
「よくある病気の百科事典」は,太り過ぎが心臓病や高血圧の原因となって命取りになることを警告した後,「慰めとなる事実が一つある。体重が減った時には,太り過ぎの有害な影響を逆転させることが可能だ」という良い知らせを指摘しています。
ベーリはこう述べます。「減量するためなら何でもする,本当に何でもするとよく言う極度の肥満体の人たちのことで残念なのは,彼らが自分に幾らかでも益になるある事柄を行なおうとしないことである。彼らは本当の運動をしようとしないのである」。
体内では,タンパク質からでも,炭水化物からでも,食事に含まれる脂肪からでも脂肪が造られることを思えば,脂肪が非常にたまりやすいのも少しも不思議ではありません。「人が食べる物はほとんど何でも,それが消化される物である限り,脂肪に変わり得る」と,ベーリは述べています。急激な減量のための食餌制限をすると体の化学的性質が変化するため,「当人は太った人の化学的性質を帯び,脂肪の付きやすさは減量を始めた時よりも大きく」なります。
脂肪を燃焼させるには何種類かの酵素が必要です。もしそれら脂肪を燃焼させる酵素がないなら,「人は太ってゆくことになる。運動によってDNAを刺激し,同時に,生合成に用いられるアミノ酸が欠乏しない程度に十分な食物を取りさえすれば,酵素は増加する」と,ベーリは述べています。
時折,筋肉には急に多量のエネルギーが必要になることがあります。必要なエネルギーの量が1秒の何分の1かの間に50倍にも増大することがあるのです。それだけのエネルギーを得るためには,エネルギー源を代謝する能力のある酵素がなければなりません。そのような酵素 ― カロリーをそれほど速く燃焼させる能力のある特別な酵素 ― は筋肉細胞の中にしかありません。体内で燃焼するカロリー全体の90%は,筋肉の中で燃焼します。それらの酵素は筋肉細胞内に散在するミトコンドリアの中にあり,体が運動している間,エネルギーを供給するために筋肉組織の中で脂肪の燃焼を促進します。
「健康それとも肥満?」は,それらの酵素に関してこう述べています。「定期的なエアロビクスの運動によって実際に各筋肉細胞内のミトコンドリアの数と大きさが増大することは何度も明らかにされてきた。さらに進んだ生化学の研究の結果,運動すると,それらのミトコンドリアの内部に新陳代謝を促す酵素の増加することが確証された」。エアロビクスを行なえばそうなりますが,それをしないと脂肪が生じます。
「会議室レポート」誌,1988年12月15日号は,運動の価値を高く評価してこう述べています。「身体的に不活発であれば,心臓発作を起こす危険は2倍になる。研究者たちは,心臓発作を起こす危険度の高い人々として,座業に携わる人々を,喫煙の習慣のある人々また血圧やコレステロール値の高い人々と同じ範疇に入れている」。さらに,「重い物を持ってジョギングや歩行を行なうなら,運動によって受ける健康面の益は大いに増す」とも述べています。最初のうちは200㌘ほどの重さの物を持って,腕の振りを大きくするよう勧められています。
食べるべきでない時に何かを食べ始めるきっかけとなるものを見抜いてください。自分の良い決意を弱めるものとなる言い訳を知っておくようにします。そのような言い訳はすぐに打ち消すことです。怒りをもって退けてください。
何としても成功を収めるのだという気持ちを持ってください。行なうべきことをわきまえて,実行してください。ふさわしい食物をふさわしい量だけ食べ,それを体がふさわしく活用できるようにしてやります。人体にはすばらしい順応性があります。山の高い所に行けば,酸素を運ぶ赤血球が多くなり,体は希薄な空気に順応します。しかし,それには時間がかかります。太陽の熱にさらされる所では,皮膚にメラニン色素が増し加わって紫外線からの保護となり,体はその環境に順応します。しかし,それには時間がかかります。また,継続的に運動すれば,エネルギーを生み出すための,より多くの脂肪を燃焼させるのに必要な酵素が造られ,体はそれに順応します。しかし,それにも時間がかかります。
ですから,忍耐強くなければなりません。体重が増えるには時間がかかったのですから,減量するにも時間をかけてください。目標に向かって着実に進むことです。食事や運動が毎日少しでもうまくゆけば,初めは嫌な雑用も続けるうちに楽しい習慣となるように,やがて弾みがついて楽に行なえるようになり,理想とする新しい自分になってゆきます。闘いに勝ち,脂肪を減らし,勝利を喜びましょう!
[9ページの図版]
室内で行なうエアロビクス:
縄跳び
据え付けの自転車
[10ページの図版]
屋外で行なうエアロビクス:
ジョギング
早足の歩行