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肥満は小さな問題か目ざめよ! 2004 | 11月8日
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肥満は小さな問題か
「若者の肥満はまるで流行病のようだ」。―S・K・ワングヌー。インドのデリー,インドラプラスタ・アポロ病院の内分泌科医長。
上の言葉が示すように,インドの多くの中産階級の家庭で生活様式が変わり,十代の若者にも肥満が生じる結果になっています。この現象は世界規模の流行で,多くの国々に広がっています。体をあまり動かさない人やジャンクフードばかり食べている人が増えているためです。青年期医学の専門家は,「[英国の]次の世代は……史上最も肥満であろう」と述べました。ガーディアン・ウィークリー紙(英語)は次のように伝えています。「肥満はかつておもに大人の問題だった。しかし英国の若年層は今,食習慣や座っていることの多い生活様式により,当初は米国で見られた様々な問題を抱えるようになっている。長期にわたる肥満は,糖尿病,心臓疾患,がんなどの病気にかかりやすくする」。
「フード・ファイト」(英語)という本の著者は,「栄養不良ではなく過剰な摂取が,世界の主要な食糧問題になっている」と言います。ドン・ペックはアトランティック・マンスリー誌(英語)に,「現在,約900万人のアメリカ人は『肥満症』で,だいたい50㌔以上太りすぎている」と書いています。米国では,太りすぎの関係した病気で年におよそ30万人が早死にしています。これは「喫煙に次いで多い」数です。「肥満はやがて飢餓や感染症を抜いて,世界の保健衛生の最重要課題になるかもしれない」とペックは見ています。ですから,肥満の脅威を無視してよい人がいるでしょうか。ウォルター・C・ウィレット博士は,「食べて飲んで健康でいよう」(英語)という本にこう書いています。「喫煙するかどうかを別にすれば,将来の健康の最も重要な指標は,体重計に表示される数字である」。ここでのキーワードは将来の健康です。
肥満をどう定義するか
どのような場合に,単なる太りぎみではなく肥満とみなされるのでしょうか。米国ミネソタ州ロチェスターのメイヨー・クリニックによると,「簡単に言えば,肥満とは体脂肪が多すぎて極端に太っていること」です。しかし,人が太りすぎかどうか,どうしたら分かるでしょうか。身長体重表は,単に太りすぎつまり過体重か,肥満の段階に進んでいるかに関して,およその基準を示しています。(5ページの表をご覧ください。)もっとも,この表は体の組成を考慮に入れていません。メイヨー・クリニックは,「健康の目安となるのは,体重ではなく体脂肪量である」と述べています。例えば,スポーツ選手は筋肉質で骨太なので体重があるでしょう。では,太りすぎや肥満の基本原因は何でしょうか。次の記事でその点を取り上げます。
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肥満 ― 原因は何か目ざめよ! 2004 | 11月8日
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肥満 ― 原因は何か
「子どもたちの健康に深刻な影響を及ぼす流行病が猛威を振るっている。社会がいま予防策を講じないなら,肥満の拡大は止まらないだろう」。―ウィリアム・J・クリッシュ,小児科教授。
体重の問題のない人たちは,太りすぎや肥満の人に対して批判的な見方をし,意志が弱くて行動意欲に欠けている,とみなしがちです。しかし,問題はそれほど簡単でしょうか。肥満の人は決まって運動嫌いの怠惰な人でしょうか。それとも,制御の難しい,もっと深い原因が関係している場合も多いのでしょうか。
遺伝? 環境? その両方?
「フード・ファイト」という本は,「肥満の根本の原因は環境ではなく遺伝にあるという議論が長年なされてきた」と述べています。ここで言う遺伝とは何のことでしょうか。一部の人は,人間の体は将来の必要に備えて自然に余剰エネルギーを蓄える,と唱えています。同書は次のように述べています。「肥満の遺伝性は幾十年も研究されてきた。……人間の遺伝子と肥満について,これまで多くの調査が行なわれてきた。太りやすい体質にする遺伝子や,糖尿病などの病気を引き起こす遺伝子を特定するため,高度な技術が用いられている。科学的な言い方をすれば,一般の人々の体重変動の25%から40%は遺伝子によって説明がつく」。同書はこう続けています。「肥満は個人の弱さによるとされがちなことからすると,この数字は生物学的な見方の重要性を示している。とはいえ,体重変動の60%以上は依然として環境に起因する」。ですからやはり,肥満のおもな原因は個人の生活様式にあることになります。1日に摂取するエネルギー量は,消費する量より多いでしょうか。良くない食物をいつも取る習慣がありますか。毎日,時間を取って適度な運動をしているでしょうか。
メイヨー・クリニックは肥満の原因を分かりやすい言葉でこう説明しています。「遺伝子は太りすぎや肥満のきっかけを作るかもしれないが,結局のところ,体重は食生活と運動によって決まる。エネルギーの過剰摂取,座っていることの多い生活様式,あるいはその両方が長期間続くと肥満になる」。(斜体は本誌。)また,こう述べています。「太ることが遺伝的に定まっているわけではない。……どんな遺伝子を持っているにせよ,結局のところ,体重を決めるのは栄養摂取と運動に関してどんな選択をするかである」。
ダイエット産業は莫大な利益を上げています。以前の体形を取り戻そうと必死の思いの人々がいるためです。しかし,そうしたダイエット法について専門家は何と述べているでしょうか。「フード・ファイト」は,「肥満は治療が非常に難しく,ほとんどの人は減量してもその体重を維持できない」と述べています。「どんなに楽観的に見ても,減量した体重を維持できる人は25%[4人に1人]だ。それも多くの場合,何度も試みての話である」。
肥満の危険
肥満は,健康上の深刻な問題となりがちです。南カリフォルニア大学医療センターの神経科医スコット・ローレン-セルコは,肥満であると,若くてもII型糖尿病になる危険がある,と警告しています。(「目ざめよ!」誌,2003年5月8日号をご覧ください。)こう語ります。「最近はそういう患者さんが絶えません。本当に怖いことです。[肥満の患者さんには,] 糖尿病患者の病棟にお連れしましょうか,将来のご自分の姿をご覧になるかもしれません,と言います。そこには,II型[糖尿病]で視力を,また手足を失った人,衰弱しきった数え切れないほど多くの人がいます。みんな肥満の人たちです」。どんなことに原因があるでしょうか。「その人たちは,ジャンボサイズのハンバーガーやフライド・ポテトを買う余裕があり,現に買ってもいます」とローレン-セルコは言います。「それは良くない,と言ってあげる人はいません。ファーストフード会社が言わないのはもちろんですが,率直に言えば,栄養学の専門教育を受けていないほとんどの医師も言わないのです」。
栄養学の著作で知られるエドワード・トーブ博士はこう述べています。「太りすぎは自然で受け入れられる現代生活の一面という考えが最近はやっており,感情に配慮した見方ともなっている。これは,人々を太らせて繁盛する商業界の巧みな宣伝の効果だ」。
専門家によると,腰周りに脂肪が付いた「洋なし型肥満」の人は,腹部の内臓に脂肪が付いた「りんご型肥満」の人(特にウエストが90㌢から100㌢を超える場合)に比べると健康上の問題は少ないようです。なぜでしょうか。「腹部に脂肪が付いている場合,高血圧,冠状動脈疾患,糖尿病,脳卒中,ある種のがんなどになる危険が高い」から,と「メイヨー・クリニック 健康体重」(英語)という本は述べています。「洋なし型 ― 腰周りやももが太い ― の人の場合,健康上の危険はそれほど大きくない」ようです。
とはいえ世界中には,深刻な健康上の問題が懸念される太りすぎの大人や子どもが非常に多くいます。そのような人たちにどんな解決策があるでしょうか。効果的な治療法がありますか。
[5ページの囲み記事/図表]
BMIとは何か ― 何が分かるか
BMI(体格指数,body mass index)は,身長と体重の比率を示し,人が過体重か,肥満の段階に進んでいるかを判断する手がかりとなります。メイヨー・クリニックによると,BMIが18.5から24.9までが最も健康とされ,25から29.9までなら過体重,30以上は肥満とされます。BMIの表をどのように見たらよいでしょうか。医師にアドバイスを求めるか,自分がどの状態に当たるかを確認してもらう必要があるでしょう。
BMIを計算するには,体重(㌔)を身長(㍍)で割り,それをもう一度,身長(㍍)で割ります。例えば,体重90㌔,身長1.8㍍の人のBMIは28になります(90÷1.8÷1.8=28)。
[図表]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
健康 過体重 肥満
BMI 18.5-24.9 25-29.9 30以上
身長(㍍) 体重(㌔)
1.47 53以下 54-64 65以上
1.50 56以下 57-67 68以上
1.52 57以下 58-69 70以上
1.55 59以下 60-71 72以上
1.57 61以下 62-73 74以上
1.60 63以下 64-76 77以上
1.63 66以下 67-79 80以上
1.65 67以下 68-81 82以上
1.68 70以下 71-84 85以上
1.70 72以下 73-86 87以上
1.73 74以下 75-89 90以上
1.75 76以下 77-91 92以上
1.78 79以下 80-94 95以上
1.80 80以下 81-97 98以上
1.83 83以下 84-100 101以上
1.85 85以下 86-102 103以上
1.88 89以下 90-106 107以上
1.90 90以下 91-108 109以上
[クレジット]
「メイヨー・クリニック 健康体重」より
[5ページの囲み記事]
カロリーとは?
カロリーはどのように定義されるでしょうか。これは熱エネルギーの基本単位です。汗をかくなら,カロリー,つまり熱エネルギーを消費することになります。「1[㌔]㌍は水1㌔㌘の温度を1度上げるのに必要な熱量」です。(「体のバランス,生活のバランス」[英語])1日に必要なエネルギー量は,身長,体重,年齢,生活活動強度などにより,人それぞれ異なります。
[6ページの囲み記事/図版]
座っていることの多い人とは?
■ 1日のほとんどを座って過ごす(テレビを見る,机に向かっている,乗り物に乗っているなど)。つまり,動かない
■ 100㍍以上歩くことがほとんどない
■ 体を動かさない仕事に就いている
■ 20分から30分運動することが週に一度もない
[クレジット]
「メイヨー・クリニック 健康体重」に基づく
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肥満 ― 解決策は?目ざめよ! 2004 | 11月8日
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肥満 ― 解決策は?
「目ざめよ!」誌は,太りすぎや肥満の治療にかかわってきた,栄養士のダイアンと看護師のエレンにインタビューしました。二人が認めている点として,炭水化物を取らずにタンパク質(肉類)の摂取を増やすダイエットをすれば体重は減ります。しかし,長期的に見ると健康に有害な二次的影響がある,とも言います。a この点は,「健康体重の維持」という医学図表によっても裏付けられています。その図表の説明によると,「低炭水化物ダイエットは,医師の指導なしに行なうと特に危険」です。このダイエットは,「有害な影響を及ぼしかねない程度までケトン体(脂肪の代謝産物)を増加させて体重を急速に落とすことを意図して」います。ですから,低炭水化物ダイエットを考えている人は,必ず医師に相談してください。
減量を目指している方は,あきらめないでください。「体重のコントロールは不可能ではないし,必ずしも,ひもじい思いをしたり退屈なダイエットを繰り返したりすることではない」と,ウォルター・C・ウィレット博士は言います。「意識的努力と創意工夫があれば,楽しく無理のない食餌療法とほぼ毎日行なう運動によって,ほとんどの人は長期的に体重のコントロールができる。健康な生活を長く送ることは,確かに努力に値する」。b ―斜体は本誌。
運動はどれほど重要か
ウィレット博士はこう言います。「喫煙しないことを別にすれば,運動は健康のための,あるいは健康を維持して慢性疾患にならないための最善の方法である」。運動はどれほどの頻度で行なうのがよいでしょうか。体を動かす努力にはどんな益がありますか。
たとえ30分でも毎日運動すると健康にたいへん良い,とアドバイスする専門家もいます。もっとも,週に3回運動するだけでも,将来重い病気にならないようにすることができる,と言われています。運動するとエネルギーは消費されます。ですから,減量を目指している人がまず考えるとよいのは,自分は毎日,摂取エネルギーより多くのエネルギーを消費しているだろうか,という点です。摂取するエネルギーのほうが多いなら,きっと太ってしまうでしょう。では,車に乗る代わりに,歩くか自転車に乗るのはどうでしょうか。エレベーターを使わずに,階段を上るように心がけてください。運動しましょう! エネルギーを消費するのです。
ウィレット博士はこう説明します。「ウォーキングは特別な運動器具を必要とせず,いつでもどこでも行なえて一般にかなり安全なので,多くの人にとって他の運動に代わる優れた運動法だ」。もちろん,ここで述べられているのは早歩きのことであり,のんびり歩くことではありません。ウィレット博士は,できれば毎日30分運動するよう勧めています。
手術は最善の解決策か
重症肥満患者の中には,体重を減らしてまた太らないようにするために肥満症専門医のアドバイスに従ってさまざまな外科手術を受けた人もいます。どのような患者に対してそうした手術が行なわれるのでしょうか。「メイヨー・クリニック 健康体重」という本の著者は,「BMIが40を超える重症肥満の場合,医師は手術を考えるかもしれない」と述べています。(5ページの表をご覧ください。)「メイヨー・クリニック健康通信」(英語)にはこうあります。「肥満治療の手術が勧められるのは一般に,BMIの値が40を超える,18歳から65歳までの人で,肥満のために深刻な健康上の危険が生じている場合だけである」。―斜体は本誌。
どのような手術があるでしょうか。小腸のバイパス術,胃の分割,形成,バイパス術などです。胃のバイパス術では,胃の最上部を吻合して,15㍉㍑ほどの食物しか入らない小さな袋状にします。さらに,小腸とこの小さな袋をつなぎ合わせます。結果として,口から入った食物は胃のほとんどの部分と十二指腸を迂回することになります。
では,減量をした人々についてはどうでしょうか。努力するだけの価値があったでしょうか。
[脚注]
a 例えば,血液中の過剰な鉄分,腎臓障害,便秘など。
b 献身したクリスチャンは,受け入れられる形で神への神聖な奉仕に自分の命を用いたいと願っているので,減量して健康を保つべきいっそうの理由があります。早死にを避け,より多くの年月を神への奉仕に用いることができます。―ローマ 12:1。
[7ページの囲み記事/図版]
勧められている健康的な食事のピラミッド
甘いもの 甘みの強いもの,加工された菓子類
(控えめに。1日75㌔㌍以下に抑える)
油脂 オリーブ油,ナッツ類,キャノーラ油,アボカド
(1日当たり3-5単位。1単位は,油類であれば小さじ1杯分,
ナッツ類であれば大さじ2杯分に相当)
タンパク質と乳製品 豆類,魚,赤身の肉,卵,低脂肪の乳製品,チーズ
(1日当たり3-7単位。1単位は,調理した肉または魚で約90㌘)
炭水化物 特に全粒穀物 ― パスタ,パン,米,シリアル
(1日当たり4-8単位。1単位は,パンであれば1枚)
野菜と果物 どちらもさまざまな種類のもの(特に制限はない。どちらも1日当たり最低3単位)
「目ざめよ!」誌は,特定の食餌療法や減量法を勧めているのではありません。選択可能な方法の幾つかについての情報を読者に提供しています。どんな運動療法や食餌療法を行なうにしても,個々の人は前もって医師に相談するのがよいでしょう。
[クレジット]
メイヨー・クリニックの提案に基づく
[8,9ページの囲み記事/図版]
ある人たちが試みた減量法
1 食べている物や飲んでいる物のカロリーを意識する。注意: 飲み物,特に加糖ジュースから多くのカロリーを取ることがある。アルコール飲料も高カロリー。盛んに宣伝されている清涼飲料に気をつける。ラベルを見て総カロリーをチェックする。その量にびっくりするかもしれない。
2 誘惑となるものを避ける。ポテトチップ,チョコレート,クッキーなどが身近にあると,食べてしまいがち。代わりに,リンゴやニンジン,全粒ウエハースなど,低カロリーのものをおやつにする。
3 食事の前に軽食か前菜を取る。それが食欲を抑え,食べる量を減らす場合もある。
4 出されたものを全部食べようとしない。選んで食べる。カロリーが多すぎると分かるものは食べない。
5 ゆっくり食べる。急ぐ必要はない。色,風味,取り合わせなど,食べている物に注目して食事を楽しもう。「おなかいっぱい。もう食べられない」という体の声に耳を傾ける。
6 満腹になる前にやめる。
7 国によっては,一人分がとても多いことで知られるレストランがある。そのような場合,メインディッシュの半分を残すか,一皿を二人で分け合う。
8 食事の終わりに甘いデザートがなければならないわけではない。果物か,低カロリーのもので済ませたほうがよい。
9 食品会社は,たくさん食べさせようとしている。おもな関心は利益にある。あなたの弱いところを突こうとする。巧みな宣伝やかわいい絵にだまされてはいけない。ノーと言おう!
[クレジット]
ウォルター・C・ウィレット著,「食べて飲んで健康でいよう」より
[8,9ページの図版]
運動する!
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肥満との闘い ― 努力の価値はない?目ざめよ! 2004 | 11月8日
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肥満との闘い ― 努力の価値はない?
「目ざめよ!」誌は,肥満の問題と闘ってきた人たちにインタビューしました。その人たちはどのような成果を得たでしょうか。この“流行病”に苦しむ他の人たちにも役立つ提案があるでしょうか。
■ 46歳,身長183㌢,体重は現在129㌔のマイクという男性の場合を考えてみましょう。一番多い時で157㌔ありました。
マイク: 「若いころから太っていました。家族じゅう,兄も姉たちや妹もみんな太っていたんです。皿の上に載ったものは,皿からあふれるほどの量でも絶対に残さない,というのが我が家の伝統でした。食習慣を変えるきっかけになったのは,糖尿病になる危険性が高いと医師から言われたことでした。一生インシュリンに頼らなければならないと考えただけで恐ろしくなりました。コレステロール値も高く,薬をのまなければなりませんでした。
「仕事中はずっと座ったままでした。今もそれは変わっていません。運動不足解消のため,少なくとも週に3回,ランニングマシンで30分間走るなど,定期的に運動するようにしています。次の重要なステップは,食べたものを毎日記録することでした。そのリストを栄養士が毎週チェックすることを知っていたので,それもブレーキになりました。『食べなければ書かなくてすむ』と思ったのです。
「結果として,この1年3か月で28㌔a減量しました。ですが,100㌔ぐらいになりたいと思うので,もっと落とす必要があります。この目標を達成するために,間食とポテトチップとキャセロール料理をやめました。ここ数か月間で,それまでの人生で食べたよりたくさんのサラダや野菜を食べました。
「減量を決意させた別の要素もあります。わたしはトラックの運転手をしていますが,免許更新のために毎年健康診断を受けなければなりません。糖尿病の恐れがあるということで,免許を失う危険がありました。でも,今は大丈夫です。コレステロール値を抑える薬は必要なくなりました。血圧が下がったので,薬の量も減りました。以前より体力がありますし,ひどかった背中の痛みも和らぎました。少しずつですが,肥満の域を脱しつつあります」。
「目ざめよ!」: 「減量のために奥さんも力になれるでしょうか」。
マイク: 「太りすぎと闘っている人には,励ましてくれる人が必要です。妻は以前,わたしのために食事をたっぷりこしらえることで愛情を表わしていると思っていました。でも今は,わたしが皿に取る量を抑えることができるように助けてくれます。とはいえ,油断禁物です。気を緩めると,すぐにまた太ってしまうからです」。
■ 米国カンザス州に住む,同じくマイクという男性についても考えてみましょう。マイクは43歳,身長は173㌢です。ピーク時の体重と,体重が問題になった原因を尋ねました。
マイク: 「最高で135㌔ぐらいありました。いつも疲労感があり,何をする気にもなれませんでした。呼吸の問題があって,よく眠れませんでした。病院に行ったところ,太りすぎの原因の一つは閉塞性睡眠時無呼吸にあると診断されました。b それに,血圧も高いということでした」。
「目ざめよ!」: 「そうした問題にどのように対処されましたか」。
マイク: 「睡眠時に持続陽圧気道装置を使うようにと医師から指示されました。その装置を使うと,のどがふさがれないので普通に呼吸できます。そのため,日中に活動的になって,体重は減り始めました。また,週に3回ランニングマシンを使うようになりました。ダイエットも続けて,食べる量を抑え,お代わりしないようにしました。1年しかたっていませんが,20㌔減量しました。でも,あと20㌔やせる必要があります。時間はかかっても,きっとやせられると思います」。
「目ざめよ!」: 「減量しようと思った理由はほかにもありますか」。
マイク: 「外見について傷つくような思いやりのないことを言われるのはうれしいことではありません。みんなは,太っている人をただ怠け者と思いがちです。肥満にいろいろな原因があることを知らないのです。わたしの場合,遺伝的要素もいくらか関係していると思います。家族がほとんどみな体重の問題を抱えているからです。
「いずれにしても,減量するにはいつも活動的になり,しっかり食餌制限をしなければならないと思います」。
■ 「目ざめよ!」誌は,米国オレゴン州に住むウェインという38歳の男性にもインタビューしました。ウェインは31歳の時,112㌔ありました。
ウェイン: 「仕事では座りっきりでしたし,運動も全くしていませんでした。医師に診てもらった時,自分が高血圧で,心臓病の合併症になる危険のあることを知ってショックを受けました。勧められて栄養士のところへ行き,指導を受けて厳しい運動療法と食事量の制限をすることになりました。毎日,途中の休憩なしで5㌔歩くようにし,毎朝早起きして運動もしました。自分の飲食の習慣を見直さなければなりませんでした。ジャンクフードをやめ,パンやソーダを減らし,代わりに野菜や果物をもっと多く取りました。今では,80㌔にやせました」。
「目ざめよ!」: 「どんな益があったと思われますか」。
ウェイン: 「健康になったと思います。まさに生き返った気分です。以前は動きが鈍く,ぐったりした状態でした。別の益は,血圧の薬がいらなくなったことです。それに,人の目をまっすぐに見ることができるようになったと思います。太りすぎのために引け目を感じることがなくなったからです」。
■ チャールズ(仮名)は身長196㌢です。体重はピーク時に168㌔ありました。
チャールズ: 「健康上の大きな問題を幾つも抱えていて,具合は悪くなる一方でした。階段を上れませんでしたし,仕事に必要な体力もなくなっていました。わたしは座業に就いています。調査関連の仕事で,責任もあります。減量のために何かしなければならないことは分かっていました。医師の診察を受けて特にそう思いました。脳卒中を起こすかもしれない,と言われたのです。そうなった人を見たことがあります。それで,どうしても行動しなければならないと思ったのです。医師の指導のもと,ランニングマシンを使った運動療法と厳しい食餌制限を行なうことになりました。1年ほどたった今では,136㌔にやせました。でも,もっと落とさなければなりません。減量にはいろんな良いことがあることが分かりました。確かに犠牲や努力を払う価値があると思います。今では階段を上ることができ,以前より体力もあります」。
■ エルサルバドル生まれの女性マルタは,かつて体重が83㌔ありました。165㌢の身長に対しては肥満とされました。
マルタ: 「医師のところへ行くと,減量を始めるように強く勧められました。医師の専門的な意見を重く受け止めました。医師の勧めで,栄養士のアドバイスを受けることになりました。栄養士はわたしが受ける治療法の理由と目的について説明し,食事量を制限する方法や食べ過ぎないための方法を教えてくれました。どの程度実行しているかを,最初は毎週,その後は毎月報告しなければなりませんでした。医師も栄養士も,よく頑張っていると励ましてくれました。結果として12㌔減量し,今でも70㌔ぐらいの体重を維持しています」。
「目ざめよ!」: 「運動をしたり薬を服用したりしましたか」。
マルタ: 「わたしの場合,コレステロール値は高くなかったので薬は必要ありませんでした。日課として,早歩きの時間を多く組み込むようになりました」。
「目ざめよ!」: 「お友達を訪ねて,いつも食べる量より多く勧められた時はどうされましたか」。
マルタ: 「『健康のためにこの食餌療法を医師から勧められているんです』とだけ言います。普通,それ以上勧められることはありません」。
では,太りすぎや肥満の問題を抱えている人であれば,何ができるでしょうか。「決意あるところに道あり」という古いことわざは真実です。そのことのために何かしようという決意や意志力があるでしょうか。太りすぎの問題を持つ子ども,あるいは大人の方であれば,どんな選択をされますか。減量することでしょうか。それとも,もしかしたら命を縮めてしまうことでしょうか。ライフスタイルを活動的なものにしてください。たとえ小さなことであっても達成感を味わってください。そう,服のサイズが小さくなったということでも。
[脚注]
a 体重はポンドをキロに換算してあります。
b 睡眠時無呼吸についてさらに詳しくは,「目ざめよ!」誌,2004年2月8日号,10-12ページをご覧ください。
[11ページの囲み記事]
脂肪吸引手術が解決策?
脂肪吸引手術とは何でしょうか。ある辞書はこう定義しています。「太ももや腹部など体の特定の部位の余剰な脂肪組織を吸引器によって取り除く手術法で,多くの場合,美容外科で行なわれる。吸引脂肪除去術とも呼ばれる」。(アメリカン・ヘリテージ英語辞典)では,これによって肥満は治療できるということでしょうか。
「メイヨー・クリニック 健康体重」は,脂肪吸引は美容外科手術であると述べています。これは減量プログラムではありません。皮下に挿入された細い管によって脂肪細胞が体外に吸引されます。1回の処置で数百グラムの脂肪を取り除くことができます。しかし,同じ本は,「その手術は肥満の治療法ではない」と述べています。この手術は安全でしょうか。「糖尿病や心臓病など,太りすぎの関係したある種の持病のある人は,脂肪吸引手術で合併症を起こす危険性が高い」とのことです。
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