ものみの塔 オンライン・ライブラリー
ものみの塔
オンライン・ライブラリー
日本語
  • 聖書
  • 出版物
  • 集会
  • 目99 2/22 20–23ページ
  • 農薬で殺されるのは害虫だけではない

視聴できるビデオはありません。

申し訳ありません,ビデオをロード中にエラーが発生しました。

  • 農薬で殺されるのは害虫だけではない
  • 目ざめよ! 1999
  • 副見出し
  • 関連する記事
  • 農薬の循環
  • 農薬の使用 ― ましな災い?
  • IPM ― 農薬に代わるもの
  • 虫を退治する ― 自然な方法
  • 違いをもたらす駆除法
  • 人間は昆虫との戦争に勝利を収めているか
    目ざめよ! 1984
  • 殺虫剤 ― 祝福か,災いか?
    目ざめよ! 1970
  • こん虫は祝福,それとものろうべきもの?
    目ざめよ! 1972
  • 家庭菜園 ― 有機栽培で
    目ざめよ! 2002
もっと見る
目ざめよ! 1999
目99 2/22 20–23ページ

農薬で殺されるのは害虫だけではない

ブラジルの「目ざめよ!」通信員

「言うことなし」。農場を経営するドミンゴス・ドス・サントスは,ブラジル南部の自分の農場に植えたキャッサバの出来を見てそう言いました。満足に思うだけの理由がありました。ドミンゴスが植えた苗の葉は,有害な昆虫に少しもやられていないように見えます。化学殺虫剤の新たな偉業でしょうか。いいえ,そうではありません。ドミンゴスはこう言います。「去年も今年も,殺虫剤は一滴も買う必要がありませんでした」。

ドミンゴスは,だんだん増える農業経営者の一グループに属しています。その人たちは,作物の保護のために農薬を使おうとはしません。a かわりに,化学薬品をやめるか,使っても最小限にとどめる方法を用いています。それで私は,サンパウロ近郊の柑橘農園で試験栽培を幾つか指導してきた農業経済学者のサンドル・ミューラーに,「それはどんな方法ですか。そもそも,農家の人たちが殺虫剤の散布器を使わなくなったのはなぜですか」と尋ねてみました。

農薬の循環

化学殺虫剤の使用に伴う暗い面の一つを思い描く助けとして,サンドルはこう言います。「警察隊が銀行強盗グループを追いかけている様子を思い浮かべてください。強盗は警察を振り切るために,人がたくさんいるオフィスビルに逃げ込みます。警察は人込みの中で強盗たちを見失ってしまったので,ヘリコプターを呼び,そのオフィスビルにガス爆弾を投下します。そうすれば確かに強盗たちを殺せますが,事務所で働く罪のない人たちやオフィスビルのガードマンも死んでしまうでしょう。農家の人が強い殺虫剤を作物に繰り返し浴びせると,それと同じようなことが起こるのです。殺虫剤によって強盗である害虫を殺せますが,ガードマンである益虫までやられてしまいます」。

「でも,少なくとも作物は守られてきましたね」と私が答えると,サンドルは,農薬を見境なく使うと有害な循環が始まるという点を指摘します。どのようにでしょうか。虫の中には,ある種の農薬に対して耐性があって殺虫剤の散布を生き残るものがいます。その後,生き残った虫たちは,“ガードマン”つまり益虫が全くいない作物の真ん中にいることになります。農家の人が殺虫剤をまいてくれたおかげなのです。

あふれんばかりの食物があり,天敵があまりいないことは,殺虫剤に耐性を持った虫の急激な増加を保証するものとなります。そのため農家は,もう一度,恐らくもっと強い農薬をまかなければならなくなります。南アメリカで豆を栽培している地域の中には,農家が殺虫剤を毎週まいている所もあります。その循環の結果ですか。ある農家の言葉によると,「農薬をまけば,毒を刈り取る」ことになります。

農薬の使用 ― ましな災い?

調査によると,毒で害虫を殺している人は,自分自身をも毒していることになります。ギア・ルラル誌(ポルトガル語)は,ブラジルだけでも,農薬によって毎年およそ70万人が中毒にかかっていると伝えました。平均して45秒に一人の割合です。さらに,世界保健機関の報告によると,世界中で毎年22万人が有毒な農薬にさらされたために死亡しています。加えて,農薬はわたしたちの環境にも大きな害を与えます。

今日,農薬容器のふたを開けるのは,パンドラの箱を開けるようなものだと感じる人がいる一方で,農薬を使うのは,二つの災いのうちのましなほうだと見る人たちも少なくありません。こう考えるのです。農薬を使って食物を得るか,農薬を使わずに飢えるかのどちらかだ。とにかく,地球の人口は増えているのに,農耕に適した土地は減っている。世界的な飢きんを招かないためにも,作物を食い荒らす害虫から守らなければいけない。

確かに,害虫は大きな問題となります。しかし幸いなことに,世界中のますます多くの農家が,農薬を作物に大量に散布するよりもっと良い方法があることを知るようになっています。それは,総合的病害虫管理,またはIPM(Integrated Pest Management)と呼ばれる方法です。

IPM ― 農薬に代わるもの

「IPMって何ですか」と,エボネオ・ベルティ・フィリョ教授に尋ねてみました。教授は,ピラシカバのサンパウロ大学昆虫学部の部長で,自然を利用した害虫駆除の指導的な研究者です。ベルティ教授は,IPMの目標は,殺虫剤の使用を必要最小限に減らすこと,また特定の害虫を殺す殺虫剤だけを使用することです,と説明してくれました。殺虫剤の散布量を減らしても,自然をうまく利用した害虫駆除で良い効果を上げることができるのです。

そのような害虫駆除の一つは,輪作です。例えば,ある農家が豆とトウモロコシを毎年交互に植えるとしましょう。トウモロコシは大好きでも,豆は好まない虫は,餓死するか,トウモロコシが沢山ある所を探して行ってしまいます。次にトウモロコシが植えられますが,少なくともしばらくの間,虫はほとんどいません。そして,トウモロコシを好む虫の大群が戻って来るころには,次の作物に植え替えられるため,虫たちはすぐまた出て行かざるを得なくなります。

生物学的な駆除もIPMの一つの要素です。それは,害虫の天敵である昆虫,バクテリア,ウイルス,菌類などを協力者として味方にすることです。例えば,ブラジルの研究者たちは,自然界で多くの毛虫がバキュロウイルスと呼ばれるウイルスに感染して死ぬのを見ました。そのウイルスは人に無害なので,研究者たちは,このウイルスを含んだ液体を作物に散布すれば,大豆やキャッサバを食べる毛虫に効く生物殺虫剤になるのではないかと考えました。それは効きました。ウイルスのまかれた作物を口にした毛虫は,数日後に死んだのです。おまけに農家は,死んだその毛虫によって,虫との将来の闘いに備える弾薬をただで持つこともできました。どのようにでしょうか。

「農家は,ウイルスに感染して死んだ毛虫をミキサーにかけて粉砕し,その混ぜ合わされたものをフィルターでこし,その結果採れた液体を冷凍庫で保存するだけでよいのです」と,ベルティ教授は説明してくれました。そののち農家の人は,ウイルスの入った液体を解凍し,水で薄めて作物に散布します。

生物殺虫剤には,化学的な殺虫剤が持つ即効性はありませんが,ある研究者によると,少なくとも90%は成功します。

虫を退治する ― 自然な方法

有害な虫と闘うために益虫を味方に引き入れることは,生物学的な害虫駆除の一つの重要な面です。とはいえ,そうした方法で害虫を駆除するよう説得する努力が払われていても,ブラジルその他の国で,そうすることに二の足を踏む農家は少なくありません。なぜでしょうか。農家の人にとって,農地にわざわざ昆虫を放つという考えは,都会に住んでいる人が集合住宅にゴキブリを放つのと同じほど愚かに思えるのです。ベルティ教授はこう話してくれました。「ほとんどの農家にしてみれば,昆虫はどれも,植物を食べてしまうものです。それが増えることなど,農家にとって一番いやなことなのです」。

ですから明らかに,生物学的な害虫駆除は,自分たちに味方する昆虫もいることを農家の人が理解した場合にのみ普及します。例えば,米国カリフォルニア州の果樹栽培者たちは,1800年代の終わりにテントウムシの力を借りました。当時,オーストラリアからうっかり運び込まれた有害な昆虫が,レモンとオレンジの木をみな襲い,事実上全滅させていたのです。テントウムシは,侵入してきた昆虫を2年もしないうちに制圧し,カリフォルニアの柑橘果樹園は守られました。

違いをもたらす駆除法

現在ブラジルには,頼もしい“ガードマン”であるジャウニンヤ(小さなジョアナという意味で,現地のテントウムシの呼び名)の役割を再発見している農家があります。サンドロは,自分が世話をしている柑橘農園のオレンジの並木を歩きながら,「この柑橘農園では,ジャウニンヤがアブラムシと闘ってくれています」と言いました。サンドロは1本のオレンジの前で立ち止まり,若葉の付いた小枝に手を伸ばして,下のほうに押し曲げました。アブラムシ ― ピンの頭ほどの大きさの動きの遅い昆虫 ― が口吻を葉に突き刺して,じっと動かずに葉液を吸っています。

しかし,これらアブラムシは“ガードマン”の食べ物となります。実際,テントウムシの中には,1匹でその生涯中に800匹のアブラムシを食べるものもいます。違いを生じさせるのにこれで十分なのでしょうか。「ええ,柑橘系の木の間にいろいろな草を十分残して,たくさんのテントウムシその他の天敵の住みかを与えてやれば,これで十分です」とサンドロは言いました。以前,この果樹園で生物学的な駆除を実施していなかったころは,化学殺虫剤を2週間に一度まいていた,ということをサンドロは指摘しました。今では,テントウムシや他の昆虫の天敵のおかげで,二,三か月に一度殺虫剤をまくだけでよくなりました。

テントウムシは,農家の人が頼みとする,自然界の多くの協力者の一員にすぎません。少し挙げるだけでも,ミツバチ,スズメバチ,鳥,クモ,カエル,ヒキガエルなどは皆,休みなく働く害虫駆除部隊の兵士です。魚も農薬に代わる役をしています。どのようにでしょうか。

中国では,江蘇<チアンスー>省,南京の農林省研究者,蕭凡<シャオ ファン>の報告によると,水を張った水田で魚を育て始めたところ,殺虫剤の必要が減りました。農家の人が作物の上に張ったロープを引っ張ると,虫は水中に落ちます。「イナゴは稲から落ちると死んだ振りをするので,魚に簡単に食べられてしまうのです」と凡は説明します。

農薬を少ししか使わないため,有益な昆虫が生き残ることもできます。それらの昆虫は,虫を食べる魚と共に害虫に対する共同戦線を張るのです。凡は,生物学的な害虫駆除のおかげで,有害な農薬を大量に使うことはもはや過去のことになったと説明し,健康と環境両面での益は明白だ,と付け加えました。

もちろん,農家がIPMを擁護するのはおもに,生態系を考えてというより,経済的な理由からです。結局のところ,高価な農薬を減らせば節約になり,より大きな利益が生まれます。それこそ,時代を問わず,全世界の人々に行動を促してきたものです。とはいえ,その経済的な益が大きくなって,汚染作物が減り,環境に与える害も減るなら,IPMは農家や消費者だけでなく,生態系にとっても益をもたらします。ある観察者が述べたとおり,IPMによって「すべてが益を受ける」のです。

[脚注]

a 最も広く使用されている農薬としては,(1)殺虫剤,(2)除草剤,(3)殺菌剤,(4)ネズミ駆除剤などがあります。いずれも,駆除できる害によって名づけられています。

[21ページの囲み記事]

残余農薬

世界中のすべての農家がすぐに総合害虫管理を実施したとしても,それで農薬の問題がなくなるとはとうてい言えません。国連食糧農業機関(FAO)の推定によると,発展途上国には10万㌧を超える余剰農薬が貯蔵されています。国連環境計画が発行しているアワ・プラネット誌(英語)は,「その在庫のかなりの部分は,援助協定のもとで入手した農薬の残余分である」と述べています。そうした在庫の中には,今では有害廃棄物とされているDDTなどの農薬が大量に含まれています。この残された農薬を除去しなければ,「災害が予想される」とアワ・プラネット誌は注解しています。

しかし,それを一掃するのはお金のかかる仕事です。アフリカに残されている農薬を除去するだけでも,1億㌦もかかりそうなのです。費用はだれが負担するのでしょうか。FAOは,農薬を供給した国に費用の負担を要請しています。とはいえ,FAOはこう指摘します。「農業用化学製品を製造する企業からも援助を求めるべきだ。そうした企業はたいてい,農薬の過剰ないしは不必要な供給に絡んできた」。しかし今までのところ,そうした企業は,「古い在庫を一掃するために財政面で貢献することをしぶって」います。

[22ページの囲み記事]

手の加えられた植物 論議を呼ぶのはなぜか

害虫と闘うもう一つの武器は,バイオテクノロジーです。DNA分子の内部的な仕組みについての知識が深まったため,研究者たちは異なった種類のDNAの断片を合成し,害虫に対する防御機構を組み込んだ植物を生長させることができるようになってきました。

トウモロコシはその一例です。遺伝子工学者たちは,別のところから取ってきた遺伝子をトウモロコシのDNAの中に移しました。すると,移し込まれた遺伝子は,害虫にとって致命的なタンパク質を生み出したのです。その結果,遺伝子操作をされた,害虫に負けないトウモロコシができました。

しかし,人工的に作られた植物は論議を呼びます。異議を唱える人たちは,そうした作物によって人が病気になるかもしれない,あるいは手の加えられた穀物が雑草としてはびこるようになるかもしれない,と論じます。虫を殺す遺伝子を持つ植物は,害虫にすぐに抵抗力を持たせてしまうと警告する科学者もいます。昆虫学者のベルティは次のように述べて注意を呼びかけています。「遺伝子工学に熱狂しすぎないようにする必要がある。思い出してもらいたい。1950年代当時,人々は殺虫剤を奇跡としてもてはやしたのではなかったか。いま我々はもっとよく知っている。奇跡の殺虫剤は奇跡の虫を生み出してきた。今日人工的に作られる植物がどんな問題を生むかだれが分かるだろうか」。

たとえ生物学的な問題すべてを解決できたとしても,科学者が遺伝コードに手を加えることについて,道徳的な面での懸念を抱く人もいます。バイオテクノロジーによってこれまでの農薬問題を解決できても,代わりに新たな倫理上の問題が残されるのではないかと感じる人もいます。

[23ページの写真]

1匹のテントウムシは何百匹もの害虫を食べる

    日本語出版物(1954-2026)
    ログアウト
    ログイン
    • 日本語
    • シェアする
    • 設定
    • Copyright © 2025 Watch Tower Bible and Tract Society of Pennsylvania
    • 利用規約
    • プライバシーに関する方針
    • プライバシー設定
    • JW.ORG
    • ログイン
    シェアする