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「良いたよりを擁護して法的に確立する」エホバの証人 ― 神の王国をふれ告げる人々
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その間,協会はカナダ最高裁判所に上訴するための二つのテストケースを選びました。その一つは,証人たちに対して繰り返しかけられてきた扇動の容疑を扱ったエメイ・ブーシェ対国王陛下事件でした。
ブーシェ事件は,温厚な農民であるエメイ・ブーシェが「ケベックの燃える憎しみ」のパンフレットの配布に際して果たした役割を根拠としていました。彼が,ケベックの証人たちに加えられた集団暴行や,証人たちを取り扱う当局者側が法律を無視していること,またカトリックの司教やカトリックの他の僧職者が集団暴行を唆していることを示す証拠などを人々に知らせたことは,扇動になるのでしょうか。
配布されたパンフレットを調べる際に,最高裁判所の判事の一人はこう述べました。「この文書は,『神とキリストと自由に対するケベックの燃える憎しみは,カナダ全体の恥』と題しており,まず,表題の裏づけとして取り上げられている事柄を平静さと理性をもって評価するようにという懇願が述べられている。次いで,ケベックでキリストにおける兄弟たちとしての証人たちに加えられた執念深い迫害に関する全般的な言及や,迫害の特定の事件に関する詳細な説明がある。そして,暴徒による支配とゲシュタポ式の策略に抗議しつつ,神の言葉の研究とみ言葉の命令に従うことによって『神とキリストと人間の自由に対する愛という良い実の豊かな収穫』が得られるようケベック州民に訴える言葉で結ばれている」。
同裁判所の判決はエメイ・ブーシェに対する有罪判決を破棄するものでした。しかし,5人の判事のうち3人は再審理を命じただけでした。この事件は下級裁判所で公平な判決を受けられるのでしょうか。エホバの証人側の弁護士は,最高裁判所自らが事件を再審理するよう求める申し立てを行ないました。驚いたことに,その申し立ては認められました。申し立てが保留になっている間に,最高裁判所の判事が増員され,元からいた判事の一人も考えを変えました。その結果,1950年12月,5対4でブーシェ兄弟に完全無罪の判決が下りました。
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「良いたよりを擁護して法的に確立する」エホバの証人 ― 神の王国をふれ告げる人々
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[689ページの図版]
エメイ・ブーシェは,エホバの証人に対する扇動容疑を退ける判決に伴い,カナダの最高裁判所により無罪とされた
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